SAKURA
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SAKURA
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花井の人です。成人済。字書き。稀代のハピエン厨✌
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DT×DTの宮トガ
DTじゃないと思われて言い出せなかったトがなんとか頑張ろうとするけど全然うまくできなくて、宮にもしかして慣れてない？とバレる話。Xにもあげたけどこっちにも
　トガシは激怒した。必ず、来たる初夜を成功させねばならぬと決意した。トガシにはセックスがわからぬ。トガシは、童貞である。筋トレをし、とにかく毎日愚直に走ってきた。けれども周囲からはなぜかそういったことに手馴れているように思われていた────などとふざけている場合ではない。トガシは他ならぬ自分自身の悪癖に激怒していた。 「なんっで本当のこと言えないんだよ俺は……」 　シャワーのお湯に打たれながら、トガシは大きくため息を吐いた。 　トガシは、童貞である。交際経験がないわけではないがどの人とも長続きせず、結局セックスには至らずに別れていた。しかしなぜか周囲からは早々に童貞を捨てたと思われていて、わざわざ否定することでもないから曖昧に誤魔化して生きてきた。 　トガシ自身、経験がないことを特別気にしていたわけではなかったけれど、先日、新しく恋人ができた。小宮である。そして、小宮も童貞だった。 「先に言っておきたいんだけど、僕童貞で……一応、あの、調べたりはしたんだけど、もし変なこととか、嫌なことがあったらすぐ教えてほしい」 　そして小宮は誠実だった。付き合って一か月、初めてそういう雰囲気になった今夜、流れに身を任せようとしていたトガシに小宮はそう前置いた。その口振りから、小宮はトガシに経験があると思っているようだった。そしてトガシはつい、こう答えてしまった。 「うん、俺に任せてよ」 　大罪である。このとき、「俺も童貞だから、二人でゆっくりやっていこう」とトガシも誠実に答えればよかったのだ。そうすれば、こうやってシャワーのお湯にただ打たれながらうなだれることもなかったのに。 「じゃあ……よろしくお願いします」 「あ、うん。こちらこそ……」 　ベッドで小宮と向かい合ってぺこ、ぺこと頭を下げ合う。スタート合ってるか、これ？と早速トガシの頭に疑問が浮かんだが、とにかく心臓の音がうるさかった。とりあえず手でも握るか、とトガシは震えそうになる手で、なんとか平然を装いつつ小宮の手をそっと握ると、小宮も怖々と握り返してくれてほっとする。指先を擦り合わせていると、くっと弱く引き寄せられた。されるがまま小宮に身体を寄せると、ふっと息が混じり合うくらい近くに顔があって、トガシはええいままよと小宮の唇に噛みついた。その瞬間、勢いあまって歯ががちんと当たって、かっと顔が熱くなる。 「っごめ……勢いつけすぎた」 「ううん、平気」 　身体中の血液が沸騰しているみたいに、どっどっという心音がうるさい。小宮のほうが落ち着いているような気さえしてくる。自分だけがこんなにテンパっているのではと恥ずかしくなって、トガシは小宮の顔が見られなかった。 　今度は歯が当たらないように、ともう一度慎重に唇を寄せた。ふに、と唇が触れて、そのまま何度か繰り返しているとだんだんよくわからなくなってくる。小宮とキスするのは初めてではないけれど、"前戯"としてのキスは初めてで、このままでいいのか？と不安に思った。その瞬間、その不安を読んだかのように小宮の舌がおずおずとトガシの唇を舐めた。ひく、と身体が揺れたのを気取られないよう、トガシも応えるように舌を差し出す。お互いの舌先がざらりと触れ合って、背中が震えた。 「ん……」 　ふ、ふ、と必死に息をしながら舌を絡め合わせていると、小宮の手がトガシの後頭部に回ってぐっと抱き寄せられた。胸が触れ合って、二人分の鼓動が混ざる。緊張してるのバレる、と一瞬脳裏を過ぎったがすぐそれどころじゃなくなって、トガシも小宮の横髪に手を 差し入れながら一段と深く口づけた。お互い全然制御できなくて、またがち、がちんと歯が何度も当たったが、トガシも小宮もやめなかった。 　どのくらいそうしていたか、だんだん舌の付け根が疲れてきて、トガシはそっと小宮の肩を押して唇を離した。伸びた唾液が小宮の顎に垂れる。トガシがふっふっと肩で息をしながらその唾液を舐め取ると、ざり、と髭の感触が舌に乗って頭がぼうっとした。 「トガシくん」 　舌足らずに名前を呼ばれて、そこでようやく小宮と目が合った。揺蕩う瞳の奥に、情欲がちらつく。その表情にトガシは思わずごくりと喉を鳴らした。多分、自分も今同じような顔をしている。 「こみや、くん」 　名前を呼んで、どちらからともなく腕を伸ばした。お互い背中に腕を回してぎゅうと抱きしめ合うと、また二人の鼓動が混ざり合って、うるさかった。小宮も同じくらい緊張して、興奮していると思うと少し安心する。肩口に顎を預けてお互いの体温を感じていると、小宮がおずおずとトガシの背中を撫でた。 「あの、トガシくん」 「うん？」 「僕の勘違いだったら、ごめんなんだけど……」 　トガシくんも、あんまり慣れてない？ 　