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あたか

@ataka1999.bsky.social

クリスマスっぽい？話をなんとなく考えてたらこの一部分だけできました。続きの概要も考えたんだけど、文にできるのかわからぬ！
ちなみに北の戦い後にスフォに来てる設定。

December 12, 2025 at 3:39 PM

あたか

@ataka1999.bsky.social

続き。こちらもワンクッションおいてます。

December 11, 2025 at 3:34 PM

あたか

@ataka1999.bsky.social

なんかどうにもこうにもしっくりこないけれど久々に書けたので投稿。
あと、ちょいと肌いろな感じの内容のため、念のためセンシティブにしました。

December 11, 2025 at 3:33 PM

あたか

@ataka1999.bsky.social

折本というものをやってみたくて、試しに作ってみた。ちゃんと本の形になって感動している！！！

October 14, 2025 at 7:18 AM

あたか

@ataka1999.bsky.social

「そ、そんなわけないでしょう！　違うわよ、ちょっとかわいいなぁって思っちゃっただけよ！」
「それが揶揄ってるってことなんだよ！」
　暗がりでわかりにくいが、たぶんハーメルの顔は赤らんでいるはずだ。わざとらしいほど声を荒げた様子がそれを証明している。ついでに腕がにゅっと伸びてきて、フルートの両頬を力一杯摘んだ。
「変なこと言ってんのはこの口かぁ！！」
「いたたた！　何すんのよ、離しなさいよ！」
　照れ隠しとはいえ、ぐにぐにと遠慮なく頬を引っ張られ、痛みに口が曲がる。あ、腹が立ってきた。さっきまでの暖かい気持ちはどこへやら、フルートはだんだんと苛ついて、眉間には深く刻む皺が現れた。狼藉を働く腕をがっしり掴み、動きを抑えつける。
「ハーメル！　ちょっといい加減にしなさいよっ！」
　厳しめの声をだして、上目にきっと睨め付ける。たじろんだハーメルが、やっと動きを止めてくれた。まったく痛いったら。落ち着いて文句を述べようと現状を改めて、フルートはわかりやすいほど狼狽えた。
　戯れ合う腕の先に、目をまるくしたハーメルがいた。互いの息遣いも伝わるような距離だ。見開いた目をすっと細ませて、ハーメルは切なそうに金茶の眉を寄せた。頬を力任せに摘んでいた指先が離れる。すぐにまた触れて、今度はするりと撫でられた。壊れ物を扱うみたいに繊細で優しい手つきに、はあ、とフルートの吐息が漏れる。何か訴えるような紅の眼差しは、一等星に負けないくらい輝いて見えた。それに誘われるまま、フルートは瞼を閉じた。がさっと砂利を踏む音がして、すぐに柔らかい唇同士が重なった。どきんどきん、と響く大きな鼓動はどちらの音なのか、フルートにはわからなかった。一つ二つ三つ、と数える間に、名残惜しい感触が離れる。フルートは目を開けて、ぱちぱちと瞬きした。
「ハーメルの顔、真っ赤。」

「う、うるせー。おめーもだよ。」
　暗くて顔色なんてはっきりわからないくせに、二人とも照れ隠しに同じ指摘をした。絡んだ視線をどちらも解こうとはしなかった。たぶん、同じ気持ちだからだ。そばで触れ合っていたいのだ、もっとずっと。その確信が欲しくて、掴んでいた腕を離しながら、おもむろにフルートは尋ねた。
「ねえ。どうしてキス、したの？　……私の誕生日だから？」
　すると、ハーメルは困ったように眉尻を下げながら、微笑んだ。そんな顔、どこで学んだんだろう。いつもの悪戯な少年のような表情と違う、大人びて、フルートを包み込むみたいな、そんなずるくてあったかい笑顔。
「違う。……好きだから、だよ。」
　フルートがきゅっと口を結ぶ。まなじりからはらりと、流星のような涙が一筋流れた。ハーメルはそれを指先で丁寧に拭ってから、もう一度当たり前のように唇に触れてくる。背に回された腕の力の分、強く抱き寄せられた。二度目は遠慮がなくて少々強引だったので、フルートはハーメルの胸を、とん、と強く叩く。しかし、抗議の意味を込めた手首は簡単に捉われ、口付けがますます深くなるばかりだった。
　
　見守るように瞬いていた星のひとつが役目を終えたように、頭上を流れていった。目を閉じたままの二人は、そのことにもう、気づくことはなかった。

July 15, 2025 at 6:11 AM

あたか

@ataka1999.bsky.social

「こそこそやってきた甲斐があっただろ？」
　不意に後ろから声がする。すっかり意識から外していた、連れてきてくれた張本人のハーメルだ。偉ぶってふん反り返っていそうなのに、そんなことはなかった。穏やかで優しげな色の目をして、こちらを見つめている。
「うんうん！　すごいよ、ここ！　スフォルツェンドでこんなにたくさんの星が見れるなんて思わなかったわ。」
「お前がいる南側はいっつも明るいからなー。確かにこんな風には見えねーよな。」
　フルートの部屋が位置してるのは、スフォルツェンドのちょうど南だ。人も建物も多く、国で一番活気のある街並みが広がっている。夜間でもほどほどに明るく、空に星はあっても控えめだ。
　フルートは、かつんとミュールの底を鳴らし、ノコギリの刃みたいな凸凹の壁に近づいた。凹んだ壁は胸の下ほどの高さまでしかなく、より遠くまで辺りを見渡せる。たくさんの星たちが照らすのは、深い森の緑だ。森があるのは知っていても、こんなに広いとは知らなかった。似てないのに似てる。ふと、懐かしい風景を思い出す。
「スタカットみたい。」
「……そうか。」
　風に紛れて消えそうな声が、口からぽろりと溢れる。その小さな呟きをすくってくれたハーメルが、フルートの隣にやってきた。少し動けば、腕と腕が触れてしまうほど近い。その近さに、右半分だけ熱を帯びたようだった。ちらと隣を見れば、ハーメルは目の前の光景にじっと目を奪われている。意識しているのは自分だけか。途端に恥ずかしくなった気持ちを払うように首を振ると、フルートもしばし、瞳に焼き付けるように光景に見入った。

