なにを問うても返ってくるのは歯切れの悪い答えばかりだ。加えて、伏せたままの視線が気まずそうに右往左往するものだから、こちらとしてもいい加減腹が立ってくる。苛立ちを隠すことなく大きく息を吐き出せば、目の前のその肩はいっそ可哀想なほどにびくりと震えた。
「わかりました。なつきさんがその気なら、もういいです」
「っあ、ちがっ」
「は? いったい何が違うんですか? あんたが僕を露骨に避けているのは事実でしょう」
「それはそう、だけど。違うんだ、おっとー。お前は悪くなくて、ただ単に俺が……駄目な、だけで……っ、ごめん……」
「ごめん、って……」
「しばらく……お前とは距離、置きたい」
なにを問うても返ってくるのは歯切れの悪い答えばかりだ。加えて、伏せたままの視線が気まずそうに右往左往するものだから、こちらとしてもいい加減腹が立ってくる。苛立ちを隠すことなく大きく息を吐き出せば、目の前のその肩はいっそ可哀想なほどにびくりと震えた。
「わかりました。なつきさんがその気なら、もういいです」
「っあ、ちがっ」
「は? いったい何が違うんですか? あんたが僕を露骨に避けているのは事実でしょう」
「それはそう、だけど。違うんだ、おっとー。お前は悪くなくて、ただ単に俺が……駄目な、だけで……っ、ごめん……」
「ごめん、って……」
「しばらく……お前とは距離、置きたい」
なつきさんのあまりに露骨すぎるその避け方は、こちらのら身に覚えがないだけにかなり堪えた。だから、せめて何があったのか問いただして、僕が原因となっているなら謝って元の関係に戻りたいと──この時までは、間違いなくそう思っていた。
「なんだよ、いきなり……」
「いきなり、はこっちの台詞ですよ。どうして急に僕を避け始めたんですか。なにか理由があるんでしょう」
「ねぇよ。そんなもん」
「嘘つき」
「本当だって」
「ならどうしてさっきの授業、わざわざ僕の一つ後ろの席に座ったんですか? いつもは隣に座っていたでしょう」
なつきさんのあまりに露骨すぎるその避け方は、こちらのら身に覚えがないだけにかなり堪えた。だから、せめて何があったのか問いただして、僕が原因となっているなら謝って元の関係に戻りたいと──この時までは、間違いなくそう思っていた。
「なんだよ、いきなり……」
「いきなり、はこっちの台詞ですよ。どうして急に僕を避け始めたんですか。なにか理由があるんでしょう」
「ねぇよ。そんなもん」
「嘘つき」
「本当だって」
「ならどうしてさっきの授業、わざわざ僕の一つ後ろの席に座ったんですか? いつもは隣に座っていたでしょう」
けれど、いつかなつきさんにこの溜まりに溜まった手紙を読んでいただけるその日まで、僕はなつきさんがいなくなったこの世界でもう少しだけ生きていこうと思います。
えみりあ様や、屋敷の皆様の近況も知りたいでしょうし、また近々手紙を書きますね。それでは、また。
おっとー・すーうぇん
『拝啓 僕のなかのなつきさんへ』
けれど、いつかなつきさんにこの溜まりに溜まった手紙を読んでいただけるその日まで、僕はなつきさんがいなくなったこの世界でもう少しだけ生きていこうと思います。
えみりあ様や、屋敷の皆様の近況も知りたいでしょうし、また近々手紙を書きますね。それでは、また。
おっとー・すーうぇん
『拝啓 僕のなかのなつきさんへ』
なつきすばる様
お久しぶりです。前回の手紙から少し日が空いてしまいましたことをどうかお許しください。
先日、ようやくなつきさんの身体の所在が決まりました。骨が折れそうなほどの議論の末、なつきさんの身体はもう少しだけ屋敷の地下に匿うこととなり、何れはきちんとした柩に入っていただき我々で埋葬するということになりました。これで少しは安心できたでしょうか。
なつきさん、貴方がいなくなったこの屋敷はなんだか時折ひどく広く感じます。未だに何処かから貴方の声が風に乗って聞こえやしないか、ふと耳を澄ませてしまいます。
それほどまでに、なつきさんは僕にとって大きな存在でした。訂正。今も変わらず、です。
なつきすばる様
お久しぶりです。前回の手紙から少し日が空いてしまいましたことをどうかお許しください。
先日、ようやくなつきさんの身体の所在が決まりました。骨が折れそうなほどの議論の末、なつきさんの身体はもう少しだけ屋敷の地下に匿うこととなり、何れはきちんとした柩に入っていただき我々で埋葬するということになりました。これで少しは安心できたでしょうか。
なつきさん、貴方がいなくなったこの屋敷はなんだか時折ひどく広く感じます。未だに何処かから貴方の声が風に乗って聞こえやしないか、ふと耳を澄ませてしまいます。
それほどまでに、なつきさんは僕にとって大きな存在でした。訂正。今も変わらず、です。