ぎくり、と身体が強ばるのが自分でもわかった。こんなの、取り繕う前に白状しているようなものだった。 　トガシはそっと身体を離して、小宮の胸に額を預けた。 「……あの、ごめん。嘘つくつもりはなかったんだけど……実は俺も、童貞で……」 　すみません、と消え入るような語尾でトガシは謝罪した。こんなことなら最初から言っておけばよかったのだ。ぐり、と甘えるように額を擦りつけると、小宮の手がトガシの髪をそっと撫でた。トガシが恐る恐る 顔を上げると、こちらをじっと見つめる小宮と目が合う。その口元が小さく綻んでいて、トガシは唇を尖らせた。 「笑うなよ」 「ごめん、うれしくて」 「うれしいの」 「うれしいよ」 　じゃあいいか、と自分勝手なことを思いながら、トガシはもう一度小宮に抱きついた。耳の裏に鼻を埋め、小宮の匂いを吸う。くすぐったい、と身体を揺らす小宮の耳をかじると、小宮が「わっ」と小さく声を上げたのでトガシはふはっと息を吐くようにして笑った。 「童貞同士、ゆっくりやろう」 　トガシが開き直ってそう言うと、小宮も小さく笑って「そうだね」と言った。
November 27, 2025 at 1:39 PM
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今日行ったとこおいしかったな〜お酒はチョト高いが他にも美味そうなのたくさんあったからまた行こう　今日は現金が心許なくてすぐ切り上げたから……
November 20, 2025 at 2:34 PM
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今書いてる破局して復縁する宮トガの、ト引退後のコ宮世陸出場シーン　息切れしながら書いてた　なんで？
November 18, 2025 at 1:52 PM
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November 18, 2025 at 12:39 PM
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ろささ？
🎋誕に向けて書いてる話、着地も終わる気配もみえない😂ので尻叩きのつもりであげておく
October 19, 2025 at 9:44 AM
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準備できた〜！いつもこんなに荷物多かったっけ……絶対なんか忘れてる気するし……
September 20, 2025 at 11:41 AM
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自引きできてまじでよかった〜〜〜〜〜〜交換できんかったらどうしよう…という不安ヤバいので……………
September 14, 2025 at 10:51 AM
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で、できた！！！たぶん！！！
August 13, 2025 at 1:20 AM
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オア〜〜〜〜〜今日はおわり……あとちょっとお花つけたい……………
August 12, 2025 at 2:49 PM
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ハアハアハアハア
August 12, 2025 at 1:42 PM
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心折れそう
August 12, 2025 at 12:08 PM
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仕分けに2時間くらいかかった
August 12, 2025 at 8:20 AM
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やるで
August 12, 2025 at 8:19 AM
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新しいヘッドドレスにウキウキのヌ
July 29, 2025 at 10:51 AM
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ヘアアイロンで力技接着したけど歪んで浮いちゃう……とりあえず重しのせてみる
July 28, 2025 at 5:27 AM
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ここから……どうしたら……！？
July 27, 2025 at 9:05 AM
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(2/2)
後日談も書きたい気持ちは、ある！気力次第