それからしばらく、二人は言葉も交わさずに佇んでいた。聞こえるのは真下に広がる森のざわめきくらいだ。空の星は瞬いて、おしゃべりしているみたいだった。その時、少し遠くの空にひゅんとひとつ、星が流れゆくのが見えた。フルートは咄嗟に指差す。
「あ！　流れ星だ！」
　願い事をと思って指を組むが、一瞬の出来事に追いつくことはできない。あーあ、と残念そうにため息を漏らした。
「ダメね。間に合わなかったわ。」
「そりゃそうだ。あんなスピードじゃ無理だろ。願い事できる奴なんていんのかよ？」
　凹んだ壁に肘をついた姿勢で、ハーメルが呆れように合いの手を入れてくる。フルートはつんとして顔をハーメルから背けた。
「そんな現実的なこと言わないでよ。頑張ればどうにかなるかもしれないじゃない。だってほら！　今日は私の…」
　拗ねたような威勢の良い口調が、だんだんと弱くなる。そうだ、今日はフルートの誕生日なのだ。だからラッキーが起きて叶うかもしれないと、そう続けようとした。けれど、ここまで考えて、フルートははっとした。さっきから、もやもやと霧がかったようにはっきりしない考えに、スポットが当たる。思い当たる節があって、ハーメル、と呼びかけた。
「あ、あのね！　もしかして…もしかしてなんだけど…ね。今日が私の誕生日だから…ここまで連れてきてくれた、の？」
　恐る恐る確認の言葉を投げる。ぴくんと反応したハーメルが、塔の扉と同じくらい錆びついたぎこちない動きで向こうの景色へ目をやった。息も止めたのかと思うくらい、固まって動かないでいる。妙に静かなその背中が、やがて大きな深呼吸に合わせて上下すると、覚悟が決まったのか、手のひらで覆った口元から、

ハーメルの小さな返事が聞こえた。
「そ…そう、だよ。わりぃかよ…。」
　フルートは両手で握り拳を作り、小さく首を左右に振った。
「ううん。悪くない！　そうじゃなくて、ね。…嬉しいの、とっても。」
　この場所に連れ出してくれたのも、少し緊張していたのも、照れ臭そうにしているのも、全部ぜんぶ、自分のためだったのか。それがわかってしまって、フルートは、込み上げてくる気持ちを抑えるのに必死だった。普段から何も言わないハーメルの、時折垣間見える本音とか優しさとか愛情とか、そういった心の端に触れるたび、フルートの胸の中がきゅっとなって、涙がこぼれそうになる。目の前の姿が、ただただ今は、無性に愛しくてたまらなかった。
「ハーメル…」
　名を呼ぶと、ハーメルは気まずそうにおずおずと、こちらを向いた。視線は彷徨って、でも最後はちゃんと、フルートの元に戻ってきてくれた。壁に置かれた左手に自分の左手を重ねる。嬉しさで弛む口元をそのまま、にこりと微笑みに変えた。
「ありがとう。大好き。」
　するりと、素直に気持ちが口をつく。いつもならきっと、意地を張っていた。今は違う。与えてくれたものを、ちゃんと返したかったから。浮かんで溢れる感情を、ただひたすら真っ直ぐ伝えたくなった。
「お、おまえっ！　そういうこと、急に！」
　ぎょっとした表情をして、ハーメルの左手に力が入ったのがわかる。唇がわなないて、何かしら言いたいのに、言葉がつかえて出てこないみたいだ。その姿を見ていたらなんとなく可笑しくなって、フルートは、ふふふと少し笑ってしまった。
「ああ！？　おいこら、笑うんじゃねぇ！！　ふ、フルート、お前ぜったいに揶揄ってんだろ！」

July 15, 2025 at 6:11 AM

あたか

@ataka1999.bsky.social

14日はフルートのお誕生日ですね！
1日遅れですが記念に文章をしたためました。
北の対戦後にスフォルツェンド城でしばらく滞在中の設定です。
後でpixivにも載せる予定です！ #新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/shinsho/index.php

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「流れ星」、「あたか1999」と記載されています。
以下は本文の内容です。

　スフォルツェンド城は、とかく尖塔の多い造りだ。人類の守護国として魔族に狙われてきた歴史があるため、すぐに対処できるよう、監視、攻撃、避難等、様々な役割を持つ城塔を積極的に作ってきたという。ただ、北での戦いに勝利した今、使われなくなった城塔もいくつか出てきた、らしい。
　
　先日、こっくりと船を漕ぎながら右から左に聞き流していた歴史の勉強の知識が、フルートの脳裏に蘇る。ハーメルに促されるまま、こそこそ人目をさけてたどり着いたのも、そんな使われなくなった城塔の一つだ。東側の外れにあって、せり出すバルコニーと一体になったそれを、フルートは物珍しそうに見上げた。
「こんな端っこにも建てていたのねぇ…」
　感心の声を上げながら、フルートは無意識に腕をさすった。ホーホーと遠くでフクロウの鳴く声がする。南側の城下街がある方向とは異なり、木々が多く、人の気配もないこの辺りは、なんとなく不気味な印象を受ける。すると、急にがちゃんと大きめの音が響いて、フルートはびくりと肩をすくめた。
「よし！」
「よし、じゃない！！　ハーメル、何勝手に扉開けてんのよ。立ち入り禁止って書いてあるじゃないの！」
「大丈夫だって。大袈裟だなぁ。鍵は元々壊れてたし、中には何もないから、入っても誰も困りゃしねーって。」
　彼のこの自信満々な態度は、一体どこから湧いてくるのだろうか。禁止事項を堂々と破るなんて、非常識の塊のような奴だ。それに、こんなところ誰かに見つかれば、巡り巡ってパーカスの耳に入り、がっつり怒られることは容易に想像できた。ああ、やはり碌でもなかった。フルートが後悔で頭をいっぱいにしながら、不意に余計な疑問が浮かんできた。
「そういえば、ここが使われてないとか、鍵が壊れてるとか、よく知ってたわね？　ハーメル。」

