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よいや

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昭和に地球にやって来た腐。年下攻に並々ならぬ性癖をもつ🦄ハピエン相手左右固定派。bbbスミイサ🤖私の神話はザグタナ。洋画洋楽すっき。犬派。アイコンは保護猫さんチの「しいお」Twitter→cpt_418

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よいや

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プのスミイサ(ルイイサ)
スミ編です。04冒頭です。
対戦よろしくお願いします。
【小説】04　Knocking on the door in the middle of the night
冒頭5/5

思い立って、イサミと共同で使っているスケジュールを確認する。来週以降、インタビューがある日がいいかもしれない。
　逆算して、諸々の行動と計画を立てる。
　そして、第一手を撃つ。
『来週みる映画で迷ってる。イサミも行く？』
　ＤＤＪ公式スタンプでテキストの硬さを和ませてもみる。
　少し離れたイサミが受信に気づいて、俺に微笑んだ。ぎこちないところさえ愛おしい。
　俺にさえ気を使ってるだろ、コレ。
　あぁ、このイサミの優しさだけで満足できたらよかったのに。
　俺は強情で傲慢だから、イサミの全てを知りたいし欲しいんだ。
　出逢ったときから変わっていない自覚はある。ただ、強欲さが増した気がする。

　車内に掲示された英会話広告の女性が笑いかける。『あなたを本気で応援』と。
　俺は宇宙からのスピ的なメッセージと受け止め、「俺がワガママになったのは、イサミが甘やかすからだよな」と母国語で話しかけていた。

　　（０４冒頭）

October 30, 2025 at 2:14 PM

よいや

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プのスミイサ(ルイイサ)
スミ編です。04冒頭です。
対戦よろしくお願いします。
【小説】04　Knocking on the door in the middle of the night
冒頭4/5

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「【小説】04　Knocking on the door in the middle of the night」、「プロレスのスミイサ(ルイイサ) 」と記載されています。
以下は本文の内容です。

【小説】０４　Ｋｎｏｃｋｉｎｇ　ｏｎ　ｔｈｅ
ｄｏｏｒ　ｉｎ　ｔｈｅ　ｍｉｄｄｌｅ　ｏｆ　ｔｈｅ　ｎｉｇｈｔ

　泥酔したフリをして、イサミから隠し事を引き出すしかない。

　サンモンシバイにイサミがノッてくれるか不安はある。だけど、イサミは、なんというか、俺に、心を許しすぎているというか、甘いフシがある。
　イサミが俺の違和感をみつけても「今日はこんな感じか」と流す気がする。
　騙すことに、罪悪感がないわけではない。
　けれども、黙っているイサミにだってヒはあるでしょう。
　俺は身勝手に自分を鼓舞した。
　ヒビキやミユに手伝ってもらうことも考えたけれど、やめた。
　幼稚な計画だけど、周りから責めたりかまをかけるより、単純なほうが成功率が高いと思ったからだった。

　さて、アイディアまではいい。
　ただ、二人きりの空間を作ることは難しい。
　最近の俺とイサミは、帰宅後や休日は僅かだがバラバラで過ごすことが多くなった。俺が日本に慣れて、イサミの尻を追いかけるだけではなく

なったからだ。
　俺はオタ活、イサミは筋トレと、それぞれのライフスタイルを持っている。
　泥酔したフリミッションは「二人きりで外出をして俺がニホンシュを飲む」状況を作らなければならない。
　イサミと個室で二人きり？　目測を誤って泥酔でもしたら今度こそ事故らないか？
　せめてジャブを打ちたいぞと、イサミ童貞の俺が叫んでいる。
　全会一致だ、安心しろ。
　ジャブジャブと思いながら、イサミと駅まで歩く。脳直で語れるスパルガイザーの話題で隙間を埋めた。
　興味がない話題でも、イサミは真剣にきいてくれる。
　オタクに優しいギャルはここに存在すると、オタクな俺がスタンディングオベーションをして騒がしかった。

　二人で出かけるなんて今じゃ俺が映画に誘うときくらいだ。
　提案に「うんうん」と電車と一緒に俺は唸った。
　うん。で、今までどうやってイサミを誘っていたっけか？
　どんなジャンルに誘っていたのか、何を話していたとか、思い出そうとすればするほど頭が真っ白になった。
　もうデートだ。好きなコと二人で映画に行くなんて、ド直球のデートだろ。

映画選びのセンスとか、気にしたことなんてなかったのに手汗がにじんでくる。
　イサミをチラッと盗みみる。電車の広告を熱心に見つめる横顔にトゥンクと胸が高鳴る。
　すごく瞳に光がないところもチャームポイントたよイサミ。素敵だ。
　イサミが好きだと気づいた瞬間から、いつも通りを貫いているのに全てがちぐはぐな気もしてくる。
　息の仕方も、まばたきも、不自然じゃないか気になってしまう。

　俺は意外とキニシイなのだ。
　ジャパンは俺のそういう繊細なところを、許してくれる土壌があった。そして、イサミはいつでも俺を受け入れてくれた。
　イサミ、と心の中で話しかけて思い描く。
　マットの上、まばゆいライトの下でも負けないくらい輝く俺のパートナー。目指すべきプロレスラーで、人間としても尊敬している。
　単純に言語化するなら、好き。大好きだ。
　今までならアサメシマエで言えたのに、意識してしまうと、言葉の重さに尻込みする。
　天に何某かの霊的な高次元のナニかがいることを信じているというより「まぁ、居るんだろな」って思っているよ。
　真面目に生きてきた俺に、イサミと出逢わせてくれた。
　ご褒美だろ。こんなの。
　貴重な出逢いに対して俺は奇跡に感謝はしてい

たが、信心が足りなかったのかもしれない。
　だから、イサミへの愛に、今更気づいた。
　無条件で一緒にいれる時間が刻々と近づいてきている今。
　こんなにも、離れがたくなるなんて。

「痛ッ」脛にバットで殴られたような衝撃を受け「え…」俺は唖然とした。
　脛を庇ったまま見上げればイサミと視線が合った。
「イサミ？」
「スミス……昨日の酒でも残っているのか」
　軍隊の上官に注意された気分だった。話しかけられていたのか。気づかなかった。凡ミスにもほどがある。
「あ、いや、ない、……ゴメン……きいてなくて」
　へへ、と愛想笑いをしてみたが、ヨコシマな心を見透かされた気がして後ろめたい。
「違う。具合が悪いなら、言ってくれ、と思っ」
　バツの悪そうなイサミの声と電車が軋む音と俺が立ち上がるのが同時だった。イサミを抱きとめようと伸ばした手が、腰を抱く。
　不特定多数の人間がいるのに、イサミの体臭を感じて、俺は目をつぶった。
　瞬間、ドアが開いて乗客が二人を引き裂く。俺は手すりに後ずさりながら、スマホを握りしめた。
　助かったのと残念だという気持ちで、慌ててテキストに計画を打ちこむ。

　焼肉の日程を予め決めてしまおう。

October 30, 2025 at 2:14 PM

よいや

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■■■　04　Living with glamorous　■■■
前半4/4
普通のシン花のスミイサ(ルイイサ)🐈‍⬛
イサ視点。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「■■■　04　Living with glamorous　■■■」、「普通のシン花のスミイサ(ルイイサ)🐈‍⬛」と記載されています。
以下は本文の内容です。

■■■　０４　Ｌｉｖｉｎｇ　ｗｉｔｈ
　ｇｌａｍｏｒｏｕｓ　■■■

　俗世的な情報は、花屋であるためには必要な知識だったりする。花の生態に関することや花言葉だけでは足りない、お客様との会話の花が咲き距離を埋めてくれる。
　少々、他人との意思疎通に難がある俺にとって、コミュニケーションの種だ。
　そのひとつに「他人の体臭が好ましい場合は、遺伝子レベルで相性がいいとされている話」がある。
　特定の体臭を「心地よい」と感じるのは、遺伝子的な相性と心理的な安心感の両方が影響している。例えば免疫に関係する遺伝子型が異なる相手に対して、匂いを快適に感じやすく、相性が良いと無意識に判断していることが科学的にも報告されている。