　心の底から驚かれて簓も急に恥ずかしくなってきた。言うんじゃなかった。 「あれ、ほなこないだのミュージャンは……？」 「はっ！？それまだ信じとったん！？あれはほんまになんもないって！ただの後輩！うちが好きなんはずっと盧笙だけ！」 「俺だけ……」 「……おん」 「そうか……」 「恥ずいからそんなしみじみ噛みしめるんやめて」 　顔が熱い。耳まで赤くなっていそうで、簓は少しだけ俯いた。 「そんな前から好きやったん、全然気づかんかった」 「そら隠しとったもん。全然脈ないと思って……」 　正直、盧笙以外の周囲には割とバレバレだったとは思うが、やっぱりというかなんというか、当の本人はまったく気づいていなかったらしい。改めて、今こうして手をつないでいることが奇跡だなと思う。つないだ手からじんわり伝わってくる盧笙の体温をこっそりと噛みしめていると、そっと顔を覗き込まれた。その顔の近さにどっと心臓が高鳴る。 「簓」 「うん？」 「キスしてもええか」 　その瞬間、簓は盧笙のまっすぐな瞳に吸い込まれるように顔を寄せていた。唇が触れて、盧笙の手が応えるように簓の後ろ髪をくしゃりと優しく乱した。数秒唇を触れ合わせて、ふとお互い顔を離す。それから簓はおもむろに、盧笙の頬に手を添えた。意外と柔らかいその頬に、そういえば顔に触れる機会はほとんどなかったなと思う。盧笙は簓の手を受け入れるように、顔を少しだけ傾けた。そうか、これからは顔に触れることも許してもらえるのか、と思うとうれしくなった。 　盧笙の目尻に愛が滲んでいる。多分、自分も同じような顔をしているのだろうなと思った。 「ありがとうな。ずっと好きでおってくれて」 「ふは、ほんまやで。盧笙そんな感じやから、全然期待とかしてなかったけど……いざこうやって触れられると、やっぱりうれしいな」 　簓がそう言い終わらないうちに、盧笙は背中に腕を回してぎゅうと簓のことを抱きしめた。「ささら」と掠れた声で呼ばれて、じわりと目が熱くなるのを誤魔化すように簓も抱きしめ返した。身体の前面がすべて触れ合う。どっどっと盧笙の力強い心音が響いてきて、簓はその腕の中に身を預けながら、そっと目を閉じたのだった。 　これでめでたしめでたし、盧笙と簓はついにお互いを恋人の座に据えることとなった。そういえば、この日上下揃えてきた簓の下着は結局盧笙に披露することはなかったが────後日すったもんだあったのは、また別のお話で。
June 3, 2025 at 8:59 AM
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ろささ♀『自分事恋愛』⑤(1/2)
一旦おわり！あとでぴくしぶにまとめます👊
「麦茶でええか？ビールもあるけど……」 「お茶でええよ。ありがとお」 　「先座っといて」と促されるまま、居間で簓の定位置になりつつある座卓の隣に腰を下ろした。勝手知ったる盧笙の家、とはいえさすがの簓も緊張していた。 　ラジオでは「恋愛くらい普通にするやろ」などと宣ったが、簓の恋愛なんてたかが知れている。なんせ思い人の枠にはずっと盧笙が居座っていたから、悪く思っていない人から誘われて食事デートに行っても友だち感覚が抜けず、ガードが固いとか隙がないとか言われてそこから進展しなかった。イケブクロ時代は生きるのに必死でそれどころじゃなかったし、そもそも隙がないってなんだ？たかだか一回か二回食事に行った相手に隙を見せるほうがどうかしている。 　まあ要は簓はあんな大口を叩いたわりには恋愛に不慣れで、本当に好きな人とどうこうなった経験がなかったから、平然を装いつつも身体の内側ではばっくばっくと心臓が大暴れしていた。 「ん」 「あ、ありがとう」 　麦茶の入ったグラスが目の前に置かれ、簓は礼を言いつつ緊張を誤魔化すように麦茶を口に含んだ。今やもう口慣れた盧笙の家の麦茶。ティーバッグを一つしか使わずに二リットルくらい煮出すから、ちょっと薄味なのがまた家の麦茶っぽさを引き立てている。 　簓の斜め前に腰を下ろした盧笙も、ぐっと麦茶を呷ってあっという間に空にしていた。緊張しているのはお互いさまか。どう話を切り出したものか簓が迷っていると、盧笙が拳をぐっと握りしめたのが見えた。 「さ、簓」 「は、はい」 「今日は、ありがとう」 　楽しかった、とクソ真面目に言う盧笙がおかしくて、二人してなんでこんな緊張してんねん、と我に返った。 少しだけ肩の力が抜ける。 「うん……うちも楽しかった！改めて水族館行くのめっちゃ久しぶりやったし……また二人で行こな」 　簓がそう言って見上げると、盧笙は少しだけほっとしたように表情を緩めた。 「俺……簓のことならなんでも知ってるつもりでおって……せやから、こないだのラジオ聞いたときびっくりしてん。当たり前やけど、簓になんか言えるような立場じゃないんやって今さら気づいたというか……」 　たしかに盧笙と簓にはお互いが特別だという意識はあったけれど、関係性に名前をつけようとすると親友とか相方とか、結局他人の枠を出ない関係に過ぎなかった。 「手、握ってもいいか」 　じっと目をまっすぐに見つめられて、簓はなんとか頷いた。盧笙の大きな手が簓の手をそっと握る。少しだけ乾燥してかさついた盧笙の親指が、簓の手の甲を撫でていく。これまでも、手を繋いだり肩を組んだりはよくしていたけれど、友人の枠を出ない接触でしかなかった。でも、今はそれとは全然違う。大切なものを慈しむような優しい触れ方に、なぜだか涙が出そうになった。 　