鳩野まるみ
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鳩野まるみ
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六年ぶりに楊太サイト更新しました。温泉です。頭からっぽにして読んでね…
https://b-s.bambina.jp/puthi/2026/02/02/yomotsuhirasaka/
近くでどうどうと音が聴こえている。 何の音だろう、と太公望はぼんやりと考えている。 ずっと昔にもああいう水の音を聴いていたことがあるような気がする。いつかの小さな小さな――空を航ってきた――舟に乗っていた記憶だろうか、否、あのひとに出会った滝だっただろうか。妹と再会した河だろうか――かの女を殺すために――あるいは、ふるい巨大な都市を経巡る運河のほとりにいた記憶の残滓かもしれない。 しかしその水の音には充溢した力を連想させるものがあって、それが更に無理な桎梏によらず完全に制御されている感じがあって、彼はひどく心地よさをおぼえた。この星の遠大な脈拍にもどこか似ているのだが、今はあまりそういうことも考えなかった。あたたかく、安心できる。いのちとしての瞑想に似た眠り、連続性にこだわらなくとも、その時々で確かに必要なだけ残されてきたもの……。 「……う」 彼は、自然に目を覚ました。 硫黄のにおいがふっと鼻先をかすめた。目の前に巨大な岩があり、その裂け目からこんこんと湯が流れ出している。岩の造作は巧妙で、人工物か自然のものを運んできたのかはよくわからない。湯は掘り下げられた湯船に満ちて、化学反応のせいだろうか白っぽい。 そこで意識がはっきりしてきてようやく気がついたことには、その景色と自分との間には一枚ガラスが入っている。 息をするだけでそれとわかる墜落の季節、空は薄氷が張られたような色をしているが、その分湯船はさかんに湯気を上げている。 これは。 「おんせん?」 「はい、温泉です。おはようございます」 「……おお。おはよう」 楊戩がいつもの姿勢の良さですっきりと隣に坐っていて、ひょいと何かを渡してきた。 「そしてこれは温泉まんじゅうです」 「温泉まんじゅう……」 それは小ぶりだが、分銅のようにずしっと存在感がある菓子であった。 底の皮が破けて、ほろりと艶やかな黒い小豆餡が見えている。 ぱくりと一口でやると蒸しあげられたばかりの温度が、まっすぐに胃の腑まで落ちていった。 「……甘いのう」 「いかがですか」 「うまい」 「それはよかった。あ、よければお着替えください。僕は湯加減を見てきます」 楊戩が立って行った後、太公望は言われた着替えらしきものを傍らに見つけた。略装の単の一揃えで、白地に簡単な藍染の模様が描かれている。帯は裏表が濃淡になった黄色である。 しかしなぜ自分はこのような場所でぐうぐうと眠っていたのであろうか、そこが今ひとつ思い出せない。 楊戩が戻ってきた。見れば彼も自分と揃いの藍染の単を着て、上から紺の袍に似た上着を掛けているのが、上背のある体躯に似合っている。 「お待たせしました。やっぱり丈はSでちょうどですね」 「う、うむ。ええと――」 「ああ、結び方はこうですよ。失礼します」 彼が身を屈めてよく撓るらしい生地の帯を手早くなおし、その動作には身を引く暇さえ与えられなかった。そして、 「お風呂に行かれますか。食事もすぐできるそうですけれども」 その言があまりにもなめらかなので、太公望はあのあまりにも有名なレトリックを思い出さざるを得ない。 ——お風呂にする?ご飯にする?そ、れ、と、も、 「……んーちっと腹が減ったのう」 その口振りがおかしかったのだろうか、楊戩はぱっと笑う。この男の笑顔は久々に見るとまたあまりに綺羅綺羅しく、太公望はなんだか季節にそぐわぬ満開の花でも見たような気分になった。