「えっ…」
「それに、中は何もないとか…。まさかとは思うけど、忍び込んで物色しようとしてたとか、そんなわけないわよね？」
「あー…いやまあ、その…」
　急に額に脂汗が浮かんだと思ったら、ハーメルの目はあからさまに泳ぎ出した。この動揺っぷりは、どう考えても図星としか思えない。
「あ、あ、あんたって人は…ほんっとに信じらんない！！　ちょっと目を離すとすぐにこうやってぇぇ！」
　フルートが声を荒げ始めると、ハーメルは濡羽色のマントを翻し、その身をささっと入り口の中へ隠した。
「そ、そんなことより！　ほれ、お前もさっさと来い。置いてっちまうぞ。」
　入り口の合間から顔だけ出したハーメルが、誤魔化すように呼んでいる。フルートは文句を続けようと口を開きかけるが、ぐるりと周囲を見回すと、しんと静まり返る広めのバルコニーは、だいぶ怪しく薄暗かった。闇に紛れて狭くなった視界のせいで、なんとなくおどろおどろしい雰囲気がする。こんな所に一人で残されるのは、さすがに背筋が寒々しくなっていけない。
「あー！　もう、ちょっと待ってよ！」
　フルートは慌てて駆け寄ると、木の扉をぎいと鳴らした。
　
　
　◇◇◇
　
　
　緩やかな螺旋状の階段を、ハーメルとフルートは順に登って行った。踏み締めるたびにぎしぎし鳴る足元が、この塔が建って随分と経つのだと教えてくるようだった。
「ねえ、ハーメル。」

先頭を行くハーメルを見上げながら、フルートは声をかけた。
「すっかり聞くの忘れてたけど、一体これは何の目的なの？」
　勢いに任せてついてきてしまったが、誰も寄りつかない城の片隅で息を切らし階段を登っている訳を、フルートは知らされてなかった。
「ハーメル？」
　マントがひらひら揺れるように、ハーメルも片手をひらひらさせた。
「来ればわかる。」
　言葉は少ない。いつもと変わらない。なのにこっそり握った拳とか、足音の強さとか、そんな些細な違いに気づいてしまって、フルートは落ち着かなかった。
　││もしかしてハーメル、緊張してる？
　そんな風に思ってしまうと、声かけは憚られた。
　
　やがて、前方の足音が途切れた。フルートが上を向くと、ちょうど踊り場に着いたハーメルが、出口の扉に手をかけていた。フルートも登り切るのを待ち、ハーメルはノブを回した。ぎぎぎと錆びついた金属の擦れる音と共に、視界がぱあっと開ける。
「う、わぁ…」
　扉をくぐって一歩外に出ると、さあっと全身を風が吹き抜けた。夜なのもあって、夏のこの時期でも高い塔のてっぺんを揺らす風は少し冷たい。部屋着に薄手のカーディガンを纏っただけでは肌寒かった。自分の体を抱きしめながら、フルートの視線はまっすぐ前方へと注がれていた。真っ暗な夜空に点々と、宝石のように輝きを放つ星々たち。見守るのが三日月で良かったとフルートは思う。ほの明るい星の瞬きを、月光が遮らないからだ。スフォルツェンドでこんなにたくさんの星が見れるなんて。あまりの感動に、今の気持ちを表現できる言葉が見つからない。

July 15, 2025 at 6:11 AM

あたか

@ataka1999.bsky.social

ハーメルにぐいぐいと押し付けている格好だった。現状を確認するやいなや、顔にぼぼぼっと火が灯る。ばっと勢いよくハーメルから離れて、守るように自分の体を抱きしめた。
「ご、ごめん、なさい…あの、ちょっと私…う、うっかり、してて…」
「お、おう…」
　互いに顔は背けたまま、照れ臭そうに言葉を交わした。もじもじしながら、完全に相手を意識しまくっている。付き合いたてのカップルか、とツッコミを入れたくなるほどだ。
　
　焚き火の炎に負けないあつあつっぷりに、側から様子を見ていたトロンとオーボウは、真反対の冷め切った目線を向けた。
「こいつら、時々ほんとなんなんだよ…」
「わしらの存在、完全に忘れとるじゃろうな」
「まったくだぜ。」
　二人が目の前で繰り広げられるラブコメに辟易していると、ごそり、と炎の向こう側から、何か塊が動いた音が聞こえた。オーボウとトロンは一旦顔を見合わせてから、

ゆっくりと音のした方向を覗いた。もじもじしていた二人組も押し黙り、じいっと炎の裏側へと目を凝らす。
　
　すると突然、
「たすけてぇ…」
　と地の底を這う様な低いうめき声と共に、血まみれの人影がぬぅっと現れたのだ。
　
「うぎゃぁぁぁ！！　す、すぷらったぁぁぁ！！」
　恐怖に震え上がったハーメルとフルートは思わず互いを抱きしめ合い、立ち上がって後退る。謎の人影は、ふらふらしながら一歩ずつ近寄ってきた。
「や、やばい、くるなくるな！」
「悪霊たいさん！！」
　目を閉じ、ごうごうと吠えながらすっかり怯える二人を尻目に、トロンとオーボウはやはり冷静だった。
「あれは………ライエルじゃな。」
「さっきのフルート姉ちゃんたちの一連のやりとり見て、鼻血吹いて倒れたんだろな。」

