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(おや残念)
「ふ、風呂」
「大丈夫」
「大丈夫、って、何が」
「どうせ汚くなるんだから、終わったあとに一緒に入った方が効率が良いと思わないかい?」
「終わっ…効率って…ちょっ、」
ジャージの裾から手を差し入れられた肥前は身体を震わせた。
身を捩らせようとしてもぴくりとも動かない。
さらに抗議をしようとした口は塞がれて、酒の匂いに包まれる。
「ん、んん〜〜〜!!!」
肥前の叫びは段々と弱々しく消えていった。
『酒は飲んでも呑まれるな』
次郎太刀の声が脳内で木霊する。
この場合、どちらがどうなのだろうか。
答えるものはおらず、全ては酔いの中に消えた。
(おや残念)
「ふ、風呂」
「大丈夫」
「大丈夫、って、何が」
「どうせ汚くなるんだから、終わったあとに一緒に入った方が効率が良いと思わないかい?」
「終わっ…効率って…ちょっ、」
ジャージの裾から手を差し入れられた肥前は身体を震わせた。
身を捩らせようとしてもぴくりとも動かない。
さらに抗議をしようとした口は塞がれて、酒の匂いに包まれる。
「ん、んん〜〜〜!!!」
肥前の叫びは段々と弱々しく消えていった。
『酒は飲んでも呑まれるな』
次郎太刀の声が脳内で木霊する。
この場合、どちらがどうなのだろうか。
答えるものはおらず、全ては酔いの中に消えた。
(面白い)
思わずまじまじと観察していると、暫くして枕から顔を離した肥前が、ギョッとした顔で「まだ居たのかよ」とボヤいた。
「肥前くんがここまで酔うのは珍しいねぇ」
「うるせぇ、ほっとけよ」
ぶんぶんと振り回す肥前の腕を捕まえて、顔を近付ける。
まだ顔が赤く、体温が高い。
「酒のせいかな?それとも照れているからかな?」
「うるせぇ!」
「どっちにしろ、その反応とても新鮮だね」
のっそり馬乗りになると、肥前の動きが止まった。
「おい、先生」
「人は酒を飲むと一時的に不能になるそうだけど」
「おい」
「試しても良いかな」
にっこり笑う南海に、
(面白い)
思わずまじまじと観察していると、暫くして枕から顔を離した肥前が、ギョッとした顔で「まだ居たのかよ」とボヤいた。
「肥前くんがここまで酔うのは珍しいねぇ」
「うるせぇ、ほっとけよ」
ぶんぶんと振り回す肥前の腕を捕まえて、顔を近付ける。
まだ顔が赤く、体温が高い。
「酒のせいかな?それとも照れているからかな?」
「うるせぇ!」
「どっちにしろ、その反応とても新鮮だね」
のっそり馬乗りになると、肥前の動きが止まった。
「おい、先生」
「人は酒を飲むと一時的に不能になるそうだけど」
「おい」
「試しても良いかな」
にっこり笑う南海に、
「かえる!!!!」
「あぁあ、危ない」
ふらついた肥前を咄嗟に堀川が支えようとしたのを手で抑えて、南海も立ち上がって代わりに支える。
離せよ、とモゴモゴ抵抗していたが力は弱々しい。
「悪いね、今の話は聞かなかったことにしてあげてもらえるかな」
「も、もちろん!ね、兼さん!」
「いやだから、何の話なんだよ」
「和泉守、それ以上は突っ込むな」
3人がヤンヤしている間に南海は宴会場を後にして、肥前の部屋に向かった。
布団を敷いて、そこに転がすとさばらく唸っていた肥前が手探りで枕を見つけると
「かえる!!!!」
「あぁあ、危ない」
ふらついた肥前を咄嗟に堀川が支えようとしたのを手で抑えて、南海も立ち上がって代わりに支える。
離せよ、とモゴモゴ抵抗していたが力は弱々しい。
「悪いね、今の話は聞かなかったことにしてあげてもらえるかな」
