Lightnews — Scholar-powered news

Light up
your news

About Privacy Terms Help

木菟

木菟

@mimizukug.bsky.social

55 followers 68 following 670 posts

木菟（ミミズク）です。成人済、字書き
p:https://www.pixiv.net/users/2531464
ぷらべ:https://privatter.me/user/mimizukug
うぇぼ:https://wavebox.me/wave/2cbel6nux9t1e6rl/
x.たいつ.くるっぷ:mimizukug

Posts Replies Media Videos

木菟

@mimizukug.bsky.social

カワサキワールドでツーリングのバイクに乗れたー。にこにこうきうきした。だいたいりゅーすいさんの財閥の博物館の方向性で相方と二人で爆笑してた。たくさんの船舶模型と航空機とバイク。たのしかった

October 26, 2025 at 7:23 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

スチパンスゼ手遊び

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「スチパン西部劇」と記載されています。
以下は本文の内容です。

　古い木のベッドが支柱を軋ませる。ベッドから蹴落とした荷物が床に落ちて金属音を響かせた。二人の姿を隠すように被せた強化繊維のタープが身体を上下させるたびに意味深な衣擦れの音を立てた。革のベルト同士が触れ合って、留め具が絡まりそうになるのをスタンリーの指が留めた。ベッドに倒されたゼノの下腹部、際どいところに彼の指の背が触れている。暗視用のモノクルをはめた眼にはそれがよく見えた。
「スタン、そこは……っ」
「ゼノ……」
　色っぽい吐息を含んだ囁きと共に、無駄な音が立つだろ、とばかりにベルトを示される。着たままでする趣味ということにはダメか。ダメだろうな、とゼノはため息を、せいぜい色っぽく聞こえるように掠れさせる。興奮したようにスタンリーの膝がベッドのスプリングを揺らした。バウンドする二人の体は衣服の分だけの隙間を開けて重なっている。スタンリーの銃は二つとも枕の下、ゼノの仕掛けのスイッチはベッドの影に置いてある。
　性交のフリをして宿屋の人間を欺く。そんな馬鹿げた作戦を取ることになったのは、ひとえに宿屋の主人の中途半端な賢しらさのせいである。
　この町はキャラバンの通り道でもなければめぼしい資源もない。過去はどうかは知らないが、主要ルートからは遠い位置にあり、町全体に寂れた雰囲気があった。
　こう言った町は閉鎖的で排他的になるのが常である。農地が広く水に余裕があろうが、余所者には相場の倍はふっかけてもおかしくない。どちらもなければ十や三十倍にしてもおかしくない。
　そんな土地で、親切にされたらどうか。神の恵みと喜ぶような純真さを、あいにく二人は持ち合わせていなかった。表面上は気さくなやり取りを続けながら手信号やモールスで違和感を共有したところ――『なんらかの理由で主要ルートを利用できない人間であれば思わず休息を求めて立ち寄ってしまう場所にある町』で『旅人に殊更に親切にする人々が噂になっていない』状態で、かつ、『質素に見えて素材に金のかかった調度品がそこかしこにある（例えば全力で揺らしても軋むだけで折れたりしない強度のベッド、藁でも木でもない金属スプリングを利用したマットレス）』ことから、十中八九、『旅人を襲って金品を得たり賞金首を捕らえて稼いでる

