氷月れな
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氷月れな
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mhyk晶♂受け
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らいはさんにおみやに頂いたシナモンロール…✨️美しいし美味しい🙏💓
本当にらいはさんのパン屋さん開いてほしい。常連になりたい🥹
December 6, 2025 at 6:04 AM
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県内ワーと😻
いっぱいおしゃべり楽しかったです😚💕
December 5, 2025 at 2:06 PM
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ポッキーの日の元あいぼうサンド（ネロ晶♂、ブラ晶♂）②
ムではあるが、恋人同士だと単にゲームにかこつけてキスをするだけの行為である。ブラッドリーと晶だって日常から普通にキスをしているので、この近い距離に躊躇うこともなく、もうあと少しで唇が触れてしまいそうになった。 　そうしてとうとう唇が重なろうとしたところで、ネロは耐えきれずに割り込む。 「いやいやいや駄目だろ！」 　そう叫んで、手刀でスパン、とポッキーの真ん中を切った。ブラッドリーの高い鼻を掠ったようで、いてえ、と睨まれるが、知ったことではない。 「晶、俺としようとしてたじゃん！」 　完全にネロが悪いのだが、もしここにブラッドリーが来なければ、なんとか許してもらって、今頃は晶とネロがポッキーゲームからのキスをしていたかもしれない。それなのに、目の前でブラッドリーとのポッキーゲームを見せつけられるなんて、あまりにもひどすぎる。 　晶はじとっとした目でネロを見ながら、口の中に残っていたらしいポッキーを、もぐもぐと咀嚼する。そうして、何事か反論するのかと思いきや、突然ブラッドリーの首に腕を回して抱き着いて、再び顔を寄せた。ブラッドリーの方もしっかりと晶の腰を抱き寄せ、ネロが止める間もなく顔を傾ける。 　あっという間に、ポッキーを挟まずに、二人の唇が重なり合う。 「あー！」 「うるせえよ」 　わざわさ一旦口を話してそう言ってから、ブラッドリーは改めて深く晶と唇を重ねた。ブラッドリーの大きい口に、晶の口が食べられてしまいそうだ。ブラッドリーの舌が晶の咥内に入り込んでいくのが、すぐ近くで見える。晶は少し恥ずかしそうに身を捩ったけれど、ブラッドリーは晶の腰をがっしりと抱えて、逃が そうとはしない。 「んっ……」 　学校で聞くものではないような甘い声が、晶の口から漏れる。晶の指が、、ブラッドリーの制服の背中側をぎゅ、と掴む。皺の寄った部分が妙に艶めかしく見えた。 　ぴちゃ、と濡れた音まで立ち始めたところで、さすがに真昼間の屋上でこれ以上やるのはヤバいと判断したのか、ブラッドリーがゆっくりと顔を離した。晶は唾液に濡れた唇を拭いもせず、くったりとブラッドリーに凭れかかる。 　とんでもなくいやらしくて可愛いけれど、今頃晶に凭れかかられるのは自分の筈だった。くそ、と心の中で呟いたところで、ブラッドリーがポッキーの箱をネロに向かって投げてきた。 「俺様には少し甘ぇな」 　これは多分、ブラッドリーの助け船だ。面白くないことは確かだけれど、せっかく与えられたチャンスは逃せない。 「晶」 　真剣に呼びかけると、晶はとろりとした目を瞬かせて、ネロの方を見てくれた。ブラッドリーにとろとろにされて、少しはネロに対する幻滅した気持ちも落ち着いてくれたのかもしれない。 「さっきはまじで悪かった。晶とポッキーゲームするのが嫌とかじゃなくて、自分には関係ないことだと思ってたっつーか……晶がそんなこと考えてくれてたなんて、考えもしなかったから」 　少しだけ間を置いて、晶はふるりと首を横に振る。これは、許してもらえたということで良いのだろうか。 「何度だって頭下げるから、俺ともポッキーゲーム、してください」 　駄目押しとばかりに、ポッキーの箱を差し出しながら頭を下げると、晶の指先がそっと頬に触れた。促さ れるようにして顔を上げると、唇にポッキーの端が当たる。条件反射のように咥えると、晶がその反対側にそっと口をつけた。 　まだ晶を膝に乗せたままのブラッドリーが、ここでやるな、と呆れた声を出したけれど、構わずにネロはポッキーを食べ進めていく。 　いつもキスの時にはもっと顔を近付けているのに、ポッキーを挟んで見つめ合うのが、無性に照れ臭い。晶の瞳は、ブラッドリーとのキスの余韻か、少し濡れていた。 　すぐに触れてしまうのが勿体なくて、ゆっくりポッキーを食べていくと、まだあと数センチを残したところで、晶が恥ずかしそうに視線を揺らし、ぱき、とポッキーを折ってしまった。 「……なんで？」 　先ほどは、ネロが邪魔をしてしまったけれど、ブラッドリーと晶は今にも触れ合う寸前まで顔を近付けていた。それなのに何故、と呆然と呟くと、晶は恥ずかしそうに頬を手のひらで覆う。 「だ、だって、恥ずかしい……」 「は？」 「ネロが、じっと見てくるから」 　そりゃあ、可愛い恋人がエッチな顔をして瞳を揺らしているのだから、見ないわけがないだろう。 　さっきはブラッドリーとあんなに熱烈なキスをしていたのに、まるで生娘のような物言いに、呆れる反面、愛しさもぶわりと膨らむ。 　自分の口の中に残るポッキーを急いで咀嚼して、晶が咥えたままだった数センチのポッキーも、噛みつくように引き摺り出して、急いで食べてしまう。 「ね、ネロ――……ん、ぅっ」 　邪魔なポッキーがなくなってから、ようやく晶と唇が重なった。すぐに迎え入れるように唇を開いてくれるのが、たまらなく可愛い。ブラッドリーの膝から身 を乗り出している晶の体を抱き寄せて、少しずつ重なりを深くしていく。晶の腕も、ネロの背中に回された。 　だからここでやるなって、とブラッドリーに小突かれながらも、ネロはチョコの味と晶の味を、昼休みいっぱい使って存分に味わうのだった。
November 11, 2025 at 2:51 PM
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フォル学っぽい現パロ・ポッキーの日の元あいぼうサンド（ネロ晶♂、ブラ晶♂）①