控えめに指先を握る盧笙の手に、指のあわいを合わせる。指を絡めてきゅっと軽く握ると、驚いたように握り返された。 「簓」 　盧笙の真摯な声が、簓の名前を呼ぶ。 「俺、簓のこと、自分事にしたいねん」 「……うん」 「だから、俺と……け、結婚を前提に、付き合ってくれへんか……！」 「……へっ！？け、結婚……！？」 　今日びその告白あんま聞かんくない！？ 　思ってもみなかった単語にぎょっと顔を上げたが、 盧笙は大真面目な顔をして簓を見つめていた。 「別に結婚は今すぐってつもりやないで、簓の仕事のタイミングもあるやろうし……でも俺は、結婚するなら簓がええと思ってる、し……簓にも、そう思っててほしい」 　簓が恋人つなぎにした手を、ぎゅうと握られる。そうか、盧笙の中では恋人の向こう側に当たり前に簓との結婚が見えているんだな、と今さら思い知らされて、胸がいっぱいになった。 　簓は育ってきた家庭環境のこともあって、なんとなく自分は結婚には縁がないんだろうなとずっと思ってきた。というか今も思っている。盧笙との結婚を現実のものとして考えられるかと言われれば正直すぐには頷けないが、盧笙はきっと、そんな簓にも真摯に向き合ってくれて、信じさせてくれるんだろうなと素直に思えた。 「うん、ありがとう……謹んで、お受けいたしますゥ……」 　真面目に返そうと思ったものの、どうしても語尾に照れが滲んでしまった。手を握ったまま頭を下げると、指を絡めていた手をぎゅっと握り直される。顔を上げると、頬を上気させた盧笙が心底ほっとした顔をしていた。簓が断るわけがないのに、と思って、照れ隠しもこめてつないだ手を軽く上下にぶんぶん振った。 「なんか勘違いしてるかもしれんけど……うちはずっと前から盧笙のこと好きやったから、断るなんて選択肢最初からないんやで」 　だから安心してや、と言うつもりでちらりと盧笙の顔を上目遣いに見つめると、盧笙は目を丸くして驚いていた。 「え、いつから」 「いつって……そんなん、コンビ組んどったときからやけど……」 「えっ、そ、そんな前から……？」
June 3, 2025 at 8:59 AM
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ろささ♀『自分事恋愛』④
最初4行で終わらせていたぬいぐるみのくだりをなぜか掘り下げた。まだ終わらんかった　ドウシテ
　カフェを出た後は一通り館内を回って、最後にお土産屋に入った。近場だし改まってお土産を買うような場所でもないが、つまみになるようなものがあれば零に買って帰るかと話しつつ店内を冷やかす。なにかに惹かれたのか吸い込まれるように進んでいく盧笙の背中を見送りつつ、手持ち無沙汰になった簓は近くに並べられていたクッキーの箱をなんとなく手に取ってみた。 　水族館の生き物がプリントされたクッキーにラングドシャ、チョコクランチ。まあどこも同じような感じやな。鮭とばとかないんかな？さきいかとか……いやでもデートしてきたからこれお土産♡って零に渡したとして、どんな顔すんねやろ。うちが盧笙のことそういう意味で好きなんはバレてそうやけど、零のことやし「やっとか～おめでたいねえ」とかなんとか言いそう。 「報告がてらやっぱなんか買うてくか……」 　でも、まだ付き合うって決まったわけやないし……いや、いやいやいや、ここまできて付き合わんとか、あるか！？普通ない、普通ないけど、盧笙の場合は完全に否定できひんっていうのが盧笙たるところで……いやでも、あんな顔で見といてェ……？その場合はもうなんらかの罪に問われていいやろさすがに……っていうか今から飲みに行ったとして、そこで付き合いましょ～ってなるんか？いや、さすがに人の目があるところではないか……？そうなると、その後盧笙の家に……えっ……盧笙の家で二人きり……いや、なにも珍しいことではないし、妥当な流れではあるんやけど、ちょっと急にそう改まられるとこっちもオッとなるっていうか……一応、下着は上下揃えてきたけど……いや、別にそういうつもりやなくて、備えあれば憂いなしというか……いやほんまに、まじで全然そんなんじゃないんやけど…… 「……ささら、簓！」 「はへぇ！？」 　気づけば盧笙がすぐ近くに立っていて、簓は慌てて手にしていたクッキーの箱を元に戻した。 「そのクッキー買うんか？」 「いや、見てただけ」 「な、簓。ちょおこれ持ってみ」 「うん？」 　はい、と手渡されたものを反射的に受け取る。見下ろすと、もちもちとした肌触りのアザラシのぬいぐるみだった。 「ぬいぐるみ？かわいいやん」 　もち、もち、と頭を揉むと、盧笙は目を細めて笑った。 「簓に似とるなと思って」 「ええ？そうか？」 　ほら、とぬいぐるみを持つ手を持ち上げられて、顔の横にぬいぐるみを並べられる。確かにぬいぐるみの顔は線ばかりで表現されていて、簓がグッズ化されたときの表情と似ていた。ぬいぐるみの表情に寄せるように笑ってみせると、盧笙は「ほら、やっぱりそっくりやん」とまたうれしそうに笑った。 　その笑顔を見ているとなんだかいろいろ考え込んでいたのが馬鹿みたいに思えて、簓は肩の力を抜いた。 「なるようにしかならんよなあ」 「ん？」 「なんでもない」 　ぎゅ、とぬいぐるみを軽く抱きしめてから元あった場所に返そうと店内を見回していると、盧笙にするりと奪い取られた。