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ヒヤッとした…
ヒヤッとした…
愛する存在を得て、その血を繋いで笑う姿が見たいと、本当に願っていたのだ。優しい男に家族を得て、幸せになってほしいと。
その願いを知った男は悲しそうな顔をした。
「俺は、不幸に見えるか?」
とても悲し気で、寂しそうで、自嘲するような表情だった。
「お前たちと暮らせて、幸せだ。愛っていうのが何かわからないけれど、お前たちが笑って、過ごしている姿を見ると心底安堵する。こういうのが、家族なのかなって」
でも、と男は俯く。
「そうじゃ、ないんだな」
頭を冷やしてくる、と男は外へ行った。
何を言えばいいか分からずただ失敗したと思った。
男は、帰らなかった。
愛する存在を得て、その血を繋いで笑う姿が見たいと、本当に願っていたのだ。優しい男に家族を得て、幸せになってほしいと。
その願いを知った男は悲しそうな顔をした。
「俺は、不幸に見えるか?」
とても悲し気で、寂しそうで、自嘲するような表情だった。
「お前たちと暮らせて、幸せだ。愛っていうのが何かわからないけれど、お前たちが笑って、過ごしている姿を見ると心底安堵する。こういうのが、家族なのかなって」
でも、と男は俯く。
「そうじゃ、ないんだな」
頭を冷やしてくる、と男は外へ行った。
何を言えばいいか分からずただ失敗したと思った。
男は、帰らなかった。
そんな男が、倅の泣き声一つで素早く作業を中断して愛おしそうに世話を焼く。
甘い声でどうした、と名前を呼び、体調が悪いかどうかを判断し、ただぐずっているだけなら機嫌がよくなるまで抱き上げる。
大きな掌で倅をあやし、指先をしゃぶらせては可愛いと笑う。
男の手は、まるで魔法でも使えるように数多のことを与えてくれる。温かさを分け与え、穏やかな日々を生み出す。
その愛に包まれて倅はきゃらきゃらと笑い声をあげている。
そんな男が、倅の泣き声一つで素早く作業を中断して愛おしそうに世話を焼く。
甘い声でどうした、と名前を呼び、体調が悪いかどうかを判断し、ただぐずっているだけなら機嫌がよくなるまで抱き上げる。
大きな掌で倅をあやし、指先をしゃぶらせては可愛いと笑う。
男の手は、まるで魔法でも使えるように数多のことを与えてくれる。温かさを分け与え、穏やかな日々を生み出す。
その愛に包まれて倅はきゃらきゃらと笑い声をあげている。
なまじ頑強だからこそタチの悪いしなやかさは痛みを受け止め立ち上がる強さがあった。
女子どもは守るもの、背中で庇うもの、そう強く信じていた。
人外である己の隣に立てるほどの強さは脆さとも言えた。そして自分の価値を認めない男だった。
大切と決めた存在のためになら自分を容易く投げ出す男だった。それが嫌で守りたいと願っても気づけばその背に守られていた。
どうすれば分かってくれるのか、ほとほと困り果てて泣けばおろおろと慌てていた。
その強さが悲しかった。自分の価値を誰かを守ることで実感するような、その寂しさを理解してくれない強さがつらかった。
なまじ頑強だからこそタチの悪いしなやかさは痛みを受け止め立ち上がる強さがあった。
女子どもは守るもの、背中で庇うもの、そう強く信じていた。
人外である己の隣に立てるほどの強さは脆さとも言えた。そして自分の価値を認めない男だった。
大切と決めた存在のためになら自分を容易く投げ出す男だった。それが嫌で守りたいと願っても気づけばその背に守られていた。
どうすれば分かってくれるのか、ほとほと困り果てて泣けばおろおろと慌てていた。
その強さが悲しかった。自分の価値を誰かを守ることで実感するような、その寂しさを理解してくれない強さがつらかった。
それが、全ての間違いだったと気づいたのは友が息絶えた後だった。
温もりのない、応えのない身体に、空っぽになった器だけがあってもう友はいない。その事実がこれ程の喪失感を与えるなど知らなかった。
地獄で会える、なんて笑っていたがあの男が地獄にゆくものか。
あれが巡ったとしてそれは友ではないかも知れない。
やっと手にした愛しいものを自ら手放した愚かさに嗤うことさえ出来ない。
失敗した、見送るでなく仕舞い込むべきだった。もう2度と離れないよう亡くさないよう、あれは人の子だからこそ。
赤い目が笑った。
それが、全ての間違いだったと気づいたのは友が息絶えた後だった。
