ブロマンス・にょた・リバ雑多、文字のみ
※避難用として作成したのでまだ稼働してません。ぼちぼちROM気味
重くて堪らなくて、とうとう目蓋を閉じる。暗い膜の向こうで、ぬるい指が額にかかる前髪を除けて払う。
「赤は当然だろ、白もいい感じだし。――あ、でも」
大きな手のひらが頬全体を覆った。震えてしまう睫毛の先に、生暖かい生き物の息遣いを感じる。肉薄した気配が肌に染みてくる。晒された額を、自身のものとは違う硬い質の毛先が擽る。
「黒もよく似合う」
その声は存外に離れたところから聞こえた。その瞬間の前に、息遣いも気配もこそばゆさも一斉に離れてしまっていた。
「ばかじゃないの」
気怠さを押し退けて詰れば、きっと胡散臭く装っている🐈⬛が、息だけで笑った。
重くて堪らなくて、とうとう目蓋を閉じる。暗い膜の向こうで、ぬるい指が額にかかる前髪を除けて払う。
「赤は当然だろ、白もいい感じだし。――あ、でも」
大きな手のひらが頬全体を覆った。震えてしまう睫毛の先に、生暖かい生き物の息遣いを感じる。肉薄した気配が肌に染みてくる。晒された額を、自身のものとは違う硬い質の毛先が擽る。
「黒もよく似合う」
その声は存外に離れたところから聞こえた。その瞬間の前に、息遣いも気配もこそばゆさも一斉に離れてしまっていた。
「ばかじゃないの」
気怠さを押し退けて詰れば、きっと胡散臭く装っている🐈⬛が、息だけで笑った。
じんじんと強く痛む犬歯の先が食い込んだ凹みを、尖らせた舌の端が慰めるようになぞる。
「……くろが、おれのゆびたべた」
「たべてません」
鼻と眉間の間にかっと何かが集まり渦巻く。茶化して児戯めいたことを言うのが精一杯だった。
「約束、の証拠」
薬指に燻る熱を吸い取るように、薄い🐈⬛の唇が寄せられる。小さな音を立てて吸い付いて、離れていった。薄い皮膚の下にはあんなにも熱い熱が潜められているだなんて、熱量の嵩の深さも思いもよらなかった。
じんじんと強く痛む犬歯の先が食い込んだ凹みを、尖らせた舌の端が慰めるようになぞる。
「……くろが、おれのゆびたべた」
「たべてません」
鼻と眉間の間にかっと何かが集まり渦巻く。茶化して児戯めいたことを言うのが精一杯だった。
「約束、の証拠」
薬指に燻る熱を吸い取るように、薄い🐈⬛の唇が寄せられる。小さな音を立てて吸い付いて、離れていった。薄い皮膚の下にはあんなにも熱い熱が潜められているだなんて、熱量の嵩の深さも思いもよらなかった。
少し布団がはだけただけで寒気が肩口をはしるが、そろりと左手を出した。小指をやんわりと立てて、掲げる。意図を察した🐈⬛がすかさずその末指を拾い上げた。
「ゆーびきーり、げーんまーん、うそついたら」
嘘。嘘は、沈黙も含むだろうか。
「ゆびきった」
諳んじられた歌が、病人特有の匂いのする部屋に溶けて消えていく。なのに、まだ絡めた指は解けない。いつから寄り添わせた肌は同じ温度をしていただろうか。色と長さが違う同じ熱の指を、🐈は眺めていた。
🐈⬛の薄い唇の隙間から、一際尖った牙が顕れる。
少し布団がはだけただけで寒気が肩口をはしるが、そろりと左手を出した。小指をやんわりと立てて、掲げる。意図を察した🐈⬛がすかさずその末指を拾い上げた。
「ゆーびきーり、げーんまーん、うそついたら」
嘘。嘘は、沈黙も含むだろうか。
「ゆびきった」
諳んじられた歌が、病人特有の匂いのする部屋に溶けて消えていく。なのに、まだ絡めた指は解けない。いつから寄り添わせた肌は同じ温度をしていただろうか。色と長さが違う同じ熱の指を、🐈は眺めていた。
🐈⬛の薄い唇の隙間から、一際尖った牙が顕れる。
「ぜんぶ?」
「ぜーんぶ。上から下まで」
「…………めんどくさい」
