やった〜！！！ありがとうございます😘💕

アンが羨ましい。駆動式近接型武器というよく分からない剣に近い不思議で重たい武器を自分よりちいさい身体で振り回し、他のムレのベイトをすべてなぎ払い、好きなように明るく生きているあの女が羨ましい

「……」
「なに、欠けエンペラでもオサに据えようとしてるんだから、血統主義なのかと思ってさ」
「欠けててなにが、悪いんだよ」
「セピアみたいなとこだとトップが戦えないとヒトはついてこないだろうよ。大抵が力を求め力を使い、屈服させたり屈服したりじゃん。自分たちを導くリーダーが戦えないってのは、士気の問題にも……」
「うるせえ！！！」

ルベウスは叫んで、そのまま去っていく。
欠けたエンペラのせいでインクリングとして大事な空間把握機能はダメになってしまった。そのせいでルベウスはバトルができない身体になってしまった。

「俺はお前の事なんて嫌いだ」
「アタシもさ。キミのことは別に好きじゃない。けどもアタシがキミの傍に居ることによって次のオサっていう箔はつくんじゃないな？隣にこんな美人で強い女を侍らせてんだぜキミ」
「侍らせてねェ！」
「傍から見ればどう映るかは。キミからみたアタシはオサに取り入ろうとする悪女だけど、コランダムのヒトからみたら、コランダムでいちばん強いベイト。ヒトによって見え方なんて変わるのさ。それともなんだい。キミはキミの実力でオサになりたいクチかい？」

ルベウスは一度アンに問いかける
「何が目的だ」
ルベウスは父のしていることを知らない。だからこそ、何故アンが父に近づくのかが分からない
アンは答える
「ここで生きてくんなら、オサにへつらっとくのはアリじゃねーの？」
ルベウスが何も知らないことをアンは知っている。だからこそ、ルベウスが自分のことを嫌いなことを知っている

「あんな老いぼれ相手にへつらってどうする」
「そ。ならキミに媚び売ってりゃいーのかしら」
「そういう話じゃねぇだろ」
「そうかな。コランダムの次のオサだろう、キミは」

ルベウスはアンが嫌いだ。
余所者のくせにセピアによく馴染み、自由奔放に振る舞いその上、 コランダムでいちばん強かった。ルベウスの父、コランダムのオサは1度アンとバトルをした時に思い切り負けてセピアの砂の味を噛み締めたという。
自分と歳の変わらない、背もそこまで高い訳でもない女が自分よりも強い父親を倒してしまったのが気に食わない。
なにより、彼女が自分に絡むのは父親に近づく為なのが腹が立つ

アンは時間をとにかく時間をかけた。ただのきまぐれな小娘が仮にもその地の有力者のひとりに楯突こうなんて、いくら兵士とて不可能だ。
だからまず、オサの息子……次のオサになる予定のルベウスに近付いた。
この男もいずれ人身売買業を行うのだろう。だからこの男を元にオサに近付こう。そういう計画だ

アンはセピアでとにかく自由に振舞った。いつどこにいても「アンはそういう奴だからなぁ」と言われるような、自由奔放な気分屋の女。それがセピアでのアンだった。
保護された者にいれられた刺青はコランダムのムレのシンボル。一見は商売……特に食品に関して当時のセピアでも高い水準で客に提供していたそうだ。
しかし、実際には孤児を攫い足がつかないように異国へ売り飛ばすのだという。食料調達をしにセピアの外に出る遠征隊の車両にはまだヒト化できない子供がりんごの木箱にいれられていた

アンは他国の軍人だった。所謂少年兵だ。戦場に行ってブキを交わすよりも、敵の中に潜り込み、相手の情報を抜き取り人員を懐柔するのが彼女の仕事だった。
……セピアに来たのは、人身売買について
アンの国で違法労働と違法滞在が発覚し、調べるとセピアという地から売り飛ばされた者だった。アンはセピアという地を調べる為に、ひとり異国へ飛んだ。

そして少女は運命に出会う

いまから70年くらい前の話だった

ルベウスはコランダムというムレのオサの息子であり、次のコランダムのオサとなる少年だった。しかし彼はエンペラが欠けており、バトルにおいて重要な空間把握機能が使いものにならなかった。その為、双子の弟に次のオサになってほしいと願った。
そんな折、セピアの外から来たという少女が現れた。名前はアン。話を聞く限りどうやら海外からはるばるセピアに来たという。理由を聞いても彼女ははぐらかす。ルベウスはアンの事を苦手に感じるようになるが、コランダムに彼女は馴染んでいく