昼過ぎに入った絵里からのメールに『ええよ』と返す。
今年のクリスマスは以前から当日会うのは難しいと言われていたから、気にしなくていいのに。
でも、裏返すとそれは当日もなるべく会いたいと思っていてくれたという事だ。
だから別に会いに来てくれるのを待たなくても私から行けばいいのだと気付き、退社後絵里の部屋へと直行する。
小さなケーキとワイン、そしてサンタの衣装を用意して出迎えれば、ぽかんと口を開けて驚く姿が可愛くて。
「メリークリスマス、えりち」
冷たい頬を両手で挟み、息を吹き込む様に口付ける。
今年のサンタはプレゼント込みだから。
赤い衣装を脱いでも、ずっとあなただけのもの。
こころから感謝しております!🙏🙏
大切なことなので、二度言わせていただきました🙇♀️
こころから感謝しております!🙏🙏
大切なことなので、二度言わせていただきました🙇♀️
くたりと甘える様もとろりと蕩けた瞳も、酒ではなく彼女に酔うには十分で。
お酒の代わりにその唇を啜り、チーズの代わりに白い肌を食んで。体中に所有印を刻み込み心地好い眠りについた翌朝、この充足感は夢かと思いきや脳裏に蘇るむせ返るような記憶に緩む頬。
昨日までの親友で今朝からの恋人はまだ眠っているだろうかと伺えば、盛り上がったシーツの塊に笑みが零れた。
「どんな顔で話せばいいんよ」
小さく聞こえる声は、希も覚えている事の表れで。
どんな話よりまずは恋人としてのキスをしようと、そのベールを剥ぎ取りにかかった。
30本溜まったのでアップ。
X(旧ツイッター)とBlueskyに載せていたSSです。大体140字と300字ですが、たまに書き足してます。
30本溜まったのでアップ。
X(旧ツイッター)とBlueskyに載せていたSSです。大体140字と300字ですが、たまに書き足してます。
でも、何も気にしない訳でもなくて。だからといってその理由も言えなくて。
「お付き合いは卒業まで内緒って、うちから言ったんやもん」
だけど。
尖る唇を隠すように引き結んだ所へ、投げかけられた問いに頭が真っ白になった。
「絢瀬さん、心に決めてる人がいるんだって。知ってる?」
知ってる?と言いつつ、その視線に滲む『あなたじゃないの?』という声に慌てて首を振る。
「えりち!何言ったん?」
渦中の人物へ会うなりそう問えば、涼しい顔で「誰かは言ってないもの」なんて笑う彼女。
確かに言っていないけど。世間ではそれを匂わせと言うんです。
「えりちと眠るのとお喋りするのと遊ぶ時間が同じだけ欲しいなぁ」
希の部屋に泊りに行った際、床を並べながらも眠るのが惜しい理由をしみじみと語って。
もしも願いが叶うなら、一日の時間を倍にして欲しいなんてぐずる彼女を「可愛いお願いね」と宥めつつ、頭の中では絶対実現させると決めたのだ。
だって、そう思っていたのは私も同じだから。
同じ大学への進学を前に、全て整ってから同居を持ちかければ目を丸くする希へ合鍵を手渡す。
「願い、叶えたわよ」
一日が二十四時間なのは変えられないけど。一緒に居る時間を増やすのは、互いにその気があれば容易い事。
そりゃ全部食べたくなっちゃうよね!かわいい〜🥰🥰🥰
そりゃ全部食べたくなっちゃうよね!かわいい〜🥰🥰🥰
そう言って訪れた絵里は緊張した面持ちで。多分言いたい事があって来たのだろうと思った。
頂き物と言う割に包みは絵里の最寄り駅の店の物だし。改まった話なら食後がいいだろうと、まずはすき焼きを楽しむ事にした。
普段より確実に上等な肉に満足感に浸っていれば、同様に寛いでいた絵里がぽつりと言う。
「このままここに住んじゃおうかしら」
その軽い口調の割に真剣な表情に、これが彼女の『言いたい事』なのだろうと確信する。
「ええんやない」
なので同様に軽く返せば「いいの?」と驚く彼女。
まあ、今でも十分住んでるようなものだけど。
「ええよ」
そんな訳で、『いい肉の日』は私達の同棲記念日。
段々と冷え込みが強まって来た朝の通学路で、私の手を何度も確かめるように握りながら希が言う。
「そうかしら?別に寒くはないのだけど」
確かに私の指先の温度は一年中変わらないような気もするけど、それで不都合が生じた事はない。
むしろ睦み合う時には、夏場はひんやりしていると希が心地よさそうにするし、冬は冬で敏感に反応してくれるしで利点ばかりだ。
それに。
「希がずっと握っててくれたら、そのうちあったまるんじゃない?」
こうして恥ずかしがり屋の彼女が、人前で手を繋いでくれる理由にもなるから。
いつまでも温まらなくていいと思いつつ、きゅっとその愛しい人の手を握り返した。
逆光の中でも爛々と輝くその双眸は肉食獣を思わせる鋭さで。
そのまま見詰めていれば視線に気付き、甘えるように鼻を摺り寄せてくる彼女。
「わんちゃんみたいやなぁ」
「狼の間違いでしょ?」
くすぐったさに笑みを零しそう言うと、不服気に返しつつ肩口へ降りていく唇。
舐めて、吸って、なぞりあげて。
戯れみたいな愛撫に身を委ねていると、突然歯を立てられ跳ねる身体。
「ダメよ? 油断したら」
希はこれから食べられるんだから。
そう続ける彼女へ今度は自ら手を伸ばす。
「ええよ、美味しく食べてな?」
ねぇ、だって。この美しい獣を満たせるのは私だけ。
ゴッドざわわさん、ありがとうございます✨✨✨🙏🙏🙏
ゴッドざわわさん、ありがとうございます✨✨✨🙏🙏🙏
まだ私達の関係が誰から見てもいい婦妻だと思われる世の中ではないし、この先も難しいだろう。
でも私は世間などどうでもいいのだ。
それより、世間を気にして私を殊更幸せにしようと意気込む絵里の方が気掛かりで。
幸せの尺度を私の顔から測ろうとする彼女にある日待ったをかけた。
「それじゃあ喧嘩もできないやろ?」
怒りもすれば喧嘩もする。
気遣われるより本音で接してほしいのだと続ければ、肩で息を吐く彼女。
「そうね。誰に向けたアピールよって話よね」
「そうよ、まず互いが笑顔な事やろ?」
この先もずっと二人で歩むと決めたのだから、大切なのはまず笑顔と互いの歩幅を合わせる事。