はあ……(虚無)
はあ……(虚無)
「最上さん、最上さんはこれを通しておれのこと見てたよね。ずるいなあ」
◼️◼️◼️
机に溜まった書類の山を見つめながら林藤は昔のことを思い出し、また笑った。
「俺や忍田なんかは触らせてすらもらえなかったんだぞ、迅」
「最上さん、最上さんはこれを通しておれのこと見てたよね。ずるいなあ」
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机に溜まった書類の山を見つめながら林藤は昔のことを思い出し、また笑った。
「俺や忍田なんかは触らせてすらもらえなかったんだぞ、迅」
林藤は携帯灰皿に吸い殻を入れながら笑った。決して馬鹿にするようなものではない。なにかを、懐かしんでいるような。
「そんなにおかしかった?」
「いや。その選択肢を持ってるって時点でお前は最上さんに一番可愛がられてたってことなのにと思ってな」
林藤は携帯灰皿に吸い殻を入れながら笑った。決して馬鹿にするようなものではない。なにかを、懐かしんでいるような。
「そんなにおかしかった?」
「いや。その選択肢を持ってるって時点でお前は最上さんに一番可愛がられてたってことなのにと思ってな」
「どっちなんだろう。どっちも欲しいからこうなってるのかも」
「なにが欲しかった?」
今は首元に引っかけているサングラスの縁を撫でながら今度は迅が口を引き結ぶ。綺麗に手入れが成されたレンズは細かな傷はあれど曇りひとつない。
「どっちなんだろう。どっちも欲しいからこうなってるのかも」
「なにが欲しかった?」
今は首元に引っかけているサングラスの縁を撫でながら今度は迅が口を引き結ぶ。綺麗に手入れが成されたレンズは細かな傷はあれど曇りひとつない。
紫煙で夜を濁らせる林藤に迅は唐突に話し出した。玉狛支部で感じる風は、川の上に建つこともあり冷たく感じる。
林藤はほんの僅かの無言で煙草を燃やしていく。フィルターと巻き紙の境界が赤く光ったところで口を開いた。
「俺は知りたいからボーダーにいるかな」
「……そうだよね」
「珍しくおセンチか? お前もまだまだ子供だな」
「あんまり嬉しくないかも」
「俺は嬉しいんだよ」
そう言って迅の頭を撫でる。グレージュが散らばって夜にいくつもの線を作った。
「迅、お前はどうなんだ」
紫煙で夜を濁らせる林藤に迅は唐突に話し出した。玉狛支部で感じる風は、川の上に建つこともあり冷たく感じる。
林藤はほんの僅かの無言で煙草を燃やしていく。フィルターと巻き紙の境界が赤く光ったところで口を開いた。
「俺は知りたいからボーダーにいるかな」
「……そうだよね」
「珍しくおセンチか? お前もまだまだ子供だな」
「あんまり嬉しくないかも」
「俺は嬉しいんだよ」
そう言って迅の頭を撫でる。グレージュが散らばって夜にいくつもの線を作った。
「迅、お前はどうなんだ」