ねこじゅう
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ねこじゅう
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成人済み腐。ジャンルは時々
文章とか書ければいいなあ
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「花子さんとかどこでもあるよね」 「俺たちが中学の頃は〝運命の人が映るテレビ〟が流行ってたな」 「なんですか、それ」 　呟いた悠に蓮は聞く。 　曰く、悠が通ってた地元の中学で流行ってたらしい。深夜０時、雨の降る日の夜、電気を消した部屋で消えたテレビを見ていると運命の人が映る、と。 「ご当地都市伝説？」 　理は首を傾げる。聞いたことがない噂だ。 　幼い頃い両親を亡くした理は、小さな頃から親戚の間をたらい回しにされていた。その分、転校も多かった彼は様々な噂を聞く機会も多かった。 「そうなのか」 　悠は驚きに目を瞬かせる。 「鳴上先輩は試したのか？」 「友人たちも試したらしいんだが、何も映らなかったと言われた……」 　その答えに蓮は不自然さを感じて眉を寄せる。理も同じ違和感を感じたのだろう。 「悠は？」 　一言、理は問う。 　そうだ。今の答えは悠の友人の話であって、悠自身の話ではなかったと理の言葉で蓮は気が付く。 「声が……」 　彼は目を細める。自身の記憶を思い出しながら。 「呼ぶ声が、聴こえた」
April 5, 2025 at 9:28 AM
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オカ研ワイルドメモ2
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「オカ研ワイルド」と記載されています。 以下は本文の内容です。 ▼担当顧問 　月校オカ研の部室は、今は殆ど使われていない校舎の端にある第３資料室。滅多に生徒は近寄らない、静かで落ち着く立地である。 　その日も月校オカ研は部員は、ダラダラと部室で時間を過ごしていた。本を読んだり、折り紙を折り始めたり、授業中に出された課題をやったり。そんな中、資料室のドアがガラリと開かれる。 「久しぶりだね。結城くん、鳴上くん。それに……」 　そこにいたのは１人の男。眼鏡に肩に掛かる長い髪。何処と無く胡散臭いこの男こそ、この学園の理事長である幾月修司。何故理事長がここにと蓮が吃驚していると、ハァと理が溜め息を零した。悠は困ったように眉を寄せている。 「新入部員の雨宮くんだね。君のことは部長である結城くんから聞いているよ。ようこそ、月光館学園オカルト研究部へ！　私は幾月修司。この学園の理事長にして、この部の担当顧問だ」 　と、蓮はそこで初めてオカ研の顧問の存在を知ったのだった。 　蓮がオカ研の顧問の存在を知らなかったのは、偏に聞いてなかったからだ。入部届は副部長の悠が受け取り、部長の理が顧問に提出した。初めからやる気のなかった蓮は顧問のことを気にしなかったし、今の今迄、幾月は一度も部室に顔を出すこともなかったので直接会う機会もなかった。 「君たちも知っての通り、このオカルト研究部は僕の趣味で作った部活なんだけど」 「今初めて知りました」 　理はきっぱりと言い放った。何せこの部を理たちに押し付け……もとい任せて卒業していった先輩たちには何も聞いていないからである。 「そうだっけ？　まあいい。それでね、この部の活動があまりにもなさすぎるって他の先生方に怒られちゃってね」 「まあ、何もしてませんからね」 　悠は苦笑した。そもそもここにいるメンバーの殆どがオカルト事に興味がなさ過ぎる。 自主的に何かしようなんて話しにならないのだ。 「ということで、君たちにこの学園の七不思議を調べてもらいたいと思ってね。良いだろ七不思議。学校っぽい、面白そうだろ。学生の生の不思議話だ！　ナマのナナフシギってね！」 　蓮は目を瞬かせた。オカ研顧問の理事長は、だいぶ変な人だった。 ▼鳴上悠の不思議話 　まだ仕事があるからと顧問兼理事長はさっさと部室を出て行ってしまった。忙しい人だ。残された３人は机の周りに集まり顔を突き合わせる。 「そもそも、この学園に七不思議なんてあるのか？」 　最初に疑問を口にしたのは入学してから日の浅い蓮。この学園はとある企業出資の、 まだ建てられてから日の浅い真新しい学校だ。七不思議ができるような歴史も、事件もなさそうだが。 「一応、あるらしいぞ」 「人の集まる場所だしね。