その時目の端をよぎったものがあって、これは外の空を落花に似た結晶が落ちてきたのだった。 「ああ、降ってきましたね。……行きましょう」 壁に簡素な筆致で見事な桃花の咲き誇る深山の絵が描かれていて、漆喰かと思ったらそれはどうやら紙である。そうしてそこは壁だと思ったら引き戸でもあり、楊戩はそこをすうっと開けて廊下に出る。 ◯ 御品書 先付 油糍 菊花奉書 蕪蒸し 胡麻豆腐 御碗 揚げ茄子清湯 焼肴 幻の巨大大根ソテー あけび 箸休 百合根雲片 鍋物 豆乳鍋 食事 零余子御飯 菓子 白桃「吟醸」氷花 「幻?」 「幻の大根……」 「……」 どうもここは宿のようなところであるらしい。 楊戩が頼んだ果実の香りのする酒を一合ずつ飲み、生臭のない食事(メインは大根)が終わって、桃シャーベットが出てきた頃に太公望はそう納得した。 食事処は一画一画が区切られていて料亭めいた雰囲気だ。お仕着せの職員らしき者たちが一通り給仕をしてくれる間、他に客らしい気配はなかったが、あるいは余人とは巧みに離されているのかもしれない。 外は雪が積もりはじめている。軒先、ガラス張りの窓近くまで枝を広げた南天の実が、その雪の下で均一に撓んで、室内の灯に相映えている。その透明な宵闇の更に奥、下の方にちらちらと小さな光の集まりが見えた。暮れなずんでよくわからないが、どうもこの建物は高台にあり、あれは麓の街の灯のようだ……。 「よくそういう顔をなさってましたよね」 と楊戩が言ったので、太公望はぱちりと瞬いた。 「――何が」 「え」 相手は虚を突かれたように黙ってしまった。どうも無意識に口にされた言葉であったらしい。そういう顔というのはどういう顔だろう。考えるともなく考えてふと見ると、楊戩はいつもの美しい横顔で自分と同じように麓の灯を見ていて、別に気にしている様子もない。 食事は既に下げられて、ずっと遠くに片付けの気配、洗い物の水の音や火の始末の掛け声があるようだ。 楊戩と、静かな場所で、ふたりきりで卓子に向かい合っている。 こういう状況はとても珍しいのではないだろうか。なんだか不思議な気がしたが、足元が温かくて落ち着いた照明が柔らかかったので、彼は何を問いただす気にもなれなかった。しばらくぼんやりしているとやがて下がったと思った給仕がやってきて、香ばしいお茶と共に赤いソースのかかった白い生菓子が出た。 「アーモンドミルクと葛のブラマンジェ風、ラズベリーソースでございます」 「うまい」 楊戩は給仕がいなくなってから、自分の前の硝子鉢をこちらにすべらせてきた。 「あなたのご専門ですから」 「ん、ふまぬのう」 「……さっきのあなたの表情。昔よく見たなと思ったんです」 「なんだ?」 どうやら言葉を探していたらしく、美丈夫は穏やかに言った。 「あなたが、昔よく、日暮れにそういう顔をしてました。……人の里の煮炊きの灯や、子供たちが親元に帰っていく声に対して」 「………」 「よく覚えてるんですよ。だって、それを見るたびに、僕は、……」 彼の声は不意に低くなり、気を取り直したように別のことを言った。 「……ここからはククリが見えますからね」 「ククリ?」 「麓の街の名前です」 日は落ちきって、光の集まりが、今はそこだけが夜の底に貼りついた一片の金箔のように見える。 「切手ほどの大きさにしか見えないですが、結構大きな街なんですよ」 「ふうん」 「行けるようになったら降りてみますか?」 「それは構わぬが……行けるようになったら?」 「はい。まだ無理でしょうから」 「無理なのか?」 「はい。無理です」 楊戩は何やら意味深な笑みを浮かべた。ペテン師の類いの笑い方だな、と太公望は直感した。彼とてその方面にかけてまず人後に落ちない自信はあったが、しかしそもそも相手の目的がわからないのでどうしようもないし、自分はもう騙し取られるようなものは何一つ持っていない。