「そういえば最近扶桑へ行ってるのか？」
「いや～～、湿度が」
「あー」

　ペテロの庭で新しく手に入れたものの交換ついでに情報交換もしようと話を振ると、何とも言えない返答。今の時期、扶桑は夏。その辺も現実準拠なんですね？　残念ながら私はいまいち実感できませんが。ビバ、環境系称号。

「私も環境系のスキルか称号取ろうかな」
「がんばれ」

　やる気のない声援を送りつつ私は食材ルートで手に入れたものを取り出すのだった。

　実際、目の前の風景を前にしてくだらない強がりなど無意味だろう。シンとレオのお騒がせコンビも静かに見入っている。
　青く澄んだ空が釉薬のオレンジ色に染まっていくグラデーション。そこに黒く影を落とす巨大なヤシの木。クランハウスの窓から見える幻想的な風景は、まさに夢のような時間だ。
　しばらくして太陽が完全に海の向こうに沈み込み、三つの月が濃い藍色の空に浮かび上がるとそれそれが動き出す。なんだかんだ言ってクランハウスにいてもにぎやかに過ごしているので、実際こうしてゆっくりと空を眺めていることは少ないのだが、やはりいいものはいいものです。