大なり小なりそういう噂は出てくるよ」 　とはいえ、理も悠もそう詳しくは知らない。 　トイレの花子さん、増える屋上の階段、夜中に鳴る音楽室のピアノ。聞いたことがあるのはその程度か。 「確か、先輩たちが残したノートにも幾つか書いてあったけど……」 「そもそもハッキリと七不思議とは区分されてなかったな。流行りが強そうな噂とかも多くて、１０個以上あった。今は幾つか消えてるか、入れ替わってるんじゃないのか？」 　残っているのは不変性の高い噂なのだろう。例えば、先の３つの噂のように。「取り敢えず確かめてみるか」と悠が棚から１冊のノートを取り出す。 「ほら、さっき話してたやつもあるぞ」
April 5, 2025 at 9:28 AM
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オカ研パロネタ
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「オカ研ワイルド」と記載されています。 以下は本文の内容です。 ▼私立月光館学園オカルト研究部 　私立月光館学園オカルト研究部は摩訶不思議な部活である。 　所属しているのは２年が２人に１年が１人の計３人。活動実態もほぼ無しで、殆どの時間はそれぞれ部室で自由に過ごしている。なんなら２年の２人は偶に他の部の助っ人として呼ばれていたりして部室にいないことすら。それでどうして部として認められているのかというと、理事長が顧問を請け負っているからだ。まあ、彼は殆ど部室には顔を出さないのだけれど。 　雨宮蓮は、そんな月光オカ研に所属している１年である。 　オカ研部員ではあるが、蓮は別にオカルトに興味がある訳ではない。入学早々、最初に行われる学力テストでトップを取った蓮は、一つ上の学年の学年主席と次席に誘われてオカ研へと入部した。 　蓮がオカ研へと入った理由はただ一つ。面倒ではなさそうだと思ったから。月光館学園の校則では部活に所属するのは必須である。けれども元来不真面目なところのある蓮は、真面目に練習をする運動部や活動を行う文化部には興味がなかった。そんなところに降って湧いた勧誘。蓮は二つ返事で頷いた。 ▼ウィジャ盤 「なんだコレ？」 　何か面白い物でもないだろうか。そんな考えで部室の棚を漁っていた蓮が見つけたのは、何やらアルファベットの書かれた不思議な形の文字盤だった。 　それを手に首を傾けて呟く蓮に、部室に備え付けられたパイプ椅子で静かに本を読んでいた部長の結城理が顔を上げた。 「あー……卒業した先輩たちが置いていったウィジャボード」 「理先輩……」 　オカルトには興味はないが知識としては知っている。確か……。 「降霊術に使われる文字盤」 「まあ、使えないけど」 　そう言って理は再びその視線を手に持った本へと戻す。そんな理の様子に、机の上に 教科書とノートを広げてペンを走らせていた副部長の鳴上悠が苦笑いを浮かべた。 「鳴上先輩……壊れてるのか？」 「壊れてるといより……」 　悠は少し言い難そうに言い淀み、それからふうと息を吐く。 「俺たちが使うと、その……プランシェットが荒ぶるんだ」 「荒ぶる……」 「えっと、暴れる？」 「いや、言い方の問題じゃなくて……」 「質問に答えてくれない」 「そうなのか」 「先輩たちは普通に使えてたから、多分壊れてない。使いたいなら雨宮、持ってっていいぞ」 　そう言われたが、蓮も特に興味がある訳ではない。降霊だとか占いだとか。チラリと手の中のウィジャボードに目をやり、そっとしておこうと心の中で呟いて元の場所に戻 した。
April 4, 2025 at 3:58 PM
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キタ番ss
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 以下は本文の内容です。 　最初に彼と出会ったのはペルソナに覚醒めてまだ日も浅い頃。 　知らない土地、親戚だとはいえ殆ど知らない人間との共同生活、身近で起こる連続殺人事件に、テレビの中の世界と、そこに住む人の命を奪う化け物。 　色々な事がいっぺんに起きて、俺の頭の中はは常にいっぱいいっぱいで。きっと凄く疲れていた。 　そんな折、夢を見た。ベルベットルームの夢だ。 　以前にも見た事のあるそれではあるが、その日の夢は少し変で、いつもならその部屋……というよりも車の中で出迎えてくれるはずの人達の姿はそこにはなかった、 　代わりに俺を出迎えてくれたのは彼で、長い前髪で片目を隠した中性的な容姿の少年。