寝煙草の火で老婆が焼け死ぬ臭いで目覚める夜更け、
庭から現れどこまでも付き纏う腐った赤ん坊の幽霊、
愛するロック・スターの屍肉を貪る少女たち、死んだはずの虚ろな子供が大量に溢れ返る街……表題作含む12編収録。
どれも不気味さと不穏さが漂う絶品ゴジカルホラーで楽しめました。中でも一番好きなのは人の心臓の音にエクスタシーを感じる女性の話「どこにあるの、心臓」。健康な心音から複雑な病気を患った心音までひたすら聞いて快感に耽る様子は奇妙かつ耽美ですらある。
彼女は心臓病を患う男に様々な薬を与えて様々な心臓の音を聞こうとする。→
寝煙草の火で老婆が焼け死ぬ臭いで目覚める夜更け、
庭から現れどこまでも付き纏う腐った赤ん坊の幽霊、
愛するロック・スターの屍肉を貪る少女たち、死んだはずの虚ろな子供が大量に溢れ返る街……表題作含む12編収録。
どれも不気味さと不穏さが漂う絶品ゴジカルホラーで楽しめました。中でも一番好きなのは人の心臓の音にエクスタシーを感じる女性の話「どこにあるの、心臓」。健康な心音から複雑な病気を患った心音までひたすら聞いて快感に耽る様子は奇妙かつ耽美ですらある。
彼女は心臓病を患う男に様々な薬を与えて様々な心臓の音を聞こうとする。→
表題作他「サーヒブの戦争」「塹壕のマドンナ」「アラーの目」「園丁」収録。
淡々とした文章で物語は進んでいくが、一帯何が起こっているのか一読ではやや理解しにくく、読むのに苦戦しました。キプリングの作風や文体が自分には合わなかったのかも。
一番分かりやすい物語だったのは表題作の「祈願の御堂」。他人の不幸を自分の身に引き受けることで相手を救うという奇跡がテーマになっているものの、それは単なる思い込みとも取れて、そう考えるとやや不気味な感じがする。
表題作他「サーヒブの戦争」「塹壕のマドンナ」「アラーの目」「園丁」収録。
淡々とした文章で物語は進んでいくが、一帯何が起こっているのか一読ではやや理解しにくく、読むのに苦戦しました。キプリングの作風や文体が自分には合わなかったのかも。
一番分かりやすい物語だったのは表題作の「祈願の御堂」。他人の不幸を自分の身に引き受けることで相手を救うという奇跡がテーマになっているものの、それは単なる思い込みとも取れて、そう考えるとやや不気味な感じがする。
表題作他「プラットナー先生綺譚」「亡きエルヴシャム氏の物語」「水晶の卵」「魔法屋」収録。
ウェルズはSF作家として有名だが、ここに収められた作品はどれも幻想文学的な趣きがあり、とても楽しめた。
表題作の「白壁の緑の扉」は緑の扉の向こうにあった美しい庭で幼い頃遊んだ記憶が忘れない男の物語で、人生の重大な場面で何度かその扉を見つけるが、最後に見つけて開いてみたら……という内容で、とても面白かった。また爆発によって異世界に飛ばされて戻ってきた男の話「プラットナー先生綺譚」も良かった。
表題作他「プラットナー先生綺譚」「亡きエルヴシャム氏の物語」「水晶の卵」「魔法屋」収録。
ウェルズはSF作家として有名だが、ここに収められた作品はどれも幻想文学的な趣きがあり、とても楽しめた。
表題作の「白壁の緑の扉」は緑の扉の向こうにあった美しい庭で幼い頃遊んだ記憶が忘れない男の物語で、人生の重大な場面で何度かその扉を見つけるが、最後に見つけて開いてみたら……という内容で、とても面白かった。また爆発によって異世界に飛ばされて戻ってきた男の話「プラットナー先生綺譚」も良かった。
表題作他「黒い石印のはなし」「白い粉薬のはなし」を収録。どの話も「人ならざる者」「異界を覗き見る」という内容で幽霊譚とは別の怖さや不気味さがある。
出てくる小道具が古代魔術やケルト神話のような趣きがあり、それはマッケンがウェールズ人であるのと関係しているのだろう。
お気に入りは「白い粉薬のはなし」。ある薬を飲むことで人ならざる者になってしまった青年の話で、彼が飲んでいた薬は実は……という真相が面白い。
全編にわたって所々に科学的な知見が織り込まれているのも時代の雰囲気が伝わってきて楽しい。