そう考えるとこれまでずいぶん貧乏くじを引き通しであった、この古い部下が不憫にも思えた。そこで今しばらく付き合ってやってもよいことにしたのである。 ○ たとえ当地の慣習でもからだを他人に見せるのは少し怯む気持ちがあったが、幸い他に誰もいないようであった。 蹠にすべらかな木の廊下を戻ってきて、部屋へ続く階段のひとつ手前、暖簾の下がった区画が大浴場だった。 「行ってきて下さい」 「おぬしはよいのか」 言ってしまってから自分が異様に大胆なことを口走った気がして、太公望はやや混乱した。楊戩もなにやら喉の奥で呻いたようである。いちだんざわりと掠れた声が、 「――見てたでしょう。部屋にも、浴室はありますから。でもこちらが広いですし」 「そ、そうか」 これ以上の会話をおそれて太公望は逃げるように暖簾をくぐったのだが、控えめに香が焚かれた脱衣所には、他人の脱いだものひとつ見当たらない。栗材だろうか人の手と歳月とによく磨き上げられてよくひかる木目の棚に、灯火のように石蕗の花が生けられている。宿というよりは歴史ある富裕な豪農の家といった雰囲気がある。そういえば昔そんな家に滞在していたこともあった、あれはいつの頃だったか……。太公望はしゅるしゅると帯を解いて、整然と畳まれた清潔なタオルの一つを手に湯殿へ入った。湯気が立ち込め、明度の低い中に、硫黄と檜の匂いがした。 「……けっこう広いのう」 つい独り言を言うのは老人ならではの習慣であるかもしれない。 掛け湯を使うように指示があったのでそうした。ぴしゃん、と水が天井から首筋に瀝った時は、つい「うおっ」と言う声も出た。 浴槽は床から掘り下げられ、ゆうに六人ほどは入れそうなものが二つある。手前が金褐色で、奥が白い濁り湯である。成分が違うのかもしれない。もったりとした金色の湯の中を泳ぐようにして横切って向かいの窓に取り付くと、曇りガラスの向こうに白いものが霏々と落ちていくのが見えて、それが夕方から降り続いている雪である。 湯に戻り、小柄な体躯を確かめるように伸ばす。 こんな身体だったか、と自分の手足に問うたがわからなかった。 多分そうなのだろう。 湯の底に触れている足の指が、ゆらゆらと遠く見えて不思議だった。 どうしてこんなところにいるのだろう。 ぱた、と目の前で水が天井から湯舟に瀝り、太公望は再びその疑問にかえった。 付き合ってやる気持ちにはかわりないが、事情は少しもわからない。 しかもどうしてあの男がここにいるのだろう。彼には大事な仕事があるのではなかったか。その途方もない仕事を押し付けたのは確かに自分で、負い目がないわけではなかったが、しかしそれはそれとして能力があるものにはおのずと責務が課せられるものではないか。いや、べつにだからといって、息抜きもしてはならないなどというつもりはないのだが……しかし楊戩の息抜きとは、はてどんなものだろうか?宝貝のメンテナンスや修行では仕事と変わらないであろうし……。 かつての品行方正な部下だった頃の彼のことを思い浮かべて、太公望はぼんやりと上を向く。天井は高く、岩造りのようである。その時太公望の頭にひらめいたことがある。もしかしたらこの湯殿自体が、地殻変動で掘り抜かれた巨岩を利用してつくられているのではないかということである。よく整備されて掃除されているが、これはもともとふるい洞窟だと、同じほど旧い生き物は直観した。……。 不意にガラガラと戸が開く音がして顧みた。一瞬やはり楊戩が来たのかと思って動揺したが、壁の向こうの音であった。反響の様子から向こうはやはり湯殿かもしれない。見たところ男湯女湯の区別はなかったけれども客ごとに違う湯屋があるのだろうか、というかやはり他に客がいるのだろうか。 近代的な設備となっているシャワーブースでなんとなく入念に身体を洗い、太公望はそのまま浴室を出た。部屋に戻ると誰もいなくて、不意に睡魔が襲ってきた。 