代わりに返してくれるのかと思いきや、盧笙はそのぬいぐるみを大事そうに小脇に抱え、こちらに向き直った。 「こいつ買うわ」 「えっ」 「なんかお前に似てるな～と思ったらかわいくなってきたし」 「お、おお……ぬいぐるみとか買うんやな、盧笙」 「初デートやし、思い出に残るもんがあったほうが記念になってええやろ」 　小脇にアザラシのぬいぐるみを抱えながらはにかむ盧笙に、簓は糸目をさらに糸目にして頷いた。 「せやな……」 　前言撤回。もうはよはっきりさせてくれ！！ 　その後は水族館を出て、いつもは行かないような小洒落たバルに入った。盧笙がわざわざ調べてくれていたお店だ。カウンター席の端っこで肩が触れ合うような距離感で座るのは新鮮で、静かめの店内を気にして小声で話す盧笙の声が、酒が入るにつれ少しずつ大きくなっていくのが愛おしかった。 　話す盧笙の横顔をじっくり見つめるのなんていつぶりだろう。漫才をしていた頃を思い出して、ぎゅっと胸が苦しくなった。でも、関係が変わっても今また隣にこうしていられる。それなら、これからまた関係が変わっても、ずっと隣にいられるのかも。 　いつもならそろそろ二軒目に、という頃合いになって、簓はそっと隣り合う盧笙に腕をぴったりとくっつけた。気がついた盧笙が見下ろしてくるその視線を受け止める。 「な、この後、盧笙んち行ってもいい？」 「ああ、うん、ええけど……せっかくやのにうちで飲み直しでええんか？」 　気遣わしげな盧笙の腕に、そっと手のひらを置いた。 「飲み直しっていうより……早く二人で話したいって言うたら、引く？」 　手のひらの下で、盧笙の腕がぐっと強張ったのがわかった。 「……引かん」 　ほなもう行こか、と盧笙が簓の手に一瞬だけ触れて 立ち上がって、簓も頷きながら腰を上げた。その瞬間、どっと心臓が早鐘を打ち始めて、ああ緊張していたんだなと自覚した。急速に喉が渇いて、少しだけ残っていたお冷のグラスを慌てて空にしてから盧笙の後を追った。
May 25, 2025 at 9:29 AM
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ろささ♀『自分事恋愛』③
お試しデート🐠お試しというか……の二人。まだつづく。
　"デート"当日。 　オサカナ鑑賞所──もとい水族館に向かう電車に簓は一人で乗っていた。こうして改まって盧笙と待ち合わせて出かけるなんていつぶりだろう。柄にもなく浮かれてしまっているなと自覚して、ふうと息をついた。 　休日の午前中。観光地に向かう地下鉄の車内はそこそこ混雑していた。日頃から電車移動をしていると言うと意外と驚かれるが、芸人なんてよほどの大御所を除けばそんなものである。扉横の隙間に身を寄せつつ、窓に映る自分の姿を確認する。 　"わかってるか、デートやからな"と盧笙に念を押されたのもあって、さすがに普段どおりのパーカーにデニムだと色気がなさすぎるかと逡巡した結果、レギュラー番組についているスタイリストに恥を忍んで相談した。普段は自分の衣装を着ることが多いから番組ではあまり世話になることはないが、「ちょっとデートで」と言うと目を輝かせて見繕ってくれた。 　目立つ髪色を隠すためのバケットハットを目深に被りながら、盧笙の前で着飾った格好をするのは少し気恥ずかしいなと思う。これはいつものドンチャン騒ぎではなく"デート"だと思い知らされるから。 　待ち合わせ場所に向かえば、そこにはすでに盧笙が待っていた。遠目からでもすぐに目を惹く体躯、見たことのない服を着ているから、盧笙もデートだからと張り切ってくれたんだろうか。 「うお～……！やっぱ今さら恥ずすぎる……！」 　ぐぎぎ、と身を捩っていると、それに気がついた盧笙がこちらに駆け寄ってきた。 「お前はなにをぐねぐねしとんねん」 「いや、なんも～……待った？」 「……全然待ってへん。俺も今ついたとこ」 　妙にかっこつけて盧笙が言うから、簓は思わず吹き出した。 「ふはっ！絶対もっと前からおったやん！ほんまは？」 「……20分前にはついとった」 「早すぎやろ！うはは！」 「笑いすぎや」 　一頻り笑っていると、ふと盧笙が簓の姿をじっと見つめた。首を傾げて盧笙を見上げれば、ふっと目を細めて笑われる。 「なんや、いつもと違う格好やな」 「お、おん。一応まあ、デートやから……」 「似合ってる」 　やたらに柔らかい声で言われて、どっと心臓が跳ねた。思わずバケットハットを深く被り直す。 「うん……盧笙も、その服ええやん」 「お、おお、そうか？」 　うれしいわ、と照れたように笑う盧笙に顔が真っ赤になりそうだった。なんやこれ！耐えられへん！ 「～～～～ッ、もうはよ行こ！混むで！」 「あ、あんま先行くなって！」 　チケット持ってんの俺や！と追いかけてくる盧笙の声を背中で聞きながら、簓はどうにかいつもどおりの自分を取り戻そうとこっそりと深呼吸を繰り返した。 　水族館の中に入ってからは、思っていたよりもいつもどおりに振る舞うことができた。人の目もあるし、静かで薄暗い空間に気持ちも落ち着く。盧笙と二人で出かけて遊ぶこと自体はそう珍しくなかったから、最初こそ緊張ぎみだった盧笙も順路を進むにつれいつもどおりのテンションを取り戻していった。 　ある程度見て回って混雑する前にと館内のカフェに入ると、運よく港が見える窓側の席を確保できた。