表題作他「黒い石印のはなし」「白い粉薬のはなし」を収録。どの話も「人ならざる者」「異界を覗き見る」という内容で幽霊譚とは別の怖さや不気味さがある。
出てくる小道具が古代魔術やケルト神話のような趣きがあり、それはマッケンがウェールズ人であるのと関係しているのだろう。
お気に入りは「白い粉薬のはなし」。ある薬を飲むことで人ならざる者になってしまった青年の話で、彼が飲んでいた薬は実は……という真相が面白い。
全編にわたって所々に科学的な知見が織り込まれているのも時代の雰囲気が伝わってきて楽しい。
コルタサルの初期短編集。荒削りだったり、他の作家に強く影響を受けていたりと「コルタサル」が「コルタサル」になる前はどんな作風だったのかを窺い知れるようで興味深い。
どの作品も現実と夢、幻想が入り交じり、そしてまた突然現実に戻ったりする様はこれぞマジックリアリズムといった感じがあり、どの作品も楽しめた。中でも好きなのは「吸血鬼の息子」「大きくなる手」「魔女」。
コルタサルの初期短編集。荒削りだったり、他の作家に強く影響を受けていたりと「コルタサル」が「コルタサル」になる前はどんな作風だったのかを窺い知れるようで興味深い。
どの作品も現実と夢、幻想が入り交じり、そしてまた突然現実に戻ったりする様はこれぞマジックリアリズムといった感じがあり、どの作品も楽しめた。中でも好きなのは「吸血鬼の息子」「大きくなる手」「魔女」。
全編マヤ語で書かれたマヤ文学。
どちらの話も虐げられている女性が登場し、テーマとなっている。「夜の舞」は昼から夜へ、現実から夢へと往復し、幻想的な雰囲気のある作品。夜に現れる「小夜(シュ・アーカブ)」は主人公フロールの母であり、フロールを導いていく様子は優しく、文章表現としても美しい。ラストは所謂ハッピーエンドで読後も爽やか。
一方、「解毒草」は貧困に喘ぐ老婆やいかれた女とされる娼婦達が主人公で、話としてはこちらの方が好み。マヤ語の表現が多く使われているのでとても新鮮に感じられた。→
全編マヤ語で書かれたマヤ文学。
どちらの話も虐げられている女性が登場し、テーマとなっている。「夜の舞」は昼から夜へ、現実から夢へと往復し、幻想的な雰囲気のある作品。夜に現れる「小夜(シュ・アーカブ)」は主人公フロールの母であり、フロールを導いていく様子は優しく、文章表現としても美しい。ラストは所謂ハッピーエンドで読後も爽やか。
一方、「解毒草」は貧困に喘ぐ老婆やいかれた女とされる娼婦達が主人公で、話としてはこちらの方が好み。マヤ語の表現が多く使われているのでとても新鮮に感じられた。→
夜の舞・解毒草/イサアク・エサウ・カリージョ・カン、アナ・パトリシア・マルティネス・フチン
メキシカン・ゴシック/シルヴィア・モレノ=ガルシア
寝煙草の危険/マリアーナ・エンリケス
八面体/コルタサル
対岸/コルタサル
魅惑の集団自殺/アルト・バーシリンナ
白壁の緑の扉/H・G・ウェルズ
薄気味わるい話/L・ブロウ
輝く金字塔/A・マッケン
祈願の御堂/R・キプリング
夜の舞・解毒草/イサアク・エサウ・カリージョ・カン、アナ・パトリシア・マルティネス・フチン
メキシカン・ゴシック/シルヴィア・モレノ=ガルシア
寝煙草の危険/マリアーナ・エンリケス
八面体/コルタサル
対岸/コルタサル
魅惑の集団自殺/アルト・バーシリンナ
白壁の緑の扉/H・G・ウェルズ
薄気味わるい話/L・ブロウ
輝く金字塔/A・マッケン
祈願の御堂/R・キプリング
鈴木いづみプレミアム・コレクション/鈴木いづみ
鈴木いづみプレミアム・コレクション/鈴木いづみ
あの名作の主人公が名(迷)探偵に!?
五つの殺人事件に巻き込まれたメロス。果たして彼は日没までに王の元へたどり着くのか――。
軽妙な文章は面白く、ところどころ太宰治の文体にも似ていて楽しめました。特に第四章の事件は太宰治ネタが盛り込まれていて太宰ファンとしても大いに楽しく読みました。
最終章の犯人当て(トリックの手口)は色々考えてみたものの、分かりませんでした。久し振りに推理ものを読みましたが、最後まで楽しく読みました。
あの名作の主人公が名(迷)探偵に!?
