韓国共同製作ということもあり、濱口映画の異色作という印象だったけど、なんのそのちゃんと濱口映画だった。ショットの強度がやや足りないかなとか、仕方ないにしろステレオタイプな性別描写など気になる点も散見される。ただ、それらを差し引いてもかなりチャレンジングな作品。曖昧な関係性の変容、言語と身体によるコミニュケーション、乗り物、そしてカメラ。フィクションだからこそ許される飛躍も心地よい。エドワード・ヤン、ダグラス・サーク、増村保造、レオス・カラックスからの影響を感じる部分も。これくらい抜けのいいフィクションをまた撮って欲しい。
韓国共同製作ということもあり、濱口映画の異色作という印象だったけど、なんのそのちゃんと濱口映画だった。ショットの強度がやや足りないかなとか、仕方ないにしろステレオタイプな性別描写など気になる点も散見される。ただ、それらを差し引いてもかなりチャレンジングな作品。曖昧な関係性の変容、言語と身体によるコミニュケーション、乗り物、そしてカメラ。フィクションだからこそ許される飛躍も心地よい。エドワード・ヤン、ダグラス・サーク、増村保造、レオス・カラックスからの影響を感じる部分も。これくらい抜けのいいフィクションをまた撮って欲しい。
まず、突然の花嫁じゃないところにこの話の大らかさと時代を超えて響く普遍性があると感じた。言いたいことがないわけでもないが、男の振る舞いがいい具合にナイスガイなので、シャレがシャレとして通用するというか。結局は、男女がくっついて離れてを繰り返す広義のメロドラマ。そんなしょうもない話が努めて軽やかに進んでいく。鏡、窓、扉などあらゆるフレームを技巧的に用いて映画をどんどん躍動させていた。ひとつの映画に無理なく、アクション、サスペンス、コメディ、ラブストーリーが入っているんだから面白いに決まっている。ジャンルがすべて詰まっているのに82分。まさしく匠の技。
まず、突然の花嫁じゃないところにこの話の大らかさと時代を超えて響く普遍性があると感じた。言いたいことがないわけでもないが、男の振る舞いがいい具合にナイスガイなので、シャレがシャレとして通用するというか。結局は、男女がくっついて離れてを繰り返す広義のメロドラマ。そんなしょうもない話が努めて軽やかに進んでいく。鏡、窓、扉などあらゆるフレームを技巧的に用いて映画をどんどん躍動させていた。ひとつの映画に無理なく、アクション、サスペンス、コメディ、ラブストーリーが入っているんだから面白いに決まっている。ジャンルがすべて詰まっているのに82分。まさしく匠の技。
軽快に展開していく家族の物語
忌み嫌って逃げ出した女優の妻が家族の元へ戻り、忙しなくかつて置いてきた感情が揺れ動く
下手したらベタベタな人情噺になりそうなものを、サークは役者の動きと巧みな構図、照明使いによって感情を表出させる
なぜ、背を向けた人が向き直り何かを話すだけで、ここまで感情が昂るのか
あり得た可能性に直面しながらも、普遍的な愛に辿り着く
現代の作家が試行錯誤して描き出す物語を、サークはいとも簡単にやってのけていた
軽快に展開していく家族の物語
忌み嫌って逃げ出した女優の妻が家族の元へ戻り、忙しなくかつて置いてきた感情が揺れ動く
下手したらベタベタな人情噺になりそうなものを、サークは役者の動きと巧みな構図、照明使いによって感情を表出させる