町』であると判断した。
　こういうところでの定番は、食事に睡眠薬を混ぜてくるか強い酒を出してくるかだが、そのどちらでもなかった。ご馳走は出たが、いずれもどちらかと言えば強壮――それも性的な意味で作用する食べ合わせであった。
『睡眠薬に耐性はある人間は多いが、これは……まぁ、相手の出方がわかって良かったね。おそらく事の最中ないし終わった後に踏み込む予定だろう。人間が最も無防備になる瞬間だから』
『ウケんね』
『そんなに恋人同士らしく見えるのかな？』
　トラップの準備をしながら訊ねてみたが、スタンリーは煙草を揶揄うように吹きかけてくるだけだった。毒ガスを撒き散らすなと嗜めてみても、静かに笑うばかりで返事がない。慣れたやり取りにため息をつく。魔除けだ虫除だと時々で理由は変わるが、スタンリーはゼノによくそうするのだ。
　彼に恋するゼノの気も知らず。
　演技にしろ、好いた人間とセックスの真似事をするのは刺激が強い。いつ下半身が反応して、スラックスの硬い生地を押し上げてしまうか気が気でなかった。
「これ、いつまで……」
　できる限りのウィスパーボイスで問いかけると、スタンリーはぐっと唇を噛んだ。眉間に皺が寄っている。そんなに怒ったような顔をしなくていいじゃないか。ゼノはへにゃりと眉を下げた。
「は、もうダメ？　早いじゃん？」
「スタン、いい加減にっ」
「ゼノ、もっと俺の名前呼んで」（三回呼んだら終わったフリ）
　瞬きで伝えられた信号に、ゼノは頷いた。しかし自慰以外での発散経験はない。娼館に薬品の処方のために出向いたことはあるが、あれも特殊な事例である。平均的な恋人同士でやるような内容を知らないのだ。
「スタン……っ」
　だからただ、懇願するような声になった。頼むから早く終わってくれ。君が好きだからこそ耐えられない。そんなゼノを褒めるように、スタンリーはにっと唇を釣り上げた。その艶めかしさときたら！　ブワッと背中が泡立つ。

「スタン！」
　ゼノはたまらなくなってスタンリーの名を呼んだ。今度は叫ぶようになった。
「ゼノ、アンタほんと最高……！」
　掠れた声で頭を抱えられる。ゼノは枕の下で、彼が銃を握るの感じた。身体がぐっと密着し、移動の準備をしている。スプリングの音が一際高くなった。
「……スタンリー……」
　いつでもどうぞ、と告げたつもりの声は、ひどく掠れた音になった。誘うようだ。ベッドの揺れがおさまり、長い溜息が耳朶を揺らす。
「んっ……」
　くすぐったさを堪える変な声が出た。スタンリーの腕の筋肉が一瞬、緊張したような気がした。
　静寂。
　バン、とドアが開く気配がした。銃声が轟く。強化繊維のタープが豪雨を受けたように跳ねた。ゼノとスタンリーはベッドから転がり落ちる。ダダダ、と足音が響く。侵入を確認したゼノの手が、起爆装置のスイッチを押した。
　銃声を吹き飛ばすような轟音。瞼を焼く閃光と入口を屋根ごと崩壊させて広くした爆発。崩れ落ちた人間をスタンリーがタープから這い出、すぐさま無効化していく。
「おおスタン！　やはりこの繊維は銃程度では突破できないみたいだ」
「めでたいね。オーパーツじゃん。そのまま被ってな」
　オーパーツとは現代科学で解明できない不思議な性質を持つもののことである。それらは時を超えてやってきた未来の技術ではないか、というのがゼノの立てた仮説である。オーパーツの研究者は国や権力者に飼われるか、賞金首として追われ放浪するかの二択である。
　屋根や壁に炎が移っている。粘性がある可燃性の液体は順調に宿を焼いている。燃え移る前に荷物を担いでしまうと、周囲の安全を確保したスタンリーの後ろに続いた。崩れた壁の向こうに、幾つもの篝火が見えた。やはり町ぐるみの生業のようである。
「足は？」
「彼らは目がそれなりに肥えているようだから、僕らのバイクはおそらく無事だ。燃料タンクのチェックは必要だけどね」

荷物の中から小型爆弾を取り出し、スリングにセットする。スタンリーが後ろに手を伸ばした。違わずそれを渡すと、彼は手首のスナップを効かせて窓の隙間から放り捨てた。轟音。炎上。
「行くぜ、ゼノ」
　悲鳴と怒号をバックミュージックに、スタンリーは踊るように燃える町へ飛び出した。

October 21, 2025 at 10:49 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

オタマトーンを弾くゼ先生とそれを見るスさん

October 19, 2025 at 9:28 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

ぜんぶ庭に埋めたよ4 privatter.me/page/68f2be2...