　俺は何故か猫になって、どういうわけかスミスの懐に包まれ、その蘊蓄を巡らせていた。
　スミスはいい匂いがする。スーツからは身だしなみの香水の爽やかな匂い。シャツから甘い匂いがする。それぞれ、心地よいものだった。
　そして、あたたかい。予想以上に、筋肉はやわらかく包んでくれる。
　男性の胸に全身を抱（いだ）かれる日が来るなんて、思ってもみなかった。
　自分が猫である非現実的なことも相まって、俺は夢心地だった。実際、俺はうとうとしていた。走っている揺れと、傍にあるスミスの早い鼓動が

拍車をかけた。マッサージ器みたいだった。
　スミスの手が、スーツの上から俺の尻を支える。大きな手のせいか安定感があって安心する。世界で一番安全な場所だろうと、手放しで思った。
　いつもなら至らないところまで思考が至っている。
　猫になっているせいか、守られ支えられているせいか、単純に小さくなったせいなのか。幼児化のような現象がおきているのかもしれない。と、人間部分の俺が分析した。
　知識と知性に頼る人間の俺と、スミスに心をゆるす猫の俺が、行き来しているのかもしれない。
　二つの性質を統合できれば、もっとスムーズにコトが進むのかもしない。
　猫の俺は素直だ。とても素直にスミスに甘えていた。大きな生き物に身を委ねている黒い毛玉か、液体になっていた。

「イサミ、着いたよ」
　二回ぽむぽむと尻を持ち上げられて、俺はぼんやりとしたままスーツの合わせから顔を出した。
　壁が見えた。玄関らしき四角いスペース。スミスのマンションなのか、他人チの匂いがする。もちろん、イヤではない。
　丸まっていたせいか視界の毛並みが邪魔だった。前脚でごしごし擦って整える。
「……イサミ、なんだよね？」
　なんだよ、とスミスの顎を見上げた。ちょこちょことスミスの指が、俺の顎をくすぐる。う～ん……気持ちいい。
「いや、あまりにも、ぬこち……猫みたいで感動で胸がはち切れそう」

スミスが深呼吸したら胸筋が盛り上がって後頭部を包んだ。瞳孔も広がっていた。スミスの人間的方向性が、少しへんてこだと数十分前に知ったばかりだ。
　知り合いの人間が猫になってしまうというトラブルのショックからのアレかと思っていたが、もって生まれた性質なのだろうか。単に猫という生物が大好きなのか。
　よくわからないけれど、クツを脱いでそのままにしたスミスは、存外に情熱的で面白い男なのかもしれない。
　気の良いアメリカンとばかり思っていた。そこに惹かれたけれど、コレも悪くないなと俺のヒゲが下がる。
　壁を彫り込んだ棚に間接照明が灯った。一輪挿しの花器と小さな人形が数個並んでいた。物語性を感じて、興味深く見ているとスミスは玄関から部屋の中へと移動する。
　左にはトイレ、洗面室と風呂、そして奥まったところにキッチンがある。
　うん。玄関からうっすら予想していたが、思ったよりも雑然としている。奥の部屋、床がところどころ砂地のようにポコポコ何かが盛り上がっている。
　洗面台の床が顕著だ。衣類が敷かれているのではなく、陰に洗濯機があるっぽいから、洗濯物を放置しているらしい。完璧な男と思っていたが、なかなかに手のかかる男なんだな。
　かわいいところもあるんだなと、俺は何故か「やれやれ、まったく……ルイス・スミスってヤツは……（好）」とため息をついた。
「イッ、サミィ……寒くなぁい？　い、いいい、

一緒にシャワーでも、どおぅ？」
　俺が後方腕組み家政婦面をしていると、スミスからのお誘いが降ってきた。
　何故か、ふかした蜜芋を割った映像がよぎる。甘くてねっとりとしている。シャワーからの連想か立ち上がる湯気まで見えた。
　あ、と俺は首を長くした。スミスの体臭はサツマイモっぽいかもしれない。俺はハッと鼻をひくつかせてスーツにこすりつけた。
　違うか。
「い、いまっ、猫のお風呂の入れ方を検索するから、安心してね。うふふ……」
　そうか、動物の肌は弱いからな。スミスは博識だ。知り合いに対しても、こんなに優しい。配慮が行き届いている男に、こんなに迷惑をかけてしまった。
　スミスが俺から目をそらした。
「許可が欲しいんだ」
　なんだよ。
「濡らすだけじゃなくて、はっ、裸の、イサミの肌に触れていいかな……？」
　猫なのだから肌は露出していない、むしろ毛むくじゃらなだけだろうと睨んだが、スミスは大真面目だ。涙目で頬が上気している。
　スミスは想像よりもぶっ飛んだ男なのかもしれない。
　だからか、こんな状況でも、すぐに飲み込んだとは思うけれど。

■■■　０４後半へつづく　■■■

October 30, 2025 at 7:04 AM

よいや

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デスドラが来ない安心安全平和な複座スミイサ。
スミイサさんには番ってもらいます。原作準拠だからです。
狼人間末裔スミス×吸血鬼末裔イサミ
泣き虫な吸血鬼の飼い方03の前半7/7

実力行使には出ないだろう。
　だが、俺から見たら小さなプライドだとしても、当人たちにとっては大事な大事な肥大したプライドだったりする。
　数でなんとかしようとしていた臆病者も、取り合わず毅然としたイサミに対し勝手にプライドを焼かれて、どうにでもなれと身勝手な特攻をしてこなければいいのだが。

「同じ人間として、これ以上、失望させないで欲しい」
　心拍数が上がる。血圧が上昇し、身体がトラブルに対応しはじめている。
「……スミス、何か言った？」
　ヒビキの問いかけに応える間もなく狭い廊下に飛び出す。すれ違う同僚を避けつつ、大股で向かう。こんなときは、一際遠く感じた。

【　泣き虫な吸血鬼の飼い方　０３　】

　親しい者と美味しいものを食べることは、特別なことだ。
　他人からしたら特別ではないように思えるだろうが、俺にはかけがえのないことだ。
　物心ついたときから独りで飯を食っていたことは、十を過ぎた辺りから流石に苦痛ではなくなっている。食事は温度を感じたし味はしていた。ろくに風邪もひかないし、身長も体重も増えたから栄養にはなっていた。
　でも、イサミやジャパンの皆と食べていると、俺が見逃していたものが見えてきた。心の片隅に残っている少年な俺が、喜んでいるのを感じる。
　等身大の俺は、ライスを頬張るイサミをみて癒されている。俺の傍にいて、リラックスしている。なんだかとても、いい。俺とではなく、ヒビキやミユと会話をしていたとしても、イサミと交流できている気がした。。
　これは、パートナーとしての充足なんだろうか。だとしたら、素晴らしい安寧だなと俺は口の中のものを飲み込んだ。
　イサミを取り巻く面々のおかげもあるが、

こうして談笑している間も、心はずっとイサミに向いたままだ。
　不思議とか不自然とかとは思わない。これが、当たり前のことだと思う。イサミが大切なパートナーだと、俺が認めているということだ。
　他人と距離を取っているつもりはないけれど「私と一緒にいるときでさえ、あなたは二十四時間自然ではない」と注意をしたのは誰だったか。
　言われたときはよくわからなかったし気にもしなかったけれど、今はなんとなくわかる。
　殻を破れてなかったんだな、と。
　少しの反省をこめて、気づいた。