カオスと化した現場にすっかり疲れた二人は、不毛な追いかけっこを続ける三人を無視し、さっさと寝床にもぐりこんだのだった。
　
　おしまい。

June 27, 2025 at 2:36 PM

あたか

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26日はハーメルンの日！という、ものすごーく素敵な単語に出会えたので、そこに便乗したくて出来上がりました。
果たしてこのメンツで夏旅してるか？時期的に…と思ってしまうけれど、まあ気にしないってことで！ #文庫ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/bunko/index.php

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「怪談」、「あたか1999」と記載されています。
以下は本文の内容です。

「そうして、ダルセーニョ中の子供達は、トロンボーンの音色に誘われて、全員いなくなってしまったのでした…」
「ぎゃあ！　いやぁぁぁ！　こわいぃぃぃ！」
　耳をつんざく様な悲鳴が、森のあちこちにこだました。
　色気もへったくれもなく叫んだのはフルートだ。固く目を瞑り、いやいやするように頭を軽く左右に振っている。
　
　一行がいるのは、なだらかな山のちょうど中腹あたりだった。平らで乾いた地面を見つけ、今夜はここで野宿となる。夕食の片付けを終え、めいめいが自由に過ごす時間の最中、トロンが急に怪談話をしようと持ちかけた。夏といえば怪談、ということらしい。
「でも、トロンは怖い話が苦手なんじゃないのかい？」
　ライエルが心配して尋ねた。しかし、大きく胸を張って、自慢しいにトロンが答える。
「おれ、割と話す方なら怖くねーんだよな。むしろお前らを、恐怖のどん底に叩き落としてやるぜ！」
　びしっとカッコつけて指差して、そんな風に話すトロンを、年上連中は苦笑いを浮かべて見守ることにした。

ところが、である。怪談話で一番怖がってしまったのは大方の予想を裏切り、トロンでなくフルートだった。
「フルート。お主そんなに怖がりだったかのう？」
「だってだって…トロンの話し方怖いんだもん！　◯川淳二みたいなんだもん！」
「誰だよ、そいつ。」
　話し終えたトロンが、フルートにじとりとした目線を投げる。トロンの肩に留まったオーボウと共に、そのまま、ついっと左に視線を流せば、フルートが恐怖でしがみついている先が目に入った。肘までの黒いグローブに剥き出しの二の腕、その持ち主はハーメルだ。抱っこちゃんよろしく引っ付かれているのとは反対の腕で、フルートの頭をぐいぐいと乱暴に押していた。
「だぁー！　もう、お前邪魔なんだよ！　気軽にくっついてんじゃねぇよ！！」
「そんな殺生な…ちょっとだけ、このままでいてくれたっていいじゃないの。…ね、だめ、かな？」
　涙がにじむ潤んだ瞳が、ハーメルの顔を下から覗き込む。唇をきゅっと引き結び、全身をぷるぷる震わせる様は、囚われの子ウサギのようだ。愛らしさの大洪水に飲み込ま

れ、ハーメルは引き剥がそうとしていた手を思わず止めた。
「うっ、あ、あの…えーと…。」
　どうしたら良いか、もうよくわからない。さっさと離れてくれと思う一方、滅多にない密着具合を手放すのはとても惜しい。ハーメルとて思春期真っ盛りの男子である。気になる女の子に頼られてくっつかれて、悪い気はしなかった。
　
　こくんと唾を飲み込み、ハーメルはフルートを見下ろして、その姿形を目視した。先ほどからずっとずっと気になっていた「何か」の正体を見極めるためだ。そして、これはもう、どう考えても離れてもらうしかないと結論付けた。ずいぶんと柔らかくて温かなものが、遠慮なくむにむにと自分の右腕に当たっている。視覚でもしっかり確認してしまった今、意識するなと言う方が無理だろう。繰り返すが、ハーメルとて健全な思春期男子なのだ。
「ああああのよ…フルート、そそそその…さっきから俺の腕に、な。なんつーか、こう、ぽよんぽよんとしたものが…」
「えっ？」
　そこで、やっとフルートにわずかな冷静さが戻ってきた。よく考えれば、自分の体を

June 27, 2025 at 2:36 PM

あたか

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で、顔だけフルートの方向へと向ける。雰囲気が急変した。不機嫌そうな空気が隣から漂ってくる。ぱちぱちと長い睫毛を瞬いて、不思議そうにフルートはハーメルに視線を向けていると、突然がばっと毛布を剥いで、ハーメルが起き上がった。
「迎えにクラーリィが？　なんで？　あいつはお忙しい司聖官様だろ？　いつもは別の、転移魔法使える奴が来てたじゃねーか。」
「え、いや、なんか時間がとれたから…って…」
　焚き付けるように次々と言葉が繰り出され、フルートはあわあわと慌てた。そんなことにはお構いなしに、ハーメルは続ける。
「えぇーい、こうなったら、子供連れて俺も行く！　お前だけで行かせられるかってんだ。」
「なに言ってんのよ、遊びに行くんじゃないのよ？　仕事よ、仕事。なのに子連れで行くわけにいかないでしょ！」
　穏やかじゃない態度のハーメルに面食らいながら、どうにか諌めようと声をかける。その願いが通じたのか、ハーメルは嘘のようにぴたりと口を噤んだ。じっとこちらを見透かすように見てくる。その真剣な眼差しは端正な顔と相まって、結婚してだいぶ経つにも関わらず、フルートの心拍数を簡単に上げた。しばし見惚れていると、突然ハーメ