身に纏っているのは何処かの制服だろうか、紺色に近い黒いブレザー。 「大丈夫？」と彼は静かな声音で訊いてきた。夢の中で聞いたその声は何処か懐かしく、緊張していた心を解きほぐして自身の内に沁みるように思えた。俺の口からぽろぽろと弱音が溢れたのはそのせいかもしれない。 　分からないことだらけで、それなのにリーダーなんて任せられて、自分が死ぬだけじゃない、皆の命まで失われるかもしれない。そんな状況が恐ろしいのだと。 　断片的に零されるその言葉を、彼は黙って聞いてくれていた。 　話し終わった後、彼に手招きをされた。どうしたのだろうと、正面に座る彼の元に近寄ると、彼は俺をを抱き止めて、優しく頭を撫でてくれた。君なら大丈夫だよと。 　その日からだ。俺が極度の不安を感じる度に彼は夢の中に現れて、俺の弱音を聞いてくれた。仲間達の前では強いリーダーでいたいから。そんな俺の弱さを受け止めてくれる彼の存在に救われていた。 　文化祭に夢を見た。それはたった一瞬の、けれどもとても長い夢だった。 　君は約束を守ってくれた。俺の最後に君に託した一方的な約束を。二年という時間の差。君は俺を見つけてくれた。目の前の苦難に折れそうになる俺を支えてくれた。あの日、君の背中を見ていた俺の、背中を見守ってくれた。 　だから今度は俺が君に会いに行くよ。たとえ君が何処にいようと。 　また君と隣で笑い合いたいから。
March 30, 2025 at 4:21 PM
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おかしい理由てきな
March 30, 2025 at 3:29 PM
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　明智と最初に出会うのは６月の社会見学の時のはずで、こんな所にいるのはおかしくて。 　蓮の様子に仲間たちが「知り合いか？」と尋ねてくる。名前を口にしていたので当然出てくる疑問であはあるが。 「知り合い……というか……」 　蓮は知っている。一方的にだが。けれど明智は違う。彼には記憶がなくて、蓮とは初対面のはずで。 「知り合いではないよ」 　明智はそう言って両手を顔の横に上げ、警戒を続ける仲間たちに降参のポーズを取ってみせる。 「じゃあ何でコイツの後を付けてやがった」 　それは当然の疑問だ。明らかに苛立っている竜司の問に、明智は穏やかさを崩さずに「言えない」と答える。 「はあ？　んなの」 「仕事だからね。守秘義務というやつさ」 「仕事……？」 　苛立ちを見せる竜司に明智は肩を竦め答える。首をかしげる杏に、そういえば、この時点の彼らは明智の職業について知らなかったなと思い出す。最初、蓮たちが明智のことを知ったのは、社会見学時のテレビ局でのことだった。テレビや雑誌で活動していて結構有名だったらしいのだが、思えば怪盗団騒ぎが大きくなる前は意外に顔を知られていなかったなと思い出す。蓮も何故コイツのことを知っているのかと疑問に思われているし、ここは助け舟を出してやるべきだろうか。 「探偵……二代目探偵王子って、テレビとかで……」 「探偵……！？」 　驚きに声を上げたのは、鞄から顔を出したモルガナだ。明智は「他の人たちは知らないみたいだし。僕もまだまだかな」とかなんとか言っている。 「何で探偵が……」 「思い当たることはあるか？」 「いや……」 　祐介に問われ蓮は首を横に振る。過去のループから考えて、もし誰かが蓮のことを調べようとするのならば、それは怪盗団に関する正体を探ろうとする時くらいだ。しかし今はまだ怪盗団はその名を知られておらず、蓮個人を態々調べようとする理由になることなんてないはずだ。本当に何も思い当たる節がなく、前髪を弄りながら俯き気味首を傾げる蓮に、目の前の明智は眉を下げて苦笑いする。 　ふと、その視線が何もない方向に一瞬向けられ、彼が小さく目を瞬かせたのを見て、蓮は僅かに違和感を覚える。なんだろうか。明智の視線の先、同じ様に視線を向けてみるが、そこにあるのはただの建物の壁だけで。 　はて？　と更に首捻る蓮だったが、その違和感を深く考える前に、明智の唐突な提案にそれは全て吹っ飛んでしまう。 「ああ……うん、そうだね。ねえ、君、僕と連絡先を交換しない？」 「はっ？」 　唐突も唐突。今までそんな会話の流れではなかったじゃないかと、蓮だけでなく仲間たちまで驚きに目を 見張っている。 「……俺？」 「そう。