小腹が空いたという盧笙がチンアナゴドッグとコーヒーを頼んで、簓はせっかくだしとジンベエソフトが乗ったソーダフロートを頼んだ。二人で分け合いつつあーだこーだ言い合っていると、カップルのお手本のよう なことをしているなと少し我に返っておもしろくなった。 　自分も盧笙も普段と大して変わらないのに、デートだと思うだけでなんだか倍増しでキラキラして見える気がする。さすがに調子よすぎか。 　そんなことを思いつつ盧笙の横顔をじっと見つめていると、なにを勘違いしたのかチンアナゴドッグを差し出してきた。 「ん、まだ食うか？」 「……食う」 　せっかくなので、差し出されたまま、ア、と口を開けてかぶりつく。思いのほかいっぱいになってしまった口を動かしつつ、ジューシーなソーセージとパンを味わっていると隣からの視線が気になった。ちら、とその視線の元を窺うと、盧笙が頬づえをついてこちらをじっと見つめていた。口元を汚したかと思って指で軽く拭ってみるが、そういうわけでもないらしい。 「……そんなじっくり見つめられたら、簓さん穴あいてまうで 」 「あ？あ、すまん」 「なんか顔についとる？」 「そういうわけやないけど……なんか、変な感じやなと思って」 「変？」 「いや、これまでも簓と二人で出かけることなんかいくらでもあったし、こうやって飯分けたりとか普通にしとったけど、その、デートやと思うだけで、こうも違って見えるんかって……」 　デート、だけ照れたように妙に小声で言うから、簓も釣られて照れた。同じことを考えていただけに恥ずかしすぎる。 「うちも、同じこと思ってた、とか言うて～……なはは……」 　はは、と簓の乾いた笑いと、気恥ずかしい沈黙が落ちた。 せっかくいつもどおりを取り戻していたのに、またむずがゆくなる空気に戻ってしまった。簓は上気する頬に手を当てながら、わざとらしく明るい声を上げた。 「このチンアナゴドッグさ、ビール飲みたならん？」 「……わかる。ハイボールもええな」 「このあと一通り見たらさ、ちょっと早めにどっか飲みにいかん？」 　上目遣いで盧笙の顔を覗き込めば、盧笙は少しだけ驚いたように目を見開いた。それから、優しく目を細める。 「おん、行こか」 　その声がいつもどおりの優しい声で、簓もうれしくなってンフフと声が漏れた。 　ずっと、盧笙とは相方として親友として一緒に生きていければそれでいいと思っていた。それで十分、これ以上の贅沢を望んだらバチが当たる。もし、もし万が一、盧笙が家庭を持つようなことがあったら──と考えたことがないわけでもなかったが、彼女がいる気配もないしまあもうしばらくは大丈夫だろうと見ない振りをして、不安を先延ばしにしてきた。 　いざ、自分自身が盧笙と恋人になる、ということを意識してみると、途端に欲張りになってしまうのがおもしろかった。相方も親友も恋人も、本当は全部ほしい。関係性に名前がつくと、安心する。この先も一緒に生きていく約束がほしい。 　ああ、うちってほんまに、盧笙のこと好きなんやなあ。 　これまでの人生で嫌というほど思い知らされたことを、盧笙の笑顔を見てまた思い知らされた。
May 20, 2025 at 9:25 AM
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ろささ♀『自分事恋愛』②
🎋目線。つづいた✌撮られたあとに堂々とデートの約束すなよとぬるさらファンのおれは思っているが、この二人はもう一緒にいすぎて記者も「なんやツツジモリか…」となっている
"俺、簓の恋愛が他人事なん、嫌みたいやわ" 　告白かと思った。ってかこの流れで告白じゃないことあるか？あるんやろうな。なんていったって盧笙やし。 　タバコ、と一瞬スーツのポケットに手をやりかけて、簓ははっと我に返った。それから気を取り直すように楽屋に用意されていた飴に手を伸ばす。ミルク味、いちご味、レモン味、プリン味……自然と脳内で盧笙が固めプリンを食べてご満悦な表情を浮かべている姿が紐づいて、その姿を打ち消すようにぱたぱたと手を振った。 　簓は、ずっと盧笙のことが好きだった。もちろんそういう意味も込みで。コンビを組んでいるときは漫才の邪魔になると思って、恋愛感情はひた隠しにしていた。なにより盧笙が簓のことをそういう目で見ていないのはよくわかっていたから、気持ちを告げるつもりもなかったのだ。 　再会してからも簓の気持ちは変わらなかったが、ときどき盧笙の優しい視線にどきりとさせられることがあった。妙に簓を自分のものと思っている節もあって、もしかして……と期待したことも一瞬だけあったが、盧笙のそれはヤンキーが地元仲間を家族と思うようなそれなのだと早々に悟った。いくらなんでも女として見られてなさすぎる。 　というわけで、つい昨日まで簓のほうも特に期待などもせず過ごしていたわけだが、ここにきての急展開。晴天の霹靂とはまさにこのこと。盧笙自身ですら驚いた顔をしていたし。 　飴をころころと口の中で転がしながら昨日のやりとりを反芻していると、トントントンと楽屋の扉がノックされた。 「はーい」 「あ、失礼します」 　開いた扉がひょこっと顔を出したのは、件の年下ミュージシャン──カズトだった。 「簓さんまじすみませんでした～！」 　手を合わせて謝ってくるカズトにひらひらと手を振る。 「気にせんでええよお。