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ハツ

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30↑雑食shipper。主食は青火、火神くん火神くん火神くん！最近は治北、佐久侑ばっかり。逆CPやリバの話もするし夢も好き。言いたいことを言いたい時に、言いたいように。無言フォローご容赦くださいませ。リム・ブロご随意に。Twitter→@camellia_no7

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x.com/rlheiv0ls1_y...

これ、やってみたけど全然わからなくて笑う🤣イエベ自認なんだけど、夏と冬のほうがシュッとして見えない？？？私だけ？？？肌の色は春・秋のほうがきれいか？？？🤔

December 22, 2025 at 2:24 AM

ハツ

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👈これがチ○ポに見えたし、👉がア○ルに見えたのでもう今日の私はおしまいです。ありがとうございました

November 26, 2025 at 12:31 PM

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ここ2回のスペースで角名侑を推されて、そもそも好きなのでちょっと書いてみたよ。どこからも、どこにも、繋がってないあぶくのような話 #文庫ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/bunko/bunko_bg.php

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
付記に「これが恋なら」、「ハツ@camellia_no7」と記載されています。
画像情報：generated by 文庫ページメーカー / フォント：源ノ明朝Regular

以下は本文の内容です。

　場所がよくわからないから、案内してほしい。そう言われた時、真っ先に思ったのは「めんどくさい」だった。侑は、思ったことがそのまま素直に口に出るタイプだ。けれど、その時は「えぇ～」だけで踏みとどまった。通話の相手がカレシだと思い出したからだ。そして、侑のカレシは空気を察するのが異様に早く、上手い。反射的に拒否しようとして、でも、相手との関係、過去に体験したいくつかの修羅場、久しぶりの少しまとまったオフ、そんなことを瞬時に脳内に並べた侑を察知したのだろう。ふ、とわずかに吐いた息に声をゆるめて、言った。
『そう。デートしよ、って意味だよ』
　続けざま、侑が嫌じゃなければだけど、と聞こえた声がひとりごとめいていたのは間違いなくわざとだ、と侑は即座に理解した。侑は日本代表に選ばれるほどのセッターだ。状況判断も駆け引きも、一瞬を追い抜く速さで正解を掴み取る自信がある。そして相手はネット際の読みあいに長け、洗練された技術と実力を持ったミドルブロッカー。だからここが勝負どころだということを明確に把握して、すぐさま思った。
　││いや、勝負どころてなんやねん。

俺はなんの勝負をしとるんや、と唐突に我に返って、気が緩んだ。もちろんカレシはきちんとそれに気づいて畳みかける。
『ねえ、デートしようよ、侑。会いたい』
「……角名、そんな声どんな顔して出しとんねん」
　負けず嫌いで嘘つきの侑をよく知っているカレシは、あははは、と声をあげて笑った。

November 16, 2025 at 5:31 AM

ハツ

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続きでおしまい！（5/5）
実のところまだ続きがあるんだけど、なんとなくここで終わってもいいような気がして。気が向いたら続きを書く、かも…？今日のところはこれでおしまい！！

振り返りもしない背中を見送りながら、侑はいつまで続くとも知れない謎の『お願い』についてしばし考え、明日も来るんやろな、と思ったところで考えるのをやめた。どれだけ考えたところで意味はない。だって侑は佐久早ではない。侑が何気なく作ってあっさり忘れてしまったものを、潰した形跡もなくきれいな形のまま丁寧に保管している佐久早が何を考えているかなんて、わかるはずもなかった。
　ただ、この頃よく想像する。佐久早の部屋に置かれた棚の、小さな引き出しのこと。これまで小物をしまうのに使っていたというA4サイズほどの引き出しを、佐久早はこの星のためにあけたと言った。だから今その引き出しの中には、侑の作った星だけが収められているという。人が触れたものを好まない佐久早だから、自分で作ったら、と言ったこともあった。でも佐久早はきっぱりと首を振り「宮が作って」と答えた。だから佐久早は作り方も知らないそれを壊してしまわないよう大事に持ち帰り、その引き出しの中にそっとしまうのだ。昨日も今日も、きっと明日も。

毎日それを繰り返す佐久早は、引き出しの中に何を見ているのだろう。まだ目視で数えられる程度の星が作る景色はどんなものだろう。侑にとってはやはりゴミでしかないけれど、佐久早の手が滑り落とした星が散りばめられたその景色は、いつか見てみたいような気がした。
　

終わり

October 7, 2025 at 8:41 AM

ハツ

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佐久侑の日2025おめでとう〜〜〜！！！！！ってことで小話！！（3/5）

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「指先から星」、「ハツ@camellia_no7」と記載されています。
以下は本文の内容です。

　この頃、侑は佐久早に星をねだられている。
　紙を折って作る星のことだ。折り紙とは違う。短冊よりもっと細くて長い、たとえば、ストローの包みのような長細い紙で作る星だ。作り方は簡単。縦に長く持った紙の端を斜めに折り返して、角を辺にあわせて折る。その角から外にのびている辺を紙の辺と重なるように折り返す。次は反対側から紙の外に飛び出している辺をさっきと同じく、紙の辺に重ねるようにして折り返す。あとはこの繰り返しで、五角形を紙でくるむように回転させながら巻いていくだけ。最後は紙の端を合わせ目に差しこみほどけないうに留め、五角形の辺を指の腹で中心に向かって押しこみへこませて形を整えたら完成だ。何も難しいことはない。誰でもすぐ作れる、単なる暇つぶしの手遊びだ。それをどういうわけかここ連日、した佐久早にねだられている。そう。
「宮、これ」
　こんなふうに。
「……ああ、うん」