端的に言えば、僕の依頼人は君のことをすごく心配していて、君の近況さえ分かれば満足してくれるからさ」 　蓮のことを心配するような相手……。仲間たちは「両親とか？」と訊いてくるが、あの両親がそんなことをするだろうか。というより、今までの周回ではそんなことはしていなかったはずだし、おそらくは違うと首を横に振る。 「残念だけど、ご両親ではないよ。けれど、彼に悪意のある人物ではないことは確かだ」 　明智は仲間たちの方へ向かってそう説明する。誰かまでは言えないけれど、探偵に身辺調査まで頼むくらいに蓮の現状を心配している人物がいるのだと。 「どうする、レン。怪盗としてはあんま関わりたくはねえ相手だが」 　モルガナが鞄の中から真剣な表情で見上げてくる。蓮としてはそれ意外にも警戒したい相手ではあるのだが、今のモルガナはそんなこと知る由もない。それでも探偵は怪盗にとっては宿敵と言える存在だ。 　警戒はしたい。だが、この異変を調べるには明智と直接接触するのが一番手っ取り早いのも事実。 「わかった」 　蓮は先程から人の良さそうな雰囲気で、蓮を見据える明智の顔を見て頷く。連絡先を交換しようと。 　虎穴に入らずんば虎子を得ず。今までだってそうだった。それにどうせ遅かれ早かれ、このまま怪盗団として活動するのなら、連絡先の交換はすることになるのだし。 　その答えを聞いた明智は、「ありがとう」と微笑んでで懐からスマホを取り出す。その場で蓮と連絡用のチャットＩＤを交換して、すぐに彼は他にも色々と私用があるからとと、まるで嵐のように足早にその場から去ってしまった。 「何だったんだ？」 　祐介の口にする疑問ももっともだ。本当に何だったんだと言いたい。 　今までと違う流れ。早まった出会い。蓮を調べる謎の人物。 　先程までのことはやたらとリアルな夢だったんじゃないか。そう思いそうになる蓮に、スマホの画面に残された〝明智吾郎〟の名前が、それらが現実だったのだと証明していた。
March 30, 2025 at 3:15 PM
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　モルガナに頷いたのは祐介だ。とはいっても彼は仲間になってまだ日が浅く、お互いについてもまだよく知ってはいないので、判断は他メンバーに丸投げだ。 　現在時は五月も末。 　パレスの内情も敵の手も判明した攻略はそれほど時間も掛からずに進み、現在は改心された斑目の自白を待っている状況。この屋根裏部屋を拠点にしたのは、祐介が仲間になってすぐのことだ。どうせこの場所が溜まり場になるのだから遅いか早いか。例え過去には真以外には気にされなかったとはいえ、連絡通路で筒抜けの会話をするくらいならこの場所の方が心情的にも安心だ。それに何故か、竜司がした怪盗団の話題を真に録音される流れは変わらないので、金城の改心も予定調和である。 　そんなこんなで、祐介への斑目の様子の確認だとか、新しい改心の依頼だとか、色々な報告のついでに「最近、誰かに付けられている気がする」という話題も、半分冗談のつもりで話したのだ。モルガナは本気で心配していたようだが。 　とはいえ、怪盗団の名前もまだ知られず、なんなら秀尽高校の生徒以外は存在すら認識していないはずの今、蓮に付き纏って得をする人間なんて心当たりがない。 　例えば杏であれば、彼女の容姿に惹かれてストーキングなどする不届き者がいるかも知れない。というよりいた。現在その相手は怪盗団の仲間であるが。目的も絵の被写体になって欲しいというものだったが。 　だが蓮は彼女のように特別容姿に優れているというわけではない。過去の周回で女性陣に色々と褒められはしたことはあるが、それは身につけたコミュニケーションスキルに依るところが大きい。蓮の見た目に関しての大体の評価は、眼鏡で顔を隠しているとはいえ、モサいとか地味とか目付きが悪いとかそんなのばかりだ。眼鏡をしているのに、目付きに言及されているの は隠しきれていないような気もするが……。ともかく、今はそれなりに気を使ってはいるからある程度は身綺麗になっているだろうが、蓮は特別見た目が優れているとかそういうこともなく、元々ごくごく平凡な容姿なのだ。 　その上、蓮には前歴がある。それを知って近づきたがる人間など、彼らのように噂に惑わされず自分を知ってくれた人か、そもそも前歴のことを知らない人間かくらいだ。 「やっぱり気の所為だと思う……」 　考えれば考えるほどそうだとしか思えない。蓮が心配すべきはストーカーなどより、どちらかというとカツアゲとかそっち方面な気がする。まあ、蓮はカツアゲする方であるのだが。