なぜ、背を向けた人が向き直り何かを話すだけで、ここまで感情が昂るのか
あり得た可能性に直面しながらも、普遍的な愛に辿り着く
現代の作家が試行錯誤して描き出す物語を、サークはいとも簡単にやってのけていた
お金だけが幸せじゃないというありきたりなテーマをここまで面白くなるとは。ハイテンポにリズムよく、俳優たちが画面を動き回る。動きによりエモーションとユーモアが駆動して、どうでも良さそうな物語に見入ってしまう。威勢よく出鱈目な展開を押し進めるサークの手腕が見事。
お金だけが幸せじゃないというありきたりなテーマをここまで面白くなるとは。ハイテンポにリズムよく、俳優たちが画面を動き回る。動きによりエモーションとユーモアが駆動して、どうでも良さそうな物語に見入ってしまう。威勢よく出鱈目な展開を押し進めるサークの手腕が見事。
圧倒的な物量で世界の実在感を示す胆力と決して絵空事ではないと、信念に基づき突き進む女性の逞しさに感動した。アナログとデジタル、宗教と実証、あらゆる相反するものが渾然一体となっていくような展開に胸を打たれる。巧みなモニター使いも、映像表現の可能性に挑戦しているかのようだ。やや時代感が残るCGこそが魅力な気もするが、いつかリマスター版が映画館で上映されることを願ってやまない。
圧倒的な物量で世界の実在感を示す胆力と決して絵空事ではないと、信念に基づき突き進む女性の逞しさに感動した。アナログとデジタル、宗教と実証、あらゆる相反するものが渾然一体となっていくような展開に胸を打たれる。巧みなモニター使いも、映像表現の可能性に挑戦しているかのようだ。やや時代感が残るCGこそが魅力な気もするが、いつかリマスター版が映画館で上映されることを願ってやまない。
1位 悪は存在しない
2位 夜明けのすべて
3位 瞳をとじて
4位 ルート29
5位 Cloud クラウド
6位 パスト ライブス/再会
7位 ショーイング・アップ
8位 陪審員2番
9位 ありふれた教室
10位 ロイヤルホテル
普通なら面白くならないリスクを取りまくっているのに、無類に面白く思考を促される『悪は存在しない』
劇的でないのに、確かな時間の流れとささやかな人間の交流によって映画を感じさせてくれた『夜明けのすべて』
尋常じゃないほど映画の力を信じている『瞳をとじて』
虚構との揺らぎを感じさせながら、何よりも現実と向き合った『ルート29』
1位 悪は存在しない
2位 夜明けのすべて
3位 瞳をとじて
4位 ルート29
5位 Cloud クラウド
6位 パスト ライブス/再会
7位 ショーイング・アップ
8位 陪審員2番
9位 ありふれた教室
10位 ロイヤルホテル
普通なら面白くならないリスクを取りまくっているのに、無類に面白く思考を促される『悪は存在しない』
劇的でないのに、確かな時間の流れとささやかな人間の交流によって映画を感じさせてくれた『夜明けのすべて』
尋常じゃないほど映画の力を信じている『瞳をとじて』
虚構との揺らぎを感じさせながら、何よりも現実と向き合った『ルート29』
【お便り締切:1/4(土)12時】
docs.google.com/forms/d/e/1F...
【お便り締切:1/4(土)12時】
docs.google.com/forms/d/e/1F...