五つの殺人事件に巻き込まれたメロス。果たして彼は日没までに王の元へたどり着くのか――。
軽妙な文章は面白く、ところどころ太宰治の文体にも似ていて楽しめました。特に第四章の事件は太宰治ネタが盛り込まれていて太宰ファンとしても大いに楽しく読みました。
最終章の犯人当て(トリックの手口)は色々考えてみたものの、分かりませんでした。久し振りに推理ものを読みましたが、最後まで楽しく読みました。
フランスの片田舎へ旅行に来たイギリス人の話。不思議な魅力――魔力に取り憑かれ、早くこの街から立ち去りと思ってもなぜか留まってしまう。美しい令嬢との出会いがますます彼を足止めにしてしまうが、ついには街の人々や彼女の正体を知ってしまう。
魔女、魔女狩り、サバト、黒ミサと散りばめられた暗黒ワードと設定は大変好みでした。そしてブラックウッドはやはり「目に見えない何か」を描くのがとても上手い。予感、予兆、雰囲気はホラーや怪奇譚には欠かせない要素。ひたひたと迫る不穏な空気は絶品。楽しく読みました。
フランスの片田舎へ旅行に来たイギリス人の話。不思議な魅力――魔力に取り憑かれ、早くこの街から立ち去りと思ってもなぜか留まってしまう。美しい令嬢との出会いがますます彼を足止めにしてしまうが、ついには街の人々や彼女の正体を知ってしまう。
魔女、魔女狩り、サバト、黒ミサと散りばめられた暗黒ワードと設定は大変好みでした。そしてブラックウッドはやはり「目に見えない何か」を描くのがとても上手い。予感、予兆、雰囲気はホラーや怪奇譚には欠かせない要素。ひたひたと迫る不穏な空気は絶品。楽しく読みました。
ひとつの絵画から始まる連作短編集。
この物語で紡がれるのは瞳を開けたまま見る夢だ。こうありたいと願う夢、こうだったら良いのにと望む夢。その夢と眼前にある現実とのギャップに苦しんだり、落胆したり、人生はままならない。だけれども思い描く夢は実現への「エスキース」だ。「エスキース」は少しずつ形を変えてその人の前に立ち現れる。何度も、何枚も、描かれ、重ねられ、彩られ、時には白紙に戻って。誰もがその胸の裡に秘めている人生の「エスキース」。
→
ひとつの絵画から始まる連作短編集。
この物語で紡がれるのは瞳を開けたまま見る夢だ。こうありたいと願う夢、こうだったら良いのにと望む夢。その夢と眼前にある現実とのギャップに苦しんだり、落胆したり、人生はままならない。だけれども思い描く夢は実現への「エスキース」だ。「エスキース」は少しずつ形を変えてその人の前に立ち現れる。何度も、何枚も、描かれ、重ねられ、彩られ、時には白紙に戻って。誰もがその胸の裡に秘めている人生の「エスキース」。
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チクワの穴を通して人の姿を見ると、その人物の死に様が見える――。巷に溢れるチクワの秘めたる怖ろしい力に気付いたトラック運転手の男は、気づいてしまった事実の重さに苛まれ、やがて身を滅ぼしていく。
ネタだと思ったら結構真面目なホラーミステリー。終盤に明かされる真相が二転三転していく様はドキドキしながら読んだ。
チクワの穴を塞げけけけけけけけ。
チクワの穴を通して人の姿を見ると、その人物の死に様が見える――。巷に溢れるチクワの秘めたる怖ろしい力に気付いたトラック運転手の男は、気づいてしまった事実の重さに苛まれ、やがて身を滅ぼしていく。
ネタだと思ったら結構真面目なホラーミステリー。終盤に明かされる真相が二転三転していく様はドキドキしながら読んだ。
チクワの穴を塞げけけけけけけけ。
読書垢の相互さんからのおすすめ。電子書籍にて読了。
主人公・栗原花穂の身の回りで出た自殺者20人とのエピソードを語っていく物語。
淡々と、だけれどどこか砕けた文章は20歳の女子大生そのもので読んでいると彼女の肉声がそのまま頭の中に聞こえてくるよう。彼女の身内や友人、顔見知り、仕事で関わりがあった人達のエピソードの中で語られる花穂のこれまでの人生はなかなかにハードだなという印象。そしてそのままならさは自身にも覚えがあるもので、あの頃は一体どうやって生きてきたんだろうかと少し考えてしまった。
初めて読んだ作家さんだったけれどとても面白く読んだ。他の作品も読んでみたい。
読書垢の相互さんからのおすすめ。電子書籍にて読了。