差し出されたのはコピー用紙だ。A3サイズをわざわざ細長く裁断したらしい。最初に渡された時、暇なん？と反射的に訊いてしまった侑に非はない。なぜなら、この星はもともと侑の退屈しのぎの手遊びだったので。
　ことの始まりは二週間ほど前に行われたチームミーティングだった。途中、何がきっかけだったか、話題が社内政治に関する話に逸れて侑の集中が途切れた。名前を聞いたところで顔も浮かばない誰かの進退など侑はまるで興味がない。集められたメンバーの一部が沸いている雑談をやりすごすために侑が手に取ったのがストローの包み紙で、暇つぶしに生み出されたのが紙の星だった。薄く頼りない紙できれいに形を整えるのは少々難しく、その分だけ少しばかり熱中してしまった。結果的に程よい手慰みになったので侑は満足してしばし仕上がりを眺め、それから机の上に転がした。その頃には脱線していた話は無事本題に戻り、ミーティングは予定通りに終わった。スタッフが「そのままで」と言うのに任せて空のカップはその場に残し、侑は来た時と同じく手ぶらで会議室を後にした。その時には手遊びに作って無造作に放り出した星のことなどすっかり忘れていて、その次のミーティング時に再びストローを手にするまで思い出しもしなかった。

──だというのに。侑は今や一日と空けずに星を量産している。いや、量産させられている、というほうが正しく、しかし量産という言葉はいささかオーバーだろう。正確には、侑は決まって毎日ひとつ、星を作らされている。ミーティング中に侑が退屈しのぎに作った小さな星を、さも大事そうに手のひらに包み声をかけてきた佐久早の『お願い』によって。
「ん、できたで」
　ほい、と星をつまんだ指先を差し出すと、佐久早はその下に手をひろげた。小さく軽い星が弾んで転げ落ちてしまわないように、うっかり佐久早に触れてしまわないように、侑は慎重に指先を開いた。紙の星は佐久早の手のひらでころんと転がった。佐久早の大きく肉感の薄い手のひらに、星は不釣り合いに小さく頼りない。手をかけている、というほどもない手間を加味したところで、侑の目にはやはりゴミにしか見えなかった。けれど佐久早はそれを胸元に引き寄せた手のひらの上でじっと見つめる。それから小さく、聞き間違いかと思うほどささやかに、ありがとう、と言い残し去っていった。

October 7, 2025 at 8:41 AM

ハツ

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続きでおしまい！！（15/15）
二人ともお誕生日おめでとう！！！健やかなれ、幸いなれ！！！！！

ように感じた。ああ、これが言霊っちゅうやつかな。ツムのスタメン入りや正セッター登録ほどではないにしても、決して夢物語ではない。そんな予感を俺はぐっと掴んで握りしめた。
「まだまだ時間かかりそうな話やな」
「まあ、もうしばらくは先やろな」
「……俺は待たへんぞ」
「当たり前や。待っててくれなんてひと言も言うてへんやろが。どうぞお構いなく、とっとと先行けや」
　言い返しもせずあっさり流したのが気に入らんかったんか、ツムは口をへの字にひん曲げてぶすくれとる。あん時、ユース決まった時も思ったけど、ぶっさい顔やな。つか、噛みついたら噛みつき返されなおさまらんて、どういう性分やねん。
「どうせすぐ追いついて追い越すことになんねん。こんくらいちょうどええハンデやな」
「はあ？！　追いつかれるわけないし！！」

「はいはい」
　試しに噛みつき返してみたら案の定きゃんきゃん吠えかかってくるのをいなしながら、食べ終えた皿を重ねて運ぶ。そのついでに、洗い直しになったタオルも片付ける。丁寧に洗ったつもりでも触ればやっぱりゴワゴワと固い手触りのそれを、せめてと洗濯ネットに入れた。ジャッとファスナーを引きながら、改めて思う。さすがに新品はふわふわやったはずのタオルがここまで使いこまれるに至る、その道のりを。たぶん北さん自身はなんとも思ってないんやろなあ。当たり前のことを当たり前にやっとるだけや、なんて言うて。向こうでまだぶつくさ言うてるツムかてそうや。自分がやりたいバレーをするためならなんでもやるし、自分が一番楽しんで遊び尽くしたる、て思ってるだけ。それを誰かが努力とか献身とか、時には傲慢とか横暴とか言う。けどそれもどうでもええねん。誰に何を言われても自分がやりたいことをやる、そこに変わりはないんやから。
「……俺も」
　やりたいことをやる、その中で自分もかっこええと思うひとみたいになれたらええな、と思う。いやまあ、なれたら、やなくて『なる』んやけどな。