　翌日は「人道支援・災害救援訓練」に合流することになった。
　イサオ・カワダ海将補が恐縮しながらも堂々と指揮を執り、シナリオ訓練の説明が始まった。
　災害の種類と規模、発生の季節と曜日や時間の説明。有事の際の対応力の向上、理解促進、計画の欠陥や改善点を見つけ出すのが目的だ。

October 29, 2025 at 4:32 PM

よいや

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デスドラが来ない安心安全平和な複座スミイサ。
スミイサさんには番ってもらいます。原作準拠だからです。
狼人間末裔スミス×吸血鬼末裔イサミ
泣き虫な吸血鬼の飼い方03の前半4/7

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「【　泣き虫な吸血鬼の飼い方　03　】」、「デスドラが来ない安心安全平和な複座スミイサ。」と記載されています。
以下は本文の内容です。

【　泣き虫な吸血鬼の飼い方　０３　】

　親しい者と美味しいものを食べることは、特別なことだ。
　他人からしたら特別ではないように思えるだろうが、俺にはかけがえのないことだ。
　物心ついたときから独りで飯を食っていたことは、十を過ぎた辺りから流石に苦痛ではなくなっている。食事は温度を感じたし味はしていた。ろくに風邪もひかないし、身長も体重も増えたから栄養にはなっていた。
　でも、イサミやジャパンの皆と食べていると、俺が見逃していたものが見えてきた。心の片隅に残っている少年な俺が、喜んでいるのを感じる。
　等身大の俺は、ライスを頬張るイサミをみて癒されている。俺の傍にいて、リラックスしている。なんだかとても、いい。俺とではなく、ヒビキやミユと会話をしていたとしても、イサミと交流できている気がした。。
　これは、パートナーとしての充足なんだろうか。だとしたら、素晴らしい安寧だなと俺は口の中のものを飲み込んだ。
　イサミを取り巻く面々のおかげもあるが、

寄った。普段はタメのように振る舞うアラカイ大尉が、年上の表情をした。鼻先を上向ける。
「スミス中尉殿は充実しているんだな～と。後頭部からでも伝わった。数日前は不安そうに見えたからな。新しいＴＳに緊張していたのかもしれないが？」
　からかい半分の弾んだ声に、ほとんど見透かされていて俺は自分を残念に思った。そんなに単純なヤツかと、がっかりした。
「そうか、……そうかも」
　俺も明るくはぐらかしていい。でも、肯定してみる。
　自分の手のひらをみつめる。そこには何もないけれど、この数日の経験を掴んでいた。
　ＴＳを通して軍人として、イサミと過ごして人間として成長をしている。自覚がある。そんなことを感じられるのは人生において少ないだろう。だいたいは、過去を振り返って気づくものだから。
　アラカイ大尉が軽く頷いて、サタケ二佐の下へ帰っていく。

　各国の軍人が入り乱れる中でも、俺はイサミの姿をすぐに見つけることができた。
　イサミと、この青臭い感動を分かち合いた

い。きっと笑わないで、きいてくれると確信があったが、流石に今夜は時間が取れないだろうと、諦めていた。

　夕食前、空母に自衛隊のヘリが降り立ったときいて、俺は足早に甲板へ向かったが遅かったらしい。夕暮れに佇むジャパンの一団に、馴染みのシルエットがない。
「イサミは？」
　輪に入った俺にヒビキが「はーん？」とガラ悪く顎を出した。「挨拶もなく、イサミィ～？」
　しまった。チンピラと化したかよわい女性に「すまない……」と息を整えた。「俺が、悪かった。……ごきげんよう、ヒビキ嬢」
　胸の前に拳を作って軽く頭を下げる。イサミのこととなると気持ちが逸りすぎて、自分でもヒく。
　ヒビキも俺の調子に合わせ、腰に手を置き高飛車に笑った。
「ごきげんよう、スミスさん。反省するなら教えてあげるわ～イサミは自分のと私のコーヒー汲みにいきましたわ」
「食堂へか……？」
　息をのむと、ヒビキはニコッといつもの陽

気なモードに戻った。
「そうだよ」
　イヤな予感がする。食堂へ向けて、視線が尖る。
　大きく踏み出した俺の横に、ヒビキが速やかに並んだ。
「……なんか、あったんだ？」
「あった。ここ最近、イサミにしつこく絡んでくる輩がいた」
「アイツ、……そんなこと言わないから、もう……ッ」
　ヒビキは殆ど小走りになりつつ苛立った。レディーと歩く際は歩調を合わせるものだが、今はできない。
「イサミは、気にしてなかったからな」
「寛大すぎるにしても、トラブルは報告してほしい……」
「二人で、問い詰めようぜ」
　自分を棚に上げニッと笑ってみせたが、引きつっていたかもしれない。
　ヒビキも口の端を上げたが、表情が硬い。俺の緊張が伝わってしまって、申し訳ない気持ちになった。

　ほとんど顔も国籍も覚えていないモブたちが過る。どんなに愚かであっても、流石に、

October 29, 2025 at 4:32 PM

よいや

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October 12, 2025 at 1:30 AM

よいや

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ふむ…

October 11, 2025 at 2:01 AM

よいや

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吸血鬼スミと警官イサ
所謂ヴァンポリスミイサ
ハロウィンスミイサが死神の印象になってしまう前に完結したい。(手遅れ)
【　秋雨前線怪異アリ　】05冒頭
4/4

October 2, 2025 at 2:24 PM

よいや

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プのスミイサ(ルイイサ)
イサ編書いてるよアピタイム。半分くらい。
【小説】03　Knocking on the door in the middle of the night
11/11

なら仕方ないな、と俺は頷いた。「わかりました。必要であれば、俺から申し出ます」
　佐竹選手会長は「よし」と満足げに言い置いて、カウンターから離れ奥のキッチンへと引っ込んだ。
　俺は暫くコーヒーをすすりながら物思いに耽った。
　家族と上司に恵まれているかもしれない。流されやすい俺をよくわかっている。成人しプロになったとしても、二人から見たらまだまだヒヨッコなんだろう。
　カップを空にして、俺はジムへと戻った。
　僅かに過った、スミスの移籍の話題を、出す勇気はなかった。

　佐竹選手会長に呼ばれたことを、スミスには伝えないことにした。ヒビキを伝令に使ったということは、内緒のミッションなのだろう。口止めはされなかったが、そういうことだ。察しの悪い俺でもわかるし、その方がいいとも思った。
　俺が自発的にスミスと試合をしたくなるような、配慮。頭が下がる思いだ、まったく。
　ジムと昼食を経た午後には、スミスの反応は普段通りになっていた。朝みたいに、ひとりで考え込んでいる気配もない。
　あからさまに安心した自分に、少し嫌気がさした。

　レスラーの体はデカい。日々アメリカンサイズに育っていくスミスは「席に詰まりそう」と臆し、映画を観るときはゆったりとした席やソファーを好んだ。

余程の巨漢でない限り大丈夫だと呆れたが、リラックスして観たいのだという。座高もあるし、脚の長さもある。後ろの客に後ろめたい気持ちは、わからなくもない。
　ということで、作品や時間によってはペアシートがある映画館を利用することもあった。二人分チケットを押さえるならと、俺が付き合うことが多い。

　スミスから「シリーズモノだけど脳を使わないから大丈夫！」「きっと俳優の出演料より、火薬量の方が多い！」等々お目当ての作品のレクチャーを早口で受けた。
　そこには期待でキラキラと目を輝かせ、大胸筋を膨らませる少年がいた。楽しそうで安心した。ネタバレにならない程度ネットを泳いで、主演の俳優についてのウンチクもきいた。得意げなスミスの表情は、演技には見えない。
　鉄板アクション映画のチケットをネットで押さえ、到着後スミスは塩バター＆キャラメルポップコーンセットを、俺はホットドックセットを抱え後方のペアシートを陣取った。来月公開される洋画予告が何本か流れた後、暗くなった。