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「氷月れな」と記載されています。 以下は本文の内容です。 　秋も深まり、気温は大分下がってきたが、昼間の陽射しは暖かい。今日は風も少なく、屋上は穏やかな空気が漂っていた。 　ネロと晶は、屋上に設置されたテーブルに向かい合い、ネロお手製の弁当を食べていた。以前までは、ネロは自分の分を簡単に作って詰めてきて、晶はコンビニや学校の売店で買ったものを食べていたけれど、恋人だと言えるような関係になってから、ネロが「あんたの分も作って来てもいい？」と切り出したのだ。やり過ぎだろうか、引かれないだろうか、と不安に思いながら言ったネロに、晶は目を零れ落ちそうなくらいに真ん丸に開いて、「いいんですか！？」と喜色に溢れた声を上げてくれた。 　そんなわけで、その翌日から、ネロはせっせと晶に弁当を作っているのだった。 　今日のメニューは、晶がこの間美味しいと言ってくれたエビマヨに、レンコンのきんぴら、さつまいもの甘煮に、卵焼きとおにぎりだ。晶はいつも、にこにこと笑顔でネロの作ったものを食べてくれる。そんな晶を眺めながら食べる昼の時間が、ネロは何よりも気に入っていた。もはや、この時間のためだけに学校に来ていると言っても過言ではない。 「……それで、ネロ、聞いてます？」 「ん？　……悪ィ、なんだって？」 　晶の口がもぐもぐと一生懸命動いているのを見つめていたら、何かの話を聞き逃してしまったらしい。自分の分の弁当はさっさと食べ終えて、売店で買った紙パックのカフェオレを飲みながら、ネロは晶に聞き返す。晶は、もう、と少し頬を膨らませてから、ちら、とネロを見上げてきた。 「今日って何の日か、知ってます？」 「今日……？」 　そう言われて、ネロはスマホの画面に視線を向ける。今日は十一月十一日だ。どちらかの誕生日でもないし、 記念日でもないし、といくつか選択肢を潰していったところで、ふと教室で女子たちが何か話していたことを思い出す。 「あー、なんか、女子がポッキーの日とかなんとか言ってたかも」 　晶が求めていた答えがこれなのかはわからないが、そう答えてみると、晶は軽く小首を傾げた。 「ネロはあんまり興味ないです？」 「んー……こういうのってどうせ菓子業界が勝手に作り出したものだろうし、そんなのにいちいち踊らされるの馬鹿らしいっつーか……」 　そこまで言ったところで、晶の視線がふいっと逸れた。つられるように晶の視線を追うと、ネロが作ってきた弁当の横に、コンビニの袋が置いてある。その中から、赤い箱のようなものがチラっと覗いていた。 　まるで、ポッキーの箱のような。 　ヒュ、と自分の喉が鳴る。自分は何か大きな過ちを犯してしまったのではないかと、背筋が冷たくなった。 「え…………ちょ、ちょっと待って」 　晶は顔を逸らしたまま、袋から覗いていた箱を、指先で押して袋の奥まで仕舞いこんだ。箱そのものは見えなくなるけれど、乳白色のビニール袋越しに、明らかに赤い色は見えている。 　心臓が、嫌な音を立てる。 　ネロだって、今までに縁がなかったとはいえ、ポッキーの日に恋人たちがやることくらい、知ってはいる。それが、自分とは結びつかなかっただけだ。 　晶が、唇をきゅっと結ぶ。暑いわけでもないのに、額から汗が垂れてきた。 「え、その……まじで……？　いや、待って、前言撤回。うそ、ごめん。さっきのなしにして」 　必死に縋るけれど、晶の視線は合わないままだ。 　――だって、これまでのネロは、思ってもみなかったのだ。自分とポッキーゲームがしたい、などと言い 出す可愛い恋人が、自分に出来るなんて。 　ありとあらゆる言い訳が、頭の中に回り出す。なんと言ったら晶は許してくれるだろう。何度も乾いた唇を舐めて、言葉を探していたら、不意に校舎から屋上に繋がるドアが大きく開いた。顔を覗かせたのは、ブラッドリーだ。 　二人の座るテーブルに近付いてきたブラッドリーは、固まるネロと黙り込んだままの晶を見て、不思議そうに首を傾げる。 「何してんだ、てめえら」 「ブラッド……」 　間が悪いような、それでいて気まずい空気を崩してくれて助かったような、複雑な気分だ。 　ブラッドリーが晶の横にどかっと座ると、それまでネロから顔を背けて黙り込んでいた晶が、勢いよくブラッドリーの方に身を乗り出す。 「ブラッドリー！」 「あんだよ」 　ブラッドリーは、少し面倒臭そうな顔をしている。自分が微妙なタイミングで割り込んでしまったことに気付いたのだ。 　そんなブラッドリーに、晶はコンビニの袋から取り出したポッキーの箱を、突き付ける。 「俺とポッキーゲームしましょう？」 「は？」 　ポッキーゲーム？　と訝しそうに眉を跳ね上げたブラッドリーは、それでも瞬時にネロと晶の間で何があったのかを察したらしい。 　事情を理解したように何度か頷くと、にやりと口角を持ち上げて、晶に手招きをする。 「いいぜ。ほら、こっちに来いよ」 「はい」 　ブラッドリーに誘われて、晶はブラッドリーの膝の上に横向きに座った。別に、わざわざ膝に乗せる必要 なんてこれっぽっちもない。 「おい！」 　自分が悪いのだから、としばらく傍観していたが、さすがに我慢できなくなる。 　実は、晶が付き合っているのは、ネロだけではない。晶とブラッドリーも、そういう仲だった。今の状態に至るまでにはあれこれあったので割愛するが、とにかく、自分たちは晶を挟んで三人で付き合っているような関係だった。なので、晶がブラッドリーの膝に座るのだっておかしいことではないけれど、今はネロと晶が大事な話をしていたところなのだ。それなのに、晶はネロを誘ってくれようとしたポッキーゲームを、ブラッドリーとやろうとしている。 　晶はネロの方を一瞬だけちら、と見てから、ツン、と唇を尖らせてそっぽを向いた。わかりやすく拗ねている晶は大変可愛いけれど、それはそれ、これはこれだ。 　ブラッドリーの膝に大人しく座った晶は、その肩に甘えるように手を置く。そうしている間にブラッドリーが箱からポッキーを一本取り出して、晶の口に咥えさせた。そして、躊躇わずに反対側を自分が咥える。いかにも恋人同士、といったポッキーゲームの図になってしまった。 「まじかよ……」 　ネロが衝撃を受けている間に、二人はポッキーを食べ進めていく。そもそもポッキー自体が長いものでもないし、ブラッドリーの一口が大きいので、あっという間にポッキーの真ん中部分はあと少しになってしまった。 　ポッキーを挟んで、二人が見つめ合っているのがわかる。あの距離では、互いにそれぞれの瞳が映っていることだろう。 　本来のポッキーゲームは、どちらが先にポッキーを折るか、顔をどれだけ近付けられるか、といったゲー
November 11, 2025 at 2:51 PM
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【11/16賢マナ】ブラ晶♂おしながき
www.pixiv.net/artworks/137...