温もりのない、応えのない身体に、空っぽになった器だけがあってもう友はいない。その事実がこれ程の喪失感を与えるなど知らなかった。
地獄で会える、なんて笑っていたがあの男が地獄にゆくものか。
あれが巡ったとしてそれは友ではないかも知れない。
やっと手にした愛しいものを自ら手放した愚かさに嗤うことさえ出来ない。
失敗した、見送るでなく仕舞い込むべきだった。もう2度と離れないよう亡くさないよう、あれは人の子だからこそ。
赤い目が笑った。
そう言って幼いあの子は小さな父親だけを連れて家を出た。その背中が見えなくなるまで手を振りたかった。けれど瞬きしたとたん夢のように消えてしまう。
嗚呼、失ってしまったなと痛感する。途端に喉が絞められたように息が吸えなくなった。今まで、のうのうと甘受してきた幸福の揺り返しを受けている。
日々は、ただ続く。無情にも朝は来る。
家の中には幸せな思い出が溢れていた。柱の傷、張り替えた障子、食事を囲んだちゃぶ台。すべてが、鮮やかに。
その世界に一人残された自分が滑稽で、貧相で、醜悪だ。
あぁそれでも、愛おしい思い出が瞼を閉じると浮かんでは消えて。
涙が、零れた。
そう言って幼いあの子は小さな父親だけを連れて家を出た。その背中が見えなくなるまで手を振りたかった。けれど瞬きしたとたん夢のように消えてしまう。
嗚呼、失ってしまったなと痛感する。途端に喉が絞められたように息が吸えなくなった。今まで、のうのうと甘受してきた幸福の揺り返しを受けている。
日々は、ただ続く。無情にも朝は来る。
家の中には幸せな思い出が溢れていた。柱の傷、張り替えた障子、食事を囲んだちゃぶ台。すべてが、鮮やかに。
その世界に一人残された自分が滑稽で、貧相で、醜悪だ。
あぁそれでも、愛おしい思い出が瞼を閉じると浮かんでは消えて。
涙が、零れた。
傷跡を隠すでもなく、恥じるでもなく、ただそこに生きた証を抱く姿は酷く美しい。
傷跡は痛々しく、時に痛みを伴うと言うのに歯を食いしばってでも生きようとするその強さを眩しく思う。
この強さが人間であり、陽の下で生きることを選び取ったが故だろう。
それなのに、この男の目は夕闇を見通す。そして青い水鏡にこちらを映してゆるりと笑うのだ。
誰よりも太陽の似合う男が、月の光を受けてはにかむ。
そのアンバランスな美しさに喉がなった。伸ばす指先などとうにないと言うのに。
けれど男は優しく指ひとつよこしてこんな目玉の体を撫でる。
泣き虫だな、なんて笑って黄昏時に迷い込んでいる。
手放すなど、できず。
傷跡を隠すでもなく、恥じるでもなく、ただそこに生きた証を抱く姿は酷く美しい。
傷跡は痛々しく、時に痛みを伴うと言うのに歯を食いしばってでも生きようとするその強さを眩しく思う。
この強さが人間であり、陽の下で生きることを選び取ったが故だろう。
それなのに、この男の目は夕闇を見通す。そして青い水鏡にこちらを映してゆるりと笑うのだ。
誰よりも太陽の似合う男が、月の光を受けてはにかむ。
そのアンバランスな美しさに喉がなった。伸ばす指先などとうにないと言うのに。
けれど男は優しく指ひとつよこしてこんな目玉の体を撫でる。
泣き虫だな、なんて笑って黄昏時に迷い込んでいる。
手放すなど、できず。
愛しい、眩しい風景だ。息子は笑顔で嬉しそうにその腕の中に身体を預け、男は幸せそうにまだ小さな身体を包み込んで抱きしめる。
息子からこの腕の中にはなんの不安もないと真っ直ぐに信頼されている男はその事実に気づいているのだろうか。
愛に不器用な男はことさら愛を注ぐことに長けていた。こうして誰かに心を砕くことを自然とできる、悪辣に生きようとするチグハグな男。
そのズレは男の傷の深さであり痛みだ。だから他人を内側に入れることができない。
そんな男の愛を一身に受けて息子は育ち、己は友として在る。
仄暗い優越感をひた隠し、今日も男を見つめる。己のものだ。
愛しい、眩しい風景だ。息子は笑顔で嬉しそうにその腕の中に身体を預け、男は幸せそうにまだ小さな身体を包み込んで抱きしめる。
息子からこの腕の中にはなんの不安もないと真っ直ぐに信頼されている男はその事実に気づいているのだろうか。
愛に不器用な男はことさら愛を注ぐことに長けていた。こうして誰かに心を砕くことを自然とできる、悪辣に生きようとするチグハグな男。
そのズレは男の傷の深さであり痛みだ。だから他人を内側に入れることができない。
