べにぐも
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雑伊「膝枕」（2枚目〜5枚目）
「あっ！？　そ、そうですね。申し訳ございませんこんなところで、はしたなかったですね」 　言われるまで気づかなかったらしい自身の行動に恥じらい、あたふたと身を離し前髪を摘んだりしながら誤魔化そうとする姿は雑渡にとってはただ可愛いだけなので、内心愛おしさを噛み締めている雑渡であるが、もちろんプロの忍はそんなことを感じさせずに続けていく。 「いや、いいよ。今は周りに誰もいないようだから、気にしないで。それに伊作くんの滅多にないお願いは私も嬉しいんだ」 「ありがとうございます。……あの、もしよろしければ雑渡さんのおうちに……今日は二人でゆっくり過ごしたいです。僕、外泊届も出してきて、２泊くらいお泊まりできるんですけど、」 「え」 「だめですか……？」 「……そんなことないよ、それじゃあ早速行こうか」 「はい！」 　訂正、如何なるプロ忍であっても、オフで、好いた人と２人で、思いもよらないお願いをされてはちょっと動揺がはみ出るらしい。〝お決まり〟の様に顔に巻かれた包帯が撓（たわ）んだが、すぐに元に戻してタソガレ領の方へ歩み始めた。 　伊作は気にせずとなりに並ぶと、遠慮がちに雑渡の手に指を伸ばす。雑渡は察しのいい忍びであるからして、すぐにくるりと手のひらを伊作へ向けてやれば、花も咲かんばかりの笑顔を見せながら自身の手のひらを重ね、互いに歩幅を合わせるのであった。 　 　● 　 　道中話を聞いたところによると、最近課題（忍務）やら委員会活動やら、学園長の思い付きやらで忙しくて忙しくて、今日の逢瀬を唯一の楽しみにして頑張ったのだと言う。 「それで、その、ついあんなことを口走ってしまいまして……」 「そうか、お疲れさま伊作くん。よく頑張りました。それでは今日はお望み通り、 目一杯甘やかしてあげようか。ほら、もっときみのしたいことを教えてほしいな」 　私邸に着き、着替えて奥の間へ腰を落ち着けたころには伊作もだいぶ落ち着きを取り戻していたが、雑渡に促されるとおずおずと望みを口にした。 「抱きしめてもいいですか？」 「どうぞ」 「やったっ」 「おお、」 　手に余るほどの大男を前にして、抱きしめたいと。快く了承すればすぐさま腕を大きく広げて飛び込むように抱き込まれた。 　脇下から肩に腕を巻き付けて、雑渡の胸に、首筋に鼻を寄せ、大きく息を吸う仕草をみとめてからこちらも抱き返しつつ、背中を丸めて伊作の髪の毛に鼻を潜らせ、深く息をする。 　互いのにおいで満たされることしばらく。 　衣服越しとはいえお互いの体温でぽかぽかと温かくなってきた身体をそっと離し胸元を覗くと、よほど疲れていたのかうつらうつらと瞼の上と下がくっつきそ うになっている子どもの姿があった。 　ゆっくりと後頭部や背中を撫ぜてやりながらしばらくすると、本格的に眠り始めたようでくたりと重みが増す。 　抱えたままでもよかったが、横にしてやりたかった。しかしなんとも離れがたいのが愛しいひとというものか、そっと腕をほどいてやりながら考えた結果、あぐらをかいた足元に上半身を横たえてやることにする。不恰好だし、もしかしたらどこか寝違えてしまうかもしれないが、雑渡の脚に頭を預けて膝枕をされている風体である。 　労わるように肩に背にと撫でさすっていると、ううんと身じろいだと思えば、まだ細っこい腕がゆらゆらとさまよって己の腰にぎゅうっと巻き付いた。 　邪気のない仕草に暖かく柔らかな愛おしさと、腕を巻き付けるにあたり顔がどんどん下腹部に近づく様に沸々とした劣情にも苛（さいな）まれながらも、今は「疲れを癒してほしい」というかわいらしいわがままを叶えてやろうと努めてゆっくり頭を撫でてやるのだった。
February 21, 2025 at 5:00 PM
