ちいこい匡久(よそうち)作ってました
ちいこい匡久(よそうち)作ってました
「…どうやろ」
「ん、美味い」
「、はー…良かった」
今日の夕飯はカレーうどん。唐突に、そして無性に食べたくなったから。
仕事から帰って出汁を取り、カレー粉を混ぜただけの簡単な汁。具材は豚肉、玉葱、白ネギ、刻んだ油揚げ。それとうどんを茹でている間に用意した茄子、ピーマン、南瓜の揚げ焼き。片栗粉だけで下味はなし。
あとはスパイスの調合からカレーを作る猛者に味見をしてもらい、見事合格判定が貰えれば盛り付けて完成。幸いにも口にあったみたいで胸を撫で下ろす。
「匡平のカレーには足元にも及ばへんけどな」
「俺は久遠の作る飯の方が好きだけどな」
「……」
「…どうやろ」
「ん、美味い」
「、はー…良かった」
今日の夕飯はカレーうどん。唐突に、そして無性に食べたくなったから。
仕事から帰って出汁を取り、カレー粉を混ぜただけの簡単な汁。具材は豚肉、玉葱、白ネギ、刻んだ油揚げ。それとうどんを茹でている間に用意した茄子、ピーマン、南瓜の揚げ焼き。片栗粉だけで下味はなし。
あとはスパイスの調合からカレーを作る猛者に味見をしてもらい、見事合格判定が貰えれば盛り付けて完成。幸いにも口にあったみたいで胸を撫で下ろす。
「匡平のカレーには足元にも及ばへんけどな」
「俺は久遠の作る飯の方が好きだけどな」
「……」
「お前ほんとサーモン好きだな」
仕事帰りに立ち寄った回転寿司。
匡平の前に並ぶのは雲丹、烏賊、鯵。そして俺の前にはオニオンサーモン、とろサーモン、炙りサーモン。見事にオレンジ一色が主張する。
「ムニエルもフライも好きやで」
「知ってる」
フッ、と少し笑われ口を噤む。
それはそうか。長年食事を共にしているのだから。
「あ、あとお出汁で炊いても美味いらしいよ」
「らしい、ってことは試してないのか。意外だな」
「…生が一番好きやし、元から美味いもので冒険するんはちょっと…」
食い意地の張った理由に言い渋っていると、匡平から今日一番の笑みを貰った。
「お前ほんとサーモン好きだな」
仕事帰りに立ち寄った回転寿司。
匡平の前に並ぶのは雲丹、烏賊、鯵。そして俺の前にはオニオンサーモン、とろサーモン、炙りサーモン。見事にオレンジ一色が主張する。
「ムニエルもフライも好きやで」
「知ってる」
フッ、と少し笑われ口を噤む。
それはそうか。長年食事を共にしているのだから。
「あ、あとお出汁で炊いても美味いらしいよ」
「らしい、ってことは試してないのか。意外だな」
「…生が一番好きやし、元から美味いもので冒険するんはちょっと…」
食い意地の張った理由に言い渋っていると、匡平から今日一番の笑みを貰った。
「ママできた!」「、ぼくも」
「はーい、ほなママが付けたるさかい貸してな」
七夕の風物詩。毎年暁久が用意してくれる大きな笹に、三枚の短冊が飾られる。
「ママは何おねがいしたの?」
「ママはなあ、織姫と彦星がちゃんと会えますようにってお願いしたよ」
子供たちの笑い声につられるように、陽の下で揺れる飾り付けや願い事がさらさらと音を奏でた。
夜。仕事から帰宅した旦那に願い事を飾るようお願いすれば、言葉もないまま腕の中へ閉じ込められた。かさりと音を立てて着地した折り紙には何と書かれているんだろうか。明日こっそり見てみよう。
『来世も匡平と出逢えますように』
「ママできた!」「、ぼくも」
「はーい、ほなママが付けたるさかい貸してな」
七夕の風物詩。毎年暁久が用意してくれる大きな笹に、三枚の短冊が飾られる。
「ママは何おねがいしたの?」