そのためにもまずは、借りたタオルをきちんと返すことから。これはけじめで、敬意で、決意やからな。ツムのせいで余計な手間がかかった上にいらんおまけまでくっついてきたけど、まあええわ。この道のずっと先でどうせ会うしな。そこで『どや、俺のほうが幸せやったぞ』って腹の底から笑い合うために、俺は今日もまたちゃんとやんねん。

休みの日は朝起きてから味噌汁を作る。今日の出汁は昨夜からつけておいた昆布。鍋を火にかけている間に具材を用意する。といっても、特別なものは入れない。その時にあるもの、半端に残った野菜や、大量に買って冷凍しておいたきのこ、一度に使い切らなかった薄揚げなんかを放り込むだけ。今朝はキャベツと玉ねぎ、エノキダケを刻んだ。ついでにちくわも刻んで加える。一人きりの朝食なら、さらにここへ卵を落としてまだ黄身の真ん中がゆるいうちに白米とかきこむ、それで十分な朝食だ。でも今朝は、休日に加えて自分以外にもう一人――。
「ぅおい、サム！　おっ前、なんやねんこのタオル！」
　――いや、『一人』ちゃうな。あんなん『一匹』や。一匹で十分。
「朝からうっさいねん！　そないでかい声出さんでも聞こえるわ！」
　あかん。うっかりつられて大声出してもうた。腹が減っとるせいもあるかも。なんせさっきから、ツムが声を張り上げるよりだいぶ前から腹の虫が鳴いとる。せや、卵と一緒にこないだもろたハムも切って焼いたろ。丸ごと一本も半分ずつになってまうけど、まあしゃあない。朝飯は大事やからな。休みならなおさら。

October 5, 2025 at 11:37 AM

ハツ

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もひとつ続き（11/15）

知られてへんていうのはそういうことやねん。当の北さんは「経験が浅い、少ないっちゅうのは事実やしなあ」てけろっと続けて、それから静かに笑った。「こつこつやっていくだけや」て。その顔も、声も言葉も、俺は忘れられへん。
「――北農園、生産者代表、北信介。ここに印刷されとるのはただの名前やけど、北さんの覚悟やねん」
　こんなふうに話したことを北さんが知ったら笑うかもしれん。そんな大袈裟なことちゃうよ、とか言わはるのかも。けど俺は、少なくとも俺たちは、そう受け取った。
「……せやから俺は、高校の先輩後輩やから、部活の仲間やからとかでもらいたないねん。ちゃんと一人前の仕事をする立場で手渡されたいねん」
　そんで俺も、こういう仕事をする者です、て覚悟と決意をもって北さんと向き合いたい。正面から、まっすぐ。自慢できる後輩になるて、そういうことやと思うから。
　せやからこんなして安易に流れで手に入れたり、それどころかボロ扱いして捨てたりなんか絶対したないねん。ようけ数あるし自分でも使い心地知りたいから

使てる、て北さん笑てはったけど、雑に扱ってへんことくらいわかんねん。やって北さんやし。大事に使って、そのうち古びて、そんでも使い続けて。ほかしてええて言うてたけど俺がちゃんと洗て返したら「よかったのに」なんて言いながらまた大事に使わはるに決まってんねん。やって北さんやもん。
「……せやろな。ほんで最後は雑巾とかになるわ。真ん中のバッテンもきっちり縫われてな」
「ふっふ、想像つくなあ」
　ツムと二人笑った声は、すっかり食べ尽くしてきれいに空いた皿の上で跳ねた。
　俺の作るメシは今のところまだこんなして身内や仲間内、専門の学校内とかバイト先なんかで振る舞うのがせいぜいてとこや。俺が作ったもんです、てお客さんに出せるようになるのはまだ随分先のことやろうなと思う。でもどんだけ先でも、その時がきたら北さんに挨拶して、あのタオルをもらって、これからも末永くよろしくお願いします、て言うんやって決めた。そのために俺は、一日でも早くその日を迎えられるように腕を磨いて。
「よっしゃ！　俺もタオルもらう！！」

「……は？」
「サムは一人前になったら、なんやろ？　ほんなら俺は～……、あ！　せや！　チームのスタメンとったらにしよ！！」
「はあ？！　そんなんハードル低すぎやろ！！　ＢＪ、チームの若返り図っとるとこやて言うとったやん！！」
「せやで？　せやから俺のスタメン入りはほぼ確でもう間もなくやろな～。まあ？　そうでなくても？　俺の実力なら正セッターなんのは当然やけどな！　はっはー、これはタオルもらう日も近いわ」
　にんまり、と笑ったツムの顔といったら。こんな憎ったらしいことある？　さっきまでしおしおやったくせに調子よく人の決意に乗っかった挙句に抜け駆けするとか、こいつほんま……！！
　……いや、ちゃうか。ちゃうな。少なくとも抜け駆けではない。ツムのスタメン入りも正セッター登録も、ここまでツムが積み上げてきたもんの結果や。セッターになるって決めた小学四年の時から今日まで、ずっと。バレー以外の何もかも、それこそメシも休むのも後回しにして走り続けてきたその道のりは、誰より

