見に行こうかしら、と思い立ったが、すでにチケットは完売していて手に入れられなかった。本当に人気スポーツなんだなぁ、と思いつつ、近所の日系スーパーで買い物をしていると、精肉コーナーで同年代くらいの見かけない青年が何やら困り顔で立ち尽くしていた。
見に行こうかしら、と思い立ったが、すでにチケットは完売していて手に入れられなかった。本当に人気スポーツなんだなぁ、と思いつつ、近所の日系スーパーで買い物をしていると、精肉コーナーで同年代くらいの見かけない青年が何やら困り顔で立ち尽くしていた。
ある日、テレビから弟の名前が聞こえたような気がした。弟が🇺🇸でプロ選手になっていたことにもビックリしたが、どうやら大事な試合で大変な活躍をしたらしい。まだリスニングも未熟な姉には詳しくは分からなかったけど、「amazing!」は褒め言葉だろう。画面の向こうの弟は10年前より少し大きくなったようか気もするけれど、屈強な選手たちに囲まれると華奢な方だった。それでもスピードを活かして次々と点を取っていく。遠くからのシュートも、虹のように綺麗だった。
ある日、テレビから弟の名前が聞こえたような気がした。弟が🇺🇸でプロ選手になっていたことにもビックリしたが、どうやら大事な試合で大変な活躍をしたらしい。まだリスニングも未熟な姉には詳しくは分からなかったけど、「amazing!」は褒め言葉だろう。画面の向こうの弟は10年前より少し大きくなったようか気もするけれど、屈強な選手たちに囲まれると華奢な方だった。それでもスピードを活かして次々と点を取っていく。遠くからのシュートも、虹のように綺麗だった。
「写真くらいは」と夫が言うので、結婚式の写真1枚と、「結婚しました。今までありがとうございました。」とだけ書いた便箋を封筒に入れて実家に送った。
それ以来、流姉は実家に連絡を取らなくなった。引っ越したから親からは連絡できなくなる。つまり絶縁したわけだが、ひどくすっきりとした気持ちだった。
「写真くらいは」と夫が言うので、結婚式の写真1枚と、「結婚しました。今までありがとうございました。」とだけ書いた便箋を封筒に入れて実家に送った。
それ以来、流姉は実家に連絡を取らなくなった。引っ越したから親からは連絡できなくなる。つまり絶縁したわけだが、ひどくすっきりとした気持ちだった。
母の一方的な話を聞いて電話を切った。結婚の話はしなかった。できなかった。
恋人からは「両家の顔合わせはいつにしようか」と言われたけれど、頼み込んで無しにしてもらった。恋人は心配そうな表情は浮かべたけれど、深く追求してくることはなかった。そういう優しい人だった。
母の一方的な話を聞いて電話を切った。結婚の話はしなかった。できなかった。
恋人からは「両家の顔合わせはいつにしようか」と言われたけれど、頼み込んで無しにしてもらった。恋人は心配そうな表情は浮かべたけれど、深く追求してくることはなかった。そういう優しい人だった。
母からの電話によると、三回戦敗退だったらしい。運動部に縁のない流姉はそれがどの程度の成績なのかわからなかった。けれど、試合の後で有名な大学のコーチから名刺をもらったようなので、きっと大学でも🏀を続けるのだろう。
母からの電話によると、三回戦敗退だったらしい。運動部に縁のない流姉はそれがどの程度の成績なのかわからなかった。けれど、試合の後で有名な大学のコーチから名刺をもらったようなので、きっと大学でも🏀を続けるのだろう。
やはり離れて正解だったと思いながら寮に帰り、ベッドに倒れ込んだ。
半年ぶりに見た流は随分とがっしりしていて、楽しそうにプレーしていた。表情は変わらないけど、それはわかった。嫌だけれど、姉だから。赤ちゃんの頃から見ているから、弟がどれほど今のチームでの🏀を楽しんでいるかよくわかった。
やはり離れて正解だったと思いながら寮に帰り、ベッドに倒れ込んだ。
半年ぶりに見た流は随分とがっしりしていて、楽しそうにプレーしていた。表情は変わらないけど、それはわかった。嫌だけれど、姉だから。赤ちゃんの頃から見ているから、弟がどれほど今のチームでの🏀を楽しんでいるかよくわかった。