November 8, 2025 at 9:06 AM
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現パロ・ネロ晶♂④
晶ちゃんを添えて
「あなたが晶くんの恋人にふさわしいかどうか、この目で確かめようと思って」 「あきらちゃんそんなことしてたの！？」 　晶が、少し呆れた顔をした。えへへ、と晶に向けて笑ってから、あきらは改めてネロに向き直る。 「ネロさん。晶くんは、私の大事な人なんです。……あ、その、恋愛感情ではないので、そんな怖い顔しないでください……！」 　ネロの真顔は怖すぎるので、つい中断してしまった。気を取り直して、咳払いをしてから続ける。 「そういうわけなので、晶くんのこと傷つけたら、許しませんから」 「……ああ、肝に銘じておくよ」 　あきらが晶を大切に思っていることが、うまく伝わっただろうか。あきらを見る目から鋭さが和らいだような気がする。それでもまだ敵視はされているのかもしれないけれど、少しだけホッとする。 　とりあえず言いたいことを言ってすっきりしてから、あきらは他にも伝えたかったことを思い出す。 「でも、料理は凄く美味しかったです。デザートも、ありがとうございました」 　店を訪問した時はもやもやしてしまって、面と向かって感想を告げられていなかった。思い出してそう告げると、ネロは軽く目を見張って、それから眉を下げて口の端を持ち上げる。 「……そりゃどうも」 　ようやく、ネロの肩から力が抜けた。ふ、と笑う姿は、やはりイケメンだ。 　晶くんは面食いだな……と考えていると、晶が 少しだけ口を尖らせていることに気付いた。 「晶くん？」 　声をかけると、ハッとしたように顔を上げる。 「ネロとあきらちゃんが仲良くなったら嬉しいけど、でも、それはそれで、ちょっともやもやしちゃうかも……」 　そうしてそんな可愛いことを言い出すので、あきらは思わず幼い頃のように、晶に抱き着いてしまった。 「えー！　晶くん可愛すぎる！」 「ちょっ、おい、なんであんたが先に抱き着くんだよ！」 　同じく晶を抱き締めようとしていたらしいネロが、宙に浮いた自分の手を悔しそうに見ていた。 　恥ずかしそうにしている晶は可愛いし、悔しがっているネロを見ていると少しだけ溜飲が下がる。つい優越感に浸って、ふふん、と笑ってしまうと、ネロが目を細めて、強引に晶の腕を引っ張る。そうして、晶の耳元で何事かを囁くと、晶の顔がぶわりと真っ赤に染まった。 「ちょっとネロさん、それ卑怯じゃないですか！？　ずるい！　恋人特権だ！」 　何を言ったのかはわからないが、きっと、恋人同士でなければ話さないような内容なのだろう。ネロは、べ、と舌を出して見せてきた。 「恋人なんだから、ずるくて当たり前」 　その仕草だって、なんというか、格好良くてずるい。案の定、晶はやられてしまっていた。あきらの腕の中で、うう、格好いい、なんて呻いている。 　きっと、この先、晶はネロと過ごす時間が増えていくのだろう。今より会えなくなるだろうし、 そもそも、恋人に悪いから二人きりではなかなか出かけられなくなるかもしれない。 　けれど、晶はずっとあきらの大切な人だ。晶にとって、自分もそうでありたい。 　恋人にはなれないし、そういうつもりはないけれど、その部分だけは譲れない。 　そんなことを思いながら、晶が止めてくれるまで、ネロと二人で低レベルな言い争い――という名の「どちらが晶の可愛いところを知っているか」という討論を続けたのだった。
November 8, 2025 at 1:54 AM
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現パロ・ネロ晶♂③
晶ちゃんを添えて
くんの恋人だよ？　本当にあの人でいいの？） 　あきらがあれこれ言う立場ではない、とわかっていても、どうしても不安になってしまう。年上の恋人に、純真な晶が良いようにされてはいないだろうか。 　店に行ってからずっと心配で、あきらは晶とこまめに連絡を取った。お茶やランチに誘うのは、恋人との時間を邪魔してしまうだろうか、と思ったけれど、ネロが店をやっているために、土日はあまり一緒に過ごせないのだそうだ。そう話す晶が寂しそうで、ネロが恋人としてふさわしいか疑問に思う一方で、もっと晶くんと会ってあげてよ！　と言いたくなってしまう。 　まあ、とりあえず二人の仲を心配する恐れはないようなので、あきらは早速次の週末に晶との約束を取り付けた。 「晶くん、彼氏さんとはその後どう？」 「う、うん。頻繁には会えないけど、お店に行ったり、終わった後にネロの家に行ったりしてるよ」 「夜に家に！？」 　聞き捨てならないワードに思わず反応してしまうと、晶がふわりと頬を色付かせた。可愛い。とんでもなく可愛い。 （いや、可愛いけど！　夜に家に行って何してるの！？） 　気になるけれど、聞くのが怖いし、正直聞きたくない。 　うぐぐ、と唸っていると、晶がふと顔を上げた。 「あ……ネロだ」 　声が、可愛らしく弾んでいる。つられてあきらも顔を上げた。晶の視線の先に、先日店で見た時と同じ格好をしたネロが、荷物を抱えて歩いてい た。買い出しにでも行っていたのだろうか。こちらに向かって歩いて来るところで、まだ晶に気付いていない。晶はそわそわしながら、ネロに向かって声をかけた。 「ネロ！」 「晶？」 　ネロが晶に視線を向けて、ふわりと柔らかく微笑む。 　その表情は、店で見かけた少し気だるげで、ちょっとだけ悪い雰囲気のする男の顔とは、全く違っていた。 　優しく蕩けていて、恋人を思い切り甘やかす時のような、そんな顔だ。琥珀色の瞳が、愛し気に細められる。 　――けれど、ネロはその表情のまま晶の横のあきらを見て、即座に鋭い目つきになる。 「――――は？　そいつ、誰？」 　先ほどの晶を呼んだ声とは同一人物と思えないほどの、低く冷たい声だった。あきらに向けられた視線も氷のようだったし、同じ温度が晶にも向けられる。 「え……ええと、いつも話してる、幼馴染の……」 　晶の顔が強張る。いつも私のこと話してくれてるんだ、とときめいている場合でもなかった。 「幼馴染の話は聞いてるけどさ、二人で出かけてんの？　なんで？」 　これは、明らかに嫉妬だった。晶とあきらが二人で出かけていることに対して、晶は責められているし、あきらは嫉妬を向けられている。 　この点は、あきらたちも迂闊だった。もう晶には恋人がいるのだから、恋人に誤解させるような行動は控えなければならなかった。いくら自分た ちが家族のようなもの、と思っていても、傍から見たらそうではないのだ。 　けれど、それにしたって、ネロの反応は怖すぎる。先ほどの優しく晶の名を呼んだ時とのギャップが激し過ぎて、引いてしまうレベルだ。 　晶がなんとかネロに弁明しようとしているのを無理矢理遮って、あきらは晶の腕を引っ張ってネロに背を向けた。おい、だとかなんとか、苛立った声をかけられたが、今は無視だ。 「ねえ、晶くん、あの人やめた方が良くない……？」 「えっ……なんで……？」 　晶が、悲しそうな顔をする。あきらだって、こんなことは言いたくないのだ。晶はあきらにとって大事な人で、その晶が選んだ人だから、笑顔で祝福したい気持ちはある。それでも、晶が大事だからこそ、どうしても不安になってしまうのだ。 「晶くんの大事な人だってわかってるけど！　でも、あの人めちゃくちゃ人たらしっぽいし、しかもすごい愛が重そう……！　今の反応だってヤバくない？　絶対束縛するタイプだよ！」 　女の勘は当たる。あの男は、大分心が狭いし、何かと細かいことを根に持つタイプのように見える。