楊戩が戻っていないことが気になったけれども、隣の部屋にはいつの間にかふかふかと柔らかそうな上等の寝具が鎮座していたので、彼は特に何も考えることなくそこにもぐりこんで眠ってしまう。 ◯ 「修行不足かなあ……」 最後の始祖のはかりごとの粋ともいえる仙道のすまう蓬莱島、そこを実力と出自を以て統べる若き教主は、階下の一室で雪吊りを見ながら独り言ちた。 いやでも一緒に入浴は無理だろう。あらゆる意味で無理だ、少なくとも今は。 まあ、少し心配ではあるから。 ちゃんと見たいという気持ちは否定しきれないけどでもそれはさ〜それだけでは済まないだろうしさ〜。 その時ふっと明かりが揺らぎ、楊戩は差し込むような昏い気配に瞠目した。 ◯ またどうどうと水が流れる音がしていた。目が覚めるとまだ夜であった。 隣の部屋から矩形の明かりが落ちていて、それが太公望にはどうしてか、不意にひどくおそろしいもののように思えた。 おそろしい。 ひとつ夢を抜けてきたから、世界の膜が薄くなっているのかもしれない。 彼ははげしく瞬いて身を起こし、知らず敷布を握って息を詰めた。 何かをおそろしいと思うこと自体が、思えば長い間太公望には寡かったのである。 彼の精神はそのままでほとんど公器であったから、自分という器物が歯車の役割を果たし終える前にそこなわれることについては、確かにおそれていたと言ってよい。だが、それは考えても仕方がないことだった。考えても仕方がないことについては、可能性を一つ一つ消していくことにのみ腐心するべきであった。火の海の中で焼け落ちる前に橋を渡るようなことの繰り返しの中で、いとおしいものたちをどうにか、一人でも多く肥沃な歴史へと逃すための戦い……。 それは終わった。 野放図な同胞たちの所行についての始末も終わった。 ——終わったのだ。 だから、もうよかった、 はず、が 「師叔!」 これも壁だと思っていた背後の扉がぱしんと音を立てて開き、楊戩が何故か息せき切ったように飛びこんできた。 部屋の明かりが点き、肩を掴まれて、間近な美貌に目を伏せそうになる。どうしてこんなに蒼白な顔色をしているのだろう? 「どうされましたか」 「よう、ぜん」 ぐらりと視界がゆがんで、自分の声が細くなる。 「わしは、どうして」 部屋の隅の灯篭がちかりと瞬き、楊戩の袖口にすがるような自分の手に、彼は不意に目をとめた。 それは半ば透き通っていた。 「え……」 太公望は瞬き、次の瞬間ばしっと頬に熱を感じた。 「ぶっ、おぬし、自分の腕力を考え」 「しっかりなさって下さい!」 「――お?」 もう一度見ると、手はちゃんとある。さすがの彼も混乱して顔を上げた。 「おぬし、一体……」 よもつひらさかの楼閣。 ──さて産土の神よ高津神よその身を以てわが背子をこの根の国にあらはせよ。 唇に何かが触れた。 それは柔らかいのに硬質な、よく知るこの男の唇だ。 髪がさらさらと落ちかかってきてまるで強い運命の力がそうであるように少しも無理なく、太公望は柔らかな布団にうずもれるように倒れた。 ○ いいところを紹介しよう、と言われたのを、楊戩は覚えている。 蒼白な顔で詰め寄る青い髪の美丈夫に対して、まるでマッサージ屋でも紹介するようにその老人は言ったのだ。 この期に及んで誤魔化す気かこのクソジジイ、若い頃ならきっとそう怒鳴っていたが、今の彼は心ならずも忍耐を覚えた管理職であったので、ぐっと堪えて声を絞り出した。 「いいところ、ですって?」 「うむ。おそらく今太公望が……いやおぬしらが、一番必要としているところかもしれん」 神界の畔だった。 古き神々の門番として隠居した、かつての崑崙の教主は、ふといたましげに目を落とした。 ——双眸をかたく瞑じた白い顔、自分を抱いた忠実な腕さえ感知しないような深い深い睡り。 「目を醒まさないんです」 ここに来た時、若者は、およそ彼らしくもない迷い子の口調で言葉を継いだのだ。 