ルは片側の口角を上げてにやりとした。
「なら、別の方法をとるしかないな。」
　そう宣言して、ハーメルはフルートのそばへにじり寄る。細い両手首を簡単に掴むと、華奢な肢体はあっという間にシーツの上に縫い止められた。
「えっ、えっ、ちょ、ちょっと待ってよ！　明日早いって言ったでしょう？」
「…気が変わった。」
　動きを封じるようにフルートの上に跨ると、ハーメルの唇が首に落ちてきた。触れるか触れないかの加減をしながら、鎖骨までを辿る。弱々しい刺激に、フルートは思わず高い声を上げた。
　
　ハーメルは片手を離し、フルートのパジャマのボタンに手をかけた。その隙に、フルートは自由になった手でやんわりと、目の前の肩を押し返す。
「どう…して、急に？」
「…お前が俺のもんだって、証拠を残さねぇとな。」
　ボタンを外す指はそのままに、耳元で低い声に囁かれ、フルートは小さく身震いする。
「やっ…あんっ、んっ、だ…め…」

理性とは裏腹に、フルートは呆気なく陥落した。
　
　次の日、残念ながら寝坊したフルートは大慌てで身支度を整え、ハーメルに文句を言ってからスフォルツェンドへ出かけていった。開いた襟ぐりの隙間から、いくつかの鬱血痕が覗いているのも気づかずに。
　
　その日の夜、真っ赤になって涙目で怒りながら帰ってきたフルートに、ハーメルがしばらくおあずけを宣言されたのは言うまでもない。

June 19, 2025 at 5:48 AM

あたか

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これまたハーフル結婚後。
新婚さんじゃなくて、数年経っています。 #文庫ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/bunko/index.php

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「藪蛇」、「あたか1999」と記載されています。
以下は本文の内容です。

　壁に取り付けた振り子時計が、かちこち、と硬質な音を刻んでいる。
　
　部屋の奥に設置されたクイーンサイズのベッドには、まっさらなシーツがかけられていた。フルートはその上に上半身を起こして座り、ベッドサイドの小さなランプの灯りを頼りに、文庫本のページをめくっていた。身じろいだ弾みに、腰あたりまでかけていたベージュの毛布がずれる。それを片手で引き上げたところで、かちゃ、とドアノブの回る音がした。
「あー、やっと寝てくれた」
　黒に近い濃い茶のドアが大きく開き、無遠慮にどすどすと入ってきたのはハーメルだ。気怠そうに掻いた髪は、暗がりの中でも金色の鮮やかさを失わない。まっすぐベッドに向かってくる姿を確認して、フルートは本をヘッドボードにそっと置きながら声をかけた。
「お疲れ様。今日は少し時間がかかったのね。」
　ふふ、と小さく笑うフルートへ、ベッドに腰掛け床に足を投げ出した姿勢で、ハーメルが振り返る。
「オーボウも子供たちもまとめて全員、ぐっすり夢の国へ旅立ってもらったぜ。」

「なぁーんか言い方がちょっと物騒なんだけど…。でも、ハーメルいいなぁ。子供たちみんな、寝る時はお父さんのバイオリン聴きたい、ってなるから、私なんてすっかり蚊帳の外よ。」
　フルートは唇を尖らせて、少し拗ねたような表情を浮かべた。日中はフルートにべったりの子供たちだが、就寝時だけは別だ。さすが音楽家の子とでもいうべきか、寝る前にはハーメルの演奏を聴きたがる。一番上の子からずっとそうだったので、寝かしつけだけは一家の主の数少ない役目だった。
「ま、この俺の演奏は、天才的で感動的で超スペクタクルエンターテイメントな芸術作品だからな！　ガキでもそういうのは良くわかんだろうな。さすが俺様の子供たちだぜ！」
　鼻高々に声を張りながら、ハーメルは体をくるりと回してベッドに上がり、横になった。フルートも同じように横たわると、毛布の端を持ってハーメルにも掛けてやる。自然と笑みが溢れた。２人とも、幼い頃は本当の親から縁遠く育っている。だから、特にハーメルは父親として、どう接すれば良いか悩んでいる様子だった。それでも、精一杯自分なりに子供たちを大切にしてくれているのがわかる。傍目には下衆な部分ばかりが目立ってしまうが、本当は愛情深いのだ、この人は。

「それにしても！　そーかそーか。フルート、ひとりぼっちで寂しかったのか。仕方ないなぁ。そういうことなら、お前には今からぜひ俺のムスコの寝かしつけを…」
「くだらない下ネタを吐くんじゃない！！」
　ハーメルがいい終わらないうちに間髪入れず、顔を赤らめたフルートが大声を上げた。せっかくのほっこりした温かい気持ちが、余計な台詞ですっかり台無しだった。ちっと不服そうに舌打ちするも、ハーメルは仰向けに姿勢を整えた。案外素直に諦めたらしい。
「変なこと言ってないでさっさと寝るわよ。私、明日は早いんだから。」
「明日？」
「ハーメル、忘れたの？　スフォルツェンドに呼ばれて、行かなくちゃならないって話。」
　フルートがころんと横を向き、呆れた声音で伝えた。ハーメルは一瞬、眉を寄せて考えたあと、ああ、と合点が言ったのか声を上げた。
「そういや、そんなこと言ってたな。思い出した。」
「だから子供たちの世話、任せたわよ。よろしく。」
「迎えがくるんだろ？」
「うん、確か…今回はクラーリィがきてくれるって話だったかな」
　ハーメルの肩がぴくっと上がり、そのまま固まった。ロボットのように不自然な動き

June 19, 2025 at 5:48 AM

あたか

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May 29, 2025 at 4:00 AM

あたか

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ハーフル結婚しています。
いちゃいちゃさせたかっただけのお話です。