October 17, 2025 at 10:14 PM

木菟

@mimizukug.bsky.social

よりにもよってスペース番号誤字ってたので上げ直しです。10/19【東７Ｔ39b】やきとりときやで参加します。当日はどうぞよろしくお願いします。

October 12, 2025 at 4:41 PM

木菟

@mimizukug.bsky.social

【スゼ】ぜんぶ庭に埋めたよ2 privatter.me/page/68ea3a1...

October 11, 2025 at 11:09 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

【スゼ】お前あの祠壊したんか？ privatter.me/page/68d7b8a...

September 27, 2025 at 10:30 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

報酬の話 privatter.me/page/68c51c3... 冒頭だけ思いついて離れなかったので書いた。

September 13, 2025 at 7:30 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

今読んでる本が煙草と依存症の話なので。ゼ先生が両切りのクッソ重いのを一口だけ吸う喫煙の話。

September 11, 2025 at 9:31 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

スゼ。首の骨を齧る話が書きたかったので。習作。

August 20, 2025 at 1:18 PM

木菟

@mimizukug.bsky.social

【スゼ】文披Day 19網戸/Day 20包み紙 privatter.me/page/6893d78...

August 6, 2025 at 10:34 PM

木菟

@mimizukug.bsky.social

【スゼ】文披Day 16 にわか雨 privatter.me/page/6891f64... やりたい放題してます

August 5, 2025 at 12:26 PM

木菟

@mimizukug.bsky.social

【スゼ】文披Day 18交換所/Day 15 解読 privatter.me/page/689096466… 久しぶりになりました。たのしかった。

August 4, 2025 at 11:22 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

スタゼノ。月に行く前。17.5くらい目指した。

July 24, 2025 at 10:31 PM

木菟

@mimizukug.bsky.social

文披day14:【スゼ】浮き輪 privatter.me/page/6879ca6... はちゃめちゃに楽しかったのでこっちにも置きに来た。

July 18, 2025 at 4:24 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

（9/9）

い。引っ越すときには置いて行ってもいいから」
「いいの？」
「君に欲しいものがないのなら、せめて不足を埋めることぐらいはしたいじゃないか」
「アンタ本当に世話焼き女房だね。ゼノ先生」
　転居届の問題は少し保留にしておこう。テーブルに乗せたままの書類を摘み上げようとした指が空を切った。スタンリーが転居届を手元に置いて、さらさらとペンを走らせている。何かあった時にすぐメモを取れるように筆記用具を近くに置いていたのが仇になった。
　スペルを確認して眉を寄せる。
「スタン」
　この家の住所だ。
「早く出せって千空が言ってんだろ。今俺がいんのこの家だし、住所変わったらまた書くから、な」
「……はあ、仕方ないね」
　スタンリーの言葉は事実である。引越し先を準備しておくべきだった。むう、と唇を尖らせるゼノを見、何が嬉しいのかスタンリーは勝ち誇るように笑っている。

July 3, 2025 at 12:26 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

（5−8/9）

「いいん？」
「湯呑みで飲むコーヒーを美味しいと感じるならかまわないよ。その湯呑みが君のカップになるだけだ」
「ん。ちょうど何飲んでんかわかんなくなってたから、今日にでも買ってくるよ」
　ゼノは頷く。やはりコーヒーを湯呑みで飲むのはいただけない。
　スタンリーは器用に野菜をトーストで包んでいる。ゼノはカトラリーでパンと野菜をまとめながら、わかった、と頷く。
「そういやさ」
「なんだい」
「あのドアベルってゼノの趣味じゃないよな。金属製だろ。古道具屋に売ってくんよ」
　玄関ドアに下げられたウィンドベルは青銅製だ。良く音が響くように形を整えている。何度か改良を重ねたおかげで、扉を開けるたびにおよそ十メートルから二十メートル先にまで音を響かせる。音は大きく、慣れないうちはうるさく感じたものだ。
「いや、あれはこのままでいいよ。インテリアではなく、出入りや来客があったことを知らせるために使うものだ」
「誰によ。アンタじゃないよな」
「監視者かな。以前は司氏だったよ」
　アラシャで監視下にあったときから、スタンリーに対しての人質だったころまで、ウィンドベルは人の動きを確かめるブザーの代わりに用いられていた。ゼノのところまでわざわざくる人間は、何かしら腹に一物抱えていることが多かったのも原因の一つだろう。よからぬ人間に押し入られかけたのも一度や二度ではない。
　スタンリーは忌々しそうにウィンドベルを睨んだ。
「今はいんねえじゃん。取れよ」
「でもね、スタンが帰ったきた時もすぐわかるだろう。僕はそのままでも不都合もないし、取り立てて対処する必要性も感じない。君がうるさいというなら検討するけども、売るのではなく研究所の備品にするべきだろうね」
「そ」
　話は終わりだとばかり、空っぽの皿を手に、スタンリーが立ち上がった。いつの間にかコーヒーも飲み干されている。彼の手がポケットに向かうのを見て、ゼノは眉を寄せた。