主な被害者はメメントスのシャドウである。 「蓮はこう言ってっけど？」 　竜司に訊かれてモルガナは「うーん……」と俯き気味に首を傾げる。自分の感覚を信じたいが、あまりに蓮が否定するので自身がなくなったというところか。 　そんなモルガナの様子に杏がぽんと一つ手を叩いて、「じゃあ」と声を上げた。 「皆で蓮の護衛をしてみたらどうかな。ほら、私の時みたいに」 　犯人がいなければ安心できるし、上手くいけばストーカーを捕まえられるかもしれない。 　なるほど。経験者は語ると言ったところか。 　その杏の提案に、その場にいた全員の視線が祐介に向かったのは言うまでもない。 　全員、誰かが視線を感じたらすぐに伝える。怪盗団らしく全会一致でそう決めて、一行は全員で渋谷へ向かう。 　というのも、蓮たちが例の視線を感じるのは大体渋谷周辺だからだ。ただでさえ人が多い場所であるから、視線自体も自意識過剰からくる勘違いということも十分にありえると、それを皆には最初に伝えておいた。 　護衛と理由づけはしてみたけれど、結局は楽しい盛りの高校生。斑目の世話であまり外に出られない祐介の息抜きも兼ねて、渋谷の街を散策することになった。 　途中までは何もなく、やはり視線はただの気の所為、きっと色々とあって気が立っていただけだったのだろうと、そう安心していたのだが……。 「おい……」 　その真剣な声に、今まで力を抜いていた全員に緊張が走る。最初にそれを告げたたのはモルガナだった。 　彼の声は、あの世界のモルガナを知らない人間にとってはただの猫の鳴き声にしか聞こえない。だからこそ、誰に聞き止められることもなくそれを口にできる。 「後ろの建物の陰だ」 　此方を見つめる存在は、建物の陰に隠れてその姿を確認することはできない。 「じゃあ、手はず通りに……」 　蓮の合図で全員が最初の予定通りに動き出す。 　杏は友達から電話が着たと別れ、竜司と祐介は飲み物を買ってくるから先に行っていてくれと言って蓮から離れる。そうしてモルガナと二人になった蓮はその まま街中を進む。徐々に静かな、人目のない路地の方へと。建物の角を曲がり人の姿のない路地へと入ると、それでも付いてくる気配を確認して、蓮はそのまま進む。右へ、左へと。そして相手の視線から外れる一瞬の隙き、そのまま隣の建物の陰に身を隠す。 「││！」 　角を曲がった相手が驚きに息を呑むのが聞こえる。近づいて来る足音と息遣い、それが真横を通り過ぎる瞬間、蓮はその背後から相手に飛び掛かった。 「捕まえ……た！？」 「えっ！？」 　ひょいとその背中が蓮の前から消える。と、同時にその声と姿に蓮は驚き目を丸くした。 「蓮！　犯人は！？」 「ソイツがストーカーか！」 「観念しろ！」 「待ってっ！？　ストーカー！？」 　予め犯人を追い詰める場所を決めて別れていた仲間たちが、それぞれ隠れていた場所から姿を現し、蓮の隣に立つ〝ストーカー〟を取り囲んだ。 　男としては中性的な顔。肩まで伸びた栗色の髪。見覚えのある有名進学校の制服。 「あけ……ち……？」 　そこにいるソイツの顔が信じられなくて、蓮はその姿を凝視する。 　偽物？　いや、でも、どこからどう見ても本物にしか見えない。
March 30, 2025 at 3:15 PM
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周回ぺごとなんかおかしいｱｹﾁ（明主？
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 以下は本文の内容です。 　都会の雑踏の中、視界の端に大きな翼の影を見た気がして彼は顔を上げた。 　見上げた空はコンクリートの壁に狭く切り取られ、翼を持つ鳥が飛び回るのには不自由そうに見える。それはまるで、これから先の自身の未来を暗示しているかのようにも感じ、無意識にその景色を自身の現状と重ね合わせて、彼は胸を覆う鬱々しい気分に肩を落としながら目的地への歩みを再開した。 ｎ周目の明智がなんかおかしい 　地元でクソみたいなハゲに冤罪をふっかけられ、そこから追い出されるように保護司に預けられることが決まったのが数ヶ月前。保護観察中の未成年を更生させたという実績が欲しいらしい東京の学校が、運良くというのだろうか、受け入れてくれるということに決まり雨宮蓮は親元を離れ一人東京に送られた。 　その転入初登校のその日、何がなんだか分からないままに、学校への道を同じくした、同じ学校の制服を着た男子生徒と一緒に奇妙な場所に迷い込んだ。