特に、誰にでも分かるように言語化しようとするほど、必然的に、複雑な物事を単純化することにもなってくるのではないか。例えば、比喩なんかは、場合によっては、かなりのミスリードにもなりかねない。要するに、言語化とは、人を「 わかった気にさせる 」ためのものであって、少なくともその危険性を自覚していないのでは？と感じる時、人は、言語化というものに違和感を抱くのかも。

しかし、その上で、洞察力を発揮できるなら、その言語化の仕方に応じて、言及されていない部分を察することも可能なわけで、そこまでひっくるめて初めて、情報伝達と言えるのかもしれない。言語化しようとして初めて、言葉にならないものを指し示せる。

これは、読み手の洞察力に強く依存するのですが、逆に、多少、読みずらい文章の方が、多くの示唆を得られる、という面もあるかもしれません。場合によっては、その文章自体の理解を超えて、自分なりにも考えを深めることが、むしろ促進されるのではないか。

そもそも、分かりやすい文章というのは、大切なニュアンスを削り落としたものであることも多く、伝わりやすいメッセージには、分かった気になりやすい、という弊害があります。まぁ、それでもちゃんと批判的に思考できるのであれば、特に問題はないとも言えますが、自然とできる人ばかりではなさそうですし、良くも悪くも、読むものに影響されてしまうという点には、注意が必要ですね。