俺が一番よく知っとる。ついこないだまですぐ隣を走っとったんやから。
「……わかった」
「え」
「スタメンでも正セッターでも、どっちでも好きにせえ。それは間違いなくツムが出した結果で、誇ってええことやからな」
「お、おお……？」
「それに、これは別にお前と競うためにやるんとちゃうしな」
　そう、この勝負の相手は自分自身や。ツムやない。北さんの前に堂々と立てる自分になれるかどうか、問題はそこやからな。
　すとんと腹に落ちたら、なんや清々したな。ツムはなんやヘンな顔しとるけど。言いたいことあるならすっと言えや。
「……お前は、サムはいつが『その時』なん」
「せやなあ。俺はやっぱり、自分の店持った時かなあ」
　自分の店。現時点ではまだ現実味の薄い願望は、それでも思いのほかすんなりと、気負いなく言葉になった。言葉になったらそれはとたんにぐんと近くなった、

October 5, 2025 at 11:37 AM

ハツ

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続き（7/15）

黙りこんだ。やっとおとなしくなった、と思ったら腹が鳴った。俺ちゃう、ツムのや。今のでいらんエネルギー使ったしな。
「……もうええわ。飯にしよ」
　台拭いて、と渡した布巾をツムは素直に受け取った。ちゃぶ台にかがみこむ後ろ姿は気のせいやなくしおしおや。
　やれやれ、と息をついて鍋の火を止める。とたんにふわ、と湯気が上がって出汁と野菜の甘い匂いがあたりに漂う。ああ、ええ匂い。絶対美味いやつや、という確信がまた腹の虫を刺激する。湯気を顔に浴びつつ鍋を覗きこめば、キャベツはよう煮えてきれいな浅緑、玉ねぎは透き通っとる。エノキダケはくたくたにやらかくて、ちくわは出汁を吸って心なしかぷっくり膨らんで。そこに味噌を溶いたら完成。うん、ええ感じや。
　丁寧に作った味噌汁はそれだけで十分ご馳走なんやってことを、自分で三食作るようになって日々しみじみ感じとる。なんやろな、味噌汁飲むとほっとするし、元気出るねんな。ああ、生きててよかったあ、て感じ。まあツムには、何食うとってもそれやんけ、て言われとるけど。

「ツム。お茶、熱いの、冷たいのん、どっち？」
「冷たいの」
「ほんなら冷蔵庫から麦茶出して」
　ついでにこれも、とグラスと箸を置いてやれば、素直に運んでいった。その後を追いかけるみたいに俺もハムエッグ、というよりハムステーキの目玉焼き載せ、て感じになった皿を運ぶ。大皿にまとめて盛るとケンカになるのはとっくに学習済みやから皿はそれぞれ、の二枚。それから炊きたてつやっつやの白米に、冷凍しといたネギを散らした味噌汁。二人分の器が載ったちゃぶ台はさすがに天板いっぱい。んー、ちょっと野菜少ないか？　まあええか。合間に切っただけのトマト、さっと茹でただけのインゲンも一応添えといたし。
「よし、食お」
「わーい！　いただきます！」
　揃って手を合わせたら、とたんにツムの顔がぱあっと晴れた。現金なやっちゃな。まあでもそうなるわな。ほかほかの飯を前にして他のことを考える隙間はない。腹減っとる時は特に。何を口に入れても「うま！」て味わうだけになっとる

ツムを見とると、つくづくそう思う。美味いものの前に人は無力や。ほんで俺は、こういう顔を見るのがしみじみと好きやなあ、と思う。そうやな、今はメシの次、サーブの八秒間よりちょい上、くらい。いや、メシを食いながらでもこんなしてツムの反応いちいち眺めとるくらいやからもう、だいぶ上、なのかも。
　――ああ、だからこそ、きっと。
「あんな、ツム。あのタオル、北さんとこの取引先やお得意さんに配る用に作ってんねんて」
「あぁ、おかんが銀行とかでもろてくるやつや」
「おん。ご挨拶っちゅうのし紙かけられてビニールの袋に入っとるやつ。俺、それが欲しいねん」
「はあ？　……え、もろたらええやん。一枚ください～言うたら北さんくれはるやろ。あんなん大量に発注しとんのやろし」
　首を傾げるツムに俺は、せやろな、と頷く。ツムの言葉は正しい。前に直接聞いたことがある。あのタオルは北さんが農園を継いで代表にならはった時に作ったんやて。既存の取引先だけでもそこそこの数だったそうで、その倍量くらいで

発注かけたわ、て北さん笑とった。
「ほんなら、」
「うん。ください、て言うたらくれはるやろな。一枚くらい先輩後輩のよしみでな。でも、それはちゃうねん」
「ちゃうて、何が」
「ちゃうやん。だって北さん、あのタオル仕事で配ってはるねんで？」
　挨拶回りの時に、納品の時に、新規契約の時に、これからますますご贔屓によろしくお願いします、て頭下げて渡しとるんやって。若輩者ですのでご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします、て。これまで一度も言ったことのない、舌を噛みそうなその言葉を、俺はしっかり覚えとる。きっと何度も何度も繰り返したんやろう北さんが滑らかに発してみせた、その言葉を。
　俺らは北さんをよう知っとるから、先輩やって事実を抜きにしても『頼りない若造』なんてひとっつも思わへん。でも世間はちゃう。年が若いってだけで舐めてかかってくる大人なんか、なんぼでもおんねん。北さんの人となりを知ったらそんな態度とったこと後悔するやろな、て確信しとるけど、でも現時点で相手に