「取り戻したのに。……魂も魄もここにあるはずだ。なのに、この人の意識だけがないんです、どうして!」 「……拒んでいるのじゃろう」 元始天尊はぽつりと言った。 かつての愛弟子にして古き共犯者の魂の疲弊は、彼にもわかるような気がしていた。だから長い長い謀りごとが終わった時、老人はあえて探さなかった。あの深い瞳の小さな始祖を。 ——驚くべきことに太公望はその時自分の生存を隠さなかったので、すぐに四不象や武吉は猛然と彼を探し始めた。 それに理由があったこともあとから知った。 そうして今は本当に全てが終わり、伏羲であり太公望だったものは、柔らかく静かに朽ちていこうとしたらしい――の、だったが。 老人は、若者を見た。自分の言葉に傷を受けたような目とかち合った。 元始天尊はこの妖怪をまだ年端もいかぬ頃から知っていたが、当時から優雅な獣の美しさを持つ子供だった。それは地平線の闇を隠し持った、本来人間の歴史の倫理などでは括れぬものであったはずだ。 その力を一瞥して、王奕が決めた。 ——当時の崑崙でも実力と見識とで一目置かれていた玉鼎真人に、この金鰲島からの預かり物を託すことを。 そうして育てあげられた天才道士は、明瞭な神話の軌道上で、あの日運命に出会ったのだ……。 覚えず、息をつく。 楊戩にしてみればとても考えも及ばないだろうが、元始天尊にも確かに、運命と呼べるものはあった。 だが規定されたその総量は既に尽き、その後の意志の力だけが問題になったとき、動き出したのは誰よりも、「太公望」を取り巻いていたものたちであったのだ。 「楊戩。……おぬしに、これを預けよう」 不意に枯れ木のような手が意外な力強さで中空から一枚の紙片をつかみ出し、楊戩は驚いたようにそれを享けた。 「……は?」 一瞥し、瞬き、形の良い眉をぐいと寄せた先から本音が溢れる。 「なんのつもりですかジジイ」 形だけなら呪符の体をなしたそれの表面には、しかしおよそ呪符らしくない文言があった。いわく―― 「ペアクーポン黄泉平坂の湯」 効能。 切り傷、冷え症、疲労回復。 「普賢がのう」 「普賢師弟?」 「おぬしがいずれ、そうしてやってくるであろうと。……太公望は地上のものとして生きることを心の底でずっとねがっていて、それが叶わぬならせめて星に還りたいのであろうと。それがこの疲労の正体ではないかと……それがあやつの考えじゃ」 「……僕だって、わかっていました」 彼は白いあどけない貌に目を落とし、 「このひとが、人と生きていた時代をどれだけ愛していたか……あの戦争よりずっと昔の、草原の子供だった時代のことです」 「それを取戻すことは誰にもかなわぬ」 楊戩は唇を噛んだ。 草原に重機が入り、コンクリートがそそがれ、この人の故郷がもうどこにもなくなった時、自分はどこかで、ほっとしたのではなかったか? (それでも) ○ 「そうだね」 違う場所、違う世界で、菫色の瞳の神はひとりごちた。 彼にはもちろん全てが見通せるような能力はなかったが、それでも少しはわかることもあった。古いかけがえのない友人や、彼をあいした一人の若者が、今何を考えているかぐらいは……。 「でもそれはさ、言葉だけじゃだめなんだ。当然、術や宝貝でどうにかなるものでもないよ。――楊戩、君だって、本当はとっくにわかっていると思うけど……」 (それは熱や光のような穏やかな) 「まあ、二人でゆっくり湯治でもしてくるといい。キミたちが知らないだけで、ここからしか見えないものもあるものだよ。地球の鼓動があれからまたいくつものさざなみを生んで、最近はずいぶん複雑になってきたから……」 ○ 太公望はこの星と融合しようと思った。ずっとそのつもりであったからである。そう考えているのは昔呂望と呼ばれていた老翁でもあるし、永劫を旅してきた最後の始祖でもあった。 この星と融合するはずだった。