「も、もちろん!ね、兼さん!」
「いやだから、何の話なんだよ」
「和泉守、それ以上は突っ込むな」
3人がヤンヤしている間に南海は宴会場を後にして、肥前の部屋に向かった。
布団を敷いて、そこに転がすとさばらく唸っていた肥前が手探りで枕を見つけると
「真っ先に俺の部屋に来るのも」
「嫌なのかい?」
「嫌じゃねぇ!!、けど、こっちの身にも」
コンマ1秒考えて、南海は肥前の口に人差し指を当てて黙らせた。
肥前の眉間に皺が寄る。
「なんだよ、先生」
「うん。まぁ、これ以上は明日の君が可哀想だから」
そう言ったが、肥前は何も分かってなさそうだった。
「あ、いやいや!僕たちのことは置物と思って頂いて大丈夫ですよ!ね、兼さん」
「えっ、あ?」
「よせ兄弟。和泉守は分かってなかったのに」
「おい、どういう事だ?」
肥前と南海の両隣にそれぞれ座っていた堀川国広、和泉守兼定、そして山姥切国広が2人を挟んで会話を始める。
「真っ先に俺の部屋に来るのも」
「嫌なのかい?」
「嫌じゃねぇ!!、けど、こっちの身にも」
コンマ1秒考えて、南海は肥前の口に人差し指を当てて黙らせた。
肥前の眉間に皺が寄る。
「なんだよ、先生」
「うん。まぁ、これ以上は明日の君が可哀想だから」
そう言ったが、肥前は何も分かってなさそうだった。
「あ、いやいや!僕たちのことは置物と思って頂いて大丈夫ですよ!ね、兼さん」
「えっ、あ?」
「よせ兄弟。和泉守は分かってなかったのに」
「おい、どういう事だ?」
肥前と南海の両隣にそれぞれ座っていた堀川国広、和泉守兼定、そして山姥切国広が2人を挟んで会話を始める。
釣れるわけねぇだろうが!と膳を叩く。幸い、宴会場は賑やかなので誰も気にしていない。
うんうん、と適当に頷くと、肥前の話はまだ続く。
「あんた目離すとすぐどっか行く。そこらへんのガキの方がよっぽど聞き分けが良いんじゃねぇのか。なんで万屋に行っただけのはずなのに泥だらけで帰ってくるんだよ」
ドブでドジョウ掬いしてんじゃねぇよ!と頭を抱え始めた。
あの日は肥前と完全に別行動だったはずなのに、バレていたとは。
「肥前くん」
「それだけじゃねぇ。戦場から帰ってきたら」
釣れるわけねぇだろうが!と膳を叩く。幸い、宴会場は賑やかなので誰も気にしていない。
うんうん、と適当に頷くと、肥前の話はまだ続く。
「あんた目離すとすぐどっか行く。そこらへんのガキの方がよっぽど聞き分けが良いんじゃねぇのか。なんで万屋に行っただけのはずなのに泥だらけで帰ってくるんだよ」
ドブでドジョウ掬いしてんじゃねぇよ!と頭を抱え始めた。
あの日は肥前と完全に別行動だったはずなのに、バレていたとは。
「肥前くん」
「それだけじゃねぇ。戦場から帰ってきたら」
「……んなわけ、ねぇよ」
先生が酔いつぶれたら部屋に送るのは俺だろうが。
ブツブツとそういう肥前の目が段々とすわっていく。
急に激しく動いたせいで酔いが回ってきたのだろう。
「肥前くんは意外と下戸だったんだねぇ」
「うるせぇ。酒が強いだけだ」
赤い顔で上目遣いで睨まれた。
うーーん、と南海は顎に手を当てて考える。
「なんだよ、先生。何考えてんだよ。いっつもあんたはそうだよ。俺には全然分かんねぇ難しいことゴチャゴチャと」
(よく喋るなぁ)
とても楽しくて顔がにやけそうになるが、手で口元を隠し、さらに観察を続ける。
「……んなわけ、ねぇよ」
先生が酔いつぶれたら部屋に送るのは俺だろうが。
ブツブツとそういう肥前の目が段々とすわっていく。
急に激しく動いたせいで酔いが回ってきたのだろう。
「肥前くんは意外と下戸だったんだねぇ」