October 5, 2025 at 11:37 AM

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毎度おなじみ、「なんの話やねん！？」な宮んずお誕生日おめでとう2025！！小話です！！！！！（3/15） #文庫ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/bunko.html

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「いつかの朝の話」、「ハツ@camellia_no7」と記載されています。
以下は本文の内容です。

　
　休みの日は朝起きてから味噌汁を作る。今日の出汁は昨夜からつけておいた昆布。鍋を火にかけている間に具材を用意する。といっても、特別なものは入れない。その時にあるもの、半端に残った野菜や、大量に買って冷凍しておいたきのこ、一度に使い切らなかった薄揚げなんかを放り込むだけ。今朝はキャベツと玉ねぎ、エノキダケを刻んだ。ついでにちくわも刻んで加える。一人きりの朝食なら、さらにここへ卵を落としてまだ黄身の真ん中がゆるいうちに白米とかきこむ、それで十分な朝食だ。でも今朝は、休日に加えて自分以外にもう一人――。
「ぅおい、サム！　おっ前、なんやねんこのタオル！」
　――いや、『一人』ちゃうな。あんなん『一匹』や。一匹で十分。
「朝からうっさいねん！　そないでかい声出さんでも聞こえるわ！」
　あかん。うっかりつられて大声出してもうた。腹が減っとるせいもあるかも。なんせさっきから、ツムが声を張り上げるよりだいぶ前から腹の虫が鳴いとる。せや、卵と一緒にこないだもろたハムも切って焼いたろ。丸ごと一本も半分ずつになってまうけど、まあしゃあない。朝飯は大事やからな。休みならなおさら。

「何から何までちゃうわアホ！　なんで今さらお前のためにわざわざタオルなんか出しといたるねん。これはなあ、借りもんやから返すためにきれいに洗て置いとったんやぞ」
「はあ？　冗談やろ？　借りもん？　いらんいらん、そんな使いこんだボロ、返していらんて！　どんな奴か知らんけど、多分もう捨ててええって意味で寄越したはずやで。きれいに洗たところで年季入ってもうててバリバリやんけ」
　正味なところ、呆れ果てたみたいなツムの言葉は、おおよそ正しい。確かにこれは、ツムから引ったくったタオルは、結構しっかり使いこまれて劣化しとる。それは俺もよくよくわかっとる。ところどころ何かに引っ掛けて引っ張って糸も出てもうてるし。実際、もうほかしてええで、て言われたし。でもな、正しいことが全てやないねん。少なくともこのタオルに関しては。
「おい、サム？」
「……これ」
「は？」
「これ見ても捨てろて言えるんか、お前は」

「これって何が……、っげえ！！」
　奇怪な声を上げてツムが仰け反り一歩後ずさる。一瞬で青ざめたのが窓からの朝日ではっきり見えた。ツムにもしっかり見えたわけや。今や水を吸って湿った、握り締められてくちゃくちゃになったタオルにプリントされた文字。いくらか色の褪せた『北農園』の三文字が。
　絶句、っちゅうんは、こういう状態をいうんやろな。ツムは悲鳴を上げたきり言葉もない。ふるふる震えながら自分を抱きしめとる。せやからアホって言うたんや。なんも知らんとはいえ遠慮なしにボロ、ボロってお前はほんまに。まあ確かにボロやとは俺も思うけども。
「そ、そうやろ？！　ボロやんな！？」
「まだ言うんか。借りもんやって言うたやろが。たとえ思っても口には出さんのが人としてのたしなみっちゅうもんや。人でなしのお前は知らんようやけどな」
「北さんのて先わかっとったら俺かて言わんし！！」
「そういうとこが人でなしやって言うとんねんポンコツ」
　さすがに自分の物言いがあかんのを理解したのか、ツムはぐっと奥歯を噛んで

October 5, 2025 at 11:37 AM

ハツ

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なんだかんだで来ちゃいましたwwwww
ぎりグロくならない作画、確かに〜稀有なギャグ漫画ですよねえ！！

September 10, 2025 at 6:14 AM

ハツ

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カメラロールを遡ってたら見つけた思いつきの書き出し。
北さんがヤ○ザの情婦だった話を思いついて書いた出だしだな。おしろい彫りって技法で彫られた刺青を抱えて生きてる北さんを書きたかった話。

August 9, 2025 at 10:26 PM

ハツ

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続きでおしまい！！（7/7）
北さん、31歳のお誕生日おめでとうございます！！！今日も明日も、その先もずっと！！！たくさん笑っていてください！！！！！幸多かれ！！！！！

のばし北の指をぎゅ、と握るとそのまま引き寄せた。存外に強い力に引かれて、北の身体はたやすく治の腕の中。北は治のつむじを、きょとんと見下ろした。
「なんや、どないした」
「……言っときますけど、俺の機嫌、まだ直ってませんからね」
「え」
　身じろいだ北を逃すまいとしてか、腰周りにぐるりと巻きついた太い腕に力がこもる。思わず「ぐえ」と吐き出した声にも構わず、治は北の腹に顔を押しつけた。
「大谷とか知らんし、全然興味ないし」
　不貞腐れたような声が、へそのあたりでくぐもる。服越しの湿った体温がじわじわと北を侵食する。なだめるように肩を撫でさすれば拘束はますます強く、治のしっかりと通った高い鼻梁はもう腹にめりこんで。ぼそぼそと喋る声にくすぐられて、とっさに腰を引いた。それを、逃がさないとでもいうように、腰に回った腕が引きとめる。
「治」