開けているだけで辛くなりだした目蓋を、縋るように押し上げながら、素直に吐露した。すると🐈⬛は今日一番の破顔をしてみせた。楽しそうだった。今日潰えてしまった予定の話をしていた時より、夢のように不確かな未定のいつかを練り上げる方が、満たされた顔をする。
「俺もけんまの服をコーディネートしてあげるから」
「ええ…」
「ここはありがとくろ♡って言うトコロでしょーが」
「だってへんなのにしそう」
「しないから、な」
🐈の枕元に肘をつき、布団に半分を隠した🐈の赤ら顔を見下ろしている。
「ぜんぶ?」
「ぜーんぶ。上から下まで」
「…………めんどくさい」
開けているだけで辛くなりだした目蓋を、縋るように押し上げながら、素直に吐露した。すると🐈⬛は今日一番の破顔をしてみせた。楽しそうだった。今日潰えてしまった予定の話をしていた時より、夢のように不確かな未定のいつかを練り上げる方が、満たされた顔をする。
「俺もけんまの服をコーディネートしてあげるから」
「ええ…」
「ここはありがとくろ♡って言うトコロでしょーが」
「だってへんなのにしそう」
「しないから、な」
🐈の枕元に肘をつき、布団に半分を隠した🐈の赤ら顔を見下ろしている。
「くろには、あかがいちばん似合うのに」
「赤みたいな明るい色は一番らしくないって言われた」
「センスないね、そのひと」
「どーかん」
🐈⬛には一等赤が似合う。深く鮮やかな赤。黒い筆文字が映えるような、色とりどりのユニフォームが行き交う体育館の中でも、鮮烈に目に刺さる赤。
「なぁ、けんま」
🐈の熱い頬に焦がされて、氷の指はもうぬるくなっていた。翻して手の甲を充てられるが、そちらだってもうそれなりに人肌を取り戻してしまっている。
「くろには、あかがいちばん似合うのに」
「赤みたいな明るい色は一番らしくないって言われた」
「センスないね、そのひと」
「どーかん」
🐈⬛には一等赤が似合う。深く鮮やかな赤。黒い筆文字が映えるような、色とりどりのユニフォームが行き交う体育館の中でも、鮮烈に目に刺さる赤。
「なぁ、けんま」
🐈の熱い頬に焦がされて、氷の指はもうぬるくなっていた。翻して手の甲を充てられるが、そちらだってもうそれなりに人肌を取り戻してしまっている。
送信ボタンをタップする瞬間、時刻表示を確かに見た。意識した。
――今日、出かける予定あった?
そこまで踏み込んでみる意気地はなかった。その癖、🐈⬛は来てくれるという確信はあった。きっと🐈⬛は何度目とも知れない別れを早晩迎えるだろう。
「似合う?」
「にあわない」
「だよな」
🐈が端的に評すると、🐈⬛は愉快げに笑った。
「俺にはこの色が似合うと思ったんだと」
「ぷれぜんと?」
「……まぁ、そんなとこ」
送信ボタンをタップする瞬間、時刻表示を確かに見た。意識した。
――今日、出かける予定あった?
そこまで踏み込んでみる意気地はなかった。その癖、🐈⬛は来てくれるという確信はあった。きっと🐈⬛は何度目とも知れない別れを早晩迎えるだろう。
「似合う?」
「にあわない」
「だよな」
🐈が端的に評すると、🐈⬛は愉快げに笑った。
「俺にはこの色が似合うと思ったんだと」
「ぷれぜんと?」
「……まぁ、そんなとこ」
「おめかししてる」
🐈⬛は大学に入ってから、誰かと交際するようになった。バイトも部活もないのに、帰宅が遅くなる日が増えたのを🐈だって知っている。似合わないのに先月に発売された雑誌に載っていたような服を偶に着るようになったのは、きっとその顔も名前も知りたいとも思わない誰かのせいだ。
「おめかししてる」
🐈⬛は大学に入ってから、誰かと交際するようになった。バイトも部活もないのに、帰宅が遅くなる日が増えたのを🐈だって知っている。似合わないのに先月に発売された雑誌に載っていたような服を偶に着るようになったのは、きっとその顔も名前も知りたいとも思わない誰かのせいだ。