Nakaji
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drboar.bsky.social
Nakaji
@drboar.bsky.social
亥年生まれ。猪突猛進。冷却原子実験屋。
ちなみに、この2つのイオンの散乱の干渉実験は、セットアップが明確なので、著者達によりかなり細かく解析されている↓
journals.aps.org/pra/abstract...
arxiv.org/abs/quant-ph...
tf.nist.gov/general/pdf/...

これを読むと、σ偏光の場合に干渉縞が消えるのはほぼ自明という感じにもなって、逆に面白くなくなってしまうかも知れないが、何が干渉縞を消すのか、というのが良く分かると思う。
7/7
February 14, 2024 at 1:51 PM
この
「原理的に識別不可能であれば重ね合わせて干渉項を考慮しないといけない」
というのは、量子力学においてかなり重要な原理だと思っていて、
経路積分なんてのはまさにこの原理の現れだし、
多体干渉や量子統計性なんてものも「同種粒子の識別不可能性」からの干渉効果(バンチング効果 or アンチバンチング効果)の現れだろう。
6/n
February 14, 2024 at 1:45 PM
量子力学の二重スリット実験の解説で、たまに「粒子として観測しようとすると干渉縞が消える」とか、ひどいのだと「粒子として意識すると干渉縞が消える」という説明を見かけるが、そんなあやふやな話ではなくて、
原理的に識別可能な2経路であれば干渉せず、原理的に識別不可能な2経路であれば重ね合わせて干渉項を考慮しないといけない、というだけの話である。
意識するだけで干渉縞が変化するような話では全くない。
5/n
February 14, 2024 at 1:34 PM
実際の実験では、イオンによる散乱後、
偏光状態が変わっていない(π偏光)光子だけ集める→干渉縞が見える
偏光状態が変わった光子(σ偏光)だけ集める→干渉縞が消える
という実験結果を得ている。
(最初の投稿の図の上がπ偏光光子だけ集めた場合、下がσ偏光光子だけ集めた場合)

ここで面白いのは、実験ではイオンの内部状態の観測をわざわざしておらず(どちらの経路を通ったかを実際に観測しなくとも)、原理的にどちらのイオンで散乱されたか分かる痕跡が残っていれば(識別可能であれば)干渉縞が消える、ということ。
4/n
February 14, 2024 at 1:23 PM
イオンによる光の散乱は、イオンによる光子の吸収・放出過程なので、光を散乱した結果、イオンの内部状態が散乱前と変わってしまう場合がある。この時は、イオンの内部状態をチェックするとどちらのイオンで散乱されたかが原理的に分かってしまい、この場合は干渉縞が消える。

実は、このようなイオンの内部状態が変わる散乱をした場合は、光子の状態(偏光)も入射前からは変化している。
そのため、
光子の偏光状態が入射前と同じ→イオンに散乱の痕跡を残していない
光子の偏光状態が入射前から変わっている→イオンに散乱の痕跡が残っている
と判断することができる。
3/n
February 14, 2024 at 1:11 PM
実験のセットアップをもう少し細かく書くと、この実験では2つのスリットによる干渉ではなく、2つのイオンによる散乱光の干渉を見ている。
(下図。図は再び U. Eichmann et al., PRL 70, 2359 (1993) から転載)
光子がどちらのイオンにより散乱されたかが原理的に分からない場合、この2つのイオンからの散乱光は互いに干渉し、干渉縞が出現する。 2/n

※ 2つのスリット(穴)による干渉と、2つのイオン(散乱体)による干渉では話が違うではないか、と疑問に思う人は、「バビネの原理」で検索しよう。
February 14, 2024 at 12:59 PM