幸盛
LightNews LightNews
banner
kabe1134.bsky.social
幸盛
@kabe1134.bsky.social
3 followers 7 following 11 posts
成人済 腐女子
（影日／兎赤／黒研）
Posts Replies Media Videos
kabe1134.bsky.social
（2/2）
「は……」 「赤葦の卒業式だから祝いに来た！　おめでとう赤葦！」 　受験頑張ったなぁ！　自分のことみたいに喜んで抱きしめてくる。たった二ヶ月前の春高のことを思い出して鼻の奥がツンとした。 「文学部？　が何するとこか俺わかんねーけどお前がやりたい事をできる場所なんだろ？　凄いよお前は」 「あ、りがとう、ございます」 「春高の時は言えなかったし、木葉達にも言うなって言われてるけど、俺しょーじき言うとお前がバレーやめるのすっげぇ嫌！」 　何の嘘も捻りもない言葉に視界がじわじわと滲んでいく。ハンカチはカバンの中だし、そのカバンは抱きしめられた時地面に落ちた。 「たまには俺にトス上げてよ。休みの日、黒尾とか他の皆集まってバレーしようよ」 「……俺は、もう木兎さんのセッターじゃないですよ」 「何言ってんの」 　するりと背中に回っていた腕が離れて木兎さんが適正な距離をとる。晴れやかな陽の光の下で髪も目もキラキラとしている。 「お前はいつだって俺にとって特別なセッターだよ」 　木兎光太郎。名前通りに太陽みたいで、眩しくて、下手をすれば目を焼かれる。 　俺の光。 「……俺、木兎さんとバレーできて良かった」 「んはは！　言うの遅ェって！」 　もう一度強く抱きしめられて、会わない間にまた筋肉がついたらしい身体が憎くてその肩に思いきり目元を擦り付ける。 「ね、赤葦。大学って実家から通う？」 「そのつもりですけど」 「じゃあさ！　俺とルームシェアしよう！　俺が赤葦のお母さんに話するし、ちょっとだけど多めに金出すから！」 　何を突然この人は。そういう話はもっと前もってするもので、こんな年度の切り替わり誰も彼もが生活が変わるタイミングで切り出すものじゃない。 　そう言おうと思って、気がつく。もしかして俺が落ち着くまで待っていたのだろうか この人は。 「俺、お前と連絡の取れなかったこの一年とチョット分取り戻したい」 「……」 「そばにいてよ、赤葦」 　 　随分と。随分と大人びた笑い方をするようになった。目を細めて慈しむみたいな笑い方を俺は知らない。この一年でそれだけこの人が大人になってしまったこと。それを馬鹿みたいな拗らせ方で見逃してしまったことが悔しい。 　俺は、俺の光をいつまでもそばで見ていたい。 　仕方ないですね。そう取り繕って承諾をした俺は上手く笑えているんだろうか。
January 10, 2025 at 7:59 AM
kabe1134.bsky.social
（2/2）
「あぇ……？」 　記憶の引き出しをひっくり返す。確かに高校生の時、あの時も急に『影山の誕生日だ！』って思い出して渡しに行ったことがある。 　それを覚えていた？ 　あんな、百円にも満たないプレゼントを？ 「あの時飲んだのが一番美味かった……気がする」 「は、」 　大人になって影山はあの頃より少し丸くなって言葉数が増えた。だとしても、こんな事を言うやつだった？ 　店内の暖房のせいじゃない熱がガッと顔に集まって心臓鷲掴みにされたみたいな苦しさが襲う。 　は、恥ずかしいやつ！ 「ッ今さら別のが良いって言っても変えねえからな！」 「おう」 　そんな嬉しそうに返事すんな！ 　おれは自分の分も追加で手に取ってレジに向かった。 　学校内の特別価格じゃないし、そもそも物価が上がってるからあの頃より何十円も高い。 　それだけの時間が流れてもこいつの中で自分がした何となくのプレゼントがずっと残っていたことが嬉しくて恥ずかしくて。 　久々に飲んだぐんぐんヨーグルは懐かしい甘酸っぱさだった。
December 18, 2024 at 1:13 PM