炎の国で
あの狼の代わりなど
永劫あらわれはしないのだ
炎の国で
あの狼の代わりなど
永劫あらわれはしないのだ
「生まれたまま」は、わるいもの。私たちは「生まれたまま」を叩いて曲げて矯正するために生きていて、考えていて、恋をしていて、詩を書いている。
私たちは、私たちの生と、思考と、恋と、言葉を、無駄にするためにいるのではないよ。
「生まれたまま」は、わるいもの。私たちは「生まれたまま」を叩いて曲げて矯正するために生きていて、考えていて、恋をしていて、詩を書いている。
私たちは、私たちの生と、思考と、恋と、言葉を、無駄にするためにいるのではないよ。
僕はたくさん怒りたい気持ちで、しかし怒ることができずに、そばにある哀しさばかりを語っています。
怒鳴り声を、あげることができればどれ程よかったでしょう。哀しみですら大きな声では言えなくて、親しい人や、庭の石や、自分自身に、それが彼らの負担にはならないよう気をつけながら、そっとすすり泣いては撤回します。
ほんとうは、哀しみたくなんてないのです。なにかに怒りたいのです。なにに怒ればいいか、分からないのです。そんなことが、たくさんあるのです。
僕はたくさん怒りたい気持ちで、しかし怒ることができずに、そばにある哀しさばかりを語っています。
怒鳴り声を、あげることができればどれ程よかったでしょう。哀しみですら大きな声では言えなくて、親しい人や、庭の石や、自分自身に、それが彼らの負担にはならないよう気をつけながら、そっとすすり泣いては撤回します。
ほんとうは、哀しみたくなんてないのです。なにかに怒りたいのです。なにに怒ればいいか、分からないのです。そんなことが、たくさんあるのです。
盆と台風が一気に過ぎて
風がくっきり涼しくなって
そうしてやっとこれまでの日を
夏だと言えたように思います
名前を呼ぶ、そのためにも息を吸わねばならないこと
すべての言葉は後付けなこと
あなたの前にあなたの名前は無くて
わたしは名前を呼ぶ、
そのために吸い込んだものを吐きだして
あなたのことを夏と呼ぶ
____
#詩 無題
盆と台風が一気に過ぎて
風がくっきり涼しくなって
そうしてやっとこれまでの日を
夏だと言えたように思います
名前を呼ぶ、そのためにも息を吸わねばならないこと
すべての言葉は後付けなこと
あなたの前にあなたの名前は無くて
わたしは名前を呼ぶ、
そのために吸い込んだものを吐きだして
あなたのことを夏と呼ぶ
____
#詩 無題
黒いインクで書いて
強く深く、なんども書いて
君、はいま、はてない陰になってゆく
書かれる君、の輪郭が
線の長さや止めや払いが
ひとつずつ意味をうしなって
君、の形を曖昧にする
君、の姿も声も目のかがやきも
黒さに融けてひろがって
意味のほどける君、を見ている
黒いインクで君、をなぞる
すべてが君、になるときに
すべては君、でなくなって
君、は輪郭であることを
はじめて僕の右手が悟る
君、と書いて
なんども書いて
黒く大きくなってゆく君、
君をなぞる
____
#詩 「君、をなぞる」
黒いインクで書いて
強く深く、なんども書いて
君、はいま、はてない陰になってゆく
書かれる君、の輪郭が
線の長さや止めや払いが
ひとつずつ意味をうしなって
君、の形を曖昧にする
君、の姿も声も目のかがやきも
黒さに融けてひろがって
意味のほどける君、を見ている
黒いインクで君、をなぞる
すべてが君、になるときに
すべては君、でなくなって
君、は輪郭であることを
はじめて僕の右手が悟る
君、と書いて
なんども書いて
黒く大きくなってゆく君、
君をなぞる
____
#詩 「君、をなぞる」
なめらかな丘と
流れる大地と
なによりも軽やかで厖大な砂の無限を
わたしたちは駱駝に乗った商人に
歩きやんではいけないと言われて
片脚の埋まる前に片脚を出す
その忙しない動作を歩くとも
また生きるとも呼ぶことにした
遠い海の神話にある巨きな魚のように
沙漠の中をわたしたちが生きた
その両脚を思い出せ
肋の痛みは鰓孔になり
いつしか呼吸は砂に変わって
わたしたちは胸を押し上げずとも
酸素を得られるからだになった
沙漠のことを思い出すがいい
なめらかな胸を
撫でゆく手のひら
なによりも愛おしんだ人との無数の呼吸を
____
#詩 「タクラマカン」
なめらかな丘と
流れる大地と
なによりも軽やかで厖大な砂の無限を
わたしたちは駱駝に乗った商人に
歩きやんではいけないと言われて
片脚の埋まる前に片脚を出す
その忙しない動作を歩くとも
また生きるとも呼ぶことにした
遠い海の神話にある巨きな魚のように
沙漠の中をわたしたちが生きた
その両脚を思い出せ
肋の痛みは鰓孔になり
いつしか呼吸は砂に変わって
わたしたちは胸を押し上げずとも
酸素を得られるからだになった
沙漠のことを思い出すがいい
なめらかな胸を
撫でゆく手のひら
なによりも愛おしんだ人との無数の呼吸を
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#詩 「タクラマカン」
ひゃくまんの黄昏に
ひゃくまんのたばこを
一息にぽかりとふかしたら
ひゃくまんの煙は
ひゃくまんの雲になるだろうか
ひゃくまんの夕立になるだろうか
そんなことってないだろうから
ひゃくまん人は今日も
ひゃくまんのたばこをふかしています
ぽかり ぽかりと
黄昏の煙をはいています
____
#詩 「ひゃくまんの煙」
ひゃくまんの黄昏に
ひゃくまんのたばこを
一息にぽかりとふかしたら
ひゃくまんの煙は
ひゃくまんの雲になるだろうか
ひゃくまんの夕立になるだろうか
そんなことってないだろうから
ひゃくまん人は今日も
ひゃくまんのたばこをふかしています
ぽかり ぽかりと
黄昏の煙をはいています
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#詩 「ひゃくまんの煙」
(あの甘いマーマレードのような
香りがいちめんに立ち込めて)
(無風の朝に)
(明星がひかり)
(遥かな小川も流れをとめて)
(千切れた雲はオレンジであることをやめ)
(やがてすべてが虹になっていく最中)
誰も恋をせざるはなし。
____
#詩 「金木犀が香る」2018/3
(あの甘いマーマレードのような
香りがいちめんに立ち込めて)
(無風の朝に)
(明星がひかり)
(遥かな小川も流れをとめて)
(千切れた雲はオレンジであることをやめ)
(やがてすべてが虹になっていく最中)
誰も恋をせざるはなし。
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#詩 「金木犀が香る」2018/3