「俺にはあんたが一等かっこええ」
「……そうか」
　嬉しい。ふくふくと胸を満たした気持ちは溢れ、こぼれて、ひたすらシンプルな言葉になる。嬉しい。ありがとう。
　おまえが好きや。
「――っ、絶対俺のほうが好きやし！！」
「ふはは、ほうか。ほんなら俺ら両思いやなあ」
　腹に埋まったままいつまでも上げられない顔を、いっそ、と抱えこんで北は囁いた。
「仲良うしよな。こんなして来年も、再来年も、ずっとずっと」
「……はい」
　付き合いを重ねてずいぶんと素直になった年下の恋人が小さく、けれども確かに頷く。それでももう一歩踏み出せないらしい内心に寄り添って、赤い耳にもうひと言。
「ほな、そろそろ機嫌直してくれるか？　よその男の話はなるべく控えるし」

「！！」
　腕の中でぎくりと揺れた身体は、抱きしめ直せば力をなくしてふにゃふにゃと倒れこんでくる。そのしっかりとした厚み、重さ、気のせいでなく上がった体温の熱さ、全部をしかと抱きとめて、北はついに声を上げて呵々と笑った。

July 5, 2025 at 10:53 AM

ハツ

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毎度お馴染み「なんだこれ？」がうちの出汁。北誕お祝い小話（治北）です！！（4/7） #文庫ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/bunko.html

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「本日は晴天なり」、「ハツ@camellia_no7」と記載されています。
以下は本文の内容です。

　
「へえ、大谷、今日誕生日なんや」
　そう声を上げはしても、なんの感慨も感じさせない平坦な口調。対して、「せやで」と応えた北の声はどこか得意げだった。それを治が、ぐるん、と首を回して振り返る。
「え、なんでドヤ顔？」
　うっすらと眉を寄せながら放った声は、今しがたよりもずっと感情露わな疑問形。驚き、訝しみ、面白がりながらわずかに呆れて跳ねた声に、ほんの少しばかり嫉妬が滲んだのを聞き逃さず、北はにんまりと笑んだ。
「やって大谷かっこええやん。生年月日同じて、なんやちょっと嬉しいもん」
「ええ～？！」
　今度はあからさまに面白くなさげに語尾が間延びした。その声音、口ぶり以上に雄弁な目が、じっとりと北を睨め上げる。不服、不満。承服しかねる、とでかでか書かれた治の顔に、北は「ふは」と噴き出した。
　――思い出す。目の前に隣りあって並んだ、そっくり同じ顔ふたつ。

くるくると表情を変え、良くも悪くもわかりやすい侑とは対照的に、治が感情を表に出すことは少なかった。それぞれ金と銀に染め分けた髪色に引っ張られて「まんま『太陽』と『月』やなあ」なんて言うやつもいたほど。それに頷くことはなかったものの、侑に対してよりもいくらか慎重に様子を探っていた自覚は北にもあった。だから必然的に治を目で追うことが多かった。治が侑とチームに入ってきて間もなく、北が高校二年への進級をもう間もなくに控えた早春の記憶だ。
　あれから十五年近く。まさか治と近しい距離で人生の約半分もの年月を一緒に過ごすことになるなんて。しかも治がこんなにも感情を露わにするようになるなんて。あの当時には想像もしなかった未来で、北は息を弾ませ笑った。
「……北さんのツボ、謎すぎる」
　苦々しく治が言う。『なんもおもんない』と言いたげな顔をもうひとつ笑って、北は言った。
「俺にもまだまだ出来ることがあるんちゃうか、て元気が出るっちゅう話やな」
　あっさり、ざっくり。胸の中にあるものはもう少し違う色をしているけれど、

わかりやすく言えばそういうこと。比較しているわけでも、憧れているわけでも羨んでいるわけでも卑下しているわけでもなく、ただ単純に「俺もやろう」と思う。やらなければいけないこと、やってみたいこと、新しいこと、面白そうなこと。なんでも出来る、そう思って顔を上げるのだ。
「……そんなん、別に大谷関係なくやってはるでしょ」
「ん？」
「それこそ大谷なんか知らん時から、北さんがなんでもこつこつ、きちんとやってはったん、俺ら知っとるし。そうでしょ？」
「……それはまあ、そうやな」
「せやから俺らにとってはずうっと、北さんはすごい人やし自慢やし、尊敬してます」
　これまでもこれからも、ずっと、変わらず。
　決まりきった当たり前の事実かのように淡々と差し出された未来に、胸がつまって息が止まる。治が今平然と寄越したのは信頼であり、期待であり、確信であり、そして脅迫だと、きっと治自身が無自覚だ。ただ無邪気に信じて、それを