May 29, 2025 at 4:00 AM

あたか

@ataka1999.bsky.social

「あー…その。…思い出した、のか？」
「う、うん。あの…えっと、大丈夫？　傷、痛い？　それに私ってば重くない？　ていうか、この体勢恥ずかしくない？」
　声が上擦る。首に顔を埋めたまま、フルートは早口で一気に喋り切った。ふっ、とハーメルの声がする。顔なんて見なくてもわかる。たぶん苦笑してるんだろう。
「こんなもん痛くねーよ。あとお前軽すぎ。もっと食え。…この体勢はもちろん恥ずかしい。」
「…ごめん。」
　短い謝罪に応えるように、フルートを支える腕にはぎゅっと力がこもった。
　
　廊下は足音しか聞こえなくなった。お互い気まずいには違いない。フルートの酔いはすでに覚めている。でも、ハーメルは結局一度も降ろすことなく、フルートを部屋まで運んでくれた。慎重に降ろされた先のベッドで、そのまま端に腰掛ける。
「あ、ありがとう。」
　素直に礼を述べたが、フルートが見ているのはハーメルの靴だ。視界はそこに固定することにした。いろいろ思い出した今となっては、顔を合わすことも憚られる。
　
　会話もなく、見ている景色も一向に変わらない。いつまでこうすれば。沈黙に耐えられなくなった頃、急に目の前の靴が動く。が、離れるどころかこちらに一歩近づいてきた。ハーメルの指が伸びてくる。ついっと顎を掬われ、フルートは顔を上向けるほかなかった。強制的に視線が交わる。暗がりに映える真紅の瞳は、フルートをいとも簡単に捉えてしまった。親指でフルートの唇をなぞり、そして、急にぷっと吹き出した。
「そんなガチガチになるなよ。取って食いやしねーっ

て。…けどさ。」
　そう言って、ハーメルの手が離れた。自由になっても、視線は絡まったままだ。
「忘れようとしたのかって思うと、ちょっと傷つくんだよ。実は嫌だったのかなぁ、とか、さ。」
　薄く笑う口元と対照的に、目には寂しそうな影がある。そんな顔なんて見たいわけがない。だって今日は、ハーメルの誕生日だ。
　
　きゅっと口を結ぶと、フルートは思いっきり手を伸ばした。ハーメルの胸倉を掴んで力任せに引き寄せる。ぐえっ、と首の締まる声がするが、申し訳ないが気にする余裕はない。近づけた唇に、自身のそれを掠めた。これくらいが精一杯だ。ぱっと手を離すと、ハーメルが姿勢を直し、苦しそうに咳をした。
「これは…ええと…ごめんねと、ハッピーバースデーって意味よ！」
　恥ずかしくて逃げ出したい。でも、気持ちをわかってほしくて、眼差しは逸らさなかった。ハーメルの目が見開いて、そして細められる。両手でフルートの頬を、左右からがっしり抑え込む。
「やり直しだ。そんな適当なの許されるわけねーだろ。俺様の誕生日だぞ。」
　にやりと笑う、その心底意地悪な表情は見慣れたものだった。いつも通り腹立たしくて、いつも通り愛おしい。
「ハーメル、お誕生日おめでとう。」
　祝いの言葉をフルートが告げるやいなや、ハーメルの顔がまた近づく。
　
　フルートはもう、瞼をぎゅっと閉じるほかなかった。

April 12, 2025 at 3:12 PM

あたか

@ataka1999.bsky.social

ハーメル誕生日カウントダウン投稿。ラストは『フルート』です。なんとか出来上がったので良かったです。
結局ハーフルを書きたかったんだな、というのが滲み出ていてすみません！

何はともあれ、ハーメル、お誕生日おめでとう！ #新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/shinsho/index.php

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「フルート」、「あたか1999」と記載されています。
以下は本文の内容です。

　なんだかふわふわする。
　
　重たくなって下がる瞼をなんとか押し上げながら、フルートはそんなことを考えた。ふわふわして、もっと言えばふらふらして、さらに言えば、ちょっと気持ち悪い。
　
　右手にあるのはワイングラスだ。握っているというのもそろそろ怪しい。重力に負けた瞼が落ちるのと同時に、力の抜けた指の間からグラスもするりと落ちた。かちん。ガラスのぶつかる音がする。
「あっぶね」
　真横から声が聞こえた。それがよく知っているものだったので、気怠い眼差しを聞こえた方へ向けた。見慣れた黒装束に、その上には見慣れた顔も乗っかっている。
「気をつけろよな。グラス割れるところだったぞ。」
　さっきまでフルートの手の中にあったグラスを持ち、険しい表情で注意するのはハーメルだ。いつも叱っているのはこっちなのに、立場がすっかり逆転している。だって、と無意識に口から言い訳が飛び出してきた。
「眠いんだもん。」
「…あのな、それは飲み過ぎだぞ。フルート。」
　諌めるような話ぶりに、フルートは心の中で言い訳を並べる。仕方ない。今日はハーメルとサイザーの誕生日パーティーだ。一緒に旅をしていた仲間はもちろん、さっきまではクラーリィも来てくれてたし、パーカスまでちょこっと顔を出してくれた。これだけ親しい顔ぶれが集まったら、ちょっぴり気を抜いてもしょうがないじゃない。
「これのどこがちょっぴりなんだよ。」
　嘆息まじりの、呆れた答えがハーメルから返ってきた。モノローグの後半は、うっかり口から漏れていたようだ。