なんという板挟み型法廷劇。
中途半端な良心の揺らぎ、やましさ、誤魔化し、あまりにも人間臭い感情をあらゆる緻密なアクションにとって描いている。94歳が余生で撮りましたみたいな、言い訳めいた様子を全く感じられないほど、細部に行き渡った緻密な演出。人が人を裁く怪しさは『リチャード・ジュエル』も発展版と言える。かつ、『12人の怒れる男』を現代的にアップデートした傑作だ。バラエティ豊かな陪審員のキャスティングもきちんと作劇に生きている。ニコラス・ホルトの演技も文句なく素晴らしい。
なんという板挟み型法廷劇。
中途半端な良心の揺らぎ、やましさ、誤魔化し、あまりにも人間臭い感情をあらゆる緻密なアクションにとって描いている。94歳が余生で撮りましたみたいな、言い訳めいた様子を全く感じられないほど、細部に行き渡った緻密な演出。人が人を裁く怪しさは『リチャード・ジュエル』も発展版と言える。かつ、『12人の怒れる男』を現代的にアップデートした傑作だ。バラエティ豊かな陪審員のキャスティングもきちんと作劇に生きている。ニコラス・ホルトの演技も文句なく素晴らしい。
アウトローな生き方の男性達を描いた回顧録というスタイルはどうしたってグッドフェローズを彷彿とするけど、その周縁から見守る女性からの視点という語り口がビクトル・エリセを想起した。ベニーは存在感は圧倒的だが意外なほど彼自身のエピソードやセリフは少ない。彼を眼差す視点からなぜ彼が主人公なのかハッとさせられる瞬間に映画を感じられる。そして、その彼が最終的にどのようなアクションをとるのか。クールでドライな視点で輪郭をクリアにしながら、その本当の内側を最後の最後まで引っ張る胆力に驚かされた。
アウトローな生き方の男性達を描いた回顧録というスタイルはどうしたってグッドフェローズを彷彿とするけど、その周縁から見守る女性からの視点という語り口がビクトル・エリセを想起した。ベニーは存在感は圧倒的だが意外なほど彼自身のエピソードやセリフは少ない。彼を眼差す視点からなぜ彼が主人公なのかハッとさせられる瞬間に映画を感じられる。そして、その彼が最終的にどのようなアクションをとるのか。クールでドライな視点で輪郭をクリアにしながら、その本当の内側を最後の最後まで引っ張る胆力に驚かされた。
ラジオDJが女性に付き纏われるというミニマムな話でありながら、緊張感が途切れない。冒頭の空撮とイーストウッドの存在感が、どこか映画のスケールを増しているような。陰影がある屋内の撮影と大胆なサスペンス描写にはちゃんと驚かされる。この話どこに向かうんだろう?と序盤はやや不安になったが、監督1作目で「普通に面白い」作品を撮っている映画的嗅覚に唸らされる。
ラジオDJが女性に付き纏われるというミニマムな話でありながら、緊張感が途切れない。冒頭の空撮とイーストウッドの存在感が、どこか映画のスケールを増しているような。陰影がある屋内の撮影と大胆なサスペンス描写にはちゃんと驚かされる。この話どこに向かうんだろう?と序盤はやや不安になったが、監督1作目で「普通に面白い」作品を撮っている映画的嗅覚に唸らされる。
コラボ回での太郎さんのお話はこちらで聴けますよ!
#オギャラ #シネ論
open.spotify.com/episode/5DsK...
コラボ回での太郎さんのお話はこちらで聴けますよ!
#オギャラ #シネ論
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#シネマの前で論じること
open.spotify.com/episode/7z03...
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行き着くはずの物語のサスペンスとささやかな映像のサプライズにより映画的興奮を得られる映画。繰り返しとズレと複数の時系列というこれぞ映画としか言いようがない仕掛けに心が躍る。そんな映画的技巧は実にさりげなく、本質的には俳優の魅力が自然に映っている映画でもあった。確かにこの人は佐野だ、宮田だと思わざるを得ないその人の人生の蓄積がそこはかとなく記録されている。中でも山本奈衣留演じる凪の存在感の素晴らしさたるや。こうも自然に魅力的に画面に映り続けていることにただただ驚かされる。
行き着くはずの物語のサスペンスとささやかな映像のサプライズにより映画的興奮を得られる映画。繰り返しとズレと複数の時系列というこれぞ映画としか言いようがない仕掛けに心が躍る。そんな映画的技巧は実にさりげなく、本質的には俳優の魅力が自然に映っている映画でもあった。確かにこの人は佐野だ、宮田だと思わざるを得ないその人の人生の蓄積がそこはかとなく記録されている。中でも山本奈衣留演じる凪の存在感の素晴らしさたるや。こうも自然に魅力的に画面に映り続けていることにただただ驚かされる。