　スミスのおかげで俺の英語力は日常会話なら聴きとれる程度になっていたが、映画の会話はスラングが多すぎてよくわからなかった。だが、レクチャーのとおり無謀なアクションと派手な爆発でどうでもよくなった。
　無言で映画館をふたりで出て、帰りの地下鉄に乗り込むと、やっとスミスが口を開いた。
「ストーリーがあって意外だった」

評論家ヅラで顎を撫でる。帰宅ラッシュの人込みの隙間、その姿をドアの反射で見た。俺もちょっと前の体験を思い返してみる。
「軽快にグロくてびっくりした」
　俺の感想にスミスは小さく噴き出して「それは、そうだね」と、破顔を見せた。
　列車が、揺れる。手すりに背を預けて、なんとか体勢を整える。
　青い目が前髪の隙間から俺を見下ろす。
「イサミ。来週の雑誌インタビューの後、いつもの店に行かない？　日本酒が飲みたくて」
　なんだか甘えられている気がして、俺は息を飲み込んでから、口を開いた。
「……酒なら居酒屋でもいいんじゃないのか？」
　賑やかなほうがいいのでは、という言葉も何故か飲み込んだ。
「うん、そうなんだけど……あの空間込みで好きなんだ」
　個室で静かで誰にも邪魔されないから、と聞こえるはずのない言葉が浮かんで、俺は適当な言葉に変換する。
「確かに、ゆっくりはできるな……チヂミとサラダが食べたい」
　外食は誘った方が奢るシステムだ。だいたいはスミスが持つことになる。
「もちろん！」
　いつでも、ふたりで飯を食ってるのに、なんでスミスは新鮮に喜ぶことができるんだろう。幸せな奴だな。
　まぁ、誘われることなんて珍しくないのに、内心嬉しい俺も大概だ。
　　　　　　　　　【続く】

August 22, 2025 at 3:12 PM

よいや

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プのスミイサ(ルイイサ)
イサ編書いてるよアピタイム。半分くらい。
【小説】03　Knocking on the door in the middle of the night
8/11

ている。栄養を与えるケアは早いほうがいい。
　選手たちは各々トレーニングマシーンに着いていた。リング上でスパーリングしている選手もいた。
　大きな鏡越し、それとなくヒロと談笑するスミスを追ってしまう。
　母国語で奔放に音を発していた。聞き取れる距離ではない上に早い。読唇術でも会得していれば話は別だけど。
　日本語の吸収が早かったスミスのおかげで、俺から英語で話すことは少ない。この二年弱で機会はたくさんあったのに、日常会話が僅かにできる程度だ。
「なにやってんだか……」
　飽きれて、鏡に映る呆けた自分を眺める。
　集中できていない。筋肉に、集中してやらないと、可哀そうだ。
　熱をもった僧帽筋を撫でていると、すすすとヒビキが近づいてきて耳打ちしてきた。
「佐竹選手会長がカフェに来いってさ」

　カフェとは佐竹選手会長の息がかかったＤＤＪ経営の「ダイダラカフェ」のことだ。
　相撲の力士が引退後、ちゃんこ鍋の店を開くように、「ダイダラカフェ」では筋肉にいい鶏肉中心のメニューを取り揃えていた。栄養のバランスがいいし、ＤＤＪ選手は実質無料でありつけた。若手には嬉しいシステムだと思う。頼めばプロテインもジョッキでだしてくれるだろう。頼んだことはないけれど。

　ジムから出て、隣の雑居ビルに向かう。ひんや

りとした空気が温まった筋肉に心地よい。サウナから出て冷たい外気温で整う感覚に似ている、かもしれない。
　数十歩移動してビルの階段を駆け上がり、カフェには見えない表札に小さく「ダイダラカフェ」と収まった鉄の扉を開く。
　中を覗けば佐竹選手会長はマスターよろしく、カウンターの中でグラスを磨いていた。背後にはボトルキープよろしく選手が使うマグカップが並んでいる。バーのような落ち着きに、グッズが飾られる大変にカオスなカフェだ。
　店内はカウンターと四人用テーブルが三つほどと手狭だが、年に何度かのファンとの交流を開催したり、日時は限られるが月に一度くらいファンが利用できる仕様だった。
　俺がカウンターにつくと、佐竹選手会長は手を休めた。
「碧、なんと、昨日の試合、評判がいい」
　マジシャンが種明かしするみたいに、両手を広げ珍しくとぼけてみせる。
「知っています」
　頷いた俺に佐竹選手会長は片方の眉を上げた。
「碧……エゴサ、ほどほどにするんだな」
　ＳＮＳとの付き合いについてのレクチャーだろうかと待っていると、ドリップ済みのコーヒーをマグカップに注いでカウンターに置いてくれた。俺は黙って口をつける。深煎りの濃い香りが鼻腔を抜けた。
　右の壁にランダムに張られた選手たちのチェキ、スミスの営業スマイルと目が合って心の中で舌打ちをした。
「いいか、碧。ファンの声を聴くことはいいこと

だ。だが、ＳＮＳの目を気にすることは誉められたもんじゃないな」
　釘まで深くはないが、画鋲くらいの針がチクりとして、俺は顔を上げた。
「スミスと一緒にやってるんで、ひとりで背負い込んだりはしません。大丈夫です」
　ファンやそうじゃない奴らは、好き勝手にＳＮＳに書き込んで楽しんでいるだけだ。どちらかと言えば、スミスの方が他人の評価、というか、どう見られているかを気にしている節がある。俺はいい試合が出来たら、それでいい。
　アノ五分は微妙なセンだけど。
「……そこは、はい、でいいんだ」
　心底呆れた表情を隠しもしないで、上司は架空の頭痛を催している風だった。
　だから俺は「はい」と仕方なく返事をした。
「満足ですか？　って顔をしてるんじゃない……碧、再戦するか？」
「……再戦」
　スミスとの仕切り直しの、シングルマッチ。
　予想よりも早い打診に俺は舌に残った苦味を吸った。
　流石に次は、短時間で終わらせるわけにはいかない。気を引き締めて臨まないと。いや、俺は、いつでも真面目に取り組んでいる。スミスがアホなことをしたり、よくわからない煽りをしてこない限りは仕事をきっちりとこなす。
　また観たいと、皆が望むなら。
「……その方がいいのなら」
　興行的に正解なら。
「碧、こんな時だけは優等生的発言をするんだな。……おまえ自身が、必要だと思わないなら、しな

くていいんだぞ」
　佐竹選手会長が何に対して気を揉んでいるのかわからず「必要」という言葉をうまく飲み込めなくて、間が空く。
　スミスは俺と常に戦いたいらしいが、俺はどうだろう。求められるなら、応えてやってもいい。それが、俺の性格だ。
　だが佐竹選手会長は、それが気に入らないようだ。
「身が入らないと、試合として面白くはならない。情熱にかける」
　普段は事務的な上司が、言葉に色をつけハッキリと告げてくる。普通の選手ならトラウマになるようなことを、俺には遠慮なく言う。厳しいとは思わない。実際、そうだからだ。
　昨日の試合は当日までの段階があり、レアリティがあり、俺たちもファンも盛り上がっていった。
　だから、はい次～ッ、と軽々しく再戦とはならない。少なくとも俺は無理だ。
　黙りこくった俺がへそを曲げたと思ったのか佐竹選手会長は自分のカップにコーヒーを注ぎながら「お前たちは、まあ、なんというか、特殊だからな」と濁した。
　特殊、と俺は唇で完結させて「……社長は」とショービジネスの権化、実兄の評価を気にした。
　昨夜の失態を当然観ていただろう。連絡はなかったが、飽きれたことは想像できる。しかし次の一手、何を企んでいるのかはわからない。
　佐竹選手会長は、俺の強張った表情で察し保護者顔で「俺と同じ意見だ」と比較的あたたかな声音で返してくれた。「面白い試合を頼む」