うちもごめんなあ、完ッ全に油断してたわ……そっちのほうがイメージ的にあれやったんちゃう？」 「いや、俺は別にそのへん自由にやってるし公言もしてるんで全然ダメージゼロすね」 　へらりと笑うカズトに「ほなよかったわ」と簓もほっとして笑った。 　カズトとは本当に先輩後輩の関係でしかなく、イケブクロにいた頃よく年下とつるんでいたからその感覚で接してしまっていた。カズトも純粋に簓のラップに憧れと敬意を示してくれて、大型犬のように慕われると無下に扱うわけにもいかない。 「あ、ってかこれでこないだ話してたのなしになるとか、なしっすからね！？」 「ああ、曲作るって話な。マネージャーにも共有してあるし大丈夫大丈夫」 「まじ、気合い入ってるんで。楽しみにしててください！」 　ぐっと拳を握るカズトに、頼むでえと笑いかけ、ふと盧笙のことが気になった。カズトとの詳しい話はしていないけれど、事前に話しておいたほうがいいんだろうか。 「あ、ってかウィズダムとその後大丈夫でした？」 「っごほ、あっぶな、飴ちゃん飲み込むとこやった……！」 「だはは！動揺しすぎでしょ」 「う、うるさいなあ！あと盧笙とはほんま、なんもないから！」 「またまた～」 　なんもないことは、ない。めちゃくちゃ嘘だった。 　結局あの後、「うちの恋愛が、自分事やったら、盧笙はうれしいん……？」と言った簓に、盧笙はなぜかしみじみと頷いていた。じゃあめでたしめでたし、恋人同士になれたのかというとそうは問屋が卸さない。 「正直、今まで簓のことそんな風に見たことなかったから……」 「まあ、そやろなあ」 「だから、一旦俺とそういうつもりで、デートしてくれ」 「でーと」 　盧笙から初めて聞く単語に、どっと心臓が跳ねた。まさか、盧笙からデートに誘われる瞬間が訪れるなんて、つい先ほどまでは考えもしなかった。うれしくて、思わず抱えた膝が浮きそうになる。 「デートって、なにするん？」 「なにしよか。簓、どっか行きたいとこあるか」 「……オサカナ鑑賞所？」 「オサカナ……って懐かしいなそれ、ってかいつもいつも紛らわしい言い方すんな」 「ええやん！盧笙とまた水族館行きたい」 「じゃあ、次の休みの日待ち合わせて一緒に行くか」 「おん！楽しみやなあ」 　ウキウキとスケジュールアプリを開いていると、その手首をそっと握られてぱっと盧笙を見上げた。 「わかってるか、デートやからな」 「わ、かってる、わかってる」 　うんうんと頷くと、盧笙の手は納得したようにそっと離れていった。盧笙の手のひらの熱さが残る手首を、簓はそっと指でなぞる。 　そんなん、うちのほうがもっとずっと昔から盧笙のこと好きやったのに、わかってるに決まってるやろドアホ。
May 14, 2025 at 6:17 AM
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ろささ♀(2/2)
気が向けば🎋視点につづく。
「今日氷筋さんと番組一緒でな、久しぶりやったから、ほらあの、氷筋さんが最近気に入ってるお店のお菓子差し入れしてさあ……」 　うれしそうに話す簓の、いつもは目につかない部分がやけに目についた。 　まばたきする度に揺れるまつげ、頬の丸み、跳ねたえりあし、グラスを持つ指の細さ、膝を抱えて座るつま先のころんと丸い爪。 　今までそんなところ、気にしたことがなかったのに。 　"おもろない"と思っているからなのか、簓の口から件の男性ミュージシャンの話は一切出なかった。それとも、"無関係"の盧笙には言う必要がないから？どちらにせよ、もやもやする。 「……なあ簓」 「うん？」 「ラジオ、聞いたんやけど」 　盧笙がそう切り出すと、簓は少しだけ驚いたように目を丸くした。それから照れるように笑う。 「えっ盧笙聞いとったん？なんや、恥ずかしいな」 「その……歌手の人とは、ほんまになんもないん」 「……盧笙まで信じてんの？まじでなんもないのになあ」 　一瞬の間と、へらりと笑う簓の笑顔に違和感を覚える。 「盧笙だって職場の人と話盛り上がったら二次会行ったりするやろ？ほんまそのノリでしかないねんて。あんな風に書かれるんやってちょっとビビったくらいやねんから」 「……さすがの俺かて、異性と二人きりで二次会なんか行かへんわ。油断してたんちゃうん」 　思いのほか固い声が出て驚いた。簓も驚いたように盧笙を見上げている。 「え、なに、どしたん。盧笙なんか怒っとる？」 　あれ、俺なんでこんなイラついてんねん。別に、簓の 彼氏でもなんでもないし、そんな資格ないのに。 「いや、怒っとるわけじゃなくて……」 「まー油断はしとったかも！あんまり自分がそういう対象なんやって考えてへんかったから……ごめんごめん！心配してくれてるんやんな？一応事務所からは後ろめたいことなかったら好きにしてええって言われてるし、これからはもうちょっと油断せんように気ぃつけるから……」 　そう笑って話す簓に、盧笙は一つ気がついたことがあった。簓の恋愛話を"他人事"にされるのが嫌だということだ。 「一個、聞きたいんやけど」 「お、おん。なによ」 「簓、今彼氏おるんか」 「お、おらんけど」 「好きな人は？」 「ちょ、待って待って！なんでそんなこと聞くん」 　簓が慌てたように手を振る、その細い手首をゆるく掴んだ。ぎょっと盧笙を見上げる簓をじっと見つめる。 