「ママはなあ、織姫と彦星がちゃんと会えますようにってお願いしたよ」
子供たちの笑い声につられるように、陽の下で揺れる飾り付けや願い事がさらさらと音を奏でた。
夜。仕事から帰宅した旦那に願い事を飾るようお願いすれば、言葉もないまま腕の中へ閉じ込められた。かさりと音を立てて着地した折り紙には何と書かれているんだろうか。明日こっそり見てみよう。
『来世も匡平と出逢えますように』
「ん〜ッ、めっちゃ濃厚!」
暑いのか寒いのかよく分からない日が続く。そんな気温のせいか、この日お土産に選ばれたのは、前から気になっていアイスだった。
ウチは抹茶、匡平はバニラ。ここで変わり種にいかないところがなんとも匡平らしい。
「ふっ、幸せって顔だな」
「そら幸せやもん」
「そうか」
スプーンで掬ったこの一口が、口内でとろけ消えていく幸福感。鼻から抜ける抹茶の香りはそれを華やかに彩る。
「…ほら」
「、あ〜…んー!やっぱりバニラも美味しいわ」
「良かったな」
そう言って笑う匡平が隣に居てくれるだけで、どんなスペシャリテよりも美味しくなる。
「ん〜ッ、めっちゃ濃厚!」
暑いのか寒いのかよく分からない日が続く。そんな気温のせいか、この日お土産に選ばれたのは、前から気になっていアイスだった。
ウチは抹茶、匡平はバニラ。ここで変わり種にいかないところがなんとも匡平らしい。
「ふっ、幸せって顔だな」
「そら幸せやもん」
「そうか」
スプーンで掬ったこの一口が、口内でとろけ消えていく幸福感。鼻から抜ける抹茶の香りはそれを華やかに彩る。
「…ほら」
「、あ〜…んー!やっぱりバニラも美味しいわ」
「良かったな」
そう言って笑う匡平が隣に居てくれるだけで、どんなスペシャリテよりも美味しくなる。
「、これめっちゃ美味い。匡平も食べてみいひん?」
これはご機嫌の時の声。
「ちょっ、匡平!?!」
これは少し怒っている時の声。
「匡平…その、ええと…」
これは照れ8割、甘え2割の声。
「…声ですら表現豊かだな」
「ん?なんの話?」
顔を見なくても容易にその時の感情が分かる久遠の声。コロコロと変えてみせる表情と同じ。
俺にはない、俺の好きな久遠の1分。
「いや。……次の休み、どこか出るか」
「、ええなあ。折角やし一日デートして、お酒引っ掛けてから帰ろ」
「いいな」
一段と明るい声色で喜ぶ音は、どんな音楽よりも心地好く鼓膜を揺すった。
「、これめっちゃ美味い。匡平も食べてみいひん?」
これはご機嫌の時の声。
「ちょっ、匡平!?!」
これは少し怒っている時の声。
「匡平…その、ええと…」
これは照れ8割、甘え2割の声。
「…声ですら表現豊かだな」
「ん?なんの話?」
顔を見なくても容易にその時の感情が分かる久遠の声。コロコロと変えてみせる表情と同じ。
俺にはない、俺の好きな久遠の1分。
「いや。……次の休み、どこか出るか」
「、ええなあ。折角やし一日デートして、お酒引っ掛けてから帰ろ」
「いいな」
一段と明るい声色で喜ぶ音は、どんな音楽よりも心地好く鼓膜を揺すった。
心地よいノイズがアラームとなり意識を浮上させる。時計は5時13分を示していた。
「(…少し早いな)」
隣で眠る匡平。皺は増えたけれど、眠ると少し幼く見えるところは変わってなくて。穏やかな寝息を繰り返す愛しい伴侶に口付ける。
「(さて、朝ご飯は何にしよ)」
雨音がBGMとして流れる朝。いつもより寝起きが悪いのは間違いない。布団から出たがらない匡平を誘い出す匂いは味噌汁か珈琲か…。