「毒ガスは窓のそばか換気扇の下で頼むよ」
「はいはい」
　スタンリーはキッチンへと向かう。導線的にも換気扇の下が合理的だ。ファンが回る音に、金属音が混じる。彼が復活したあの日に渡した金属ライターだ。紫煙を旨そうにふかす姿に恨みがましい視線を送れば、晴れやかな笑みが返ってきた。ゼノはため息をついて半分以上残った自分の皿に向き合う。カトラリーを握り、ゆっくりと食べ始めた。

Ｄａｙ３鏡

「ゼノ先生、届けもんだ」
「おお、ありがとう……？」
　千空は一枚の紙を差し出した。受け取ったものの、ゼノは当惑した。転居届である。新世界で復活した人間の管理を行うために始まった戸籍制度、それに付随する書類だったはずだ。日本語と英語が二行になって記載された用紙を上から下まで読んで、ゼノは言った。
「スペルミスはないよ。このまま使って問題ないだろう」
「ドクターのお墨付きつきたぁおありがてぇ。ついでに記入して提出してこい」
「おお千空、引っ越すのかい？」
「テメーだろ」
「僕？　確かに書斎は手狭になってきたが、引越しの予定はないよ」
「本よりデカいもんが増えただろうが」
　心当たりがない。首を捻るゼノに焦れたのか、それとも別の理由か、千空は嫌そうに顔を顰めた。
「スタンリーだよ。同居すんじゃねえのか」
「ああ、スタンは休暇の間に居候しているだけだからね。まだしばらくいるようだけれど、そのうち出ていくだろう」
「ゼノ先生らしくねぇな。合理的じゃねえ」
　千空は不可解そうにゼノを見た。
「このストーンワールドに護衛もパイロットもできる人間なんざ滅多にいねえ。俺らと顔見知りで連携も取れるヤツは貴重なんだよ。とっとと口説くなんなりしやがれ」
「しないよ。……君がそうやって気を回すのは、Ｍｒ．

ゲンの入れ知恵かな」
　かのメンタリストはこの研究所の顔役として、さまざまな折衝を行っている。スポンサーから資金をせしめたり、あるいは講演の場所を確保したり。ゼノも共に方々に出向くことがあり、そこで聞いたことがあった。道中の護衛が絶望的に足りていないらしい。千空やゼノはその頭脳を狙われ、誘拐や暗殺の標的になるケースがある。たとえば、ストーンワールドと二十一世紀の社会・文明レベルを比較し、その差に絶望した挙句、『科学者たちが資源を独占している』と逆恨みする人間がいるのだ。彼彼女は往々にして危険行動に出る。故に研究所の人員は裏切ったりしない人間をかなり厳選していた。
「ゲンにも答えたが、Ｎｏだよ。僕の軍人には随分無理をさせたからね、仕事は終わりにしたんだ」
「ふーん、じゃこっちがスカウトする分にゃ構わねーってことだよな」
「僕のところに書類が回ってきたら処分するからね」
　釘を刺しておく。わかっているのかいないのか、千空はククッと喉を鳴らすようにして笑った。悪巧みをしているようでもある。おおかたスタンリーを自分の陣営に引き込む算段をつけているのだろう。ゼノが千空の立場ならそうする。ふうとため息をついた。
「スタンには早めにアメリカに渡航するように言わないといけないな。ひどい仕事を強いる科学者に捕まってしまうなど不幸にも程がある」
「あー、鏡をご覧になってから言え」
「だから手放したんだよ」
　千空はやはり、奇妙なものを見る目でゼノを見た。
「とてもそうは見えねぇけどな」
「おや、僕としたことが手放しきれてないかな。でも」
「あー、んなもん考えるだけ時間の無駄だ」
　千空は頭を掻くと、処置なしとばかり首を振った。彼が考えることを放棄するなぞ余程のことだ。しかし他人の幼馴染のことなら仕方ないかもしれない。
「とにかく、スタンリーにはそれ渡しとけ。んで出しやがれ」
　転居届を示し、千空は念押しした。