何だこれはと混乱していると、そのままあれよあれよと鎧を着た化け物や、変態としか言い様のないブーメランパンツの男に殺されかけたのだ。 　何だアレは。あんな格好をして恥ずかしくはないのか。パンイチマントとかありえないだろ。常識とか良識とかファッションセンスだとかの言葉を知らないのか。 　蓮の脳内でツッコミの嵐が止まらない。その後アレは本体の影で本人ではないと知ったとしても、結局の所、本人の認知であの格好になってるのだから変態評価は変わらない。あのクソハゲもそうだが世の中クソな大人が多すぎる。 　まあ、今は変態野郎に関してはどうでもいい。いや、どうでも良くはないが、重要な問題はその時に起こったことだ。 　殺されかけたその時、頭に響いたアルセーヌの声に答えたと同時に思い出したと言っていいのか。あ、これ、前にもあったなと。自分がこの時間を、両手で数える以上の回数は繰り返しているという事実、記憶が、一気に頭の中に流れ込んできた。 　そして数日間、蓮は頭痛と目眩と吐き気のトリプルコンボの体調不良に見舞われていたというわけだ。 　記憶が原因なのか、はたまた別の要因か。これが毎度のこと過ぎて、先の事が分かっているのだから先手を打って……ということが出来ない様にと、何者かの意思でも働いているのかと疑いたくなるくらいだ。数日はパレス攻略なんて無理だし、その間に鈴井は屋上から飛び降りてしまうし、変態もとい鴨志田に退学されかけるし。本当しんどい……。 　そして蓮がそんな状態だというのに、取り敢えず寝てるとこを呼び出すのは止めろ、ヤルダバオト。お前の正体なんかとうの昔にまるっとお見通しだぞ、とは簡単に言えない。確か三度目くらいの世界でそれをやって、いきなりデッドエンドになったのは忘れてない。 　それで分かったのは、どうやらこの謎のループはあの自称神が原因ではないらしいということ。あの偽神は神を名乗ってるくせにループの記憶の一つも引き継いでいないらしい。これだからイカサマを仕込むような自称神（笑）はダメなのだ。まあ、覚えてられてもこちらの邪魔をしてきそうだし別に問題ないが。寧ろ忘れろ。 　体調不良が治まってすぐ、蓮は記憶にある通りに竜司と杏と共にモルガナの案内で鴨志田の改心を行った。 　ペルソナは心の力というだけあって、記憶を持ち越した自分のペルソナは、皆以前のままの強さである。が、その使い手である蓮本人の肉体は初期状態。悲しいことに強力すぎるペルソナを使うと、体の方の体力や精神力が足りずにすぐにへばってしまうという有様である。なのである程度鍛えられるまで、それなりに余裕をもって使える強さのペルソナに頼って道中を進む訳だ。頑張れアルセーヌ。お前の出番はまだまだあるぞ。 　真犯人だとか黒幕だとか、そんな一切合切を全て知ってしまっている蓮の目下の目的はこのループからの脱出である。 　とはいえ原因は未だ不明……。いや、それも正確ではないか。思い当たる節はあるにはあるのだ。確証は持てないが。 　それは以前、この周回より以前の世界の話だ。ラヴェンツァが元の姿を取り戻し、イゴールがベルベットルームに戻ってきた際に、蓮は自身に起こる異常を相談したことがあったのだ。その際にラヴェンツァから返ってきたのは「原因はあなた自身なのではないでしょうか？」との答え。全てのアルカナを束ね〝世界〟へと至った者は無限の可能性を持つ。その可能性の力はかなり特別なもので、あるいは世界を繰り返させることもあるのかもしれないと。彼らにも本当のところは分からないらしいし、ただの推測でしかないのだが、記憶を残すのが蓮だけなら原因もそこにあると考えるのは自然なことだろう。 　彼らは言った。蓮自身に繰り返しを起こすほど、強く望む何かがあるのではないかと。 　望みと言われても、蓮にはてんで自覚がなかった。いや、この１年に未練とか心残りがあるかと言われれば色々とあるにはある。ああすれば、こうすればと、後悔なんて生きていれば絶対に避けられないだろう。 　ああでも、もし……もし〝こうだったら〟という幻想が許されるのなら、一番最初に思い浮かぶのは。 「明智吾郎……」 　このループの中、何度も試行錯誤して、その度にこの手を振り払われた。 　自分が彼に殺されるか、彼が世界から消えるか。幾度繰り返してみても、彼と歩む未来は一つも見えない。 ＊＊＊ 「ストーカーぁ？」 　その声が響いたのは現在の蓮が居候をしているルブランの屋根裏部屋。集まっているのは、蓮とモルガナ、竜司に杏、そして先日怪盗団の仲間になった祐介。 　怪訝そうな表情を隠しもせず、竜司はモルガナの発したその単語を繰り返す。 「それってマジなの？」 　そう言って、心配そうに蓮の様子を窺う杏も、やはり信じられないようで。 「俺は気の所為じゃないかって言ったんだが……」 「オマエだって誰かに付けられてる気がするって言ってただろ！　ワガハイだけなら気の所為かもって思っただろうが……」 「なるほど。二人ともに何者かの視線を感じたということか」