けれども今の彼には、もともとこの星から得た肉体があった。それなら簡単なことで、肉体を返せばいいのである。それはとてもいい考えに思えた。……。 では、どうしてここにいるのだろう。 (「たとえあなたの野原には足りなくても、僕がずっと傍にいます……」) 太公望は目を伏せた。強い腕に抱かれながら。 繰り返しささやかれるその言葉が、また、どこか遠く、己の腑の下の方に響いたようだ。彼は声を漏らし、腕が宙をかいた。 ……星ひとつない空の下、向かいに闇の塊のような連山が聳えている。 手前の濡れて黒い木枠は言うなればその額縁で、外側には繽紛と雪が積もり続けている……。 了
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February 2, 2026 at 2:08 PM
友達にこの間いきなり「鳩野さんが昔言ってたあれ好きだった」って言われて、怒涛のように「MT」「FT」のネタを思い出した。
しかしアレ私の前ジャンルの主人公(「喪神の碑」マリリアード・リリエンスール)の設定そのまんま使ってるんだよな…
「MT」「FT」というのは、「メールタイプ・太公望」「フィメールタイプ・太公望」ですよ!!
んで以下、封神演義外伝読んだ現在の自分ならどういう話にするかなーと思って考えた。小説にはしません(ネタなので)
January 25, 2026 at 10:45 AM
映画館行くたびに某スピッツの名曲映画の予告が流れてるんだけど「死んだ双子の弟の恋人のために弟のふりをする」みたいな話らしくて、私は同じ曲を「自分にそっくりだった亡き父を意識しながら太公望といる」姫発の発太でずっと考えてたので謎に納得しちゃったとこある
November 20, 2025 at 3:48 PM
太公望はそもそも自分が「あの人」として夢見がちに語られるなんて思いもよらない
September 28, 2025 at 5:44 AM
ブルスコの方で駆込み訴えがよた副読本って話久々にしたけどあれはなんというか「楊戩が読むと何故か自分が身につまされる気がしてちょっと憮然とする」みたいな妄想ができていいんですよ あれで一番うわーってなるの本人なんで…
September 28, 2025 at 5:40 AM
32話ぐらいまで感想書いてたの思い出した

https://b-s.bambina.jp/puthi/galaxy/ghl.html
銀河の歴史がまた一ページ
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September 3, 2025 at 5:37 AM
ヤン・ウェンリーの手は地の文で「温かく、乾いていて、感触がよい」とあり、これはユリアン視点なんだよな フェザーンに赴任する時、お別れに手を握った時の感想としてこれが出てくる
石黒版アニメはそこのシーンで握りあう手をことさら印象的に映すという手法でその描写を「演奏」していて、原作ファンのためのアニメっていいな〜!と思ったものだった
そしてフジリューのヤンの手も、いつも温かそうで乾いて感触がよさそうだな…と思った
実は一緒に見ていた友達が「ヤンの手ってやっぱり軍人の手だね」と言ったので思い至ったのである
そうです 優しい軍人の手なんです
フジリューイラスト冊子つきウルジャンようやく買えた 紙の雑誌はもう気合いを入れないと買えない(通販すればいいが梱包材を捨てるのがめんどう)
September 3, 2025 at 5:34 AM
フジリューの絵は美術館建てて保管すべき プティタキテュー財団を早く
August 30, 2025 at 1:50 PM
フジリューイラスト冊子つきウルジャンようやく買えた 紙の雑誌はもう気合いを入れないと買えない(通販すればいいが梱包材を捨てるのがめんどう)
