大半のポストはTwitterからの転載・マイナーチェンジです。
続きがあってもよさそうなところを、物語はこの一冊で終わりとなる。滅びが決まった二人の旅路をあえて最後まで見せないという空白の余韻があってこその物語なのかも。
続きがあってもよさそうなところを、物語はこの一冊で終わりとなる。滅びが決まった二人の旅路をあえて最後まで見せないという空白の余韻があってこその物語なのかも。
この辺の調整として、物語の舞台が北海道なのは人間がいない世界の荒廃感をオブラートに包んで不思議とワクワクする旅路に変えるうえでかなり大きな仕事を果たしてると思う。街が出てきた瞬間めちゃくちゃ殺伐としたからね。
この辺の調整として、物語の舞台が北海道なのは人間がいない世界の荒廃感をオブラートに包んで不思議とワクワクする旅路に変えるうえでかなり大きな仕事を果たしてると思う。街が出てきた瞬間めちゃくちゃ殺伐としたからね。
本作に登場する「人類」、よく見ると各章ごとに生物種ごとまるっと入れ替わってると思うんだけど、そんなスケールのデカさを300ページ足らずの物語として纏め上げた手腕に感心する。
本作に登場する「人類」、よく見ると各章ごとに生物種ごとまるっと入れ替わってると思うんだけど、そんなスケールのデカさを300ページ足らずの物語として纏め上げた手腕に感心する。
とはいえ、それが作品の魅力を損なうことは一切ないし、想像よりも景気のいい動機だったので満足。「もうすぐ終わる世界で人間を殺す理由」としてメインテーマと密接に結びついたとてもいいホワイダニットを見せてくれたと思う。
とはいえ、それが作品の魅力を損なうことは一切ないし、想像よりも景気のいい動機だったので満足。「もうすぐ終わる世界で人間を殺す理由」としてメインテーマと密接に結びついたとてもいいホワイダニットを見せてくれたと思う。
fusetter.com/tw/ogSZIW0X#...
このミステリパートがあったからこそ終わる世界を悲観せず生きられるようで逆説的な爽やかさがある。
終わりのシーンが本当に美しくて、未来への希望でもなく諦めでもなく、ただやりたいことを最後のときまで続ける人間の在り方にはどうしようもなく惹かれてしまう。
fusetter.com/tw/ogSZIW0X#...
このミステリパートがあったからこそ終わる世界を悲観せず生きられるようで逆説的な爽やかさがある。
終わりのシーンが本当に美しくて、未来への希望でもなく諦めでもなく、ただやりたいことを最後のときまで続ける人間の在り方にはどうしようもなく惹かれてしまう。
ミステリ面については、警察があてにならずまともな犯罪捜査が期待できない世界で捜査を続けるのは終末設定に限らずジャンルの様式美的状況ではある。そういう意味であまり「特殊設定」らしさはないけれど、ただ状況が特異なだけに普通のミステリではありえないような派手な犯行現場が描かれるのは面白い。
ミステリ面については、警察があてにならずまともな犯罪捜査が期待できない世界で捜査を続けるのは終末設定に限らずジャンルの様式美的状況ではある。そういう意味であまり「特殊設定」らしさはないけれど、ただ状況が特異なだけに普通のミステリではありえないような派手な犯行現場が描かれるのは面白い。
本当によかった……。死後の人間をAIとして残す技術を極限まで突き詰めたとき、生者と死者の境はどこにあるのか。死と生、バーチャルアイドルと中の人という二つの"虚実"が物語のなかで混じりあいその境がとけてなくなっていく展開は本当に圧巻。
本人を限りなく正確に模したAI人格というともすれば"偽物"扱いされがちなガジェットに、さらにバーチャルアイドルというもう一枚の虚をかぶせることでそこに魂を見いだすにまで至るの、テクノロジーが死生観さえ超えていく俺が見たかったSFそのものでガチで感動してしまった。
