すると、亀は涙を流し「あなたの様に優しい人は初めてです」と言って竜宮城へ招待してくれました。
竜宮城で楽しい時を過ごした浦島。やがて帰る日になり、門へと行くと、助けた亀とは別の亀が待っています。
「あの亀はどうしましたか?こんな良い想いをさせてくれた礼を言いたいのですが」浦島が訊ねると、乙姫は「いやだわ。先日、美味しい美味しいと召し上がっていたではありませんか」と笑いました。
え? ……じゃあ、あのスープは。
真相に気がついた浦島。
あまりのショックに髪は白く染まり、年老いた廃人の様になってしまった、という事です。
すると、亀は涙を流し「あなたの様に優しい人は初めてです」と言って竜宮城へ招待してくれました。
竜宮城で楽しい時を過ごした浦島。やがて帰る日になり、門へと行くと、助けた亀とは別の亀が待っています。
「あの亀はどうしましたか?こんな良い想いをさせてくれた礼を言いたいのですが」浦島が訊ねると、乙姫は「いやだわ。先日、美味しい美味しいと召し上がっていたではありませんか」と笑いました。
え? ……じゃあ、あのスープは。
真相に気がついた浦島。
あまりのショックに髪は白く染まり、年老いた廃人の様になってしまった、という事です。
出された丼の中に何か細いものがある。
「ちょっと、髪の毛入ってるよ」
文句を言うと、店の親父は満面の笑みを浮かべて
「へい。今日はイキのいい女子高生の髪が手に入ったんで。イイ出汁出てるでしょう?」と満面の笑みで答えた。
箸で持ち上げてみる。麺の下に大量の髪の毛が沈んでいるのが見えた。
呆然とする俺。気付けば店の他の客たちが店主の親父と同じ笑みを浮かべて俺を見ていた。
「早く、食べなよ」
「JKはいいぞう」
下卑た男たちの声は、ラーメンのラードよりも油っぽくて吐き気がする。
ああ、これは天罰なのか。
俺の脳裏に、さっき別れたばかりの家出少女のあの醒めた目が過ぎった。
出された丼の中に何か細いものがある。
「ちょっと、髪の毛入ってるよ」
文句を言うと、店の親父は満面の笑みを浮かべて
「へい。今日はイキのいい女子高生の髪が手に入ったんで。イイ出汁出てるでしょう?」と満面の笑みで答えた。
箸で持ち上げてみる。麺の下に大量の髪の毛が沈んでいるのが見えた。
呆然とする俺。気付けば店の他の客たちが店主の親父と同じ笑みを浮かべて俺を見ていた。
「早く、食べなよ」
「JKはいいぞう」
下卑た男たちの声は、ラーメンのラードよりも油っぽくて吐き気がする。
ああ、これは天罰なのか。
俺の脳裏に、さっき別れたばかりの家出少女のあの醒めた目が過ぎった。
男は自身の欲求よりも他者へ感染させるリスクを重んじたのだ。
だが、世間はそんな男を嘲笑うのみだった。
やがて臨終を迎えた男が、報われない人生に静かに涙したその時、どこからか祝福の音が聞こえ、男の目の前に神からのメッセージが現れた。
そこには、次のように書かれていた。
【実績解除:コロナに罹患せず人生をクリア】
男は自身の欲求よりも他者へ感染させるリスクを重んじたのだ。
だが、世間はそんな男を嘲笑うのみだった。
やがて臨終を迎えた男が、報われない人生に静かに涙したその時、どこからか祝福の音が聞こえ、男の目の前に神からのメッセージが現れた。
そこには、次のように書かれていた。
【実績解除:コロナに罹患せず人生をクリア】
錯覚ではない。確かに家に妻が2人居て、普通に生活しているのだ。
不思議な事に、彼女たち自身はお互いの姿が見えていないらしい。
昔なら、狐狸に化かされたと言うところだろうか。
とは言え、これが狐狸の仕業としても、長年連れ添った妻だ。すぐに本物と偽物の見分けがつくと、たかを括っていたのだが、情けない事に半年経った今も全く見分けがつかない。