そんな男の愛を一身に受けて息子は育ち、己は友として在る。
仄暗い優越感をひた隠し、今日も男を見つめる。己のものだ。
溢れるほどに息子に愛を伝え、妻の愛を語る男は己の知っている存在と大きく違っていた。
妻を大切にする、なんて考えもしてない人間ばかり見てきた。子を産む道具と言い切った者もいた。そんな姿に失望して表面を取り繕い心の中で唾を吐く。
その全てを覆す愛に溢れた男に、目を細める。なんで美しいんだろう。
「どうした? なんぞあるか?」
赤い目玉がこちらを見ている。真っ直ぐに、信頼を込めて。
「いい景色だと思ってなぁ」
欲しくてたまらなかった安心が目の前にある。守りたくてたまらない幸せがある。
だからもっと頑張れる。この家族を守るためになら自分は何でも出来る。
溢れるほどに息子に愛を伝え、妻の愛を語る男は己の知っている存在と大きく違っていた。
妻を大切にする、なんて考えもしてない人間ばかり見てきた。子を産む道具と言い切った者もいた。そんな姿に失望して表面を取り繕い心の中で唾を吐く。
その全てを覆す愛に溢れた男に、目を細める。なんで美しいんだろう。
「どうした? なんぞあるか?」
赤い目玉がこちらを見ている。真っ直ぐに、信頼を込めて。
「いい景色だと思ってなぁ」
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会場で販売されていたものに加えて、新規グッズも追加されています。
クッションになったのはびっくりしました。
通販ページ➡ online.parco.jp/shop/e/e1105...
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「鬼太郎誕生備忘録」も沢山ご購入下さりありがとうございました!
お手元に届くのはまだ先ですが、お待ちいただければ幸いです。
画像は上げるタイミングを見失っていた宣伝絵のラフです
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小走りで駆け寄ってきて仕事終わりを労ってくれる優しさが嬉しい。同じように息子も歩いてきて控えめな笑みで迎えてくれた。
その度になんて幸せなのだろうと胸が震えるのだ。こんな幸福に出会える日が来るなんて思いもしなかった。
父が死んだ時、赤紙が届いた時、戦場で死ねと言われた時、帰ってきた母に縋りつかれた時。
誰も彼もが信頼できないから踏み潰されない力が欲しかった。
なのに今はこの暮らしが続くことだけが願いだ。
「ただいま」
こうして、この2人に少しでも快い暮らしを与えることが幸福だと知る。
小走りで駆け寄ってきて仕事終わりを労ってくれる優しさが嬉しい。同じように息子も歩いてきて控えめな笑みで迎えてくれた。
その度になんて幸せなのだろうと胸が震えるのだ。こんな幸福に出会える日が来るなんて思いもしなかった。
父が死んだ時、赤紙が届いた時、戦場で死ねと言われた時、帰ってきた母に縋りつかれた時。
誰も彼もが信頼できないから踏み潰されない力が欲しかった。
なのに今はこの暮らしが続くことだけが願いだ。
「ただいま」
こうして、この2人に少しでも快い暮らしを与えることが幸福だと知る。
どうしたのか、と問いかけると養父のことを考えているそうだ。
養父は自分自身を大切にするという概念がすっ飛んでいる。今は養う家族がいるから健康でいなくては、という意識があるが彼1人になったらどうなるだろう。
可能な限りそばにいたいと思うが、自身の成長が人より遅いことは分かっている。急に氷を投げ込まれたように身体が冷えた。そんなに離別は近いのだろうか。
「幸せになって欲しいんじゃ」
父がそう言って悩んでいる。
養父がいる暮らしが、この日常が幸せなのに?
それが人の理ではないと分かっているから苦しかった。
どうしたのか、と問いかけると養父のことを考えているそうだ。
養父は自分自身を大切にするという概念がすっ飛んでいる。今は養う家族がいるから健康でいなくては、という意識があるが彼1人になったらどうなるだろう。
可能な限りそばにいたいと思うが、自身の成長が人より遅いことは分かっている。急に氷を投げ込まれたように身体が冷えた。そんなに離別は近いのだろうか。
「幸せになって欲しいんじゃ」
父がそう言って悩んでいる。
養父がいる暮らしが、この日常が幸せなのに?