晶のことを愛してくれているのは本当だろうけれど、その愛が随分と重たすぎるように感じるのだ。 　晶が、へにゃりと眉を下げて、きゅ、と唇を引き結んだ。そんな顔をさせたいわけではない。けれど、放ってもおけない。あきらが葛藤していると、晶の指先が、そっとあきらの手を取る。 「ありがとう、あきらちゃん。俺のこと、心配してくれてるんだよね」 　眉を下げたまま微笑んで、晶はちら、と目線だけネロに向けた。 「……わかってる。わかってるけど、俺、ネロが好きなんだ」 「晶くん……」 　晶は、流されているわけではない。当然だけれど、自分の意志で、ネロのことを想っているのだ。 　晶の気持ちを蔑ろにしたわけではないけれど、少し先走り過ぎてしまったのかもしれない。しょんぼりと肩を落とすと、晶はあきらを元気付けるように、ぎゅっと手を握って、可愛らしく微笑んだ。それから、内緒話をするように、あきらの耳元に顔を寄せる。 「それに、ネロがそう思ってくれるのも、嬉しいっていうか……」 「そ、そうなんだ……！？」 　晶の意外な一面を見てしまった。思わず仰け反って驚いていると、いい加減焦れたようにネロが割り込んできた。 「なあ、いい加減手ぇ放せよ」 　そう言って、晶とあきらの手を引き剥がした。晶は少し困った顔をして、それでもネロの機嫌を取るように、ネロの手をぎゅっと握った。何かを言いかけていたネロが、少し気を削がれたように黙り込む。そして、改めてネロの視線があきらに向けられた。頭の天辺から爪先までをさっと眺められて、それから、ふと気付いたように呟く。 「あんた……この間店に来てくれた子？」 　あの時は眼鏡などで軽く変装していたけれど、目敏くバレてしまったらしい。 「はい、ちょっと偵察に……」 「偵察？」
November 8, 2025 at 1:54 AM
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現パロ・ネロ晶♂②
晶ちゃんを添えて
合っていて、落ち着いたＢＧＭと談笑の声が心地よい。二十代以上の女性客が多いような印象で、少しだけ気後れしてしまう。 「いらっしゃい」 　少し気だるげだけれど、どこか甘い響きの男の人の声だ。カウンターの内側に、空色の髪の男の人が立っていた。にこやかに愛想を振り撒くわけではなく、空いてる席にどうぞ、と軽く言われる。他に店員はいなかった。カウンターの内側で調理しているから、彼がシェフ兼店長なのだろうか。となると、この人が晶の恋人だ。 　二十代後半くらいに見える。顔立ちは整っていて、綺麗系とワイルド系の中間というか、爽やかにも悪そうにも見える人だった。シャツを肘まで捲り上げていて、逞しく血管の浮き出た腕が露わになっている。 　ちらちらと彼の方を見ながら、あきらと友人は空いている席に座った。カウンターの近くで、よくシェフが見える。 「あきら、シェフの人、すごくかっこいいね……！」 　メニューを立てて内緒話のようにしながら、友人が頬を色付かせて言った。 「う、うん」 　まあ、それは否定するところではない。なんだか複雑なものを感じながら頷いて、あきらはメニューに視線を向けた。 　お手頃価格、とはレビューで見かけていたものの、安いものからちょっとお高めのものまで様々だ。ランチセットには高校生でも手が出しやすいものがあり、それにしようかな、と二人で話し合う。 「セットにしちゃう？」 「うーん、デザート欲しいけど、デザートつきだとちょっとキツイかも……」 「じゃあ、デザートは我慢しておこうか」 　名残惜しいものを感じながらも、一番お手頃な本日の日替わりセット、というものを注文した。本日の日替わりメニューは、シュニッツェルという肉料理と、サラダとスープとパンのセットだ。 　食事が出されるまでの間、あきらは友達とのお喋りに夢中になりながらも、晶の恋人の監視も忘れない。 　人当たりは良さそうだ。自分からあれこれ喋るわけではないけれど、客に話しかけられたら気さくに応じている。明らかにシェフ狙いのような女性客には、少し困ったように顔を引き攣らせていた。一見爽やかそうにも見えるけれど、黙って作業をしている時の雰囲気は少し気だるげだ。 　今までの晶の周囲には、あまりいなかったタイプかもしれない。そもそも、あれくらいの大人の人と知り合う場面は少ない。高校生から見れば、それは当然大人に感じるし、優しくて余裕があるように見えるだろう。もうその部分だけで、丸め込まれているような気がしてしまう。 　それはそれとして、出てきた料理はどれも美味しかった。 　季節のかぼちゃとさつまいものポタージュに、カリッとトーストされたパンは自家製なのだという。シュニッツェルもサクッと良い具合に揚げられていて、サラダのドレッシングも美味しい。 （晶くん……まさか胃袋を握られて…………） 　ああ見えて、案外食い意地が張っていて食いしん坊の晶だ。その可能性は大いにある……と思い ながら、あきらもぺろりとセットを食べ終えてしまった。 「美味しかったねー！」 「うん。パンもおかわりしたいくらいだったし……！」 「スープも、優しい甘味が凄く美味しかった……」 　二人で空になったお皿を前に、食事の感想を話していたら、シェフがテーブルに近付いてきた。慣れた仕草で水のお代わりを注ぎながら、ちら、とあきらと友人の顔を見てくる。 「お客さんたち、初めて来てくれた……よな？」 「は、はい」 　いちいち客の顔を覚えているのだろうか。さすが客商売、と感心していると、水差しをカウンターに戻して、その代わりに小さな皿を二枚持ってくる。 「じゃあ、初めてだし、これサービス」 　キャロットケーキに、クリームが添えられたものだ。友達と顔を見合わせてから、勢いよくシェフを見上げる。 「えっ、いいんですか……！？」 「すごく美味しそう……！」 「みんなにやってるわけじゃないから、内緒な」 　シェフはそんなこと言って、唇に人差し指を当てて、軽く片目を瞑って見せた。とんでもないイケメンムーブだ。友人はすっかり顔を真っ赤にして、今にも叫び出しそうになっていた。 　きっと、あきらたちが注文前にデザートを迷っていたのが聞こえたのだろう。心配りは嬉しいし、サービスしてくれたデザートは文句なく美味しくて大満足だったけれど、なんというか、あまりにも手慣れているというか、人たらしの片鱗が窺え て、一気に不安になる。 （なんだか、すごく手慣れてる感じがする……絶対モテる、この人……） 　晶も大概だけれど、このシェフは、意識してその加減を操作しているような感じがあるのだ。勿論、あきらの穿ち過ぎかもしれないけれど。逆に、これが無意識だったらもっと恐ろしい。 （晶くん、騙されちゃってない？） 　晶は素直で純情だ。そういうところが晶の良いところだし、自分も含め、周囲の友人たちに愛されている所以だとは思うけれど、時々心配になることもある。 　食事は美味しかったし、サービスしてもらったケーキも美味しかったけれど、なんとなく胸の中にもやもやが残る。 　友人はシェフに名前を聞いていて、ネロ・ターナーだと教えてもらっていた。やはり、この人が晶の恋人で間違いない。 「ターナーさん、すごく格好いいよね……！　料理も美味しいし、私、このお店とターナーさんのファンになっちゃう……！」 　店を出るなり、友人は浮かれた様子でそうはしゃいでいた。 　あの人、私のはとこの彼氏みたいだけど、とはとうとう最後まで言い出せなかった。 　 　 　果たして、あのネロというシェフは、晶の恋人としてふさわしいのだろうか。 　格好良いことは認める。料理も上手だ。気配りも出来る。晶の言うことは間違っていない。 （でもさ……優しくて真面目で可愛くて健気な晶
November 8, 2025 at 1:53 AM