やはり私は化かされていたようだ。
随分前から。
それも、自分自身に。
錯覚ではない。確かに家に妻が2人居て、普通に生活しているのだ。
不思議な事に、彼女たち自身はお互いの姿が見えていないらしい。
昔なら、狐狸に化かされたと言うところだろうか。
とは言え、これが狐狸の仕業としても、長年連れ添った妻だ。すぐに本物と偽物の見分けがつくと、たかを括っていたのだが、情けない事に半年経った今も全く見分けがつかない。
やはり私は化かされていたようだ。
随分前から。
それも、自分自身に。
「まさか、そんなお伽話じゃあるまいし。証拠もないんだろう?」
「証拠ならあるさ」
「なんだって?」
「この大地だよ。日本列島の地図をみたまえ。巨人が横倒しになった様に見えないかね。我々が暮らしているのは、彼の体の上なのだ」
「まさか、そんなお伽話じゃあるまいし。証拠もないんだろう?」
「証拠ならあるさ」
「なんだって?」
「この大地だよ。日本列島の地図をみたまえ。巨人が横倒しになった様に見えないかね。我々が暮らしているのは、彼の体の上なのだ」
いつも一人で、夜の間を旅しています。
その象と私は深夜の公園で出会いました。
象は、ひざを抱える私にキリマンジャロの山頂で見た零れ落ちそうな星空の景色や、ジャングルの奥にある星空が映る湖で喉を潤した時の事を話してくれました。
「羨ましいな」
私が思わず呟くと、象は「そうでもないさ」と、鼻先で私の住む街を示しました。
象と一緒に見る街は、たくさんの電灯で明るく輝いて見えました。
「ご覧。あの美しい星空を。あの中で生きられるなんて、何て素敵なんだろう。あの美しさを知ったならば、美しく生きられない人なんていないだろうと、僕には思えるんだよ」
いつも一人で、夜の間を旅しています。
その象と私は深夜の公園で出会いました。
象は、ひざを抱える私にキリマンジャロの山頂で見た零れ落ちそうな星空の景色や、ジャングルの奥にある星空が映る湖で喉を潤した時の事を話してくれました。
「羨ましいな」
私が思わず呟くと、象は「そうでもないさ」と、鼻先で私の住む街を示しました。
象と一緒に見る街は、たくさんの電灯で明るく輝いて見えました。
「ご覧。あの美しい星空を。あの中で生きられるなんて、何て素敵なんだろう。あの美しさを知ったならば、美しく生きられない人なんていないだろうと、僕には思えるんだよ」
秋田のナマハゲに似た行事で、異形の扮装をした町民の代表が家々を巡り、厄を払うというものだ。
廃止の理由は『今の時代に合わないため』と言っているが、要は若い世代からの苦情が多いらしい。
まあ、元より高齢化が問題視されていたし、今の時勢を鑑みれば仕方のない流れなのかもしれない。
ところが、話してくれた知人によれば、問題の核心はそこでないらしい。
「代わりにな、毎年カウンセラーが訪問する様になったんだよ。それで、頼んでもいないのに家庭の問題をほじくり返すものだから、どの家もボロボロさ。やっぱり、家内安全は神様に祈るくらいがいいんだよ」と彼は嘆いた。
秋田のナマハゲに似た行事で、異形の扮装をした町民の代表が家々を巡り、厄を払うというものだ。
廃止の理由は『今の時代に合わないため』と言っているが、要は若い世代からの苦情が多いらしい。
まあ、元より高齢化が問題視されていたし、今の時勢を鑑みれば仕方のない流れなのかもしれない。
ところが、話してくれた知人によれば、問題の核心はそこでないらしい。
「代わりにな、毎年カウンセラーが訪問する様になったんだよ。それで、頼んでもいないのに家庭の問題をほじくり返すものだから、どの家もボロボロさ。やっぱり、家内安全は神様に祈るくらいがいいんだよ」と彼は嘆いた。
「未練」
向かいのホームに小学生の頃の友達を見かけた。