　贈り物は願いをうつす鏡だ。

喜んでほしい。幸せになってほしい。生まれてきたことを寿ぎたい。あとはもっと軽く、愛してるとか好きだとか、感情を伝えることもあるだろう。
　これまでにゼノがスタンリーに贈ったものはたくさんあるけど、煙草も風速計も銃も人体を損壊するためのものばかりだ。あるいはゼノの仕事を手助けするためのもの。ゼノは徹頭徹尾自分のことしか考えてなかったのではないか。
「いんね」
　だから望まれない。何も。
　千空に頼まれた転居届を渡した。家の一つでも贈ろうか、と冗談めかして言うと要らないと笑っていたのに。引越し祝いにセラミックのいい食器を準備しようかと聞くと、すんと笑顔が引っ込んだ。静かで冷たい眼差しがゼノの上をなぞる。ヘーゼルの目が色を変えて、怒っているのだろうか。手袋の下で指先がキンと冷えた。ゼノは指貫をクロスさせる。何が悪かったのだろう。
　最近スタンリー相手に失敗することが多い。ゼノのものだった彼への扱いが抜けないせいだろうか。昔から頼りきりだったから、幼馴染としての正しい距離感がわからない。
『食器は気に入らなかったかな。何か欲しいものはないかい』
　だからそう、ストレートに聞いたのだ。不要なものを贈るよりは必要とされた方がいい。突き放すように拒絶されるとは予想もしておらず、ぱたんと手が下がった。
「そうか」
「……そんな残念そうな顔すんなって」
　乾いたスタンリーの指先がゼノの頬に触れた。いつかの復活の時を思い起こさせる動きで輪郭を辿る。視線が合う。穏やかな金に戻った瞳にゼノが映っている。小さすぎる鏡では、自分の感情を捉えることはできなかった。
「してないよ」
「自覚ねえんだ。じゃあゼノ、ここの住所書いてだしてよ。それでいいよ」
「この家は単身者用だよ。君のベッドもないというのに」
　今はリビングのソファをカウチ代わりに寝ている。あるいは床だ。疲れも取れないだろうに。ゼノはふと思いついた。むしろなぜ気づかなかったのだろう。
「ああ、そうだ。せめて寝る場所だけは準備させてほし

July 3, 2025 at 12:26 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

文披31題（えっくす@Fictionarys ）様のDay1〜3までお題借りて書いてるバカンス（語弊）のスゼ（1-4/9）

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
以下は本文の内容です。

　Ｄａｙ　１　まっさら

　世界がリセットされて本当に喜ばしかった。
　一度目は失敗したが、二度目は間違わない。

　歓声が聞こえる。宇宙飛行士たちの功績を祝う宴は長く続いている。ほとんど祭りの様相だ。何度目かもわからない乾杯の声を遠くに聞きながら、ゼノはそろりと隣を伺う。
　主賓席にいたはずのスタンリーがなぜかこんな会場の端にいる。酒も料理も遠いし、人だっていない。木のかげに酔っ払いが転がっているし、どこかからいびきが聞こえる。夕暮れの空に白煙が溶けていく。長い睫毛と瞳の角度、唇の形。黄金の比率でできた幼馴染を目に焼き付ける。
「もうここに仕事はないよ」
「……？」
　蜜色の目がゼノを見た。ゼノは視線を西の空に向ける。恒星が光っている。
「スタン、君は自由だ」
　スタンリーは言葉の意味を計り兼ねるようにゆったりと瞬きをした。
「つまるところ君はバカンス……いや違うな」
　言い換えてみたが、ゼノ自身しっくり来なかった。バカンス。楽しい休暇を味わってほしい。その気持ちはあるが主題ではない。ゼノは彼に一生分の仕事をしてもらったのだ。科学を楽しめる世界をもらった。ゼノが作ったロケットに乗って宇宙に行ってくれた。もっとずっと前からそうだ。アメリカで独裁を目指していたあの時だけではなく、旧世界で軍人を選んだのもおそらく、ゼノのためだった。そこには常に命の危険があった。
「とにかく不労所得の当てはある。任せてくれ」
　スタンリーはふうん、とたいして感動した風もなく、クールに頷いた。
「よくわかんねえけど、アンタが言うなら休むよ」
「休みは休みだけど……僕がしたいのはこれまでしてくれたことへの精算だよ。君の仕事はいつだって素晴らしいからね、前々から報酬の準備だけはしておいたんだ。それでも月まで行って帰ってくるほどの偉業への対価に