「今気づいたんやけど」 「はあ」 「俺、簓の恋愛が他人事なん、嫌みたいやわ」 「……へぇっ！？」 　それって、どういう、としどろもどろになる簓を見て、こういう簓は珍しいなと思う。いつも何事も快活に笑い飛ばしている簓が、目尻の血色をじゅわりとよくさせて、耳の先までうっすらと赤く染まっている。かわいい。 　かわいい？ 　盧笙は愕然とした。今まで簓をそんな風に見たことがなかったというか、意識したことがなかったから、青天の霹靂も霹靂。それこそ雷に打たれたような。 　自分の気持ちに気がつかないまま、他人事にされてイラつくなんてどうかしている。盧笙は猛省した。ついでに簓の腕をしかと掴んでいることに気がついて、その肌の柔さ、温さが急に鮮明に感じられて、慌ててその腕を離した。 「す、すまん」 「え、ああ、いや……」 　気まずい沈黙が落ちる。どう話したものか、と逡巡していると、簓がちらりとこちらを窺うように見上げてきた。 「あのさ」 「お、おん」 「うちの恋愛が、自分事やったら、盧笙はうれしいん……？」 　その見上げてくる簓のあまりのかわいさに、また雷が落ちた。
May 10, 2025 at 1:28 PM
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ろささ♀『自分事恋愛』(1/2)
🎋♀のことならなんでもわかってる気でいた付き合ってない👨‍🏫が、🎋が撮られたことをきっかけに🎋の恋愛話が他人事なん嫌やなって気がつく話。傲慢ツツジモリモリ。
　新学期が始まって一か月。年度初めの忙しさが少しだけ落ち着いてきて、空から差す日差しに夏を感じ始めた頃。 　教師になってから数年が経ち、経験もそれなりに積んできた。ラップバトルであがり症も少しは落ち着いて、盧笙は至って順風満帆と呼べる人生を送っていた。 　だから、昼休憩に"白膠木簓、年下ミュージシャンと深夜のはしご酒"というネット記事がSNSを流れてきたときも、「はいはい（笑）どうせ打ち上げかなんかやろ（笑）」と余裕綽々の構えだったのだ。 　簓とはもう長い付き合いで、途中会わない期間があったとはいえ、それを乗り越えた絆はそう簡単なことでは壊せない強さを持っていた。恋人同士ではないけれど、簓は頻繁に盧笙の家に押しかけてきていたし、自分たちの間に隠しごとなんてないと思っていたから。 「あいつのことやから、彼氏なんかできたら俺に一番に報告してきそうやしな」 　だから、今回もよくある週刊誌のでっち上げ記事だと思っていたのだ。 『いや、みんな聞きたいか？うちの恋バナとか……別にアイドル♡ってわけでも恋愛禁止ってわけでもないし、恋愛くらい普通にするやろ。いちいち言わんけど！なんでって……そんなリアルなんおもろないやんけ！おもろい話あったらすぐ言うわ』 「……は？」 　がつん、と殴られたような衝撃だった。 　生放送の深夜ラジオ冒頭。「どうせいじられると思うから先言うけど」と前置いた簓の話は、盧笙がまるで聞いたことのない話だった。飲み会は打ち上げでもなんでもなく、知り合いが知り合いを呼び男女数人になった親睦会で（それは合コンちゃうんか？）、以前バラエティで共演したことがあった男性ミュージシャンと 話が盛り上がり、そして二人きりで二次会に行ったのは真実だと言うのだ。盧笙は、簓がその男性ミュージシャンと二人きりで飲みに行くほど仲がいいだなんてまったく知らなかった。だって、簓の口からそのミュージシャンの名前なんて聞いたこともない。 『なんか流れで行きましょか～ってなったから行っただけやで。二度目ましてやったしラップの話とかもっとしたいって言われて……付き合うとかそんなんじゃ全然ないけど、まー……デートになるって言われたら、そうなんかなあって感じ。うちはそんなつもりなかったし、向こうもそんなんちゃうと思うけどな！？一応向こうとも連絡とって、ごめん〜とはお互い言うてたんやけど』 　簓の声はいつもどおり。嘘をついているとも思えなかったが、盧笙は衝撃だった。なにがって、簓のことならなんでも知っていると当たり前に思っていた自分が！ 『ラジオネーム"豚と心中"。"おい盧笙はどうした"、ちょおやめてやめて。盧笙はそういうんじゃないから（笑）』 　心底おかしいと思っていそうな簓の声がぐさりと刺さる。 　ありがとう豚と心中。お前のメールいつもおもろくて好きやで。ほんで俺も同じこと思ったわ。なにが（笑）や。 「おい、俺は？」 　翌日の夜、簓はいつもどおりの顔をして盧笙の家にやってきた。あの生放送のあと、簓とその男性ミュージシャンと、なぜか盧笙の名前がSNSでトレンド入りしていて、その中に並ぶ"三角関係"の文字にも頭を抱えた。 　三角もなにも、まだ線すら結ばれてへんねんけど。反対側の線は知らんけどやな。
May 10, 2025 at 1:28 PM
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ろささ『親しき仲にも』③
おわり。いつもスマートな🎋が👨‍🏫相手にだばだばするの大好き芸人。
May 5, 2025 at 9:20 AM
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古の商業アンソロでノスタルジー感じてる
April 26, 2025 at 12:40 PM