もちろん、生きている人間じゃない。
だって、そいつは小学生3年生の時に死んでいるんだから。
それから、そいつは毎日俺の前に現れる様になった。
その度に距離が近づいている。
このままじゃマズイ、と焦り始めたある朝、そいつはついに俺の部屋に現れた。
「なんなんだよ!」
俺が怒鳴ると、そいつは
「約束」
といって手を伸ばす。
俺の手に硬いものが触れた。
見ると、それはおもちゃのミニカーだった。
「大人になったらあげるって約束だったから」
そう言って、そいつは消えた。
今日は、俺の20歳の誕生日だった。
「未練」
向かいのホームに小学生の頃の友達を見かけた。
もちろん、生きている人間じゃない。
だって、そいつは小学生3年生の時に死んでいるんだから。
それから、そいつは毎日俺の前に現れる様になった。
その度に距離が近づいている。
このままじゃマズイ、と焦り始めたある朝、そいつはついに俺の部屋に現れた。
「なんなんだよ!」
俺が怒鳴ると、そいつは
「約束」
といって手を伸ばす。
俺の手に硬いものが触れた。
見ると、それはおもちゃのミニカーだった。
「大人になったらあげるって約束だったから」
そう言って、そいつは消えた。
今日は、俺の20歳の誕生日だった。
「赤いまんま」
ある年の冬、山奥のとある村は狩りの獲物が取れずに困窮していた。
そんな中、村の小さな女の子が手毬唄に「赤いまんま食べた」と歌った事が問題となった。
村長は女の子の父親を呼び出し、
「貧しいお前の家に、そんな食べ物があるはずがない。さては、年貢の小豆を盗んだのであろう!」と迫った。
父親は最初は顔を赤くして否定したものの、厳しい追求に耐えかね、ついに「こんなもの、恥ずかしいけんど」と懐から取り出して見せたのは、ケチャップ飯のレシピであった。
それは、オカズに困った村人たちから好評をもって迎えられ、特に貧しい学生たちには、大変にありがたがられたと言う。
「赤いまんま」
ある年の冬、山奥のとある村は狩りの獲物が取れずに困窮していた。
そんな中、村の小さな女の子が手毬唄に「赤いまんま食べた」と歌った事が問題となった。
村長は女の子の父親を呼び出し、
「貧しいお前の家に、そんな食べ物があるはずがない。さては、年貢の小豆を盗んだのであろう!」と迫った。
父親は最初は顔を赤くして否定したものの、厳しい追求に耐えかね、ついに「こんなもの、恥ずかしいけんど」と懐から取り出して見せたのは、ケチャップ飯のレシピであった。
それは、オカズに困った村人たちから好評をもって迎えられ、特に貧しい学生たちには、大変にありがたがられたと言う。
「圧縮」
新製品の圧縮袋は、布団や衣類に限らずなんでも圧縮できるらしい。
早速、詰めて見ると、部屋の荷物が全て入った。
楽しいのでどんどんと詰めていくと、やがて家も車も僕の持っている何もかもが収まった。
だが、圧縮し過ぎたせいで、袋の中にブラックホールが出来てしまいそうだ。
仕方なく、僕も袋に入ってコントロールする事にする。
入ってみると、袋の中は快適だ。僕の中に世界の全てがある。
なんだ、こう言う風に収納すればよかったのか。
ちょっとだけ外に残してきた掃除機と袋が気掛かりだけど。
「圧縮」
新製品の圧縮袋は、布団や衣類に限らずなんでも圧縮できるらしい。
早速、詰めて見ると、部屋の荷物が全て入った。
楽しいのでどんどんと詰めていくと、やがて家も車も僕の持っている何もかもが収まった。
だが、圧縮し過ぎたせいで、袋の中にブラックホールが出来てしまいそうだ。
仕方なく、僕も袋に入ってコントロールする事にする。
入ってみると、袋の中は快適だ。僕の中に世界の全てがある。
なんだ、こう言う風に収納すればよかったのか。
ちょっとだけ外に残してきた掃除機と袋が気掛かりだけど。