逍遥遊紀行
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日本中世史/中近世移行期/社会経済史
Historian of the Medieval Japan. Socio-economics
黒田明伸『貨幣システムの世界史ーー〈非対称性〉をよむ』(岩波書店、2003年)
>>改めて凄い本だな。痺れながら読みきった。当時における貨幣史の常識的な理解を大分吹き飛ばしたであろう。「貨幣は流れるべきものであるがゆえに、逆に流れすぎないようにも設計された存在だということである」。
November 2, 2025 at 6:17 AM
大胡友暉「天正年間における「唐国」「仰付」をめぐる再検討」(『戦国史研究』90号、2025年)
>>拝受読了。天正13年の加藤光泰を非難した秀吉朱印状の「唐国」まで「仰付」の解釈を改める。秀吉の「唐入り」構想に関わる堀説批判であり、今後の進展が楽しみ。
October 13, 2025 at 1:41 PM
木下竜馬「地頭設置の政治過程ーー頼朝の戦略」(『史学雑誌』134編8号)

>>拡大/整理局面と武士狼藉禁止A/B型を分類設定し、政治過程に組み込むことで地頭設置に至る鎌倉側の思惑を明らかにしている。大胆な分析視角の設定と精緻な史料読解を兼ね備えており、お手本のような政治史の論文に思えた。
October 13, 2025 at 1:41 PM
中谷功治『ビザンツ帝国』(中央公論新社、2020年)

>>積読を1つ読了。多民族帝国かつ異民族の度重なる襲来という圧倒的な差異を踏まえた上で、古代帝国の崩壊・再編過程という点では各国の「中世」のアナロジーの要素も多分に含む。固有名詞が多くて読むのには時間がかかった。
October 13, 2025 at 1:40 PM
某会の事務作業がとんでもなく忙しいのは置いておいて、校正段階の論文、入稿直前の論文、成稿中の論文、発表準備の報告を並行仕上げていて死に物狂い。まさに三面六臂だが、足りない。
September 20, 2025 at 2:35 PM
松沢裕作『歴史学は世界を変えることができるか』(岩波書店、2025年)

>>読了。既出の内容がメインだが、洗練され、一言一句に意図が込められた文章は響くものがある。そしてやはり研究史の整理、先行の論著を内在的に読み込むスタンスには学ぶべきものは多い。どういう構えで歴史学の研究をするのか、その語句・概念を選択して叙述した意味はどこにあるのか、こうした点に著者は徹底的に自覚的であり、(なかなか真似できないが)近づきたいという気持ちはある。
August 29, 2025 at 10:41 AM
移行期論における典型的な問いの立て方を根源的に問い直し、問いの立て方自体の組み替えを模索している。
思いつきに過ぎないが、若い世代の中でアイデアを共有してフィードバックを得たい。
あくまで構想段階なので、博論に間に合うかは不明である。
August 24, 2025 at 4:29 AM
柴田修平「女房奉書にみる戦国後期の公武関係」(『日本史研究』756号、2025年)

>>朝廷と足利将軍の関係、朝廷と京都を抑える畿内有力大名の関係を段階的に丁寧に抑える論文。戦国後期に内在した「公武関係」の変化を読み取る。戦国期畿内近国の内在的な変化の大きさは、私も(別件であるが)強く共感するところである。
なお、女房奉書に関する専論は少なく、その点でも色々と勉強になった。
August 20, 2025 at 8:21 AM
平雅行『鎌倉仏教の中世』(法藏館、2025年)は、序章〜6章はもちろん勉強になるが、終章「顕密体制論と私」は特に面白い。歴史学を研究し、歴史を叙述する人がどのように先行研究と向き合い、その達成と限界から次の段階へ進むヒントが色々とある。
August 15, 2025 at 5:05 AM
松村圭一郎『うしろめたさの人類学』(ミシマ社、2017年)を読む。現代社会に対する無力さを痛感していたので、「うしろめたさ」からの一歩を後押しする本書は良かったです。『所有と分配の人類学』から入ったため、かなり一般向けで分かりやすい筆致には驚きました。
August 7, 2025 at 3:42 AM
夏風邪で寝込んでいたなか、いくつか他地域・他時代の研究に目を向けてみた。

笹原健「イブン・アラブシャーの君主論」(『史林』108巻3号、2025年)は、非常に面白かったです。テキストから著者の思想や経験、社会的背景を上手く再構成しており、精緻な読解と構成力が勉強になる論考でした。

福地スヴェトラーナ「ソ連のシベリアと極東開発における日本軍捕虜の労働利用」(『史学雑誌』134編6号、2025年)は、素人目に見ても凄い論文でした。日ソ開戦直後に日本軍捕虜の労働使用を定めた政令の背景に、第三次五ヵ年計画の未達成課題との関連を仮説として提示し、丁寧に論証している論考です。
August 7, 2025 at 3:41 AM
岩永紘和「紫衣勅許をめぐる一五世紀後半~一六世紀初頭の妙心寺の動向」(『洛北史学』27号、2025年)拝受、読了。