主人公・栗原花穂の身の回りで出た自殺者20人とのエピソードを語っていく物語。
淡々と、だけれどどこか砕けた文章は20歳の女子大生そのもので読んでいると彼女の肉声がそのまま頭の中に聞こえてくるよう。彼女の身内や友人、顔見知り、仕事で関わりがあった人達のエピソードの中で語られる花穂のこれまでの人生はなかなかにハードだなという印象。そしてそのままならさは自身にも覚えがあるもので、あの頃は一体どうやって生きてきたんだろうかと少し考えてしまった。
初めて読んだ作家さんだったけれどとても面白く読んだ。他の作品も読んでみたい。
ヘラジカを追ってカナダの原始林に足を踏み入れた一行を待ち受ける未知の恐怖体験。はたして伝説の獣、ウェンディゴとは一体なんなのか。
相変わらず雄大な自然描写が素晴らしい。森林のひんやりとした温度や匂いまで感じるような文章は流石。
ウェンディゴの正体や描写は仄めかされるだけではっきりと具体的には語られていないもののそれが却って想像力を刺激して恐ろしいものに仕立てている。ウェンディゴに連れ去られてしまったかと思われたディファーゴが戻ってきたシーンは安堵したのも束の間。廃人のようになってしまった彼に一体何があったのか判らないところも恐怖心を掻き立てられる
ヘラジカを追ってカナダの原始林に足を踏み入れた一行を待ち受ける未知の恐怖体験。はたして伝説の獣、ウェンディゴとは一体なんなのか。
相変わらず雄大な自然描写が素晴らしい。森林のひんやりとした温度や匂いまで感じるような文章は流石。
ウェンディゴの正体や描写は仄めかされるだけではっきりと具体的には語られていないもののそれが却って想像力を刺激して恐ろしいものに仕立てている。ウェンディゴに連れ去られてしまったかと思われたディファーゴが戻ってきたシーンは安堵したのも束の間。廃人のようになってしまった彼に一体何があったのか判らないところも恐怖心を掻き立てられる
電子書籍で読了。
ドナウ川をカヌーで川下りしている2人組の男が体験した恐怖譚。
ドナウ川の雄大で美しい描写から始まり、楽しい冒険旅行が一変する夜の描写は凄く怖い。見えない何かが確実にいる、という息苦しいまでの緊張感と恐ろしさの描写が秀逸。彼らが体を休めるために選んだのが逃げ場のない砂地の中洲という設定も見事で短編小説であるのに読み終わったあとは長編小説を読んだかのような読後感。どうにか保っていた理性が決壊し、恐怖感に打ちのめされていく心理描写も素晴らしい。本当に面白く読んだけど、自分なら絶対にこんな体験したくないと思ってしまった。
電子書籍で読了。
ドナウ川をカヌーで川下りしている2人組の男が体験した恐怖譚。
ドナウ川の雄大で美しい描写から始まり、楽しい冒険旅行が一変する夜の描写は凄く怖い。見えない何かが確実にいる、という息苦しいまでの緊張感と恐ろしさの描写が秀逸。彼らが体を休めるために選んだのが逃げ場のない砂地の中洲という設定も見事で短編小説であるのに読み終わったあとは長編小説を読んだかのような読後感。どうにか保っていた理性が決壊し、恐怖感に打ちのめされていく心理描写も素晴らしい。本当に面白く読んだけど、自分なら絶対にこんな体験したくないと思ってしまった。
アメリカ国内の死因をまとめた「アメリカ人の死因カタログ」。蛇の毒で鰐に食い殺されて、アイクリームを食べて、遊園地のジェットコースターから落下して、様々な病気や犯罪に巻き込まれてというものから自己去勢や自慰行為でなんていう下ネタまで幅広く網羅。死にまつわる話は読んでいて気が滅入ってくるけど本作はユーモアたっぷりで最後まで楽しく読めた。読みながら「こんな死に方したくないな」と思った。本書に「たまごっち」の項目があったのはちょっと笑ってしまった(たまごっちを運転中に操作して事故を起こして死亡)。→
アメリカ国内の死因をまとめた「アメリカ人の死因カタログ」。蛇の毒で鰐に食い殺されて、アイクリームを食べて、遊園地のジェットコースターから落下して、様々な病気や犯罪に巻き込まれてというものから自己去勢や自慰行為でなんていう下ネタまで幅広く網羅。死にまつわる話は読んでいて気が滅入ってくるけど本作はユーモアたっぷりで最後まで楽しく読めた。読みながら「こんな死に方したくないな」と思った。本書に「たまごっち」の項目があったのはちょっと笑ってしまった(たまごっちを運転中に操作して事故を起こして死亡)。→