喫茶店で出す気まぐれランチを和膳にして、朝食は鶏ハムと卵のホットサンドに。モーニング珈琲は軽めのものを。そして、
「(行き渋る匡平に行ってらっしゃいのキスで完璧や)」
心地よいノイズがアラームとなり意識を浮上させる。時計は5時13分を示していた。
「(…少し早いな)」
隣で眠る匡平。皺は増えたけれど、眠ると少し幼く見えるところは変わってなくて。穏やかな寝息を繰り返す愛しい伴侶に口付ける。
「(さて、朝ご飯は何にしよ)」
雨音がBGMとして流れる朝。いつもより寝起きが悪いのは間違いない。布団から出たがらない匡平を誘い出す匂いは味噌汁か珈琲か…。
喫茶店で出す気まぐれランチを和膳にして、朝食は鶏ハムと卵のホットサンドに。モーニング珈琲は軽めのものを。そして、
「(行き渋る匡平に行ってらっしゃいのキスで完璧や)」
でも抹茶の方が好み( ¯꒳¯ )♡
でも抹茶の方が好み( ¯꒳¯ )♡
定年後IF
閉店後の店内。聴覚は好きなピアノ曲を。嗅覚は強い珈琲の香りを。そして、視覚は午後半休をとり、いつもの席で食事する恋人を堪能する。
「…美味いな」
「やろ?その泡、砂糖だけで作ってん」
メニューには載せていない、匡平だけの限定メニュー。グラニュー糖にごく少量の珈琲を入れ、ひたすらかき混ぜて作るクリーム状の泡は、濃厚なエスプレッソに蕩けるような舌触りを演出する。
「こんな美味いもの、俺専用でいいのかマスター」
「匡平以外には美味しさ半減してまうさかい」
かける手間と時間が愛情で、それが一番の調味料とするならば。間違いなくこれは匡平専用品。
定年後IF
閉店後の店内。聴覚は好きなピアノ曲を。嗅覚は強い珈琲の香りを。そして、視覚は午後半休をとり、いつもの席で食事する恋人を堪能する。
「…美味いな」
「やろ?その泡、砂糖だけで作ってん」
メニューには載せていない、匡平だけの限定メニュー。グラニュー糖にごく少量の珈琲を入れ、ひたすらかき混ぜて作るクリーム状の泡は、濃厚なエスプレッソに蕩けるような舌触りを演出する。
「こんな美味いもの、俺専用でいいのかマスター」
「匡平以外には美味しさ半減してまうさかい」
かける手間と時間が愛情で、それが一番の調味料とするならば。間違いなくこれは匡平専用品。
来月は書けると良いな
来月は書けると良いな
「お、今夜はアジフライか」
そう言いながら揚げたてを一つ摘み、大きな一口で味見をする徹平さん。
口に合うだろうか。と、いつもこの瞬間が一番緊張する。
「ん…胡椒か?」
「お酒にも合うように、下味の段階ですこし多めに振っておきました」
「へー、美味いな」
そう言って口角を上げる徹平さんに胸を撫で下ろす。良かった。どうやら満足してもらえたらしい。
食事なんて、ただの栄養補給だと思っていた。味とか楽しみとか、そんなものは不要だと。
でも徹平さんとの食事はどうしてか楽しくて。美味しい、楽しいって少しでも思ってくれたなら。不思議とそんな事ばかり考える。
「お、今夜はアジフライか」
そう言いながら揚げたてを一つ摘み、大きな一口で味見をする徹平さん。
口に合うだろうか。と、いつもこの瞬間が一番緊張する。
「ん…胡椒か?」
「お酒にも合うように、下味の段階ですこし多めに振っておきました」
「へー、美味いな」
そう言って口角を上げる徹平さんに胸を撫で下ろす。良かった。どうやら満足してもらえたらしい。
食事なんて、ただの栄養補給だと思っていた。味とか楽しみとか、そんなものは不要だと。
でも徹平さんとの食事はどうしてか楽しくて。美味しい、楽しいって少しでも思ってくれたなら。不思議とそんな事ばかり考える。