当然と開いてみせただけ。だから、息を呑んで声もない北にひたと据えられた眼差しはまっすぐ、揺るがない。深い鈍色の瞳に冴えざえとした光を宿らせて、治は言った。
「昔も今も、これからも、あんたは俺らの大将や」
　――変わらないものなどないことは、この十五年あまりでいやというほど知った。いいことも、そうでないことも、すべてが同じままでとどまることは出来ずに移ろっていく。そのことを治とて知らないはずがない。でもそれをわかった上で「信じる」と言うのなら、言ってくれるのなら。
「……うん、ありがとう」
　北はその信頼に恥じない自分でありたいと、そう思う。
「……なんや改まってもうたけど。――北さん」
「うん」
「お誕生日、おめでとうございます」
「うん。ありがとうな」
　今年もええ誕生日や。そう言えば、どうしてか治はまた目を据わらせて。腕を

July 5, 2025 at 10:53 AM

ハツ

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頼んだ封筒届いた〜！！ピンクが派手でかわいい〜！！！
なんてサイズだったっけな……A5の薄い本なら入るかな、って思ってたけど、これならそこそ厚みがあってもイケそう。本はちょうどそこに置いてたものにご活躍いただきました。へ〜〜〜いいじゃんいいじゃん！！！

June 26, 2025 at 11:05 AM

ハツ

@camellia-no7.bsky.social

ツイッターでもRTした作品をこちらでも。
誰もが等しく、互いの同意の上で望む婚姻ができる社会にしたい。なるように、でなく、したい。という意志をもってレインボーフラッグピンバッジを新しく買った。通勤バッグと社員証のストラップ、買い物用のサコッシュにバッジはつけてる。

カバンに横並びでつけた二つのバッジ。右は11色レインボーのプログレス・プライドフラッグ。左はハート型のアクリルにパレスチナの国旗とオリーブ？の枝を咥えた白い鳩と「FREE PALESTINE」の文字がプリントされている。

June 1, 2025 at 10:58 AM

ハツ

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こないだぼんやり考えていた、いちごジャムを作る臣くんの話、を捏ね回した結果がこちらです（4/4） #文庫ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/bunko/index.php

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「ハートをひとつ」、「@camellia_no7」と記載されています。
以下は本文の内容です。

　
　練習帰りに立ち寄ったスーパーで臣さんを見かけた。
　臣さんは一人だった。買い物かごは持っていない。まっすぐ前を向いて、あれこれ売り場を眺める様子もない。だからきっと何か予定外の買い物があったんだろうなあ、ってすぐに思った。臣さんは買い物をする時かごの持ち手をきっちり拭き上げるのが習慣だけど、ひとつふたつ程度の買い物なら目的のものだけ手に取ってレジに向かうのが常だ。目的外の買い物はしない、と言うのを以前聞いた。ついでにあれも買っとこうってならないのかな、って思ったことが俺もあるけれど、それは大体において不必要な買い物だって侑さんが詰められているのを見てそっと口を閉じた。電流が流れるとわかっていながらボタンを押すようなチャレンジ精神は生憎持ち合わせていないのだ。
　だから今日も話す間もなく臣さんはさっさと買い物を済ませて帰ってしまうんだろうな、と思っていた。ついさっき、というかほんの一、二分前まで。まさかあの臣さんが『大特価』の前で立ち止まっているなんて想像もしなかった、のでびっくりした。臣さんにもそんなことあるんだ。『大特価』とか『特売』とか

『本日の目玉』とかいう言葉に弱いのは圧倒的に侑さんだ。とりあえず見てみる、というのが侑さんのポリシーらしい。その話を聞いた時、治さんも頷いていたので、もしかするとこれは宮家の習慣なのかもしれない。でも臣さんはそうじゃない。何しろ目的外のものには目もくれないひとだから、その時も侑さんを無言の呆れ顔で見ていたくらいだ。それなのに今日は。
　俺はそろりと立ち位置をずらして首をのばし、臣さんの向こう側をこっそり覗く。何を見てるんですか、って声をかけたらいいんだけど、そうしたら臣さんはきっと何も見ていなかったような顔をして立ち去ってしまう。もしかすると、いちごが美味しそうだったから、くらいは応えてくれるかもしれないけれど、多分それは臣さんの本心じゃない。だってどんなに美味しそうだったとしても、それはいちごに向けられた顔じゃないって俺にだってわかる。まるで何か大事なものを見つめるような、そんな顔。
　俺は急いで目を逸らして、すぐそばの棚の足元にしゃがみこんだ。臣さんの胸のうちを覗き見てしまったのが申し訳ない。そんなつもりは全然なかったけれど結果的にそうなってしまったし、しかも思わず「誰のことを考えてるんだろう」

なんて、考えてしまって。……ああ、臣さん、すみません。
　俺の密かな謝罪は、はたして届いたのか。少しも用のない防虫剤の説明を意味もなく目で追っているうちに、臣さんの姿は消えていた。結局、臣さんがいちごを買ったのかどうか、それはわからない。明日練習で顔を合わせた時に尋ねるつもりもない。どっちにしたって、目的を果たすことだけを考えて無駄なことはしない臣さんの選択は、臣さんにとって必要なことなのだろうから。
　俺も自分の目的を果たすために、用のない棚の前から立ち上がり踏み出す。通り過ぎざまに目をやった『大特価』のいちごは、なるほど確かにお買い得で、しかも美味しそうだった。俺は一パック手にとって、かごに入れた。スーパーの煌々と明るい照明を受けてつやつや光るいちごを眺めながら、さっき見た臣さんを思い出して、それきり胸にしまった。
　ルーティンが崩れることを嫌う臣さんに、自らそれを必要なこととして選択させるものがなんなのか、俺にはわからないけれど、でもそれはきっと何かいいものに違いない。たとえば、いちご美味しそう！　って写真を見せたら、ただそれだけのことに「いいね！」ってハートを送ってくれる友達の笑った顔が浮かんで