「なによぉ、ハーメルのばか。」
「あー、はいはい。馬鹿で結構。ほら、なんでもいいから行くぞ。」
　ことりと目の前のテーブルに空のワイングラスが置かれた。中身を思い出すために目を閉じる。注がれたのは赤くて渋いのじゃなくて、甘くてシュワシュワので美味しかった。あれ、もう一杯飲みたかったな。
「おい、この一瞬で寝るんじゃねえ！」
　頭を軽く小突かれた。痛い。その痛みで薄目を開けると、眼前に突如ライエルが現れた。まるで手品みたいだ。
「あちゃー、だいぶ酔ってるね。気づかなくてごめんね、フルートちゃん。」
「そんなわけで、もうこいつ、さっさと部屋に連れてく。」
「うん。その方が良さそうだ。ハーちゃん、頼んだよ。」
　２人して勝手に話を進めないでほしい。そんな風に思ったが、やっぱりふわふわした頭では、文句の言葉も出せやしない。
「ほら、しっかり立って歩けよ。」
　ハーメルの二の腕にしがみつき、なんとか立ち上がる。赤いエプロンスカートから伸びる足は、歩き始めの子供みたいに危なっかしい。フルートは促されるままよたよた歩き始めた。
　
　◇◇◇
「もう歩けない…」
　フルートは廊下の真ん中で足を止めた。眠いし、足となぜか腰も怠いし、たぶんもう限界は近い。
「もうちょっとなんだから頑張れよ。」
「…頑張れない。ハーメル、もう私のことはいいから先に行って。」
「あのなぁ、そんなわけにいかねーだろ。」
　目的の場所はフルートの部屋だ。あと少しで日付が

変わるような深夜だった。昼間は人が行き交う賑わいも、今はしんと静まり返っている。
　
　フルートは支えにしていたハーメルの体を離れ、滑るようにしゃがんだ。顔を洗う猫みたいに、眠たい目を擦る。しかし、すぐさま背中と膝の裏に固い感触がして、体がふわりと浮かんだ。ずいぶん近くで声もする。
「大人しくしてろよ。落ちる。」
　そこで気づいた。ハーメルに横抱きにされている。アルコールで蕩けそうだった思考は、現状を認識したとたん、びっくりするほどクリアになった。ちらっと視線を上げれば整った顎のラインが目に入り、慌てて伏せる。代わりにふいっと横を向くと、肩と首の境目あたりに、薄っすらで細い３本の瘡蓋が見えた。
「ねえ、どうしたの？　この傷。」
　人差し指でそっとなぞった。ハーメルはぴくんと反応して、フルートを抱えたまま足を止めた。
「引っ掻かれたんだよ。昨日の夜。」
「えっ、うそ。なにに？」
「………お前に。」
　ぱちんとひとつ、不思議そうに瞬きした。そんなことしたっけ？　首を捻り、記憶を探る。確か昨晩は用がありハーメルの部屋を訪ねて、なんだかいい雰囲気になって、偶然唇が触れ合ってしまって、それで、そのまま…
「あ、」
　│││そ、そうだった…だから顔合わせ辛くて、お酒がぶがぶ飲んじゃったんだったぁ！
　
　アルコールに浮かされ、忘れてた事実が襲いかかってくる。顔があまりにも熱い。ばくばく胸がどきついて痛いほどだ。羞恥心に負けたフルートは、ちょうどいいところにあったハーメルの首に巻き付いた。

April 12, 2025 at 3:11 PM

あたか

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ドレスはとても着心地の良いものに出来上がった。
「怖かったには違いないんだが…、なんというか、その…結構楽しかった、な。」
　そこで髪に触れていた指の動きが止まる。サイザーは前向きのまま、少しだけ顔を傾けて、ハーメル？　と名を呼んだ。
「変だったか？　どんなデザインがいいか聞かれたり、城のよくわからん噂話を教えてもらったり、ずっとそんな風にみんなで話していたんだが。」
　おろおろと言葉を紡ぐ。魔族として育ったサイザーには、人間社会での「普通」がわからない。今も思ったことをそのまま口にしただけだ。だが、生活にだいぶ慣れてきたとはいえ、それが許容される事柄なのか、自身ではなかなか判断が難しい。
　
　サイザーは不安な面持ちで、無意識に顔を伏せた。そこへ、そうじゃない、と否定するハーメルの声が小さく聞こえた。
「楽しいって、素直に言えるようになって良かった。」
　弾かれたようにサイザーは顔を上げると、思わずぐるりと背後を振り返った。ハーメルは照れくさそうにはにかんでいる。優しく見つめる自分と同じ紅の瞳には、ぽかんと口を開けた自分の顔が映っていた。

間の抜けた表情でしばし見ていると、焦ったようにハーメルは横を向いた。
「こら、動くな。まだ終わってねーんだよ！」
　いささか怒り口調であるが、サイザーにはもう、それが照れ隠しなのだとわかっていた。すまない、と謝って前を向くが、口元はなんだかにやけてくる。
　
　普段はふざけてばかりだが、時々急に、こうして兄の顔を作るのだ、この男は。不器用ながらも大切に思ってくれている。それが伝わってくるから、サイザーも同じようにハーメルを大切に思い、信頼することができた。こうして背を晒すことも厭わないほどに。
　
　│││兄妹、か。
　
　サイザーは心の中で呟いた。
「よし、こんなもんだろ。変だったら、フルートに直してもらえ。」
　ハーメルの声かけに続き、サイザーは手のひらでうしろ髪をそっと触り確かめた。

「おお、戻ってる！　ありがとう、助かったぞ。やっぱりお前は器用だな。」
　振り返って微笑むと、ハーメルは驚いたように目を見開いた。鼻の頭を掻き、視線はあちこちに彷徨う。賛辞に戸惑っているのがわかりやすい。
「べ、別に、大したことじゃねーよ…。」
　しどろもどろの様子で、ハーメルはこちらを伺うようにちらりと視線を投げてきた。なんだ？　と問えば、帽子の鍔を下げた奥から声が返ってくる。
「そ、そんなことより、さっき言い忘れてたが…そのドレス、よく似合ってるぞ。」
　今度はサイザーが驚く番だった。ハーメルのいつも人を食ったような顔と異なる、頬を染めた表情は幾分幼い。なんだか可愛らしく思えて、またじわじわと口元が弛んできた。
「うん！　ありがとう、ハーメル！」
　礼を言うサイザーは、笑い出したいのをなんとか堪えた。