別に弟とは喧嘩しているわけではない。流が悪いわけではないが、流のせいで迷惑を被っているのも事実だから、ただただ関わりたくなかった。
別に弟とは喧嘩しているわけではない。流が悪いわけではないが、流のせいで迷惑を被っているのも事実だから、ただただ関わりたくなかった。
母親からは最初は頻繁に電話がかかってきたが、つれない対応を続けたら半年後には月に一度かかってくるか来ないか、くらいまで頻度が落ちた。流が🏀のエースになり、遠征やら練習試合の応援やらで忙しいらしい。ちくりと心は痛んだが、気付かないふりをした。
母親からは最初は頻繁に電話がかかってきたが、つれない対応を続けたら半年後には月に一度かかってくるか来ないか、くらいまで頻度が落ちた。流が🏀のエースになり、遠征やら練習試合の応援やらで忙しいらしい。ちくりと心は痛んだが、気付かないふりをした。
その日、何かがぷつんと切れた感覚があった。
その日、何かがぷつんと切れた感覚があった。
話したこともないクラスメイトから「今度家に遊びに行って良い?」などと言われた時にはあからさま過ぎてドン引きした。流姉が親友と思っていた友人さえ、「弟くん、かっこいいね。家に遊びに行ったら会える?」と見たことのない顔で言ってくるようになった。
話したこともないクラスメイトから「今度家に遊びに行って良い?」などと言われた時にはあからさま過ぎてドン引きした。流姉が親友と思っていた友人さえ、「弟くん、かっこいいね。家に遊びに行ったら会える?」と見たことのない顔で言ってくるようになった。
夕食後、自室に閉じこもっているとノックされ、返事をする前に母が入ってきた。話は要約すれば、弟への態度はどうかと思う、お姉ちゃんなんだからもっと優しくしてあげて、というものだった。
母親は弟だけが可愛いのだ、と流姉は思った。いつでも「お姉ちゃんなんだから」という言葉で我慢させられてばかりだ!と思った。
その日から、流姉は流を完全に無視するようになった。弟から話しかけられることは今までも滅多になかったけれど、おはようの挨拶すら無視した。
夕食後、自室に閉じこもっているとノックされ、返事をする前に母が入ってきた。話は要約すれば、弟への態度はどうかと思う、お姉ちゃんなんだからもっと優しくしてあげて、というものだった。
母親は弟だけが可愛いのだ、と流姉は思った。いつでも「お姉ちゃんなんだから」という言葉で我慢させられてばかりだ!と思った。
その日から、流姉は流を完全に無視するようになった。弟から話しかけられることは今までも滅多になかったけれど、おはようの挨拶すら無視した。
「?!」「お姉ちゃん?!」「外の、うるさいからなんとかして。アンタの客でしょ」「は?」「お姉ちゃん、そんな言い方しないの」「うっざ」
そう言い捨てて、二階の自室に向かう。後ろで何か言われたけれどすべて無視した。
「?!」「お姉ちゃん?!」「外の、うるさいからなんとかして。アンタの客でしょ」「は?」「お姉ちゃん、そんな言い方しないの」「うっざ」
そう言い捨てて、二階の自室に向かう。後ろで何か言われたけれどすべて無視した。
「ね、今の流カワくんのお姉さん?」「似てないね」「めちゃくちゃフツーじゃん」「流カワくんの方が可愛くない?」
その言葉がぐさりと背中に刺さった。悔しくて、けれど年下の女の子たちに言い返すのもみっともないような気がして、黙って玄関の戸を強く閉めた。
母はリビングにいて、ソファで寝こけている弟に「クラスメイトの○○さんが会いに来てるよ」と声をかけているようだった。
「ね、今の流カワくんのお姉さん?」「似てないね」「めちゃくちゃフツーじゃん」「流カワくんの方が可愛くない?」
その言葉がぐさりと背中に刺さった。悔しくて、けれど年下の女の子たちに言い返すのもみっともないような気がして、黙って玄関の戸を強く閉めた。
母はリビングにいて、ソファで寝こけている弟に「クラスメイトの○○さんが会いに来てるよ」と声をかけているようだった。