似花みもり
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似花みもり
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 魔術師科にしてみると、騎士科の連中というのは、声も身体も大きくおおざっぱで野蛮、集団でいつもさわがしい。一方の騎士科から見た魔術師科は、屁理屈と偏屈をこじらせていてかよわいくせに怒り出すと過激で面倒。
 伝統的に仲が良くない。
 それでもマレクは、この学院にいる短い期間で、だれか魔術師と親しくならねばならなかった。
 領地を出る際に、姉のデリアが「あんたは時々、思いもよらない無茶をするから心配よ」と、ため息とともに漏らしていたのを思い出す。慎重で聡明なデリアは次期領主にふさわしい。女王を国主に戴くアディーク国では、長子の女性が領主になるのもめずらしくはない。
February 9, 2026 at 2:50 PM
 寮で同室同学年のジェス・モリーにそう言ったら、勧めてきたのが書陵部の手伝いをすることだった。
 書陵部は、書庫の整理や本の貸し出し業務を行うところだ。ジェスも所属しているというそれに引っ張られるようにして参加してみると、たしかにマレクの目的に適っていた。
 まず場所が魔術師科の教室側にある。利用するのも当然、魔術師科の生徒が多い。
 学院はおおまかに真ん中が時計塔、その左右に騎士科と魔術師科の教務棟、それぞれの外側に騎士科のネイト寮、魔術師科のメルカ寮がある。学院の生徒であればどこをうろついていても責められはしないが、互いになわばり意識というものがある。
February 8, 2026 at 2:29 PM
 王都に近づくにつれ、煉瓦の道は立派に、木々は針葉樹から常緑樹へと色合いを変えていた。
 これもひとつの経験であり、帰るときには土産話のひとつになるだろうとマレクは思うことにした。
 困ったのはそのあとだ。
 学院に到着し、騎士科の生徒が住むネイト寮の部屋に案内されたころには、はっきりとそれを感じた。
 ほかの生徒はすでに学院になじんでおり、まごついているのはマレクだけだった。そこかしこで若々しく笑いあう寮生の、だれが同じ一年生で、だれが上級生なのか、それすらマレクにはわからなかった。
 マレクには目的があった。
 魔術師と知り合いになりたい。
February 7, 2026 at 3:27 PM
 しかし例年ならばまだ降るはずのない雪が、領内を進むにつれて暴虐を強めてくる。めったに文句など口にしない北国の男である御者が、「若、これはまずいですよ」と言ったころには、辺り一面が真っ白になっていた。
 これでは馬車は進めない。「どうぞ、ご無事で」と言う御者に馬を託し、諦めてマレクは徒歩で王都をめざすはめになったのだ。
 二週間程度の遅れで済んだのは、むしろ幸いだったのかもしれない。途中で王都に行くという商人たちと合流できたのだ。商人たちは騎士団とは違い、正規の道以外にも詳しい。
February 6, 2026 at 2:06 PM
運も悪かった。
 マレクが王都に向かって旅立ったときには、まだ街道にも葉の落ちきらぬ木々が残っており、馬車が乾いた車輪の音を立てて行き交っていた。
 マレクが仔馬のときから育てた愛馬のレクシーであれば、多少の雪などものともせず、マレクの望むまま何時間も走ってくれただろう。だが、王都の学寮には厩舎がなく、連れてくることはできなかった。
 仕方なく、レエム家の紋章であるユニコーンの飾りのついた馬車に乗って、仰々しくゆったりと旅を始めることになったのだ。
February 5, 2026 at 2:15 PM