「うるせぇ。酒が強いだけだ」
赤い顔で上目遣いで睨まれた。
うーーん、と南海は顎に手を当てて考える。
「なんだよ、先生。何考えてんだよ。いっつもあんたはそうだよ。俺には全然分かんねぇ難しいことゴチャゴチャと」
(よく喋るなぁ)
とても楽しくて顔がにやけそうになるが、手で口元を隠し、さらに観察を続ける。
その間に太郎太刀と祢々切丸に次郎太刀は回収されてしまった。
「彼、余程飲んでいるみたいだねぇ」
それとも酒が強すぎるのかな、と首を傾げる南海をじっと見つめていた肥前だったがやがて深いため息をついて、また手酌をしてくれる。
「酒が強いんじゃねぇの……、ていうか先生も強すぎんだろ」
「ん?」
手酌をしてくれている手が震えている。
思わず肥前を見ると顔が真っ赤になっていて、膳に目をやると肥前の分の酒はとっくに無い。
その間に太郎太刀と祢々切丸に次郎太刀は回収されてしまった。
「彼、余程飲んでいるみたいだねぇ」
それとも酒が強すぎるのかな、と首を傾げる南海をじっと見つめていた肥前だったがやがて深いため息をついて、また手酌をしてくれる。
「酒が強いんじゃねぇの……、ていうか先生も強すぎんだろ」
「ん?」
手酌をしてくれている手が震えている。
思わず肥前を見ると顔が真っ赤になっていて、膳に目をやると肥前の分の酒はとっくに無い。
「美味しいよ」
絡んできた次郎太刀は、そうだろうとも、と深く頷き酌をしようとしたが、既に注がれているのを見て「おっ、と」と手を止めた。
「肥前がお酌かい?珍しいねぇ。次郎ちゃんにもちょーだい」
「誰がやるかよ」
「んもー、肥前のそういうところさぁ……」
次郎太刀が手に持っていた酒瓶を大きな音を立てて床に投げ捨てた。
「いじらしくてだいすきーーーー!」
そのまま肥前に抱きついてグリグリと頭を押し付けてケラケラと笑っている。
肥前は両手で拒否し次郎太刀の頭を掴んで床に投げ倒した。
「美味しいよ」
絡んできた次郎太刀は、そうだろうとも、と深く頷き酌をしようとしたが、既に注がれているのを見て「おっ、と」と手を止めた。
「肥前がお酌かい?珍しいねぇ。次郎ちゃんにもちょーだい」
「誰がやるかよ」
「んもー、肥前のそういうところさぁ……」
次郎太刀が手に持っていた酒瓶を大きな音を立てて床に投げ捨てた。
「いじらしくてだいすきーーーー!」
そのまま肥前に抱きついてグリグリと頭を押し付けてケラケラと笑っている。
肥前は両手で拒否し次郎太刀の頭を掴んで床に投げ倒した。
この2人が違うところといえば、片方は身体能力、片方は知能に偏りがあって、瞳の色が左右対称で違うということだった。
右目が金色、左目が紅色なのはカイ。その逆がクロ。ただ、クロの左目はもう少し色味が暗い。
それから、
「ねぇ、」
クロは明らかに長義をじっと見て。
「先に帰って待ってるね」
そう言って、ひらりと手を翻して出ていった。
「なんだあいつ。長義に用でもあんのかな」
「……さぁね」
カイの方が遥かに鈍感で良かったと、助かる場面だった。
この2人が違うところといえば、片方は身体能力、片方は知能に偏りがあって、瞳の色が左右対称で違うということだった。
右目が金色、左目が紅色なのはカイ。その逆がクロ。ただ、クロの左目はもう少し色味が暗い。
それから、
「ねぇ、」
クロは明らかに長義をじっと見て。
「先に帰って待ってるね」
そう言って、ひらりと手を翻して出ていった。
「なんだあいつ。長義に用でもあんのかな」
「……さぁね」
カイの方が遥かに鈍感で良かったと、助かる場面だった。
もうこのやり取りを十年以上繰り返してきている。そう、託児所時代から。
