泆互(イチゴ)
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カイいさ中心の41受けの人間です
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5週目の特典を受けて、10年くらい前に書いたくく仙サルベージ（ネタバレありません） #新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/shinshobg.html
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「久々知×仙蔵（再掲）」と記載されています。 画像情報：generated by 新書ページメーカー / フォント：はれのそら明朝 以下は本文の内容です。 「立花君、髪の毛切るときは絶対僕に切らしてね。絶対だよ」 　と斎藤タカ丸に初対面で言われるくらいの立花仙蔵の美髪は、いまやところどころ焦げ、ほつれ、火薬のにおいが染み付いてしまっている。ふうう、と大きなため息をつく仙蔵のその足元では、久々知兵助が土下座していた。 　毛先が筆のように滑らかで、一本一本が輝き、束ねると穏やかな河川のようにさらさらと流れる仙蔵の髪を現在の有様にし、仙蔵自身にもところどころ火傷痕や水ぶくれを作った張本人である久々知を、先輩として見下ろし、慰めるように言った。 「まあ、私も不注意だったさ。火薬の臭いに反応してかわすことが出来なかったとは、完全に奴ら以外への緊張感がおろそかだった。何もお前だけが悪いわけでもない」 「殺してください……」 「そう言うなと」 　どちらにせよ斎藤さんに殺されます、と久々知は真冬の蝶よりも頼りなく弱弱しい声で、頭を畳にめり込ませるほどに低頭しているが、できることならば、このまま綾部喜八郎にでも穴に埋めてもらいたいというのが久々知の本心だった。お前だけが悪いわけじゃないという仙蔵のフォローなどとんでもない、のである。ころしてくださいと頭をがんがんと打ち付ける久々知。立花仙蔵の髪の価値など忍術学園に在籍するものなら誰でもわかる。あのきり丸が、へたなアルバイトよりも立花先輩の髪を少しわけてもらって髢屋へ売りに行ったほうがいい儲けになるんじゃないかなあと割と本気で言っていたことからも明らかだ。 　そもそも、よりによって落としただけで発火するという、下級生には任せられぬほど細心の注意を要する火薬を扱っていたとき、その手元を狂わせたのは久々知であり、つまり、完全に久々知だけが悪かった。 　四年の田村三木ヱ衛門が照星という憧れの人に構ってもらえない鬱憤を発散するため血迷ってこさえた数個の火薬玉。 　これがあまりにも危険すぎるということが田村の医務室送りをもって早期に判明したため、火薬委員会が没収したのだ。 　とはいえ、危険すぎるそれは倉庫にしまうことも出来ず、空き地で爆発させてとっとと処分するほかなかった。 　委員会の時間を使い、忍術学園の敷地内にある空き地にて、火薬委員会が誇る可愛い一・二年生や、ついでに新入りの四年生に危険がないように、久々知は一人で、的も無い虚空へ火薬玉をぶん投げるというひたすら不毛な作業していた。 　そして危険物も残すところあと一個になったというところ、その最後の最後で手元を狂わせて、こちらに猛然と疾走してくる人影に当ててしまったのは、やはり久々知の手落ち以外の何物でもない。 　あいつらだけはどうしても苦手だと明言する一年は組のしめりけコンビから必死に逃げて前方確認を怠っていた仙蔵が久々知の処理場を横切ってしまったのは、仙蔵がというより運が悪かったのだから。 　結果的に、火薬玉の直撃こそしなかったが、爆風が仙蔵を襲った。 　仙蔵自身も被弾して初めて久々知の存在に気づいたらしく、一足先に我に返り「言いたいことはあるだろうがとりあえず隠れてくれ私のために！」と呆然としているままだった久々知の腕をひっつかんで逃げ、ようやくたどり着いた六年長屋の自室に隠れたところなのである。 　 　もちろんまだ委員会の時間中だが、しめりけの襲来は仙蔵の中では何にも勝る非常事態なのであるからして仕方が無い処置だった。 　小さく障子戸を開けなめくじや鼻水の気配が追っていないことを確認し安堵した仙蔵に、いの一番に久々知がしたのが例の土下座である。 　がんがん畳にぶつけられ続ける久々知の頭が気の毒になってきて、もうやめろとそっと肩に触れる。 　本人にも伝えたことがあるが、仙蔵は久々知の顔の造詣がとても好きだった。 　かつて、仙蔵がまだ二年生の頃だ、久々知の弱みを握って一週間の間、顔面を好きに使ったことがある。仙蔵が嬉々として化粧を施したあのときの久々知は、一年生ながら、美姫もやくやというほど化けた。 「いいか久々知。多少の火傷はしたが私自体は無事だ。負傷というほどのものでもないしな」 「いやもうそんなんいいんで。立花先輩の髪に俺はなんてことを。まじ殺してください」 　普段は礼儀を重んじる久々知が先輩相手に言葉遣いがおかしくなるほどの価値が仙蔵の髪にはあるのだ。少なくとも、久々知の中では。 　これは、四方を壁に囲まれている部屋へ身を隠せたのは自分ばかりではなく久々知にとってもよかったなと仙蔵は思う。こんな上級生の姿を見せれば四年以下の下級生に不信感を与えるだろうし、なにより、久々知も言ったように、斎藤あたりに見つかると確かに厄介なことになりそうだった。ああいうタイプが激怒すると一番怖いと、善法寺伊作を同級生に持つ仙蔵は知っている。 「事故だよ、久々知。気にするな」 　重ねて口にして、ようやく、久々知は顔を上げた。 　額に血をにじませているが、その目は仙蔵に手を引かれていたときのようなうつろなものではなくなっていた。 「違います」 「え？」 「俺、先輩だってわかっていました。突然現れた人影 を見て、すぐにわかってたんです。でも、あ、立花先輩だ、そう思いながら、まだ投げる方角をコントロールできる一瞬の間がありながら、俺は先輩に玉をぶち当てたんです。事故じゃありません。先輩の非もありません。加害者は俺です」 「……誤解するなよ、怒っていない。だが、聞かせてもらってもいいだろう。なんでまた」 　言葉通り仙蔵は憤慨のためではなく、素朴な疑問が沸いたために聞き返した。 　久々知の視界の中、あちこち焦げ擦りむいた仙蔵の姿は痛々しい。手を伸ばす。久々知は髪ではなく、仙蔵の小さく火傷を負った白い頬に触れた。 　全校生徒に悪いなと思いつつ、久々知は髪ではなく仙蔵の皮膚を慰撫する。 「俺、先輩が好きなんです。肌が」 「肌が？」 「はい。この肌。ああ、すごく。肌理細やかで、触れたら吸い付きそうで、陽に当たったことがないんじゃと思うほど白い、先輩の肌が。先輩は俺の顔を好きだっておっしゃってましたが、俺は先輩の肌が好きです。やっぱ火傷してても気持ちいい。愛してます。豆腐のようで」 「豆腐のようで」 「食いたいくらい」 　仙蔵はちょっとした空白を置いた。 「……お前、本当に私のことが好きなのか？　ええと、肌が」 「すごく」 　豆腐のようで？ 　一連の言葉に人間扱いをされていないような気がした仙蔵が恐る恐る尋ねると、意に反して真剣な目で言われてしまったから困る。 　実直な久々知は本来嘘を好まない。嘘や冗談の類であってほしいと仙蔵の思いは別として。
January 17, 2025 at 1:28 PM
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むかーし作ったものの使い道のなかった素材出てきた
March 3, 2024 at 12:32 AM