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現パロ・ネロ晶♂①
晶くんと晶ちゃんがいます。晶ちゃんが若干晶くんのモンペ。（表記の都合上、晶♂は晶、晶♀はあきら、となっています）
晶ちゃんを添えて
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「氷月れな」と記載されています。 以下は本文の内容です。 　あきらには、幼い頃から仲の良い親戚がいる。 　偶然同じ日に生まれたはとこで、示し合わせたわけではないのに、名前まで同じだった。 　あきらは、真木あきら。 　はとこは、真木晶。 　名前の漢字と性別は違っていたけれど、互いに誕生を連絡し合った際に発覚した奇跡に、双方の両親は驚いたそうだ。 　近くに住んでいたということもあって、物心がつく前から、幼馴染のように仲良く過ごした。 　晶は予定日よりも大分早く生まれて、幼い頃は体が小さかったから、あきらはことあるごとにお姉さんぶって、晶を先導して連れ回していたような記憶もある。高校生になって、さすがに身長は抜かされたけれど、今でもその関係性は変わらない。姉弟のような、親友のような、幼馴染のような、大事な存在だった。 　二人は中学までは同じ学校に通っていたけれど、高校は別々になった。高校に上がると、さすがに中学の頃よりも忙しくなる。それぞれ部活があったり委員会があったり塾があったり、新しく出来た友人たちと出かけたりもして、以前のように毎日顔を合わせる、という日常ではなくなった。 　どちらかに恋人が出来たらもっと寂しくなるのかなぁ、なんて、今のところはありもしない未来を考えて溜め息を吐いていた頃、都合がついて、久々に晶と出かけられることになった。 　 　 「え！　晶くん、恋人できたの！？」 「あ、あきらちゃん、声大きい……！」 　それは、久しぶりに晶と二人で出かけた時のこ とだった。会えていなかった間にも連絡は取っていたけれど、やはり顔を見て話したいことがたくさんある。カフェでランチをしながらの近況報告で、晶が「あきらちゃんに報告したいことがあって」と切り出したのだ。 　生まれて初めて恋人が出来た、という報告である。 「いつから！？　どこの誰と！？　私の知ってる子！？　なんでもっと早く教えてくれなかったの！？」 「だって、顔見て報告したかったから」 　はにかみながらそんなことを言われては、それ以上何も言えなくなる。気持ちを落ち着かせるためにアイスティーのストローをぐるぐる掻き混ぜながら、あきらはちらりと晶の顔を見た。 　晶に対して恋愛感情というものはないけれど、晶は一番大事な存在だ。友達というより、家族に近い。 　初めて恋人が出来たということを祝福してあげたい一方で、心配にもなる。十人中十人が振り向くような美形だとか、特別に整った顔立ちをしている、というわけではないのだけれど、晶は一緒にいて落ち着くし、優しいし、女であるあきらから見ても、どうにも庇護欲を刺激される部分があったりする。そんな晶は、昔から、何故かやたらと同性に好かれるのだ。厄介な人に付き纏われたことも何度かある。 　別に同性が駄目だとは思わない。晶が好きになった人なら、いい人なのだろう。けれど、もし騙されていたら、だとか、丸め込まれていたら、なんて思ってしまうと、まだ今の段階では手放しで喜べなかった。 「男の人……？」 　恐る恐る聞いてみると、晶はふわりと頬を色付かせながら、こくりと頷く。可愛い。 「う、うん」 「やっぱりかぁ～」 　やっぱり？　と首を傾げながらも、どんな人なのかと重ねて問えば、晶はもっと可愛い表情を浮かべた。 「ええと……ちょっと年上なんだけど、すごく格好良くて、優しい人で……」 　頬を染めて恥じらっている晶は、少しふわふわしていて、あきらが今までに見たことのない姿だった。これが、恋をしている晶の顔なのだ。可愛いけれど、少し寂しくも感じる。 「学校の帰りに遅くなって、酔っ払いに絡まれてたら、助けてくれたんだ」 　少女漫画みたいな、随分とベタな出会いだったようだ。困っている高校生を助けてくれたのだから、きっと悪い人ではない、とは思いたい。 「写真はある？」 「ある、けど、勝手に見せるのはどうかと思うから、今度見せていいか聞いておくね」 　晶の誠実さにキュンとときめく一方、やっぱり写真あるんだ……写真撮ってるんだ……もしかしてツーショット？　なんてあれこれ想像してしまう。 　あきらの大事な晶が、もう、見知らぬ男のものになってしまったのだ。 　嬉しさよりも、じわじわと寂しさが膨れ上がっていく。そんなあきらには気付かず、晶はにこにこと微笑む。 「今度、あきらちゃんにも紹介するね。飲食店を 経営してる人で、料理も凄く上手なんだよ」 「うん……ぜひ紹介して」 　飲食店を経営しているということは、一つ二つ年上、というレベルではないだろう。まずその部分で不安が募る。 　この目で、その恋人とやらが晶にふさわしい相手なのか、しっかり確認する必要があった。 　 　 　晶から恋人のお店を聞き出したあきらは、次の週末、友人を誘って偵察に出かけることにした。 　今度晶が紹介してくれると言っていたけれど、恋人の前ではそりゃあいい顔をするものだろう。そうではない素の顔を見てみたいのだ。そのうち紹介の場はあるので、その時に不審に思われないようにと、変装とも言えないけれど、伊達眼鏡をかけてみたり、髪型を変えてみたりする。 　恋人は、ネロという青年だそうだ。駅前の賑わう辺りから一本横道に入り、更にその路地裏の辺りに、小さな洋食屋を構えているのだという。事前に店について調べると、こじんまりとしているけれどお洒落で、レビューも口コミも結構いい。途中から普通に食事が楽しみになって、どんなメニューがあるかな、なんて調べ出してしまって、その度に違う違う、と気合を入れ直したりした。 　晶の姉のような立場として、恋人の素の顔を見極めに行くのだ。 　当日は、昼の混雑時を少し過ぎたくらいのタイミングで店に向かった。ピーク時は並ぶこともあるとのことだったが、とりあえず今は外に人は溢れていない。恐る恐るドアを開くと、カラン、と軽やかにドアベルが鳴った。店内は適度に混み
November 8, 2025 at 1:53 AM
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こちらも本が届きました😆💓美しいカバーつき文庫…！一度作ってみたかったカバーつき文庫、なな伽さんのお力で叶いました🥹
遊び紙も良さげ。四苦八苦した目次は…まあ…ずれてはいますが…まあ、ね…
November 5, 2025 at 1:12 PM
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届いたの見て💓💓💓裏表紙も激かわいい😳💓
遊び紙もいい感じなのがあったので使ってみました。いい感じ😌
November 1, 2025 at 7:08 AM
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アクスイのフィガ晶♂
夜のドライブデート②
