「わぁ、きれい……」 きらびやかなイルミネーションが目の前いっぱいに広がって、口にするつもりのなかった感嘆の声がため息と一緒に漏れた。ビルの谷間にある広場には大きなクリスマスツリーが飾られ、トナカイやサンタクロースのオブジェだとか大きなアーチが暖かみのある電球色で光り輝いている。

終業式の日、カルマ君は教室に来なかった。ホームルームの終わりまで空席だった一番後ろの席を、頬杖をついたまま何となく振り返る。十二月、暖房設備のない旧校舎は寒く、頬に触れた自分の手はとても冷たかった。 「……カルマ君は風邪気味のようですね。欠席の連絡がありました」 よそ見をしている...

新規チャイナ衣装ありがとうのチャイニーズマフィアパロカル渚ちゃんです。スクラッチくじの期間終わっちゃったけど、いいんです。あのビジュでお読みください。原作軸とは全く違う謎時空のなんちゃってゆるふわパロです。以下注意点。 ・この話はフィクションです。実際の人物、組織、事件等とは一切関係ありません。 ・犯罪行為の描写がありますが、現実における同様の行為を肯定・推奨するものではありません。 ・モブおじ×...

ふとまぶたを開けた時、僕の頭に浮かんだのは「よく寝た」というなんとも陳腐な感想だった。 照明を落とされた薄暗い部屋の、慣れないベッドの上でのことだった。半ばうつ伏せの僕の下にはさらさらした触り心地のよい寝具があった。体にはタオル生地でできた何かが掛けられている。バスタオルかな、と...

屋上庭園を冷たい風が吹き抜ける。ライトアップされた草木を揺らしたかと思うと渚の水色の髪を散らし、ひゅうと後ろへ駆け抜けていった。 「わ、すごい風」 「寒い？ だいじょぶ？」 「うん」 そう言いながらも寒さに震える渚は俺の腕にぴたりと身を寄せた。あーマジかわいい。こういう動作の一つ...

激務の一週間を何とか乗り越えた俺はその時点で思考力を失っていたらしく、見事に終電を逃してしまった。正確には終点行きの最後の一本を逃していて、終電だと思って乗ったのは途中駅止まりで車庫に入る電車だったのだ。最寄駅までは辿り着けない。降ろされたらタクシーで帰らざるを得なかった。もちろ...