August 22, 2025 at 3:11 PM

よいや

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プのスミイサ(ルイイサ)
イサ編書いてるよアピタイム。半分くらい。
【小説】03　Knocking on the door in the middle of the night
4/11

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「03　Knocking on the door in the middle of the night」、「プロレスのスミイサ」と記載されています。
以下は本文の内容です。

【小説】０３　Ｋｎｏｃｋｉｎｇ　ｏｎ　ｔｈｅ　ｄｏｏｒ　ｉｎ　ｔｈｅ　ｍｉｄｄｌｅ～

　いつも通り、平常運転でスミスと朝食を済ます。
　向かい合って飯を食っても、ポーカーフェイスを成し遂げた。大層なことではないが、ハードルが高くなった理由は、スミスのせいと他責して切り抜ける。
　大丈夫、俺はまだ、やれる。
　気の置けない友だち、相棒でいることを。

　俺はスミスと連れだってＤＤＪ事務所に併設されたジムに向かう。
　足腰を鍛えるために電車では座らず移動する。ドア付近を陣取って、スミスと向かい合う。
　マンションから出て、主婦や外回りのサラリーマンに紛れてちょこっと歩き、私鉄で数十分移動し、また歩けば目的地につく。ジムまでの道程を脳内再生した。
「都会ってウオーキング並みに移動があるよな」
　学生時代を思い出して俺は笑った。たった五分の徒歩でも気だるい気分になっていたと懐かしくなった。運動は嫌いではなかったが、登下校やコンビニまでの時間を惜しいと思っていた。だから、歩くよりも走っていた。おかげで体力がついた。
　緩んた頬のまま、スミスを見上げる。スーツや黒い頭のモノトーンの中に金髪、真っ青なシャツと白のハーフパンツが目に痛い。真冬とは思えない出で立ちもふくめて。

ドアの外を流れる景色を青い目が見下ろしている。ただ、視覚情報は脳へ届いていないような表情だった。何かで頭がいっぱい、みたいな。
　たまの不規則な揺れに、無意識でも膝の屈伸で対応していて感心した。
「……スミス？」
　電車の唸りと自分のそれが同化してしまったかと、再度呼びかけてみるも、スミスの瞳に揺れがなかった。なんとなくムッとして、俺は露になったつるつるの脛を蹴ってやる。
「痛ッ……え…、イサミ？」
　突然の衝撃にスミスの上半身がくりと傾いたが、膝に手をついて難を逃れた。戸惑いつつ見上げたスミスは、怒られるのを待つ子犬そのものだった。
「スミス……昨日の酒でも残っているのか」
　自分でも驚くくらい、低温が漏れ出て、唇を引き結んだ。スミスの青が揺れる。
「あ、いや、ない、……ゴメン……きいてなくて」
　一言ずつ視線が落ちていく。謝らせたようで、気まずくて、俺は喘いだ。
「違う。具合が悪いなら、言ってくれ、と思っ」
　ギッギと電車が大きく揺れて、おっ、とスミスに近づいて、ドアに寄り掛かる。俺の腰を支えるようにスミスの手が回って、至近距離の唇に条件反射で目を瞑ってしまう。
　車内アナウンスの後、自力で離れる前にドアが開いて、二人の間に人の流れができた。乗客の頭部が連なって降りていく。スミスと離れることができて、俺は手すりに尻を落ち着けた。脚に力が入らない。
　よどみなく出ていって、わたわたと入ってくる他人をぼんやりと俺は見守る。数人越しのスミス

は、何か言いたげに呆けたあとベルと共に口を閉じた。そして、流れ出した景色を物憂げに眺めた。
　俺もＯＬの隙間から対面する景色を気にしてみた。なんの興味もない、ビルの広告の残像をみつめる。

　スミスを意識しすぎだ。不自然な行動をとっている。スミスに気を使わせるな。俺がしっかりしなければならないのに。馬鹿野郎。
　こうして固く決意している間も、スミスを意識してしまっている。
　いつか、慣れて、日常になるのだろうか、とか思ってしまう。
　ふとした気のゆるみで、忌々しい昨夜のやりとりが蘇ってくる。不甲斐ない自分への胸のムカつきが、スミスへの怒りにすりかわる。
　何が、ずっと一緒に、だ。なんなんだ、あれは。ふざけるな、馬鹿野郎。こっちの気も知らないで。

「……知りたく、ない」と口の中だけで完結した。はっきりと意識できた言葉だった。
　俺は、俺の気持ちを知りたくない。言語化したくない。明確にするべきではない。
　けれど、スミスには言葉にしろ、全て伝えろという。なんという我儘だろうか。
　俺の人生において他人に何かを強要したり強制したことはないし、望んだこともないのに、スミスには求めてしまう。
　俺のことが好きなら、こんな気持ちにさせるな、って？
　ナニサマだ。

微弱に振動したポケットからスマホを取り出す。スミスからテキストが届いていた。
『来週みる映画で迷ってる。イサミも行く？』
　ＤＤＪ公式スタンプ、スミスが陽気に『よ！』と挨拶してくる。してくんなよ。
　映画に悩んでいたって？　そんな感じじゃなかっただろ？
　なんて、詰め寄ることもできずに文言を眺める。
　だから『アクション映画なら、行きたい』と返し視線を上げれば、スミスが「うん」と頷いて、幸せそうに微笑んだ。たったこれだけのことで、どうしてそんな表情ができるのか。
　俺はぎこちなく頬を上げて、応える。
　アクション映画なら、喜んで行くよ。おまえ持ちだしな。
　ただ恋愛映画だけは、避けたい。柄じゃないから。
　今は、特に。

　プロのレスラーとして体をつくることは大事だ。
　それは試合で動けるようにとの為でもあり、観客に魅せる為のボディーメイクも含まれるという。後者は俺には縁遠い精神だが、体が資本とはよく言ったものだ。
　今日は腕と肩回りの筋肉にゆっくりと負荷をかけイジメ抜いて、こつこつ大きくする。
　関節に燃えるような焦れるような燃焼を感じ、達成感を得る。
　適度なインターバルをとりつつ、喉の渇きはプロテインで潤す。試合でもトレーニングでも、外からでは解からない体内の筋肉はダメージを受け

August 22, 2025 at 3:11 PM

よいや

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オリキャラ視点の複座スミイサ
校正間に合わないので途中…スミイサオンリーおめでとうございます!!!!!
【　much deeper than we know　】4/4

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「【　much deeper than we know　】」、「オリキャラ視点のスミイサ」と記載されています。
以下は本文の内容です。

【　ｍｕｃｈ　ｄｅｅｐｅｒ　ｔｈａｎ　ｗｅ　ｋｎｏｗ　】

　島で暮らす者として、海は珍しくはない。
　永遠に寄せては返す波は日常そのものだ。

　だが、イサミちゃんはそうじゃないらしい。

　砂浜で白波とおいかけっこをしていた。引いたら追いかけ、寄せたら逃げる。素足が水の流れに逆らうと、足首を濡らし飛沫があがる。歓声はないけれど、息遣いで楽しんでいるとわかる。
　僕から遊戯に留まらないように見えるのは、イサミちゃんの身体能力が高いからだ。ジャンプがものすごく、高い。飛距離もある。白いシャツは無事でも、Ｇパンの裾からふくらはぎの部分まで濡らして、はしゃいでいた。
　そばにはパーカー姿の青年が居た。スニーカーを後ろ手で持っている。金髪を潮風に巻き上げられながら、スミスくんはイサミちゃんを眺めていた。絶賛の曇り空だったが、眩しそうにしている。
　ふたりとも、飽きもせず島の日常を謳歌していた。
　僕が砂を踏みしめる音さえ、彼らの世界に届いていない。
　だが、それでいいと思った。
「スミスくん」
　僕の呼びかけに、大きな青年が僕を振り向く。