August 30, 2025 at 1:20 PM
神界の父親に政権運営についていちいち口出しされ最初は父上との溝を埋めるために穏便に受け答えしていたが同じこと何度も言われたり自分から思えば古いように思えること言われたりで段々やんなってきて最後にはブチ切れる蓬莱島教主は「「「いる」」」んだよな
June 22, 2025 at 2:41 AM
ここはチラシの裏ですからね
June 3, 2025 at 11:53 PM
ブリッジしてもブルスコの人からのリプは見えないんだな(環境によるのかも)
June 3, 2025 at 11:53 PM
自分で言うのもなんだけどやっぱこれめちゃ好きだわ

RE: https://nijimiss.moe/notes/01H4W2C5XH05X4P8T74P7EPV22
nijimiss.moe
June 3, 2025 at 2:15 PM
キャラクターには三つの願いが必要らしいが願いごと一つだけ、みたいな子ばかり好きになる
June 3, 2025 at 2:03 PM
ようたは全然公式だと思ってない こうなったらいいなという切実な祈りだから その切実さだけは真実だよ
April 29, 2025 at 12:08 AM
アニメ化の時のジャンフェスで結構な数原画展示されてたから残ってるのは知ってるわけですよ
April 28, 2025 at 5:00 AM
ヒカ碁の原画展スゴ 封神の原画展もお願いします 伏して祈り奉ります
April 28, 2025 at 4:56 AM
哪吒2、オリジナル設定の根幹に「元始天尊が魂魄を二つに割りそれぞれが悪と善に分かれた」みたいなやつがあって冒頭いきなりナレーションで言われるのでひっくり返った
March 22, 2025 at 6:09 PM
まだ封神第二部の話 そういえば第一部で人間なんて勝手に減びればいい!あんたが苦労する必要なんてない!とかガンギマリの攻めみたいなこと言ってた哪吒が西岐では一生懸命人間を守ってたのよかったですね!?
僕が人間を助けるなんて…(しゃおへい)
March 13, 2025 at 3:52 PM
封神第二部、崑崙の師弟関係の説明とかもうゼロなんですけど、楊戩と哪吒の諌め役にはちゃんと玉鼎と太乙が回ってたの面白かったな
March 12, 2025 at 2:09 AM
第三部楽しみだな〜 来年には来そうだね
March 11, 2025 at 4:02 PM
姜子牙に迫る敵兵!ピンチ!→うろたえたおじいちゃんが楊戩哪吒を呼ぶが来ない!→慌てて水がめから水を撒いて楊戩を呼ぶ姜子牙(※本作の楊戩は水遁が使える)!→奇行にしか見えずややひるむ敵兵!→間一髪で間に合う楊戩「お怪我は?」
この流れの面白さと興奮で笑いを堪えすぎて死ぬかと思った […]
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nijimiss.moe
March 11, 2025 at 3:51 PM
映画封神第二部見れた!相変わらず面白れ〜 ふじりゅ版好きな人は色々思い出すはずだから見に行ってください いや多分今回の上映は大部分の劇場で木曜までなのでそこはなんともなんですけど…
March 11, 2025 at 3:50 PM
フジリュー!お誕生日おめでとうございます​:happy_birthday:​​:meow_birthday:​
March 10, 2025 at 6:51 AM
これは封神で唯一書いた、完全に世界が異なる系パラレルの姫家小説(本当にちょっとだけ楊太)
海ゆかば
https://b-s.bambina.jp/puthi/2019/06/11/273/
March 2, 2025 at 2:45 AM