まま、フィガロの方に大分身を乗り出していたことにも気付く。暗いからきっとフィガロには見えていないだろうけれど、一気にぶわりと顔が熱くなった。顔を逸らしながら、背中を座席につける。いつから自分は身を乗り出していたのか、背もたれはすっかり冷えていた。 　やがて、信号が青に変わって、緩やかに車が動き出す。けれど、フィガロの手はそのままだ。 「あの……フィガロ、手……」 　運転中なのに、と声を上げてみたが、逆にぎゅ、と握り込まれる。自分の手が汗ばんでいて、少し恥ずかしい。フィガロの長い指が、しっかりと晶の指の間に差し込まれていて、深く繋がれる。 　フィガロは今度は視線だけで笑ったけれど、手は放してくれないまま、危なげなく車は進む。 　車の中は音楽も何もかかっていなくて、晶の心臓の音が大きく響いてしまいそうだった。 　ふと気付くと、車はあまり見慣れないところを走っているようだった。夜で外は暗いし、晶もまだこの辺りの道に慣れていないから、最初は気にならなかったけれど、それにしても随分と時間がかかっているように思う。ここはどこだろう、と目印になるものを探したところで、車のスピードが少しずつ遅くなっていく。そうして、終いには路肩に完全に停車してしまった。 「フィガロ……？」 　外は、あまり灯りになるものがない。明らかに事務所の付近ではなかった。時間が時間だから、人の通りもなく、車も少ない。 　急ぎの連絡でも入ったのだろうか、と首を傾げながらフィガロの方に顔を向けようとしたところで、長い指が晶の頬に触れた。 「こっち見て、晶」 　そちらを向こうと思っていたのに、そんなことを言われると、意識してしまって顔が動かせなくなる。そ れに、先ほど、晶が見つめ過ぎて「穴が開いちゃうよ」なんて言われたところだったのだ。 「っ……だ、だめです、フィガロに穴が開いちゃうと困るから……」 　動揺のあまり、そんなおかしなことを口走ってしまうと、フィガロがふふ、と笑って肩を揺らした気配がした。 「じゃあ、目を閉じて」 　そう言われて咄嗟に目を閉じてしまうと、フィガロが眼鏡を外す音が聞こえた。晶の眼鏡も勝手に外されて、次の瞬間には、運転席の方からフィガロに覆い被さられていた。 　ラーメンを食べたばっかりなのに、と思う暇もなく、唇が柔らかく触れ合う。フィガロとこういう関係になって、まだ日は浅い。キスも、もっと先のことをもしたけれど、まだまだ慣れなくて、空気を求める魚みたいに、唇が開いてしまった。すぐにぬるりと舌が入り込んできて、食べたものの味を感じる。けれど、それもすぐに、爽やかなレモンの味に塗り替えられた。ころん、と口の中に丸くて小さなものが押し込まれる。飴を食べていたようだった。何度か二人の咥内をレモン味の飴が行き来して、唾液が甘くなり、飴の欠片がなくなった頃、もっと深く口付けられた。後頭部が、ヘッドレストに押し付けられる。 　動きを阻むシートベルトが邪魔で、苦しくて、キスをしながらシートベルトを外そうとあちこち探っていたら、どうやら混乱して反対側を必死に弄っていたらしい。突然、ガタン、と背もたれが後ろに下がって、晶はフィガロ越しに車内の低い天井を見上げる形になっていた。 「へ……？」 　見上げた先のフィガロも、少し驚いたように目を丸くしていた。けれど、すぐに楽しそうに口角を持ち上げる。 「随分積極的だね、晶」 「えっ、あっ、ち、違っ……」 「うーん、人気はないとは言え、さすがにこんなところを誰かに見られたら大変だから……」 「違いますっ！」 　決して、車の中でもっと先の行為をしたい、だなんてねだったわけではない。大きい声で否定すると、フィガロは笑いながら体を起こした。座席も操作して、元の角度に戻してくれる。 「事務所に戻ったら、一緒にお風呂入ろうね」 「えっ！？」 　一瞬であれこれ想像してしまって、声が引っ繰り返る。 「顔がむくまないように、またマッサージしてあげるから」 　けれど、そう続けられた言葉に、晶は自分が早合点してしまったことに気付いた。フィガロは、別にやましい目的で一緒にお風呂に入ろう、なんて言ったわけではなくて、あくまでも顔のマッサージが目的なのだ。妙な期待をしてしまった自分が恥ずかしくて、晶は乱れた髪を整えながら軽く答えた。 「フィガロのマッサージ、ちょっと痛いです」 「大丈夫、マッサージの後で、気持ち良いことしてあげるよ」 　せっかく軌道修正したつもりなのに、また勘違いしてしまうようなことをフィガロは口にする。勘違いというより、多分からかわれているのだ。 「そっ……そういう、つもりでは……」 　からかわれているとわかっていても、そういうつもりではない、とはっきり口に出来ないのは、晶が心の中ではしっかりと期待をしてしまっているからだ。 　フィガロと恋人同士になって、同じ事務所だからそれなりに顔は合わせるけれど、二人きりになる機会はあまりない。もごもごと口籠っていたら、フィガロは 晶の頬を、軽くマッサージするように撫でた。 「そうなの？　俺は、最初からそういうつもりだったけど」 　最初とは、一体いつのことなのか。 （もしかして、ラーメンに誘ってくれた時から……？） 　晶の恋人が、性に淡泊そうに見えて、案外そうではないことを、晶は身をもって知っている。やわやわと頬を撫でられながら、晶は恥ずかしさを誤魔化すように、唇を尖らせた。 「ふぃ……フィガロのえっち……」 「あはは」 　もう一度大きく身を乗り出して、尖らせた唇がちゅっと軽く吸われる。 「事務所に戻る？　俺の部屋にする？」 「……フィガロの部屋がいいです」 　そういうことをするなら、事務所では気を遣うし、うっかり朝一緒に眠っているところを見られでもしたら、大変だ。まあ、事務所のみんなには、晶とフィガロの関係は、もうそれとなくバレているようだけれど。 　膝の上に伸ばされたフィガロの手をしっかりと握って、自分からそろりと指を深く絡ませながら、晶はまた車窓越しに夜の光を浴びるフィガロの横顔を、飽きずに眺めていたのだった。
October 30, 2025 at 9:44 AM
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アクスイのフィガ晶♂
夜のドライブデート①
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「氷月れな」と記載されています。 以下は本文の内容です。 　晶が「アクト・スイッチ」というドラマで俳優としての拙いデビューを飾ってから、最初の頃は先輩俳優たちについてあれこれ勉強したり、マネージャーの真似事をしたり、演技のレッスンなどを受けたりしていたけれど、少しずつオーディションを受けたりして、単独での仕事もするようになってきた。 　それでも、記憶は相変わらず戻らないし、まだ一人で暮らせるだけの安定した収入はないので、今もなお事務所に身を寄せている。今日も、いくつかのレッスンを終えて、遅い時間に一人で事務所に戻ってきた。 　フォルモーント・プロダクションの事務所は、よくいろいろな人間が出入りしているが、さすがにこの時間では誰もいないだろうか。少し寂しいな、と思いながら事務所に帰りつくと、窓の外に灯りが漏れていることに気付いた。誰か、まだいるようだ。 「ただいま戻りました」 　もしかしたら誰か泊まりで休んでいるのかも、と思い、小声で声をかけながらそろりと事務所に入ると、共有スペースのソファでフィガロが真剣な顔で何かの台本に目を通していた。いつも事務仕事などをする時だけかける眼鏡を、今もかけている。変装用のサングラスや眼鏡とは違い、知的な雰囲気が増して格好いい。 　集中していたのか、数秒遅れて、フィガロが顔を上げる。真剣な顔が、ふわりと柔らかく解けた。 「やあ、おかえり、晶」 「はい、ただいま戻りました」 　手招きされて、邪魔をしてしまったかな、と気にしながらも、フィガロの隣に腰を下ろす。労うように頭を撫でられて、飼い主に褒められたわんこのような気分になった。 「随分遅かったね」 「はい、レッスンがなかなかうまく出来なくて。フィガロはもう帰りますか？」 