加筆修正してこっちに貼ったよ
kakuyomu.jp/works/822139...

どうしてそのお話を？と疑問に思われているでしょう？
　ふふ、なんてことないです。私が愛していたその人のお子さんが貴方だからですよ。
私が彼に恋い焦がれ一人寂しい夜に貴方は生まれていただけです。
　ですが結局彼は、私の知らない女性と遠いどこかへ旅立たれましたね。
　何のことはないよくあるお話です。
貴方に対しては恨みなんてありませんよ。
さっ、ワインのおかわりはいかが？

　最初は気が付かないふりをしておりました。
　心に小さく爪痕がついたいましたが、やがて何度も何度も削られていく心には深く深く溝ができあがりました。
　気が付いた時には私の心を削る部分はもう残っておりませんでした。
薄く薄くなってしまった心は跡形もなく塵になり、気が付いた時には私は愛してやまなかった男の元から去っていました。
　熱く抱かれたあの日々も、優しく髪をなでられた日も遠い昔話です。
かつては煌びやかに見えていましたが、今では霞んで見えております。
　つまらないお話ですわね。ごめんなさい。

日付が変わっても彼の帰りを待つ日々が続きました。
　「待っていなくてもよい」と伝えられましたが、そうもいきません。
わずかでもあなたの姿を見たいからと伝えて床に着いたものです。
それで相手に見切りをつけて私も諦めればよかったのですが、心の底から惚れていたものですからやがて彼が夢中になっている仕事に対して得も言わぬ嫉妬心が沸沸とわいたのです。
　あぁ、私が、私が、貴方の夢中になっているもの立ったどれほど良いものか。

　さて、私が愛した人というのはそれはとても素晴らしい人でした。
が、年をとった今思い起こせばろくでもない男でありました。
　若く幼い私にはとても煌びやかな世界に住む住人に見えておりましたが、反転してみると手に入れたものには顧みない男でもありました。
　よく言えば仕事人間、悪く言えば釣った魚に餌をやらない男です。
　元来私も仕事人間です。凝り固まった固い頭をもっておりましたので、仕事に一途なその姿勢が魅力的でもありました。
　しかしそれは最初だけでした。おのずと己の寂しさに首が締まって行くことに気が付いたのです。
#泡のような話

「わかりました。少し休憩をしましょう」

　ほどなくして刑事たちは部屋を一時的に離れた。

「父親の話をどうおもう？」
「どう、と言われても」
一寸間をおいて言葉を選びながら続けた。
「ひとまず子どもの通院歴などを調べるしかないですね」
「そうだよな」
指先で眉尻を掻いた刑事がぼそりといった。
「どうしてあの子というんだろうな」

　柔らかい虐待の気配を感じた。

「それだけではありません、あの子は公園の動物を殺していました。親の私が言葉に出すのもおぞましい程です。そしてあの日、あの子は幼い妹の上に覆いかぶさろうとしていたのです。」
　刑事はぎょっとした。事態は思っていたよりもより深刻な問題だったからだ。
「あの日、私が拳をふりあげなかったら娘が犠牲になっていたでしょう。私に手錠がかかる代わりに娘が助かるのでしたら安いものです。病歴などはそちらで調べていただいて結構です。あの子には長くカウンセリングを通わせていますが、攻撃性が増すばかりです。もうどうにもできません」
うなだれる父親に刑事たちは困ったようにつぶやいた。

　「そうですか」
　父親はまるで心に響かないような返事だった。
　「それでは刑事さんは、あの子が誰かを殺すまで私にただ話を続けろというのですか」
　刑事は言葉を飲んだ。
　「あの日、あの子はカウンセリングから帰ってきたばかりでした。あの子には狂暴な側面があります。学校でも粗悪な行動が問題視されているのです。」
　父親の言葉は静かに続いた。

つまり人にとってヒト型鳥類というものは万能薬だった。
だから「神」としてあがめて大切に大切に飼育していたのだ。
　しかし悟られてはいけない。故に宗教のように見せていた。