政府所属の山姥切長義と山姥切国広が、ある時代のある場所を訪れた時に毛布にくるまっている彼らを見つけて保護した。
両親は見つからなかった。恐らくは戦死したか、あるいは。
笑っているカイの頭を軽く小突いて「クロの事を笑ってる場合ではないだろう」と諌めると、はぁいと気の抜けた返事をする。
(歴史修正者…)
全てが悪とは言いきれないグレーの部分。
「長義、今度は僕にも授業してよね」
「もちろん、だとも」
「クニヒロは今度俺に新技考えてくれるんだよな!?」
「あぁ。それを終わらせたらな」
もうこのやり取りを十年以上繰り返してきている。そう、託児所時代から。
政府所属の山姥切長義と山姥切国広が、ある時代のある場所を訪れた時に毛布にくるまっている彼らを見つけて保護した。
両親は見つからなかった。恐らくは戦死したか、あるいは。
笑っているカイの頭を軽く小突いて「クロの事を笑ってる場合ではないだろう」と諌めると、はぁいと気の抜けた返事をする。
(歴史修正者…)
全てが悪とは言いきれないグレーの部分。
「長義、今度は僕にも授業してよね」
「もちろん、だとも」
「クニヒロは今度俺に新技考えてくれるんだよな!?」
「あぁ。それを終わらせたらな」
「うっせぇな。俺は武闘派なの。クロこそ稽古終わったのかよ」
「終わったから迎えに来たんだけど?」
ふふんとふんぞり返った彼だが、サッと隠された腕には包帯が巻かれているのを長義は見逃さなかった。
「手加減はしないのはいい事だけどね、やり過ぎるのもどうかと思うよ偽物くん」
チラリとクロと呼ばれた青年の後ろを軽く睨むと、山姥切国広が顔を出し「俺はもうそろそろ切り上げようと言った」と真っ直ぐに見返してくる。
「チョーギ、僕が本気でってお願いしたの。もうすぐ測定だし」
「クロは体力ないもんな」
「カイと違って頭脳派なの」
「うっせぇな。俺は武闘派なの。クロこそ稽古終わったのかよ」
「終わったから迎えに来たんだけど?」
ふふんとふんぞり返った彼だが、サッと隠された腕には包帯が巻かれているのを長義は見逃さなかった。
「手加減はしないのはいい事だけどね、やり過ぎるのもどうかと思うよ偽物くん」
チラリとクロと呼ばれた青年の後ろを軽く睨むと、山姥切国広が顔を出し「俺はもうそろそろ切り上げようと言った」と真っ直ぐに見返してくる。
「チョーギ、僕が本気でってお願いしたの。もうすぐ測定だし」
「クロは体力ないもんな」
「カイと違って頭脳派なの」
その項目については、長義は目を逸らした。そらした先には相棒の青年が頭を抱えていた。
「……いい加減、覚えたかな」
「いや、ちょっと頭がこんがらがってる。ていうか、これ細かく覚えないといけないこと!?終わった事件なんでしょ??」
「終わった事件だからこそ、学べることが多いんだよ。ある程度の解答があるしね」
「俺、頭悪いからさぁ。こんな事件に巻き込まれたら間違えまくって自滅しそう」
「滅多な事いうもんじゃないよ」
長義がため息をついた時、資料室の扉が開いた。
「カイ、まだやってんの?」
その項目については、長義は目を逸らした。そらした先には相棒の青年が頭を抱えていた。
「……いい加減、覚えたかな」
「いや、ちょっと頭がこんがらがってる。ていうか、これ細かく覚えないといけないこと!?終わった事件なんでしょ??」
「終わった事件だからこそ、学べることが多いんだよ。ある程度の解答があるしね」
「俺、頭悪いからさぁ。こんな事件に巻き込まれたら間違えまくって自滅しそう」
「滅多な事いうもんじゃないよ」
長義がため息をついた時、資料室の扉が開いた。
「カイ、まだやってんの?」