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雑伊「膝枕」（2枚目〜5枚目）
「あっ！？　そ、そうですね。申し訳ございませんこんなところで、はしたなかったですね」 　言われるまで気づかなかったらしい自身の行動に恥じらい、あたふたと身を離し前髪を摘んだりしながら誤魔化そうとする姿は雑渡にとってはただ可愛いだけなので、内心愛おしさを噛み締めている雑渡であるが、もちろんプロの忍はそんなことを感じさせずに続けていく。 「いや、いいよ。今は周りに誰もいないようだから、気にしないで。それに伊作くんの滅多にないお願いは私も嬉しいんだ」 「ありがとうございます。……あの、もしよろしければ雑渡さんのおうちに……今日は二人でゆっくり過ごしたいです。僕、外泊届も出してきて、２泊くらいお泊まりできるんですけど、」 「え」 「だめですか……？」 「……そんなことないよ、それじゃあ早速行こうか」 「はい！」 　訂正、如何なるプロ忍であっても、オフで、好いた人と２人で、思いもよらないお願いをされてはちょっと動揺がはみ出るらしい。〝お決まり〟の様に顔に巻かれた包帯が撓（たわ）んだが、すぐに元に戻してタソガレ領の方へ歩み始めた。 　伊作は気にせずとなりに並ぶと、遠慮がちに雑渡の手に指を伸ばす。雑渡は察しのいい忍びであるからして、すぐにくるりと手のひらを伊作へ向けてやれば、花も咲かんばかりの笑顔を見せながら自身の手のひらを重ね、互いに歩幅を合わせるのであった。 　 　● 　 　道中話を聞いたところによると、最近課題（忍務）やら委員会活動やら、学園長の思い付きやらで忙しくて忙しくて、今日の逢瀬を唯一の楽しみにして頑張ったのだと言う。 「それで、その、ついあんなことを口走ってしまいまして……」 「そうか、お疲れさま伊作くん。よく頑張りました。それでは今日はお望み通り、 目一杯甘やかしてあげようか。ほら、もっときみのしたいことを教えてほしいな」 　私邸に着き、着替えて奥の間へ腰を落ち着けたころには伊作もだいぶ落ち着きを取り戻していたが、雑渡に促されるとおずおずと望みを口にした。 「抱きしめてもいいですか？」 「どうぞ」 「やったっ」 「おお、」 　手に余るほどの大男を前にして、抱きしめたいと。快く了承すればすぐさま腕を大きく広げて飛び込むように抱き込まれた。 　脇下から肩に腕を巻き付けて、雑渡の胸に、首筋に鼻を寄せ、大きく息を吸う仕草をみとめてからこちらも抱き返しつつ、背中を丸めて伊作の髪の毛に鼻を潜らせ、深く息をする。 　互いのにおいで満たされることしばらく。 　衣服越しとはいえお互いの体温でぽかぽかと温かくなってきた身体をそっと離し胸元を覗くと、よほど疲れていたのかうつらうつらと瞼の上と下がくっつきそ うになっている子どもの姿があった。 　ゆっくりと後頭部や背中を撫ぜてやりながらしばらくすると、本格的に眠り始めたようでくたりと重みが増す。 　抱えたままでもよかったが、横にしてやりたかった。しかしなんとも離れがたいのが愛しいひとというものか、そっと腕をほどいてやりながら考えた結果、あぐらをかいた足元に上半身を横たえてやることにする。不恰好だし、もしかしたらどこか寝違えてしまうかもしれないが、雑渡の脚に頭を預けて膝枕をされている風体である。 　労わるように肩に背にと撫でさすっていると、ううんと身じろいだと思えば、まだ細っこい腕がゆらゆらとさまよって己の腰にぎゅうっと巻き付いた。 　邪気のない仕草に暖かく柔らかな愛おしさと、腕を巻き付けるにあたり顔がどんどん下腹部に近づく様に沸々とした劣情にも苛（さいな）まれながらも、今は「疲れを癒してほしい」というかわいらしいわがままを叶えてやろうと努めてゆっくり頭を撫でてやるのだった。
February 21, 2025 at 5:00 PM