それが人の理ではないと分かっているから苦しかった。
理不尽と非道を許さぬ男だ、子どもが間違ったことをすれば迷うことなく怒り、その後諭すことのできる。こんな男がなぜ『愛』に怯えるほど壊れる必要があったかと考え、そのたびに人間は嫌いだと知る。
苛烈な経験が男を壊し、欠けさせた。それでも奪われなかった男の善良さはこうして己を救い、息子の命を繋いだ。
この男だけが特別だ、人間だが、人間だからこそ、眩しい。
いつかの喪失が恐ろしいのに、手放せないままだ。
理不尽と非道を許さぬ男だ、子どもが間違ったことをすれば迷うことなく怒り、その後諭すことのできる。こんな男がなぜ『愛』に怯えるほど壊れる必要があったかと考え、そのたびに人間は嫌いだと知る。
苛烈な経験が男を壊し、欠けさせた。それでも奪われなかった男の善良さはこうして己を救い、息子の命を繋いだ。
この男だけが特別だ、人間だが、人間だからこそ、眩しい。
いつかの喪失が恐ろしいのに、手放せないままだ。
これがやりたかったー!
緑も割と似合ってたけど、やっぱ青系が水さんかなーと思いました。
これがやりたかったー!
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「いいこ、いいこだなぁ…可愛いなぁ」
蕩けるような甘やかさで親友は息子を甘やかす。そんなにしたら甘えたの子どもに育つのではと心配になるくらいだ。
けれど危ないことや禁止されていることを実行してしまうとそれはそれは説教が始まる。怖くて泣く息子にそれだけみんなに危険なことだと教え続ける。今度は怯えて萎縮してしまうと不安になった。
「俺は、この家がこの子の安心できる場所であってほしい」
眠った息子を布団に横たえ、掛け布団を乗せてやりながら友は言う。
「自分は愛されていると確信して欲しい。そして、大切にされていると知って欲しいんだ」
なんと甘い男だ
「いいこ、いいこだなぁ…可愛いなぁ」
蕩けるような甘やかさで親友は息子を甘やかす。そんなにしたら甘えたの子どもに育つのではと心配になるくらいだ。
けれど危ないことや禁止されていることを実行してしまうとそれはそれは説教が始まる。怖くて泣く息子にそれだけみんなに危険なことだと教え続ける。今度は怯えて萎縮してしまうと不安になった。
「俺は、この家がこの子の安心できる場所であってほしい」
眠った息子を布団に横たえ、掛け布団を乗せてやりながら友は言う。
「自分は愛されていると確信して欲しい。そして、大切にされていると知って欲しいんだ」
なんと甘い男だ
お話も書けたし、ドールの可愛さも気づいたし、公式の福利厚生に絡め取られてるし、本当に楽しかったです。
来年も楽しいと思うし、楽しんでいると思います。
地獄の続き書きたいなー、とか書きたいネタはあるので、服作ったりする合間にやりたいです。
今年一年ありがとうございました!
お話も書けたし、ドールの可愛さも気づいたし、公式の福利厚生に絡め取られてるし、本当に楽しかったです。
来年も楽しいと思うし、楽しんでいると思います。
地獄の続き書きたいなー、とか書きたいネタはあるので、服作ったりする合間にやりたいです。
今年一年ありがとうございました!
息子と父と二人がかりで背中に纏わりつく怪異をはじく。当の本人は自分の安全にはとことん無関心であるためこうもつけ入りやすい。
そんなだから、こんな親子に憑りつかれてしまうのだ。
男の無頓着さはそのまま親子からの執着へとなり替わる。
こんな暮らしだ、真っ当な人の暮らしとは程遠い。
だというのに男は美しく笑っていうのだ。「幸せだ」と。
息子と父と二人がかりで背中に纏わりつく怪異をはじく。当の本人は自分の安全にはとことん無関心であるためこうもつけ入りやすい。
そんなだから、こんな親子に憑りつかれてしまうのだ。
男の無頓着さはそのまま親子からの執着へとなり替わる。
こんな暮らしだ、真っ当な人の暮らしとは程遠い。
だというのに男は美しく笑っていうのだ。「幸せだ」と。