は釣り合わないかもしれないね。Ｍｒ．龍水ならもっと相応しいものを準備できるかもしれないな」
「なんで龍水がでてくんの」
　どうしてか尖った声がして、ゼノはスタンリーに目を向けた。不満げだ。世界の物流を牛耳る男ならば手に入れられないものなどないだろうに。
　夜が深まって、空にどんどんと星が増えていく。
「スタンは龍水にパイロットならないかと声をかけられていただろう。あれを受けてもいいし、今後結成されるであろう警察組織に参加してもいい」
「話が見えねぇんだけど」
「僕に構わなくていい、ということだ。正直なところバカンスというか……ありていに言えば、僕の軍人としての君を解雇したい」
「ふーん、そんで？」
　先を促されて困惑した。それで、と言われると、どうしたいのだろう。ゼノは少し迷った。答えを探すように視線をうろつかせ、再び空に戻る。
　地上の光が増えた代わりに星の減った夜空は、しかし変わらず美しかった。どうかあんなふうに。
「僕の親愛なる幼馴染、スタンリー・スナイダー、君の輝かしい未来を祝福させて欲しい」
　罪は栄誉で精算され、スタンの未来は真白く明るい。そこに闇の科学者たるゼノが影を投げかけるのは無粋だろう。むしろ彼の罪ですらゼノがもたらしたものだ。都市の明かりが星の光をかきけすのは許されても、ゼノが彼の将来を曇らせるのは許しがたい。
　と、スタンリーの前途を寿いだはずなのだが。
「なんで君は僕の家にいるんだ」
「バカンスだから」
「ああ、休暇中僕の家で過ごすのは旧時代の習慣だったね。しかし……あっ毒ガスの灰を床に落とすなスタンリー・スナイダー、灰皿はこっちだ！」
　なぜかスタンリーはゼノの家に居着いていた。出て行く様子は、今のところない。

Ｄａｙ２　風鈴

　戸口に取り付けたウインドベルの音がした。狭い部屋いっぱいに金属音が響き渡る。ドアが開く時が一番激しく、閉める時は静かだ。つまりものすごい勢いで玄関ドアを開けて、ゆっくりと閉めているということになる。これを聞くのはまだ片手の数に足りる程度だが、彼は毎回同じ周波数を鳴らしている。
「おかえり」
　ゼノは振り返りもせず言って、トースターをセットした。キッチンに立つとどうしても玄関に背を向ける形になるためだ。きりきりとバネのいい音を立てて電熱機がパンを挟んだのを確認。そこでやっと振り向く。
「ただいま」
　ランニングから帰ってきたスタンリーが、汗を拭きながら歩いてくる。単身者用の宿舎は狭い。玄関からすぐリビングダイニングにつながり、玄関の向かいの壁にこぢんまりとしたキッチンがある。横手には廊下が伸び、寝室と書斎とユニットバスに続いている。
「まずは水分補給だね」
　ゼノは冷蔵庫から準備しておいた経口補水液を取り出した。塩とレモンと砂糖の単純な配合である。味わいもまたシンプルすぎるものであるが、スタンリーはからかいも文句もなく飲み干した。
「ありがと、シャワー浴びてくんね」
「待ってるよ」
　空になったタンブラーをさっと洗うと、スタンリーは廊下の奥に消えた。程なくしてシャワーの水音が聞こえる。
　ケトルが湧く。ピッチャーに入れて湯冷しをつくる。アメリカにいた頃からの習慣だった。上下水道の整備は進んでいるが、まだ生水には旧世界ほどの安全性はない。殺菌するに越したことはなかった。ついでにコーヒーもいれる。ふくふくとフィルターの中で盛り上がる粉の面倒を見ているうちに、トースターがチンと焼き上がりの音を立てた。
　焼けたトーストを皿に乗せ、スライスしておいたハムときゅうり、手でちぎったレタスを乗せる。こんもりとした緑の山ができあがった。