本当によかった……。死後の人間をAIとして残す技術を極限まで突き詰めたとき、生者と死者の境はどこにあるのか。死と生、バーチャルアイドルと中の人という二つの"虚実"が物語のなかで混じりあいその境がとけてなくなっていく展開は本当に圧巻。
本人を限りなく正確に模したAI人格というともすれば"偽物"扱いされがちなガジェットに、さらにバーチャルアイドルというもう一枚の虚をかぶせることでそこに魂を見いだすにまで至るの、テクノロジーが死生観さえ超えていく俺が見たかったSFそのものでガチで感動してしまった。
なんだこれ……。「宗教性原虫」という生物が存在するようにも、単なる信仰の伝達の暗喩のようにもみえて読んでるうちにわけがわからなくなる。原虫の学名がいちいちそれっぽいのは笑う。詳しい人がクスッとできる小ネタがたくさん散りばめられてそうな雰囲気はある。俺にはわかんないけど。
「姫日記」
眼鏡っ子美少女毛利元就のもとで全国統一をめざす軍師を数々のクソみたいなバグが襲う。
戦国美少女ゲーのパロディかと思ったら実在するゲームでアホほど笑った。柴田勝家オリジンじゃん。いいのか、これがオリジンで。KOTYの記事と合わせて読みたい一作。
なんだこれ……。「宗教性原虫」という生物が存在するようにも、単なる信仰の伝達の暗喩のようにもみえて読んでるうちにわけがわからなくなる。原虫の学名がいちいちそれっぽいのは笑う。詳しい人がクスッとできる小ネタがたくさん散りばめられてそうな雰囲気はある。俺にはわかんないけど。
「姫日記」
眼鏡っ子美少女毛利元就のもとで全国統一をめざす軍師を数々のクソみたいなバグが襲う。
戦国美少女ゲーのパロディかと思ったら実在するゲームでアホほど笑った。柴田勝家オリジンじゃん。いいのか、これがオリジンで。KOTYの記事と合わせて読みたい一作。
人類滅亡後の地球に住みついた人間を模した生命体がほんものの寿司を食べる話。ほのぼの。背景生物に紛れ込んだ本物のトキを追って市街の外れに出ると水没した都心の荒廃した光景が現れるくだりがいちばん好き。
「人間」として暮らすうちに実存しない背景生物をひとつの人格として扱うようになり、次第に虚実の境界が溶けて人間みたいな反応になっていく。海に出て釣りをする異星人や稲を育てる異星人の姿にクスッとしつつも、その妙に人間的営みに独特の情緒が感じられる。
人類滅亡後の地球に住みついた人間を模した生命体がほんものの寿司を食べる話。ほのぼの。背景生物に紛れ込んだ本物のトキを追って市街の外れに出ると水没した都心の荒廃した光景が現れるくだりがいちばん好き。
「人間」として暮らすうちに実存しない背景生物をひとつの人格として扱うようになり、次第に虚実の境界が溶けて人間みたいな反応になっていく。海に出て釣りをする異星人や稲を育てる異星人の姿にクスッとしつつも、その妙に人間的営みに独特の情緒が感じられる。
「オンライン福男」
『ポストコロナのSF』で読んだやつ!パンデミック後のオンライン化が神事にまで及ぶおかしみから始まり、謎に壮大なeスポーツを経て人と人との繋がりに帰着するの、与えられたお題を完璧に活かしててすごい。「もう普通に走ればいいじゃん」でほっこり締めるラストの温かさが好き。
「クランツマンの秘仏」
異常論文ブームのさきがけとなった短編であり、いつかの無料公開で読んだやつ。「信仰は質量を持つ」という奇想から負の質量という発想に飛躍し、異常なホワイダニットじみたラストを補強していくのは秘仏に取り憑かれた一人の男の妄念が感じられてよい。
「オンライン福男」
『ポストコロナのSF』で読んだやつ!パンデミック後のオンライン化が神事にまで及ぶおかしみから始まり、謎に壮大なeスポーツを経て人と人との繋がりに帰着するの、与えられたお題を完璧に活かしててすごい。「もう普通に走ればいいじゃん」でほっこり締めるラストの温かさが好き。