「そうだね、集中してたらいつの間にかこんな時間に ……」 　言いかけたフィガロを遮るように、晶のお腹がぐうう、と大きく鳴る。じわりと顔が熱くなる。 「…………す、すみません……」 「あはは、元気な証拠だよ。夕食まだだった？」 　先ほど晶の頭を撫でてくれた大きな手のひらが、今度は晶の薄っぺらい腹を撫でる。まだ、フィガロの手の下で、晶のお腹は小さくぐるるる、と唸っている。誤魔化すように、晶は曖昧に笑って身を捩った。 「はい、終わってから疲れちゃって、どこかに寄る気力がなくて……」 　本当は、レッスンが終わった瞬間から、お腹はぐうぐうと悲鳴を上げていた。それでもどこにも寄らずにここに帰ってきたのは、こんな風に、もしかしたらフィガロがまだ事務所にいるかもしれない、と心の奥底で考えていたからだ。 　フィガロは晶なんかに比べて多忙で、たくさんの仕事を抱えている。だから尚更、少しの時間でも会えたら嬉しいのだ。疲れているしお腹は空いているけれど、期待していた通りにフィガロに会えて、胸はいっぱいに満たされていた。 　まあ、それはそれとして、お腹はきゅるきゅると鳴り続けているのだけれど。 　フィガロの手から逃れようとする晶に軽く笑って、フィガロは悪戯を仕掛けるみたいにそっと目を細めた。 「また俺とラーメンでも食べに行く？」 　晶がまだここに来て間もない頃、アクト・スイッチの撮影の最中にも、そう言って誘い出してくれたことがあった。 「……明日、フィガロも撮影あるって言ってませんでしたっけ」 　ちら、と時計に視線を向けてから、フィガロを見上げる。 　顔のむくみが気になって、なんとなく両頬を手のひ らで押さえてしまうと、その手の上から、フィガロの手のひらが重ねられた。 「スープは我慢して、一緒に厳格なマッサージをすれば大丈夫だよ」 　実際、フィガロの顔がむくんでいるところなんて、晶は見たことはない。フィガロはともかく自分の方は少し心配だったけれど、きっと、あの時と同じようにフィガロが上手にマッサージをしてくれるのだろう。 　じゃあ是非、と応じれば、フィガロは車の鍵を持って立ち上がった。 「車回してくるから、外で待っていて」 「はい」 　フィガロだってこんな時間まで集中していて、きっと疲れているだろう。本当なら、フィガロの優しいお誘いを断る方がいいのかもしれない。けれど、晶を甘やかすみたいな優しさが嬉しくて、つい甘えてしまうのだ。 　疲れていた筈なのに、フィガロと出かけられると思うと、少しだけ足が軽くなる。変装用の帽子を深く被って、眼鏡をかけて、晶は帰って来たばかりの事務所を出た。 　 　 　繁華街の深夜のラーメン屋は、それなりに混み合っていた。晶もフィガロも眼鏡をかけたままでいたので、二人ともレンズが曇って、笑い合ったりした。 　むくみを考慮して泣く泣くスープは我慢したけれど、お腹も心も満たされて、またフィガロの運転で帰路につく。 　フィガロの運転する車には、何度か乗せてもらったことがある。 　人目の多い公共交通機関は何かと気を遣うし、事務所の車や運転手もいるけれど、それよりも自分で運転した方が気が楽らしい。晶は多分記憶を失くす前も運 転免許は持っていなかったようで、毎回ドキドキしながら助手席に座っていた。 　フィガロの車は、車のことは詳しくない晶でも聞いたことがあるような、有名な外国車だ。シックで落ち着いた内装が、フィガロによく似合っている。 　運転をしながらも、フィガロはあれこれ晶に話しかけてくれるけれど、会話がふっと途切れて、運転に集中している時の顔は、彫刻みたいに整っていた。白く整った顔を、信号の色や、外のネオンの光が、カラフルに染める。信号待ちの時に片肘をドアにかけて肘をついているポーズや、眼鏡のフレームが頬に影を落とす様、シフトレバーに手をかけている仕草なんて、写真に撮ったらそのまま雑誌の表紙を飾れそうだ。 　そんなことを思いながらついフィガロの横顔に見惚れてしまっていたら、ふと柔らかい色合いをした瞳が、ちらりと晶の方を向く。 「なあに、晶」 「…………え？」 　ぼうっと見つめていたので、少し反応が遅れた。まだ信号が赤であることを確かめてから、フィガロは今度は顔ごとこちらを向いた。 「そんなに見つめられたら、穴が開いちゃうよ」 「ごっ、ごめんなさい……！　気が散りますよね……！」 　気付けば、車が動き出した瞬間から、ずっとフィガロを見つめていたような気がする。他者からの視線に敏感なフィガロだから、きっと最初からずっと晶のうるさい視線を感じていただろう。 　慌てて顔を逸らそうとしたけれど、その前に、フィガロの片手が伸びてきて、晶の膝の上で晶の手をぎゅっと握った。 「まあ、見つめてくれるのはいいけど、あんまり身を乗り出しすぎると危ないからね」 　そう言われて初めて、自分がシートベルトを掴んだ
October 30, 2025 at 9:44 AM
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この、すごい苛々する数字の歪み……波打ってる……これでもマシになったんだけど…！！！（目次の数字）１桁と２桁と３桁でフォントの大きさが違ってしまうから、どうしてもうまく揃わなくてぇ😭ワードちゃん、これ以上打ち解けられない。ガタつく。
October 25, 2025 at 3:38 PM
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これ今日行った某港のお店、メニュー見た時からオエとカの目の色！！！と思ってわざわざご出動願った２人😄
しかしいつも港混むのに、今日は車停めるのも困らなかったしお店も待ち時間ゼロで入れたな〜。今度はアジフライ食べたい。
October 13, 2025 at 2:31 PM
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October 13, 2025 at 8:59 AM
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October 13, 2025 at 8:59 AM
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October 13, 2025 at 8:59 AM
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11/16賢マナにて発行予定のブラ晶♂すけべ本の部数把握のため、アンケートにご協力お願いします。
表紙はちりこさんにイチャラブな二人を描いていただきました🙏💕
「賢者様の夏季休暇」A5/76P/R18
ぶあきくんがポリセする話。サンプルはツリーにて。
October 13, 2025 at 8:59 AM
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October 11, 2025 at 2:50 PM
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October 11, 2025 at 2:50 PM
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October 11, 2025 at 2:50 PM
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11/16賢マナにて発行予定の晶♂受け本の会場搬入・通販部数把握のため、アンケートにご協力お願いします。
forms.gle/fmEpx4Sr7zxk...