>>戦国期〜近世初期の妙心寺派の動向を決定付けた紫衣勅許について、獲得に至る財政的背景(荘園経営の衰退、他の財政基盤の脆弱性)、草創以来の天皇との関係の由緒化、法系から見た妙心寺派の教団化などを背景として考察する。また獲得時の相論についても再検討する内容を含む。
個人的に注目すべきは、荘園経営が応仁・文明の乱以前、なんなら15世紀中葉には衰弱していた点。こういう寺社の場合、戦国期における展開が有力な顕密寺院と異なるのは首肯できる。
June 13, 2025 at 7:53 AM
佐藤雄基「比較封建制論における日本ーー朝河貫一を結節点とした見取り図の一例」(小澤実・佐藤雄基編『グローバルヒストリーのなかの近代歴史学ーー歴史を捉え、書き、編む』東京大学出版会、2025年)拝受、読了。

>>史学史的に重要な論考。比較封建制論を舞台とした歴史家の概念規定をめぐる営みを詳述している。荘園はmanorか、藩はclanか、といった史学史上で重要な概念規定に関する議論が示される。朝河貫一を中心に、福田徳三、中田薫、オットー・ヒエンツェを対象にしているが、マルク・ブロックなども登場する。
June 12, 2025 at 6:15 AM
論文の題目を付けるのは最も難しい
June 10, 2025 at 12:58 PM
岩永絋和「戦国期関東・東北地方における臨済宗妙心寺派の動向」(『史学雑誌』134編4号)読了。

>>東関東から南奥にかけての妙心寺派の教線拡大について、「地方から地方へ」というキーワードで検討する論文。従来の研究が、各地方の寺院と中央の拠点寺院との関係に注視してきたこととは、異なるアプローチを見せる。

今月末の大会に直接関わるかは微妙なところみたいだが、地方での動向を見た上で中央の動向を位置付け直すと推察している。
June 4, 2025 at 4:38 AM
殷 捷「中世朝廷の官司下文」(『古文書研究』98号、2024年)拝受、読了。

>>旧来の古文書学で等閑視されてきた官司下文を文書論的に分析しつつ、その背景にある中世朝廷の官司制度の変化全体を読み取る。非常に重要な論文。
また、下文と奉書という中世古文書学の二大体系を相対化しつつ、むしろ系譜的に親近性の近い系統から分析している点も興味深い。
June 3, 2025 at 12:16 AM
木村俊哉「豊臣政権の吏僚代官による蔵入地支配ーー筑前・筑後を中心に」(『国史学』244、2025年5月)拝受、読了。丁寧な議論は大変勉強になった。また、畿内近国の村落支配における「下代」の観点を両筑地域に導入した点に新規性と独自性を感じる。

ところで、「下代」とは何か。代官の下にいる実務者なのは確かだが、実は代官の差配する内容によって実はかなり差がありそうなので、この辺は本論文とは直接関わらないものの、中近世移行期研究の中で検討する必要がありそう。
June 2, 2025 at 11:52 PM
私のような末端にまで伝わってくる米国研究機関の苦境。
May 27, 2025 at 6:22 AM
午前中は東大本郷の五月祭へ。デジタル人文学フェス2025などに訪問。ポスター発表みたいな感じで、丁寧に色々と教えてくれた。また、写本系統のデータ化の可能性や共起語を取り出す研究の応用に関しての質問にも色々と話してくれました。
May 24, 2025 at 2:17 AM
歴研大会前日は水戸へ。
水戸市立博物館「「戦国武将書翰集」の世界」展と茨城県立歴史館「常陸平氏」展を観覧。
「「戦国武将書翰集」の世界」は全て初出のため、原本のチェックをした上で翻刻を貰えてお得でした。「常陸平氏」展は中世を通じて色んな常陸平氏関係文書が出ており、横に並ぶ考古資料や仏具・装飾品も中世のもので非常に良かった。東国の中世史に関しては、もう少し勉強せねばなるまい。
May 23, 2025 at 7:57 AM
黒羽亮太「春秋二季仁王会の「成立」」(『日本史研究』753号、2025年)

>>読了。法会の内実と性質差を分析し、先行研究を大きく転回した上で、歴史的展開のなかで位置づけ直す論文。クリアな議論の進め方が勉強になる。また、本論文自体は、法会の内実の分析を読解していくことがメインだが、一方で著者が得意とする文書論の視角を出発点に据えているところも印象的であった。
May 22, 2025 at 11:30 AM
新しい研究会で報告。実に5ヶ月ぶりの口頭報告でした。読書会とか研究会とか含めてここまで開くのは、なかなか珍しい。
May 11, 2025 at 2:24 PM
『歴史学研究』674号、1995年の小特集「シンポジウム日本中世の地域社会」を読みなおしているが、かなり学ぶことが多い。
May 2, 2025 at 9:24 AM
良知力『青きドナウの乱痴気ーーウィーン1848年』(平凡社、1993年、初出1985年)

1848年のウィーン三月革命から十月革命までを鮮やかに描く社会史の名著。個々の人々や社会集団が革命や民衆暴力に巻き込まれ、巻き込んでいく様相を叙述する。時系例での整理や社会構造論的分析を排することで、西欧的市民革命の論理に回収されない革命を描き出す。また、さまざまな生業に就く人々や、女性や民族的マイノリティへの眼差しがあることが、「市民」革命的な議論を相対化しているとも言える。
小気味良い筆致に感嘆しつつ、引用されている史料以外で、どのような史料を見て、またいかに解釈しているのであろうか、と時折思う。
May 1, 2025 at 3:39 AM
最近読んだ論文や書籍のなかで、印象深かったものを厳選し、覚書として書き残してみる。
April 28, 2025 at 2:15 PM