ひと粒で2度おいしい。
アルフレッド・ステヴァンス『この上ない幸福』
アンリ・マティス『会話』
ひと粒で2度おいしい。
アルフレッド・ステヴァンス『この上ない幸福』
アンリ・マティス『会話』
「逃亡くそたわけ」の記憶が朧げだったので、続編と意識せず読んだ。双極性障害の花ちゃんが、結婚して子育て中にコロナ禍で感じた二年半の記録。自分の直感すら怪しくなり、同調を強いられる状況を鈍化して過ごしたあの時の空気を思い出した。辛くて面倒でも、生活は終わらなくて続けるしかない。「まっとうな人生」ってどんなだろう。リスクがなくても正解ばかりで実体のない人生は味気ない。富山弁で「つかえん」は大丈夫の意味と知り、この作品の中で象徴的な言葉だなと思った。まともでなくても、まっとうな人生を。
「逃亡くそたわけ」の記憶が朧げだったので、続編と意識せず読んだ。双極性障害の花ちゃんが、結婚して子育て中にコロナ禍で感じた二年半の記録。自分の直感すら怪しくなり、同調を強いられる状況を鈍化して過ごしたあの時の空気を思い出した。辛くて面倒でも、生活は終わらなくて続けるしかない。「まっとうな人生」ってどんなだろう。リスクがなくても正解ばかりで実体のない人生は味気ない。富山弁で「つかえん」は大丈夫の意味と知り、この作品の中で象徴的な言葉だなと思った。まともでなくても、まっとうな人生を。
詩のような、散文のような、不思議な小説。夜中にひとり、降ってくる雪を、音を吸われ無音の雪明かりの中で見上げているような気持ちになった。綺麗で清らかで、淋しくて冷たい。再生と喪失、絶望と恢復。第二章の「白く笑う」「白髪」「薄紙の白い裏側」「魂」が特に心に残った。空白blankと白blank、黒blackと炎Flameはみな同じ語源だなんて知らなかった。生と死、光と闇はワンセットなのだと改めて思う。作家の言葉、斎藤真理子さんと平野啓一郎さんの解説を読んで、なに!?となり続けて読み返した。
#すべての白いものたちの
詩のような、散文のような、不思議な小説。夜中にひとり、降ってくる雪を、音を吸われ無音の雪明かりの中で見上げているような気持ちになった。綺麗で清らかで、淋しくて冷たい。再生と喪失、絶望と恢復。第二章の「白く笑う」「白髪」「薄紙の白い裏側」「魂」が特に心に残った。空白blankと白blank、黒blackと炎Flameはみな同じ語源だなんて知らなかった。生と死、光と闇はワンセットなのだと改めて思う。作家の言葉、斎藤真理子さんと平野啓一郎さんの解説を読んで、なに!?となり続けて読み返した。
#すべての白いものたちの
人生はうんざりするほど長く、老いるとは、一つずつ失っていくことだと捉えると辛い。母である「私」は自分のキャリアを犠牲にして育てた娘が、高学歴ながら非正規雇用のレズビアンであることが受け入れられない。他人事に必死になれる娘や、ジエンが理解できない。不寛容は固定観念の呪いなのか、辛いから頑ななのか。痴呆症の社会活動家ジエンを介護することで、利他の境地に近づく「私」は、娘を理解する「奇跡」を起こせるか。LGBTQや母娘、老いについて、容赦なく描くキム・ヘジンさんの強い文章に圧倒された。他の著書も読んでみたい。
人生はうんざりするほど長く、老いるとは、一つずつ失っていくことだと捉えると辛い。母である「私」は自分のキャリアを犠牲にして育てた娘が、高学歴ながら非正規雇用のレズビアンであることが受け入れられない。他人事に必死になれる娘や、ジエンが理解できない。不寛容は固定観念の呪いなのか、辛いから頑ななのか。痴呆症の社会活動家ジエンを介護することで、利他の境地に近づく「私」は、娘を理解する「奇跡」を起こせるか。LGBTQや母娘、老いについて、容赦なく描くキム・ヘジンさんの強い文章に圧倒された。他の著書も読んでみたい。
つい世間の高評価を無意識に選んでしまう。ハイスペックな夫には桃嘉の言葉が通じず、自分の解と同じだと疑わない。心も体も傷つけていることに無自覚。台湾と日本という異なるルーツを持ちながら、お互い尊重し、理解する努力を怠らない桃嘉の両親みたいな夫婦はどのくらいいるんだろう。「一見優しそうに見えるけど激しい」絵を描く桃嘉は、自分であることを選び直せた。魯肉飯のルビはルーローハンではなくロバプン。複雑な歴史背景を持つ台湾。ナイーブな話だけれど、中国語や台湾語の心地よいさえずりが聞こえる温さんの文章は透明で柔か。
つい世間の高評価を無意識に選んでしまう。ハイスペックな夫には桃嘉の言葉が通じず、自分の解と同じだと疑わない。心も体も傷つけていることに無自覚。台湾と日本という異なるルーツを持ちながら、お互い尊重し、理解する努力を怠らない桃嘉の両親みたいな夫婦はどのくらいいるんだろう。「一見優しそうに見えるけど激しい」絵を描く桃嘉は、自分であることを選び直せた。魯肉飯のルビはルーローハンではなくロバプン。複雑な歴史背景を持つ台湾。ナイーブな話だけれど、中国語や台湾語の心地よいさえずりが聞こえる温さんの文章は透明で柔か。
産むことは自分で決められるけど、生まれることは選べない。言葉が足りない巻子と緑子が卵を頭に叩きつけながら伝えた気持ち。紺野さんは自分かと思った…。生きていく上で「けれど」が現れる怖さ。誰とも違う自分の子どもに会いたいと、AIDを考える夏子。男は不要、シングルで子を溺愛する遊佐。AID当事者で性的虐待を受け、反出生主義の善さんの「生まれてきたことを肯定したら、私は一日も生きていられない」に胸が詰まる。子供より仕事を選び死す仙川さん。おんなの物語だと強く思った。川上さんの文章、リズムにぐわんと揺さぶられた。
産むことは自分で決められるけど、生まれることは選べない。言葉が足りない巻子と緑子が卵を頭に叩きつけながら伝えた気持ち。紺野さんは自分かと思った…。生きていく上で「けれど」が現れる怖さ。誰とも違う自分の子どもに会いたいと、AIDを考える夏子。男は不要、シングルで子を溺愛する遊佐。AID当事者で性的虐待を受け、反出生主義の善さんの「生まれてきたことを肯定したら、私は一日も生きていられない」に胸が詰まる。子供より仕事を選び死す仙川さん。おんなの物語だと強く思った。川上さんの文章、リズムにぐわんと揺さぶられた。