March 30, 2025 at 3:15 PM
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「十握剣││。この国を産み出せし神々の携えたとされる神剣。普通ならば到底人の身には過ぎるものだ。先程の力といい、その身に纏う神気といい、穢れに侵されていた際には全く頭が回らなかったが。さてはて、どうしたものか」 　青年は緩やかな動作で顎に手を当てて考え込む仕草をしてみせる。とはいえ、その声には緊張感というものは感じず、まるで今日の夕飯は何かと思いを馳せる老人の様でもあった。 「俺からも一ついいか？」 「ああ」 「貴方の名前を教えてくれ」 　悠の問に青年は目を数度瞬かせた後、「はっはっはっ」とおおらかな笑い声を上げる。 「そうか、未だ名乗ってはなかったか」 「教えてもらってはない。このままでは俺の中で、貴方の呼称が〝謎の青年〟のままだ」 「このじじいを指して青年とは、些かむず痒いな。あいわかった、名乗ろう。俺の名は三日月宗近。天下五剣の中で一番美しいとされた刀剣。その付喪神だ」 　そう名乗った彼は桜の花弁が舞う中、澄んだ青い瞳で此方を見ながら一層美しく微笑んでいた。
March 24, 2025 at 3:37 PM
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ていたかもしれない。斬り結ぶ刃は重く、一瞬たりとも気が抜けない相手だ。 「あんたが何者か知らないけど、そっちが力づくで話しを聞かないってなら、こっちも力づくで話しを聞かせる！」 　相手が人以上の何かだというのなら遠慮などいらないだろう。悠は打ち合った剣に力を込めて青年を押し返し、その隙を付いて右手の内に青いアルカナカードを呼び出して握り潰した。 「イザナギ！」 　呼び出された黒い化身は、その手に持つ巨大な刃を薙いで青年の体を弾き飛ばす。弾き飛ばされた瞬間、青年を包んでいた黒い霧が一瞬揺らぎ、その表情に変化が見えた気がした。 　イザナギで青年の刃と斬り結ぶ度に黒い霧が徐々に吹き飛ばされ、同時に青年の気配も殺気から困惑へと変わっていく。黒い霧の多くが剥がれ落ち、イザナギの刃を受けた青年がふらついた。 「今だ！　イザナギ！」 　悠の言葉と同時に複数の雷撃が青年の周囲に降り注いぎ、剥がれ落ち漂う黒い霧を消し飛ばした。青年はその衝撃に吹き飛ばされ、背中を地面に打ち付けて小さく呻き倒れた。 　意識を失った狩衣の青年を見下ろして悠はこれからどうするか思案する。 　青年を何処かで休ませてやりたいが、屋敷からはまだ先程の黒い霧と同じ禍々しい気配を感じる。周囲を見渡すと一本の木が目に止まった。枯れて葉の一つも無いその木だが、まるで呼ばれているような気がして悠はその木の幹へと近付き、触れた。 　途端、暖かく強い風が一瞬に巻き起こり、ひらりと頬に何かが触れる。薄い、ともすれば白くも見える桜色。見上げるとそこには満開の桜が咲き乱れ、ひらりひらりと花弁を風に舞わせていた。 　周囲に比べて明るく見えるその桜の木の側へと、倒れた青年を運び目覚めを待つ。 　暫くすると青年は目を覚まし、先程の気迫が嘘の様に穏やか表情で「すまなかった」と一言謝罪を述べた。 「人の子よ。……いや、お主、本当に人間か？」 「間違いなく人間だ。恐ろしい事を言わないで欲しい」 　彼女達ではあるまいしと心の中で付け足す。 　悠は色々と巻き込まれたり首を突っ込んだりはしているが、間違いなく人間の腹から産まれた純人間だ。父も母も仕事人間で家に居ることが少なく記憶にも少ないが、ごくごく普通の人間だった筈だ。 　青年は悠の言葉に「ふむ」と目を伏せ思考する。 「その手にある刀剣。その名を知っているか？」 　と、悠の持つ赤い紅色の鞘に収められたそれを指して青年は問う。 　知ってはいる。知ってはいるが、それがこの剣のみを指す固有の名ではなく、複数の剣の総称だというのも本で読んだことがある。 「知らんのか？」 「いや、正確な名称がそれでいいのかと思っただけだ。これは〝十握剣〟。俺達はそう呼んでいる」 「なるほど……」 　呟いた青年はゆっくりと頷き、姿勢を正して悠を見据えた。