「クランツマンの秘仏」
異常論文ブームのさきがけとなった短編であり、いつかの無料公開で読んだやつ。「信仰は質量を持つ」という奇想から負の質量という発想に飛躍し、異常なホワイダニットじみたラストを補強していくのは秘仏に取り憑かれた一人の男の妄念が感じられてよい。
崩壊後の世界で効率重視の新たな秩序を築こうとする人々、視力を失った人を見捨てられない人々、キリスト教的価値観に縋る人々、封建制を復活させようとする人々。いろんな派閥が出てきてたぶん作者的にいちばん書きたかったのはここなのかな〜と。
このように内容としてはかなり社会的なんだけど、主人公がヒロインの行方を探して荒廃したイギリスを旅するロードムービー的な側面も強くて素直に読みやすい。やっぱり滅びた世界は旅してなんぼよね。一冊で終末世界を様々な方向から味わいつくす、まさに人類滅亡作品の金字塔的作品でした。
崩壊後の世界で効率重視の新たな秩序を築こうとする人々、視力を失った人を見捨てられない人々、キリスト教的価値観に縋る人々、封建制を復活させようとする人々。いろんな派閥が出てきてたぶん作者的にいちばん書きたかったのはここなのかな〜と。
このように内容としてはかなり社会的なんだけど、主人公がヒロインの行方を探して荒廃したイギリスを旅するロードムービー的な側面も強くて素直に読みやすい。やっぱり滅びた世界は旅してなんぼよね。一冊で終末世界を様々な方向から味わいつくす、まさに人類滅亡作品の金字塔的作品でした。
これがゾンビだったら差し当たってゾンビ対策に明け暮れることになりそうだし、中盤の再興社会論みたいな話にはならないだろうな……と。
これがゾンビだったら差し当たってゾンビ対策に明け暮れることになりそうだし、中盤の再興社会論みたいな話にはならないだろうな……と。
その点、トリフィドというクリーチャーの強さバランスの設定が絶妙すぎる。歩くし増えるし知性もある中距離即死攻撃持ちクソデカ殺人植物、ただしフルフェイスのヘルメットで攻撃は防げるし「トリフィド銃」とかいう兵器で普通に倒せるし火炎放射器でまとめて焼き払うこともできる。人類は直ちに滅びないけどいずれジリ貧だよねくらいの絶妙な強さ。
その点、トリフィドというクリーチャーの強さバランスの設定が絶妙すぎる。歩くし増えるし知性もある中距離即死攻撃持ちクソデカ殺人植物、ただしフルフェイスのヘルメットで攻撃は防げるし「トリフィド銃」とかいう兵器で普通に倒せるし火炎放射器でまとめて焼き払うこともできる。人類は直ちに滅びないけどいずれジリ貧だよねくらいの絶妙な強さ。
ともすればパニックものとして進んでいきそうな序盤から一転、様々な勢力が人類社会の秩序を回復させようと戦い始めるけれど、いろんな主義主張の集団が次々と登場してさながら社会的思考実験の様相を呈してくるあたりかなり独特で面白い。むしろこの再建パートがメインコンテンツですらある。
ともすればパニックものとして進んでいきそうな序盤から一転、様々な勢力が人類社会の秩序を回復させようと戦い始めるけれど、いろんな主義主張の集団が次々と登場してさながら社会的思考実験の様相を呈してくるあたりかなり独特で面白い。むしろこの再建パートがメインコンテンツですらある。
トロピカルな因習に従って少女を生贄にささげる島の話がカー・ブラックホールをエネルギー源とする情報生命体が観測する宇宙の終焉に準えられていく。作者曰く「とにかく時間のスケールがデカい話を書きたかった」とのことで、SFならではの舞台の飛躍があり景気がよい。
トロピカルな因習に従って少女を生贄にささげる島の話がカー・ブラックホールをエネルギー源とする情報生命体が観測する宇宙の終焉に準えられていく。作者曰く「とにかく時間のスケールがデカい話を書きたかった」とのことで、SFならではの舞台の飛躍があり景気がよい。