日本語がわからないにしても、名前を呼ばれたことはわかってくれる。会話の細かなニュアンスは、相棒のイサミちゃんが居るから、困ることはなかった。
「明るいうちに、ちょっと陸へ物資を集めに行きたくて……イサミちゃんを借りていいかな？」
　イサミちゃんを指さしジェスチャーを交えて「ボディーガード」とか、ぎこちなく呟いてみる。そろそろガソリンと缶詰と野菜を仕入れたい。
　スミスくんは少し顔を斜めにしていたけれど、イサミちゃんを伴っていくことは初めてではない。理解して、頷いてくれた。察しのいい若者で助かった。
　僕の気配を察知して、イサミちゃんが飛ぶように駆け寄ってくる。ザクザクッと。速い。
「るいす」
　〝るいす〟とは、スミスくんのファーストネームだ。呼べるのは、イサミちゃんだけだ。
　僕は津島という老人で、ちなみに医者だけど、イサミちゃんは「るいす」としか言葉を発さないから仕方がないが、日本語も英語も理解して行動はしているから、不便はない。
「イサミ」と心細そうに、スミスくんが呼ぶ。
　恋人同士を引き裂いているようで、僕は大変申し訳なく思った。
　スミスくんはいつも、イサミちゃんをそんな風に呼ぶ。
　これで最期かもしれないと、思っているのか。一緒に居れるかどうかよりも、名前を何度呼べるかどうかを気にしている風にもとれる。若いのに、

死期を特別なことと思ってはいないようだった。
　軍人だったスミスくんがスニーカーを砂浜に置いて、騎士のように跪く。イサミちゃんは当たり前のように、スミスくんの膝に濡れて砂だらけの左足を乗せた。
　スミスくんは濡れそぼった裾を少しまくってあげて、足から丁寧に砂をぬぐい払った。そして、何かつぶやいた。きっと、お小言だ。イサミちゃんが「む～」とか「んん～」っと低く唸っていたから。
　スミスくんは手際よくスニーカーを履かせると、右足も同じようにし、立ち上がると完了の合図としてイサミちゃんの額にキスをした。
　ごく自然に。この島の日常として。

　モーター音と波が破裂する。舳先が海面を滑る。僕は風となり白波を切り裂く。
　自分はスピード狂なのだと、自覚する瞬間だった。
　元は観光客用の豪奢なプレジャーボートを飛ばす。チーク材のピカピカのコックピットや、フレンチウォルナットのフロアのおかげで、大富豪の気分になる。僕はサングラスを押し上げた。
　船舶一級をとっておいてよかった。漁師の多幸さんばかりに頼ってはいられない。僕は人が具合が悪くなったりケガをしないと仕事がないから。
　何もない海上だとしても、よそ見運転は控えたいところだが、イサミちゃんの様子を確認した。
　室内ではなく、屋根のない後部座席から水平線を眺めていた。

スミスくんから離れると、静かな青年が垣間見える。

　横浜への上陸は危ない。たとえ平和な日本だとしても、こんな非常時だ。
　混乱を狙って跋扈する不届き者がいた。
　そのおかげで、スミスくんとイサミちゃんに出逢えたのだが。

　宇宙から災害が降ってきて、島は真っ二つに蒸発させられた。
　島に残ることを決めた数十人の島民を食わすため、栄養の観点から医者の僕と、島で暮らす必需品を熟知する漁師の多幸さんとで陸を深夜に目指した。
　真夜中、そろりそろりと横浜へわたってきたものの、大きな港は消し炭になっており、夜陰に紛れつつ海岸線を辿り小さな桟橋をやっとみつけ着岸した。
　そこで不届き者に襲われた。半グレの団体だった。
　金品をよこせと絡まれた。こんな状況であっても、シノギを欠かさない彼らに感心した。
　唖然とする僕らにシビレを切らした団体に殴られそうになったとき、助けてくれたのが勇くんだった。
　獅子奮迅とは正にこのことで、頭から血を流しつつも両手両足をフルに使って数人を相手にしたし、一撃で動けなくした。

July 11, 2025 at 3:24 PM

よいや

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普通のシン花のスミイサです。🐈
03の冒頭です。
スミくん……おもしれー男……

■■■　03　Living with glamorous　■■■
4/4

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「■■■　03　Living with glamorous　■■■」、「普通のシン花のスミイサ」と記載されています。
以下は本文の内容です。

■■■　０３　Ｌｉｖｉｎｇ　ｗｉｔｈ　ｇｌａｍｏｒｏｕｓ　■■■

　母国では「ギーク」、つまりは「ヲタク」は淘汰される。自由の国を語っておいて、なかなかに手厳しい文化だ。悲しいことにイジメの対象になってしまうこともある。
　だが、俺は胸を張って宣言できるタイプの「ヲタク」だった。運動と勉強と体格と性格が平均よりちょい良かったせいか「ヲタク」が漏れ出したとしても、クラスメイトや友人が「うんうんそうかそうか」と個性として流してくれていた。恵まれていたと、言っていいのかな。熱量を受け止めてほしかったから、ちょっと寂しかったけれど。
　とにかく――幼馴染のヒロインが小さくなったり、同級生ヒロインが魔女っ娘だったり、死んだ親友がロボットになってヒロインの下に帰ってきたり、恋人がサンタクロースになる日本の漫画やアニメなどのカルチャーを、俺は物心つくまえから浴びて育っていた。
　日本語が流暢になったのも、それらのおかげだ。気をつけないと日常会話にツイッタラー（今はえぇ～っくすッか）構文が出ちまうことだけは気をつけている。「ヲタク」がバレるせいじゃない。その言葉が生まれたいきさつを説明する時間が発生し、話しの腰を折っちまうからだ。

　とにかく、俺はれっきとした「ヲタク」だ。

日本のカルチャーを受け入れることに、慣れていた。
　黒猫に、なれるのか？　前から？　いつから？　小さなころから？　中国の泉に落ちて呪いが？　水をかぶったら黒猫に？　お湯をかぶったら人間に戻るのか？
「……イサミが、くろぬこに…………？」
　日本語に翻訳して、じんわりと現実が沁み込む。かみしめる。
　目の前の黒い毛玉が、イサミだと、確信している自分が自分で怖い。
「ふわころのイサミ……」
「……ォオン？」
　動揺でがたがた震えだす俺を、イサミが不思議そうに頭をかしげ右耳をぴるっとさせた。ただただかわいい。
　俺じゃなかったら威嚇に見えたね。
「は、はぁ～？　ふうぅぅ…………クッ、ふふ……」
　口元を手で覆った。口から何かかまろび出そうだった。
　急激な萌えで、血が沸騰している。発汗でシャツが肌にまとわりつく。息が乱れる。異常だ。異常な萌えだ。
　かわいい。訳がわからないくらいかわいい。宇宙で一番かわいいくろぬこだ。プリティークールとは正にこのこと。俺は本当のプリティークールを知らなかった。こんな愚かな俺を笑ってくれ、イサミィ……ッ！
　脳の酸素が足りない。思考回路がショート寸前