March 24, 2025 at 3:37 PM
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以前書いた刀剣✕P4(g)ss
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「刀剣✕P4」と記載されています。 以下は本文の内容です。 【曇天の空の下】 　鳴上悠は霧深い森の中で途方に暮れていた。立ち尽くすその身には嘗て戦いの中で身に纏っていた懐かしい学ラン、その手には神と斬り結んだ際に手にしていた一本の神の刃を冠した名の剣が握られている。残念ながら悠にはここに至るまでの記憶が一切ない。最後に覚えているのは、いつもの様に大学の授業もバイトも終えて家に帰り着き、食事と風呂を済ませた後に温かな布団に身を横たえた所までだ。勿論、着ていたのは部屋着で、手に剣など持ってはいなかった。高２の頃に手に入れたそれらは、神との戦いの後、処分するタイミングを見失い、思い出と共にそっとクローゼットの奥で眠っていた筈だった。 「まさか、またか……？」 　高校２年の頃から続いていた騒動は鳴りを潜め、その後無事受験も終わり、大学に進学してからは変わらない平和を享受していた。しかし、ペルソナ能力に目覚めたあの年から始まり、神を名乗るものとの何度かの遭遇を経て、何となくそういうものとの縁は切れないのだろうと覚悟を決めていた悠は、自身の認識を日常から非日常へと切り替える。そうすると、心の内側のペルソナの力を強く感じる事ができる。ということは此処 は、悠達の暮す現実世界とは別の、テレビの中の様な異世界なのだろう 「霧だが……。イザナミ……ではないな」 　周囲に広がる霧は確かに濃いが、あの世界を包んでいたそれとは違って、しっかりと湿り気を帯びている普通の霧の様だ。あの眼鏡があれば確認出来るだろうと思い、此処まであの時と同じならばと制服のポケットの中を調べてみる。指先にカツンと硬い感触が触れ、取り出して見ればやはり、使い慣れた黒フレームの度の入ってない眼鏡が手の中に収まっていた。そのまま確認の為にそのレンズを通して見てみるが、周囲は変わらず霧に覆われたままであった。周囲を見渡してみても変化は無く、この霧が唯の自然現象だと示している。それから、此処で立ち止まっていても何も変化は無さそうだと判断した悠は、一度眼鏡を外してから森の中を歩き始めた。 　暫く森の中を進んで行くと木々の切れ目の間を抜け、その先に黒く暗雲立ち込めた空が広がった。今、自身がいる場所は山だか何処かの高台らしい。眼下には庭のある和風の広い屋敷が佇んでいた。 　人の姿を探して屋敷へと近づいてみるが、其処は廃墟の様に静かで、所々屋根の端が崩れ掛けている。誰もいないのかと肩を落とし掛けたその時、障子戸の向こう側から微かに衣擦れの音が聞こえ、悠は神経を尖らせる。 「何者だ」 　障子戸の向こう側から声がした。それは低い男の声。年寄りではないが子供でもない、年若い青年の声だった。 「何者だ」 　もう一度、男の声は同じ質問を繰り返す。 「道に迷った。此処が何処か教えてほしい」 　悠の答えに男は不満だったらしい。こちらへ伝わる程の警戒と殺気を放つ。 「此処は迷うて入り込める場所ではないぞ。もう一度問う。何者だ」 「何者かと問われれば、俺の名は鳴上悠。唯の普通の大学生だ。迷ったというのは本当だ。気が付いたら後ろの山の中だった」 　この言葉に一切の偽りは無い。しかし声の主にとっては、それは到底あり得ない事 だったのだろう。 「世迷い言を。この隔絶された地に踏み入る事の出来る者など限られている。政府か、時間遡行軍か。どちらにしろこの地より去らぬというのなら……力づくでも出ていってもらう！」 　言うと同時に小気味好い音を立てて障子戸が開かれ、屋敷の中から一つの影が飛び出した。振りかぶられるあ輝きを、咄嗟に持っていた十握剣で防御すると、飛び掛かって来た男は目を見開いた。 　黒く柔らかな髪。整った容姿。青い狩衣の袖を靡かせて太刀を振るう青年は、その青い瞳を濁らせて、体から黒く禍々しい気配を撒き散らしながら悠へと攻撃を続ける。 「お主、人ではあるまい。鬼か、物の怪か」 「さっきも言っただろう！　俺は普通の大学生！　唯の人間だ！」 「只人が〝刀剣男士〟の刃を受けれる筈がないだろう」 　〝トウケンダンシ〟が何かは分からないが、青年の力も速さもは人のそれとしては明らかに逸脱している。悠もペルソナの補助無しでは、最初の一撃で体が真っ二つになっ
March 24, 2025 at 3:37 PM