つられて笑っちゃうような、なんかそんな感じのこと。それはすごく素敵で幸せなことだなあって思いながら、俺は朝食用に分けておいたいちごを口に放りこんだ。甘さよりほんの少しだけ酸っぱさが勝っているように感じるのは、見るからに甘いものを眺めているせいに違いない。たった今、侑さんがアップした今日の朝食と思しき写真には、きれいなきつね色のトーストの面いっぱいに、とろりと赤いいちごジャムで描かれた特大のハートが写っていた。俺はそれをしみじみと眺めて、とん、と画面のマークをタップした。
　ぽん、とともった赤いハートの向こうに浮かんだのは、どうしてか、臣さんの笑った顔だった。

May 29, 2025 at 7:37 AM

ハツ

@camellia-no7.bsky.social

これ、あまりにお題そのままだったなーーーって頭の片隅に引っかかってたんだよな。まあ作り直したところでそんな変わらんかったけど……

May 17, 2025 at 12:44 PM

ハツ

@camellia-no7.bsky.social

さっき書いてた話。今朝Xに落としたネタ。大したネタじゃないし目的地は全然違うところなんだからもっとコンパクトに書きたいものである

May 14, 2025 at 8:53 AM

ハツ

@camellia-no7.bsky.social

はしまき、こういうの。
初めて作ってみたわ

May 8, 2025 at 11:52 AM

ハツ

@camellia-no7.bsky.social

続きでおしまい！一時間半くらいで1900文字足らず、ってとこかな〜🤔（2/2）

勉強を教えてください。そんなメッセージが北に届いたのは、四月に入って間もなくのことだった。思いがけない連絡だった。二年間を同じ部活で過ごし、学年は違えどもクラスメイトよりもずっと密な付き合いをしてきたのは確かだったが、在学中には一度として聞かなかった頼みだ。それをどうして卒業後に。不思議に思いながらも短く「ええよ」と返せば、「ええんですか？　ほんまに？」と訝る返信が届いた。断ったほうがよかったかのような返しに、ひょっとして罰ゲームか何かだったろうかと一瞬考えて、すぐに打ち消した。それでもいいと思ったからだ。それでもいい、たとえ治には罰ゲームでも。北は治の顔を見たかった。もうずっと好きだったから。だから気づかなかったふりで日程を打診した。そうして約束を取りつけた四月の末、連休の始まりを、あんなにも待ち遠しく思ったことはなかった。
　そして迎えた今日。治は恐縮した様子で現れて、おっかなびっくり北の部屋に上がって、いくつか付箋を貼りつけたテキストをリュックから取り出した。それを見れば治の頼みが真剣なものだったことはすぐにわかった。頼りにしてもらえたのだと素直に嬉しくて自然と熱が入った。治の集中力と勘のよさはさすがで、

休憩らしい休憩も挟まないまま一時間半ほど。
　今なお膝で寝息を立てる治を見て北は、ガス欠かな、とあたりをつけた。途中で糖分を摂らせてやればよかったと思っても後の祭りだ。すまん、と落とした言葉はきっと届いていないだろう。それをわかってもう一度、すまん、と囁く。
　治は北を良い先輩だと思っているだろう。近寄りがたく思ってはいても頼れば応えてくれる信頼できる先輩だと。でも、本当のところはそうでないことを北は知っている。後輩の好意を利用して自分自身の下心を満たそうとしている浅ましい男なのだと。膝に感じる体温や重み、肩の厚みや固い骨の感触、そんなものを必死に記憶に刻みこんでいるのだと。
　北は指先に遊ばせていた銀色の髪を三度梳く。ふと、どこかで嗅いだような柑橘の匂いがした。北はそれを深く吸いこんで、気持ちよさそうに眠る治の寝顔をじっと見つめた。
　こんな自分を決して知られたくない。いつまでも治が信頼してくれる正しい先輩でいたい。でもそれと同じくらい全部ぶちまけてしまいたい。きれいに取り繕われた面影ではなく、嘘偽りも誤魔化しもない本音を見てほしい。

ゆらゆらと定まらず今はまだどちらにも傾ききらない天秤を胸に抱えて、北は治の寝息を数える。このまま四月が終わらなければいいのに、とぼんやり思いながら。

May 5, 2025 at 9:59 AM

ハツ

@camellia-no7.bsky.social

第3回治北ワンライドロ！！今回も開催ありがとうございます！！
お題「眠気」「誤解」「連休」をお借りしましたが、いやーーーまじでヤマもオチもないけどチャレンジしたことに意味がある、ってことでどうかひとつ！！！（1/2） #文庫ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/bunko/index.php