で今すぐにでも口に入れたい。なぜだ。自分が理解できない……ッ！
「ッ……俺は眩暈がし、背後のテーブルに手をついた……ッ」
　あぁ、感情を押し殺そうとしたら、ト書きが出ちまった。
　肩で息をついても間に合わない、足にもキちまっている。終わりだ終わり。おしまいだ。
「ヌ……フムッヌ……ッ」
　異常行動をする俺を心配してか、たちたちとイサミが俺の革靴まで四足歩行で向かってくる。ぬるんと衣服から全身が現れた。
　全身の毛艶がハンパない。ぴっかぴかだ。歩行の度に光沢が生まれては消えて、筋肉の盛り上がりがわかる。揺らめくしっぽの先までまんべんなく、優雅で、なんか、えっちだッ！
「そう……か……」
　俺は天啓を受けて、打ち震えた。
　全裸だからか！！！！
「……フフン……」
　すんとイサミがお行儀よく座った。黒ではあるのに流麗な光が鎮座する。
　なんだこの完璧な生き物は。いや、イサミは人間の時でも充分に完璧な存在だった。くろぬこの姿も見せてくれて、ありがとうの気持ちを忘れてはならない。ありがとう愛している。信じてはくれないだろうけど、人間のきみも大好きだ。すごく。でも今は、その姿に敬礼させてほしい。ホワイトハウスで叙勲を受けてもいいくらいなんだ。本当だ。それくらい素晴らしいんだイサミは。俺

を信じて欲しい。
　全身の毛穴から「イサミ大好き」が溢れそうになって、俺は感極まる。
　だが、唐突に、俺は、この状況の答えに行きついた。
「……明日、俺は死ぬのかもしれない……」
　花屋の天井を見上げた。蛍光灯がじーんと鳴いている。
　星空は見えないのに、流れ星がひとつ尾をひいて落ちたのが見えた。双眼鏡を覗き込みもしないで俺は見えないものを見た。
　情緒が乱れていた。急激に上がったものが下がる。このポジティブが服を着て歩く俺が、悲しくなってくる。自分からの発露では何十年も泣いていないのに、幸せの頂に立ち自らの人生を見下ろす。走馬灯だ。これが、走馬灯。
　異国の地でイサミとせっかく出逢ったのに、もっと仲良くなりたかったのに、ちゃんとした食事に誘いたかったし、映画デートも楽しかったし、俺んちのソファで俺の隣にイサミが座って照れながらも名前で呼んでくれるイサミ。俺は照れながらも指輪を差し出す。イサミは「なんだよ」とはにかんで、俺が言葉にすることを待っていた。そうだよな、言葉にしないと、伝わらないこともあるよな。悪かったよ、イサミ。
「俺は、イサミと……あれ……？」

June 5, 2025 at 5:05 PM

よいや

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この先が見えない話も、珍しいな、と思いました。#感想
これを期に(？)🌊兵隊について記事を斜め読みしたのですが、守としての自A隊と対をなす攻の存在で唸りました。
信念や戦場での在り方を思うと、11話ボンファで漏れたブレの本心は、本当に本当に刺さる。スミからしたら不本意かもしれないけれど😌

May 25, 2025 at 2:17 AM

よいや

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普通の複座スミイサ(複座ルイイサ)
自分の誕生日までは世界はモたないだろうと思いクリスマスに祝う複座スミイサの骨組み。
***　Etiamsi mors nos partem　***
8/8

たくさんの犠牲を払って、ＡＴＦは最新式のティタノストライドに賭けた。
米日共同開発の複座式。米軍側からは俺と、日本軍（自衛隊、だったか）のイサミ・アオが選ばれた。
俺は意気揚々とイサミに手を差し出した。

「ルイス・スミスだ。バーではすまなかったな。これからは相棒としてよろしく頼むよ、アオ三尉」
「あ、あぁ……よろしく。アオ・イサミだ」
「俺のこと忘れてない？　酷いなあ」

死の谷の影を歩く
現世の境を漂う
命の縁を堰き止める

微力な抵抗

均衡がおとずれる瞬間など一瞬もなく
弄ばれていると感じた
人類がどこまで諦めないのかを
てのひらの上で転がされている

初日、イサミが言った。

「試されている気がする」

俺はわからなかった。
七度目の出撃でやっと理解した。

課されたノルマをこなす
演習のように

神はギリギリ越えられない試練を用意する

そう思えば、異星人たちには優しさがあると言える

人類が何処まで出来るのかを淡々と示し続ける

箱庭だ。
地獄の。

May 15, 2025 at 4:47 PM

よいや

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普通の複座スミイサ(複座ルイイサ)
自分の誕生日までは世界はモたないだろうと思いクリスマスに祝う複座スミイサの骨組み。
***　Etiamsi mors nos partem　***
4/8

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「普通の複座スミイサ」と記載されています。
以下は本文の内容です。

＊＊＊　Ｅｔｉａｍｓｉ　ｍｏｒｓ　ｎｏｓ　ｐａｒｔｅｍ　＊＊＊

あぁ、コレは、と思わされる瞬間が何度もあった。
オルトスの操縦桿を握った手の、握力が弱まる瞬間。

イサミの左腕を失って
イサミの右目を犠牲にして

視界が狭まったが
選択肢は広がった

イサミは優秀だ
イサミに誤りはない
イサミの判断は正しい

イサミは人類が生き残る選択をいつもする
自分が犠牲になることが抵抗なく出来る

イサミが下した感応より数度、イサミをかばうように、操縦桿を微細にずらす。

コックピット右正面に被弾。悲鳴を上げる装甲。

コントロールパネルが歪んでブラックアウトし、ひび割れる。
熱だ。被弾の衝撃よりも、熱さが勝つ。
じりじりと鋼鉄が融ける匂い。恐怖。

イサミは何度も、この恐怖に身を預けたのか。
イカれている。
意識が途切れるまで、闘う。視界が歪む。

「スミス……！！」

霞みがかる意識の端でイサミの悲痛な声が響く。

怒っていたかもしれない。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

二年に一度のアド・リムパック。
各国のティタノストライドが拝めると、はりきっていた。
人生のライバルもみつけ、順風満帆……とはいかなかった。

異星人の襲来。
オーバーテクノロジーとの戦闘。
映画やアニメ限定の事象だと思っていた。
あっという間に、世界は分断された。
命からがら一週間かけ、ヨコハマまで移動した。

May 15, 2025 at 4:47 PM

よいや

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普通のシン花のスミイサです。🐈
02の冒頭です。

■■■　02　Living with glamorous　■■■
4/4

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「■■■　02　Living with glamorous　■■■」、「普通のシン花のスミイサ」と記載されています。
以下は本文の内容です。

■■■　０２　Ｌｉｖｉｎｇ　ｗｉｔｈ
ｇｌａｍｏｒｏｕｓ　■■■

　花に興味を持ったのは、クラスメイトの付き合いで高校生の時に園芸部に入ったのが始まりだ。

　校則で何らかの部に所属しなければならなかったが、俺は空手の道場に通っていて体は手一杯だ。入るとしたら文化部だが、これと言って入りたい部がなく困っていた。
　そんな時「碧氏、幽霊部員でいい、頭数の為に園芸部に在籍して欲しいのだが」と、顔しか知らないような男子クラスメイトに頼まれ、大人しい四人組の中に参加してみた。
　園芸部は畑を耕し、野菜を栽培していた。俺にも一区画与えられ「野菜はハードルが高いから、花でも」と、五月に植えることができ比較的すぐ花がつく品種を選んだ。
　肥料や水やりは体力を使う。いい筋トレになると野菜の栽培を手伝いつつ、自分の区画も手入れした。
　手をかけても病気になったり、天候に恵まれなかったりする。何度か試行錯誤して、大

きな花をつけたときの達成感に俺はハマってしまった。

　三年の間に色々な花を手掛け、育てた花を校内や家に飾っているうちに、益々深みにハマった。
　どんなに花に興味がない人間でも、活きた花の魅力にひきこまれ立ち止まる。
　魔力ともいうべき力をもっと知りたくて、俺は花に関わる仕事に就きたいと思うようになっていった。