　その実態は養鳥場である。
今日も人は考えが異なるヒト型鳥類を自死に導くように静かに言葉の毒を吐き続ける。

「いいえ、あなたは神です。わたしとは異なる存在です」

#泡のような話

稀に白い翼をもつヒト型鳥類でも頭の良いものがいた。
　本来の姿に戻ろうとしたのだ。風切羽を切らせないようにふるまい、空を自由に飛んでいた。そして自身を人と同じ存在だと声高らかに種に訴えるが誰もが鼻で笑っていた。
　人にも同じように訴えるが人は「自分たちよりも上位の存在だ」と頑なに受け入れないようにしていた。
　一貫してそのような対応をとると、やがてそのヒト型鳥類は自死を選ぶ。
　人の本当の狙いはその肉であった。
白い翼をもつヒト型鳥類には人には存在しえない特異な免疫があったからだ。
#泡のような話

本来、白い翼を持ったヒト型鳥類は空高く飛ぶ種であった。
が、それを封じたのは人であった。
空から大きな羽音を響かせてパールのように輝かせる白い翼は
「神の降臨」」を思わせたからだ。
　彼らは魔よりも神を心底恐れたのだった。
だから「危険」を謳い、空を飛ぶ事を封じ、人の神として祭り上げて地上にとどまるようにしたのだ。
しかしどうだろうか、人の本当の狙いは白い羽をもとめていたのだ。
　空を飛ぶには風切り羽が必要だ。人は意図してその羽に価値をつけて、ヒト型鳥類のお世話を理由に羽を切っていたのだ。
　そしてお守りとして売っていたのだ。
#泡のような話

生命には階級があった。
人はその階級の中で上位に存在していた。
人が憧れる存在は白い翼をもつ鳥類の変異を持った人だった。
つまり人の上にはヒト型鳥類がいた。
しかしその中でも特に忌避されたのは黒い翼をもったヒト型鳥類だった。
　彼らは魔を呼ぶ存在と言われて、階級の中では最下位の存在だった。
しかし、彼らはヒト型鳥類の中でも空を自由に飛ぶ事が出来る種だった。
翼を大きく広げて空を切るように飛んでいた。
漆黒の翼と大きな羽音は人を怯えさせるには十分な存在だった。
一方で空を飛ぶ事をあきらめた種もいた。
白い翼をもつ種だった。
#泡のような話

種の多くは空を舞う事をあきらめた。
　自身も空を切る事も出来ない翼の状態になった。
それでも人は自分を人として認めず、相変わらず神と言い続ける。
　不意に彼は崖を上った。自分は人だと大きな声で叫んだ。
そしてその証明をすると言って、崖から飛び出した。
広げる翼に羽はなく、そのまま真っ逆さまに落ちた。
　鈍い音共に地面は血に濡れ、あたりには小さな肉片が飛び散った。
　人はそのモノの周りに集まり、赤い肉片を大切に大切に皿や籠に盛った。
「さぁ、今日はごちそうだよ。神様の肉だよ。健やかに育ちなさい」
　そういって幼い子ども達に食べさせた。

「私は神ではない。あなたと同じ生き物で、同じ人間だ」その翼をもつものは毎日、訪れてくるさまざまな人間にそういい続けた。
しかし皆、判を押したように「いいえ、貴方は神聖な存在」と言い続けた。
　そしてそのモノは気が付いた。
「翼をなくせばよいのか」と。
毎朝、羽をむしる日が始まった。血をにじませながら少しずつむしった。
白い羽がそのモノの周りを少しずつ埋めていく。
世話をする人が「あぁ、今日も・・・」と呟きながら、散らばっている羽を丁寧に集めてもっていった。
やがて翼の羽は綺麗になくなった。が、それでも人は「あなたは神聖な存在ですから」と言った。

神の化身だと言われた白翼の種はやがてその翼を大きく広げて空を舞う事を辞め、翼を引きずりながら歩いた。
　ただ座るだけの毎日、口を開けば食べ物を与えられる生活に醜く大きく太っていった。
　そのような中で特異な考え方をもったモノもいた。
「私は神ではない。あなたと同じ人間だ。どうかわたしを神と言うのは辞めてほしい。そして、あなたとお話をしたい」
　翼をもたない人は首を傾げた。
「あなたは我々よりも多くの可能性を持っている。私たちとは異なる神聖な存在、恐れ多い事です」
　人はそういって頭を下げて跪いた。

九州？