青い手に引かれてぼうっと見てしまう争いの果ての世界の映画
青い手に引かれてぼうっと見てしまう争いの果ての世界の映画
歌うこと 濡れてぬくとい骨たちに響かす深い藍色のこと
歌うこと 濡れてぬくとい骨たちに響かす深い藍色のこと
ひとことですむことを何度言わせる 獰猛な夜を見ていたいのに
ひとことですむことを何度言わせる 獰猛な夜を見ていたいのに
油彩画の古びた青のしんとして前向くひとを座らせる椅子
油彩画の古びた青のしんとして前向くひとを座らせる椅子
恋うる力ときどき鞣すようにねむるこの部屋にあわく訪れてひとは
恋うる力ときどき鞣すようにねむるこの部屋にあわく訪れてひとは
ミュートしているLINE STOREのスタンプの犬のスタンプを買う 風の夜
ミュートしているLINE STOREのスタンプの犬のスタンプを買う 風の夜
消耗し切っているからやめて押し返すため上げてゆく腕の重たく
消耗し切っているからやめて押し返すため上げてゆく腕の重たく
本当のことを言ってもこわれない 櫂の音ざわめきと混ざらず
本当のことを言ってもこわれない 櫂の音ざわめきと混ざらず
ウィリアム・モリスの襞の暗い場所 掻き寄せる花のなかにうまれる
ウィリアム・モリスの襞の暗い場所 掻き寄せる花のなかにうまれる
失くしたらどうなるだろうゆうかげにどうしてこんなにずれるんだろう
失くしたらどうなるだろうゆうかげにどうしてこんなにずれるんだろう
うつくしくなる思い出の黒い犬背なかのぬくいかなしみの犬
うつくしくなる思い出の黒い犬背なかのぬくいかなしみの犬
隅にいたひと席を立つとき動く濃い影、濡れた葉のような影
隅にいたひと席を立つとき動く濃い影、濡れた葉のような影
出来たことつよくよろこび手を叩く子どもが隣りのテーブルにいる
出来たことつよくよろこび手を叩く子どもが隣りのテーブルにいる
朝の陽の色なく差しこんでくるゆえ羽根を持たない昨日も今日も
朝の陽の色なく差しこんでくるゆえ羽根を持たない昨日も今日も
開いては閉じるつめたい石の扉 いつも、それで、大丈夫だったよ
開いては閉じるつめたい石の扉 いつも、それで、大丈夫だったよ
抱え込んで離さぬつもり油揚げ光ってすこし泣けてくる夜に
抱え込んで離さぬつもり油揚げ光ってすこし泣けてくる夜に
窓の暗み それから それからと言って、渡さないままの言葉を抱く
窓の暗み それから それからと言って、渡さないままの言葉を抱く
伝記のように西日は差して待つときに待たれていること こめかみに熱
伝記のように西日は差して待つときに待たれていること こめかみに熱
開かない蓋の金色安っぽく冷えたままいやに長い八月
開かない蓋の金色安っぽく冷えたままいやに長い八月
あまりよくないよ、そういうやり方はわかるよ、おそらく踏み外す よ
あまりよくないよ、そういうやり方はわかるよ、おそらく踏み外す よ
遊びつづける、それもまっすぐ前を向きカーテンが玉子色に染まる昼
遊びつづける、それもまっすぐ前を向きカーテンが玉子色に染まる昼
お祭りの準備はすでに昨夜から為されて今朝の玉子の毀る
お祭りの準備はすでに昨夜から為されて今朝の玉子の毀る
星のない夜目を閉じて名前だけ思ってそれですぐに忘れる
星のない夜目を閉じて名前だけ思ってそれですぐに忘れる
結んでもいない約束あるようで壁にかかった絵だけがあって
結んでもいない約束あるようで壁にかかった絵だけがあって
ちぎる手の皺美しい紺色のシャツのあなたと海の幸のピザを
ちぎる手の皺美しい紺色のシャツのあなたと海の幸のピザを