　この三年間がなければ、俺は兄の背を追いかけ自衛官か、父が務める警察官を選んだと思う。
　大学は人間と植物と環境について学べる場所を選んで、デザインの感覚は花屋でバイトすることで磨いた。

　植物の研究所で二年間働き「若いうちに一度失敗を経験するのもいいかもしれない」と見切り発車とはよく言ったもので、車での移動販売＆休日だけの花屋を開いた。
　イベントや商店街の一角で細々と活動していると、俺の変わった経歴を聞きつけた地元新聞社が紙面でとりあげてくれ、そのインタ

ビューをきっかけに有難いことにお客さまが増え、常連ができて、花屋を開くまでに至った。
　園芸部の仲間も顔を出してくれ、懐かしく嬉しかった。

　花たちのおかげで、俺の人生は拓かれたと言っていい。
　ルイス・スミスとの出逢いも、そのひとつだ。
　大切なお客様にかわりないが、俺は勝手に友だちだと思っている。

　彼が店に来たのは開店一周年を過ぎたあたりだった。スーツ姿の男は、さらりと店に入ってきた。
　俺は包装紙のパンフレットを熟読していて、数分気づけなかった。
　人の気配を感じあわてて顔を上げたときには、彼は適当に三本見繕って会計のテーブルにきた。
「お願いします」
　あまりにも流暢な日本語と花を持つ仕草が自然で、俺の中にパッと思い浮かんだ感情といえば――金髪碧眼高身長、高そうなスーツがうさん臭い――だった。

男性が花屋に入ることを日本人の感覚で珍しいと思うことは、今の時代に反しているかもしれない。けれども、こうも当たり前な感じて軟派に来られると、日本男児としてムラッ気が出てしまうというものだろう。きっとそうだ。
　俺は知らず視線は低空飛行し趣味の良いネクタイを眺め、接客の声も尖ってしまった。

　初手最悪な接客であっても、彼はその後も通い続け、短い質問や感想を置いて行った。
　クリスマスローズを買った日は「この花の活け方、おすすめある？」と。
　三色のアネモネを組み合わせた日は「長く保つ方法はある？」と。
　ジンチョウゲを眺めて「ここ、花の揃え、好きだな」と。
　彼は会計を済ませ「ありがとう」と笑顔を残して立ち去る。

　うさん臭いと思ってすまない気持ちになった。
　俺の中で『爽やかなイイうさん臭さの男』に格上げとなった。

March 16, 2025 at 4:02 PM

よいや

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普通のシン花のスミイサです。🐈
再掲です。

■■■　Living with glamorous　■■■

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「■■■　Living with glamorous　■■■」、「普通のシン花のスミイサ」と記載されています。
以下は本文の内容です。

普通のシン花

■■■　Ｌｉｖｉｎｇ　ｗｉｔｈ
ｇｌａｍｏｒｏｕｓ　■■■

　暮らしの中に花があるといい。

　マムがよく言っていたせいか実家から離れ、日本で暮らしても俺の習慣となっていた。
　いきつけの花屋は徒歩圏内にある『ブレイフラワー』という。商店街の一角、男性ひとりで経営している。そこへ三日に一回は顔を出している。
　店主はイサミという同年代の青年だ。
　仏頂面でぶっきらぼうだし接客業向きではないけれど、花には誠実だし仕事には真摯だ。訊いたら色々応えてくれる、イイ奴だ。
　最初は俺の金髪碧眼高身長（イサミ曰く高そうなスーツがうさん臭かったらしい）というみてくれのせいか警戒もされていたけれど、半年かけて懐いてくれるようになった。

　そう「懐いてくれる」という表現が一番近しい。

　俺の花屋に入ることへなんのハードルもない感じも気に障り（結構ひどいこと言われてるね？）ふらりと入ったとき「いらっしゃいませ」もなかった。
　身体の距離は心の距離だ。俺が花を物色してい

ても、イサミはずっと奥に引っ込んでいて、会計まで会話をしないということなんでザラだった。
　そんな殿様商売を俺は気にしていなかったが、足しげく通って「この花の活け方は」とか「長く保つ方法は」と声をかける度に、イサミの俺に対しての温度がちょっとずつ上がる気配があって、ダンジョン攻略みたいで楽しかった。
　俺の顔を覚えてくれた。俺の花の好みを覚えてくれた。俺の目を見てくれた。俺の名前を覚えてくれた。俺の傍にきてくれた。俺が来店するタイミングを知ってもらえた。
　イサミに「ひいきにしてくれるから、仕事の後とか夜遅くても寄ってくれ」と言ってくれるまでになって、俺はしみじみとした気持ちになった。
　なんだか、こう、野良猫が懐いてくれた感じ？
　立派な店に棲んでるんだけどね。
　いつも黒い服装に作業用のエプロンで、ちょっと日焼けしていて、ちっちゃな黒い瞳がジッと俺をみつめてくる。
　短絡的ではあるが、黒猫みたいだな、って思っちまう。

　今日は残業で午後十一時と、本当に遅くなってしまい、イサミに連絡するか悩んだ。
　会社のビルから出て、スマホを睨んで立ち止まる。
　それでも花屋に行きたい、リセットしたいという感覚が襲ってくる。
　これは俺の勝手な思いだけど、花が必要ではなくて、イサミの顔がどーしてもみたい。あの、花

屋に入って俺と目が合った時の、ちょっとだけ微笑むイサミが見たい。

　花が暮らしにある効果は多種多様だ。
　見ていると癒されリラックスし自律神経が整う。
　花を飾る作業をするだけで気分が上がりストレスが減る。
　脳で何かが分泌され幸せな気持ちになる。

　俺は気づいちまったんだ。
　イサミと話した時点で「効果がある」ってとこに。

　最近では花を買いに行くことより、イサミに会いに行くことの方の比重がデカくなりつつある。
　毎日通いたいのを我慢しているし、きっと毎日でも、足りない。

　とにかく移動しよう。
　花屋の二階は住居になっている。
　明かりがついていたら、外から連絡すればいい。

　最寄り駅から下りて、花屋までは自然と駆け足になっていた。
　商店街は薄暗い。通りから見渡せる位置で、気づいた。
　花屋の店舗の方に明かりがついていた。
「イサミ……？」
　もしかして、待っててくれた？
　感動に打ち震え、小走りのままスマホを取り出

し、イサミのスマホに電話する。
　このままイサミが電話に出たら「鼻息の荒いままで恥ずかしいな」なんて過り、俺はちょっと歩調を緩め息を整えた。
　ところが反応がない。数十回のコールで、俺は花屋の前に着いてしまった。
　微かに音がする。俺は花屋のドアを開けた。
　カラン、と呼び鈴の渇いた音がする。スマホが鳴っている。
「イサミ、居るの？」
　音を頼りに花々を越えていく。アレンジメント兼お会計のテーブルに近づくと、陰からきこえる。床の位置からだ。
　俺は「イサミが倒れていのでは？」という最悪の想定をし、コールをキャンセルして駆け寄った。
「イサミッ！　大丈夫か！？」
「……ムヌー」
　足元から聞こえた鳴き声に、俺は久しぶりに母国語が出た。

『イサミが黒猫になっちまった！？！？！？』

　そこには黒い衣服とエプロンの間から、つぶらな瞳の黒猫が顔を出していたのだった。

（オワリ）

February 24, 2025 at 3:33 PM

よいや

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スミイサ。
スミは後遺症があり退役しています。パーソナルトレーニングジムを開いています。何を言っているのか以下略。
Never could’ve planned They made me who I am冒頭　4/4 #A5ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/a5/index.php