「サラダ？」
　鍛えた上半身をさらしたまま、スタンリーがキッチンに帰ってきた。
「オープンサンドになる予定だった」
「なってんじゃん」
「一見してサラダと称されるのに？」
「パンに挟んで食べるもんはなんでもサンドイッチだろ」
　適当なことを言っている。しかし真理でもあるような気がする。ゼノは黙った。スタンリーは静かにサンドイッチでありサラダでもある皿を見下ろす。
「持っていく？」
「頼むよ」
　二枚の皿を掬い上げ、彼はダイニングテーブルに向かった。綺麗な背中だった。頸椎から広背筋の形をなんとなく目で追う。バカンスと銘打ってこの家に転がりこんできてからも、スタンリーはトレーニングを欠かさない。この前は新設された治安維持組織の訓練に混ざっていたようだった。司とも模擬戦をしたとか。
「ゼノ？」
　朝食の席につかないゼノを、スタンリーが呼ぶ。ゼノはマグカップと湯呑みにコーヒーを注ぐと、テーブルに向かった。湯呑みをスタンリーの手元に置く。単身者の住居に転がり込んできたのだから甘んじて受け取ってもらおう。
　しかし。
「スタン、いつまでここにいる気だい」
　向かいに座って彼を見る。金の眼とかちあって火花でも散ったかと思った。いつもより色の濃いような眼差しが、じっとゼノを見つめている。傾聴の姿勢のようだ。ゼノはコーヒーの注がれた湯呑みを示す。
「コーヒーを湯呑みに注ぐのは許しがたい蛮行だと思わないか。食器の形が風味に影響することは科学的にも証明されていてね、これではせっかくいい豆が手に入っても香りやキレが失われてしまう。滞在が長くなるようならそろそろ君のマグカップも用意したいと思うんだが」
　ぱちりと瞬きをして、スタンリーはふっと笑った。瞳の色が薄らいでいる。興奮に伴う虹彩の変化だ。血管が拡張し色が濃くなり、静まって薄くなる。湯呑みにコーヒーはスタンリーをして悪とみなされる所業だったのだろう。

July 3, 2025 at 12:26 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

年越しそばとお雑煮。

December 31, 2024 at 10:16 PM

木菟

@mimizukug.bsky.social

もちとおでかけしてきた

December 9, 2024 at 11:59 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

ペーパーホルダーカバー作った。後ろが塞がってるタイプなのですっぽり覆う感じ。ちょっと紙が引っかかるかもしれない。様子見

November 23, 2024 at 12:59 PM

木菟

@mimizukug.bsky.social

魔女の本さんの炎の台座にお気に入りのルース置いてるの！！！！すごい思った通りでハピネス。念願叶いました

November 3, 2024 at 12:35 PM

木菟

@mimizukug.bsky.social

Bluesky のユーザー数は現在 1,000 万人を超えており、私は #2,584,465 番目でした
わーい！おめでとう

A virtual certificate with text "Celebrating 10M users on Bluesky, #2,584,465, 木菟 ‪@mimizukug.bsky.social‬, joined on 2023年12月19日"

October 5, 2024 at 12:33 PM

木菟

@mimizukug.bsky.social

物産展行ってジム行って温泉行ってアップルパイ食べて眠い

March 2, 2024 at 10:43 AM

木菟

@mimizukug.bsky.social

神棚できたー！小さい神棚を棚置きしてたけどちょっと上にあげたくて頑張りました！

小さい神棚

December 20, 2023 at 8:12 AM