ミス晶♂、ヒス晶♂の再録、オー晶♂、ネロ晶♂、ブラ晶♂が書下ろし
表紙はなな伽さんに天才的に素敵な表紙を描いていただきました🥰以下サンプルです。
October 11, 2025 at 2:50 PM
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おさなな晶♂②
ソファだから少し狭くて、体がヒースクリフとシノと密着する。 「ああ。だから、晶を補給しに来た」 「……いい？　晶」 　ヒースクリフも身を乗り出して、晶の顔を覗き込んでくる。二人の香りが近くなる。ぶわりと体温が上がって、心臓が煩く騒ぎ始めた。 「う、うん」 　晶が頷いた瞬間、ヒースクリフが正面から、シノが背後から、ぎゅっと晶を抱き締めてきた。二人に挟まれるような格好になる。 「はあ、晶……いい匂い……」 　ヒースクリフの形の良い鼻先が、晶の首筋に押しつけられる。反対側の首筋には、シノが顔を摺り寄せていた。 「噛みつきたい」 「だ、駄目だよ、シノ」 「冗談――じゃないけど、まあ、我慢してやる」 　偉そうにそう言って、シノがぐりぐりと顔を押し当ててきた。大型の猫に懐かれているような気分にもなるけれど、ヒースクリフとシノの匂いと体温に、くらくらと眩暈がする。 （いい匂いだし、汗の匂いもするし、あったかい……） 　三人分の心臓が重なる。一番騒がしくて速度が速いのは、晶の鼓動だろう。きっと、ヒースクリフにも、シノにも、伝わっている。それが恥ずかしいけれど、二人に大事に大事に抱き締められると、離して欲しいなんてとても言えなかった。 　ふと、ヒースクリフが顔を埋めている方の首筋に感じる感触が、少し変わる。高い鼻の頭の固さではなくて、柔らかくふにゃりとしたものだ。それを感じた直後に、生温かくてもっと柔らかいものが首筋を舐め上げる。 「ま、待って、俺、まだお風呂入ってないから……！」 「オレは気にしないぜ。オレたちも入ってないし」 　今度は反対側も、同じように舐められた。それどころか、噛んだら駄目だと言ったのに、シノは軽く甘噛みするように歯を立ててくる。 「んっ……」 　思わず小さく声を上げてしまうと、ヒースクリフが熱い吐息を漏らした。その熱に、晶の全身の体温も、つられるようにしてじわじわと上がり出す。 「明日も朝早いから、これより先は出来ないけど……」 　残念そうにそう言われて、晶は自分の言葉が、まるでその先をねだっているかのようだったことに今更気付いてしまう。 「違うよ！？　その、そういう意味じゃないけどっ……ん、あッ！」 　耳朶の後ろに、きつく吸い付かれる。髪で隠れるけれど、際どい場所だ。窘めようにも、今触れてきたのがどちらなのかわからなくなる。否、もしかしたら、二人とも、同じように口付けてきたのかもしれない。 　正面にいるヒースクリフの胸に縋りつきながら、晶は小さく体を震わせた。 　二人は今をときめくトップアイドルなのに、顔も頭も体つきも取り立てて秀でたところがなく、どこまでも平凡な晶のことを、何故か好いてくれている。学校で会えなくても、忙しい日々の合間を縫ってこうやって会いに来てくれるし、晶に触れてくれる。テレビでレモラバの二人を見る度に、遠い世界の人だと感じるし、自分は分不相応じゃないか、と思っては落ち込んでしまうけれど、忙しい二人が晶に触れて癒されると言ってくれて、こんな風に充電をしに来てくれるのだ。晶も二人のことは大好きだし、悩みは完全には拭えないけれど、二人の力になれる限り、一緒にいさせてもらいたいと思う。 　晶がヒースクリフの背中に腕を回すと、ヒースクリフが晶の首筋から顔を上げた。そうして、至近距離で 長い睫毛がそっと伏せられるのが見えて、晶もぎゅっと目を瞑る。柔らかく唇が重ねられて、優しい触れ合いに蕩けそうになったところで、ゆっくりと顔が離れる。かと思えば、背後からぐいっと顎を掴まれて、横を向かされた。今度は少しだけ荒々しく、シノの唇が重なる。 　二人とも、感触も違うし、触れ方も違う。 　大人気の二人を晶が独占してしまっていいのかな、と思うけれど、三人でくっついて過ごす穏やかな時間は、何よりも大切なものだった。 　シノに唇を食まれて、だらしなく唇が開いてしまう。その隙間にぬるりと舌が入り込んできて、びくん、と体が跳ねた。体の中心が反応してしまったことが、ヒースクリフに伝わりそうで心配になる。 「シノ」 　窘めるようなヒースクリフの声に、シノがぷはっと顔を離す。 「……悪い、やりすぎた」 「う、ううん……気持ち良かった……」 　首を横に向けての深いキスに、少し呼吸は苦しくなったけれど、気持ちが良かったのは確かだ。ぼんやりしながらそう答えると目の前のヒースクリフが、少し拗ねたように唇を尖らせていた。テレビの中では見ることのない、年相応の可愛らしい顔だ。晶は小さく笑って、ヒースクリフの首を抱き寄せる。すぐに再び唇が重ねられて、すぐにぬるりと舌が差し込まれた。 　分不相応だと思うのに、自分だけが知っている彼らの一面があるということが、どうしようもなく嬉しい。 　疲れているのに部屋に来てくれることを、申し訳なく思うのに、求められていることが嬉しい。 　ヒースクリフが少しずつ体重をかけてきて、背後のシノが晶の体を支えながら、晶に潰されないように体を入れ替える。 　気付けば、二人に組み敷かれていて、晶は二人の顔 越しに天井を見上げる体勢になっていた。 　少し息を荒げた二人が、妙に艶めかしい。 「……今日は、しないんだよね……？」 　ごくりと、喉が鳴る。そう聞きながらも、晶の声には期待が滲んでしまった。 「……その、つもりだったんですけど……」 「晶が可愛いのが悪い」 　困ったようにヒースクリフが眉を下げる横で、シノが自信満々にそう言う。 　明日は二人とも朝が早いと言っていたし、晶も普通に学校だ。それでも、求められることが嬉しくて、晶には抵抗なんて出来なかった。 　そうだ、お風呂に入っていなかった、と思っても、もう遅い。二人に交互に口付けられ、服の裾から手を入れられながら、晶は甘い時間にとろとろと体を蕩けさせていくのだった。
September 14, 2025 at 9:29 AM