今世(?)でも結ばれたららぶらぶになる丹穹だけど、勿論、ループ世界なので次のループにいくべく最期に向かっていくんだけど、そこはうっっっっすら記憶持ち列車メンバーがアレコレしてループ回避、ハッピーエンドだと読むほうは安心。ただし、ループ回避失敗からの再挑戦でも美味しい。再挑戦は記憶ハッキリ持ちか、途中でハッキリ思い出すとかする。

……っていうところから始まるループ世界丹穹とか、私が大喜びする。愛の重さは穹くんの最期を見送って、更にﾀﾞﾂﾘﾝ直後から穹くんのことをうっっっっすら覚えてた丹のほうが万倍重いはず。穹くんもうっっっっすら覚えてるけど器が作られるところからなので抱えてる時間が違う。

「袖で拭うな」慌てて拭おうとする手を止め、頬を包んだ両手で優しく拭ってやる。「何が哀しい」問えば、揺れる琥珀色が一層揺れて、微笑んだ。「分かんない。でも、きっと哀しくないんだ」夢の中の温もりと現実のそれが重なり、一つになる。

「俺、嬉しいんだ」

見つけた。誰かの声がした。

目が覚めた少年は夢のままの声で穹と名乗った。穹。穹。心の中で響きを繰り返し、平静を装って別行動をしようとした丹の袖を、つん。何かが引っ張った。振り向けば琥珀の瞳を丸くした穹。その目から、ぽろり、光が一粒。「え、あれ？」ぽろ、ぽろ、ぽろん、ぽろろ。止められない雫に戸惑う間にも、一粒、二粒。

へるたで、会った。眠る少年。灰色の髪。顔は覚えていないが、すぐに分かった。彼だ。見つけた。見つけた。見つけた。やっと、やっと、やっと見つけた。口から歓喜が溢れ出さなかったのは奇跡だった。手を伸ばし、触れた肌が温かい。それだけのことに何故か泣きたくなる。汚れてひび割れていた頬は、今はつるりと綺麗だ。ｼﾞﾝｺｳｺｷｭｳは半ば口実だった。呼吸を近付けて。「あ、起きた！」なのに阻止された。

いつか、いつか、もしも、ここを出ることがあったなら、彼を探しにいかなくては。そう思っていたある日、ﾗﾌを追放された。初めての外。心の片隅が高揚する。彼を探しにいこう。そこからは転々、転々。逃げながら、探しながら、転々。見覚えのある人に聞き覚えのある台詞で誘われ、どこか馴染みのある列車に乗り、知っている気がする仲間と会って、そして。

きっと、自分と彼は恋仲というものだったのかもしれない。あいしている、と震える己の吐息も聞いた気がする。思い出す度に痛む胸が寒さに拍車をかけて、指先が痛い。見つけてと言った彼はどこにいるのだろう。ふと思う。同時に沸き上がる、飛び出したい衝動。探しにいきたくても鎖に繋がれたままでは歩き回ることもままならない。

繰り返す夢の中、特に弱い声を聞く時に見る光景があった。見下ろす視界で、恐らくは己の腕だろう腕に抱かれた灰色の髪の彼が血と黄金の液体に濡れて細い息を吐く姿。逝くな、と言う自分に笑った彼が言うのだ。「たんこう…俺、また会いに行くから、見つけて」そうして、当たり前だ、と返した後に脱け殻になった彼をきつく抱き締めて夢が終わる。

何年もずっと檻の中。毎日、夢を見る。「たんこー！」ある時は明るい声。「たんこぉ～」ある時は情けない声。「たん、こ…っ」ある時は耐えるような艶のある声。「たんこう…」ある時は掠れる程微かな弱い声。知らないはずなのにどれもがとても狂おしい程に愛しくて、同時に哀しくて。「誰なんだ…？」独房で呟いても虚しく響くだけ。けれど、一つ、分かることがある。

ﾀﾞﾂﾘﾝ中、夢を見る丹。灰色の髪の誰かが明るい声で呼ぶ夢。「たんこー！」呼ばれることが嬉しくて、愛しくて、けれど、とても哀しくて。ぱりん。卵から出された丹、ﾀﾞﾂﾘﾝ直後の幼い姿で訳も分からないまま、あれやこれやでﾕｰｼｭｰｺﾞｸへ。寒いところで鎖に繋がれひとりっきり。それでも夢は見た。「たんこー！」呼ぶ声。それはきっと自分の名前。たんこー。丹こー。

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