April 11, 2025 at 4:19 PM

あたか

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この連続投稿も、終わりまであとちょっと。4つ目は『サイザー』です。
これと5つ目の小説は、なかなか完成できずに苦労しました。
どうにか形になって良かった良かった。 #文庫ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/bunko/index.php

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「サイザー」、「あたか1999」と記載されています。
以下は本文の内容です。

「あ、ハーメル！　誕生日おめでとう。ちょうどいいところに…」
「おー、サンキュー。お前もだな。おめでとう。つーか…何やってんだよ？　サイザー」
　サイザーが城内で当てがわれた自室前でまごまごしているところに、ちょうどハーメルが通りかかった。両手を後ろに回した不自然な格好を見れば、ハーメルが訝しんだ表情を作るのも当然だ。
「あぁ…実は、これを見て欲しいんだが。」
　くるりとその場で半回転すると、シャンパンゴールドのドレスがふわりと舞った。サイザーは首を目一杯回し、ハーメルを視界に入れつつ自分の背後をちらっと見せる。ドレスのファスナーは背中の真ん中から少し上の位置で止まり、新雪のように白い肌と薄紫のレースの一部が覗いている。ぎょっとした顔をして、ハーメルは慌てて目の前の扉をばたんと開き、サイザーをその中に自身ごと押し込んだ。
「サイザー！　お前は、なんつー格好で部屋の外に出てんだ！」
　突然押し戻されて驚いたサイザーは、叱り飛ばすハーメルの方を勢いよく振り向く。
「あの、実は髪がうしろに引っかかってしまったみたいで…誰か外してくれる人を探したかったんだ。」
　伏目がちに呟き、金茶の睫毛が恥ずかしそうに瞬いた。慎ましい様子に向かってため

息をついたハーメルが、見せてみろ、と言うので、サイザーは大人しくもう一度背中を晒す。ハーメルが確認すると、アップにまとめた髪の一部がファスナーに巻き込まれていた。止めていたであろうピンも端にちょこんと引っかかったまま、置き去りになっている。
「あぁ、ファスナーに絡んだみたいだな。」
「そうか。外せたら、解けた髪もついでに直せるか？」
「これくらいなら、まあ、直せそうかな。」
「良かった！　頼む。」
　手近な椅子にハーメルが手をかけ引くと、促されたサイザーはそこへ腰掛けた。真後ろに人の気配がある。軍王時代なら、いや、今だって滅多にこんな位置は取らせない。背後を取られれば、戦いにおいて不利になる。そしてそれは「死」へと誘う布石だ。幼少の頃から実地で学んできたことだった。
　
　危険と隣り合わせの日常で、周囲への警戒を怠ったことはない。北の都の自室にいる時でさえ、常に神経を張り巡らせていた。唯一気を抜けたのは、オカリナがそばにいる時くらいのものだ。

なのに今は、緊張感もなくこうして背を預けられる仲間がいる。あれほど憎んでいたはずのハーメルにさえもだ。以前の自分ならば、こんなこと想像もできない事態だった。
「とりあえず、外せたぞ。次は髪、直すか。」
「うん。」
　どうすっかなぁ、これでいいのか？　髪に触れながらハーメルがぶつぶつ独り言を唱えるのを、サイザーは申し訳ない気分で聞いていた。やにわに、ハーメルが不思議そうな声音で話しかけてきた。
「おまえ、こんなドレス持ってたっけ？」
「ああ、これか。これは、今日着れるようにって、フルートが作ってくれたんだ。あいつの侍女たちと一緒に。」
「へぇ。」
「あいつら、突然部屋にやってきて、寄ってたかっていろいろと採寸していってな。…圧が強くて、私もなんか怖くて。」
「うわぁ…そりゃ災難…」
　白金のスカートの真ん中をぴらっと摘んで落とす。光沢のある美しい生地は滑らかで、

April 11, 2025 at 4:19 PM

あたか

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周りへ溶け込む術を身につけ、以前のような酷い怪我を負うことは少なくなっていった。その引き換えにハーメルから失われたのは、豊かな表情だ。無関心、無感動の仮面を貼り付けて、人を馬鹿にした態度をとって。そうやってかぶった皮の内側に、悲しさと諦めの混ざるどろどろしたものを溜め込んでいるようで、ライエルは何度も歯痒さを感じた。
　
　けれど、今のハーメルはとても生き生きとしている。まるで出会ったばかりの、幼かった時代に戻ったみたいだ。自分と周りの違いに諦めて、知らず知らず心を削っていたあの頃と違う。ただの何気ない日常を過ごすことを、目一杯に楽しんでいる。息を吸って吐き出す度に、彼が失っていた感情を、ひとつひとつ取り戻しているみたいに思えた。
　
　│││君のそんな変化を喜んでいるのは、きっと、パンドラ母さんやオーボウ様だけじゃないんだよ。
　
　ライエルがそっと思い出すのは、在りし日の父と母の笑顔だ。２人とも、ハーメルの

ことを可愛がっていた。彼の様子の変化に気づき、ずっと心配していた。
　
　両親とて聖人君子ではない。今際の際に何を思ったのか、それは息子のライエルにもわからないことだ。それでも、ハーメルがこうして繕わないたくさんの表情を取り戻していることを、きっと喜んでいるのだと思う。何故かそれだけは、確信が持てた。
「どうしたんだ、ライエル。急にぼーっとして」
　突然声がかかって我に返る。いつの間にかぼんやりと物思いに耽っていたようだ。正面に焦点を合わせれば、怪訝な顔を作る幼馴染がいる。
「ごめんごめん。ハーちゃんも大きくなったなあって感激してたんだよ。」
「なんだよ、ジジくさ。お前も同い年じゃねーか。」
「そうだけどね。小さい頃だって知ってるし、なんだか懐かしくなったんだ。」
　ライエルは口の端を持ち上げ、苦笑いを浮かべた。幼い頃を振り返ると、不意に両親に会いたくなった。できれば、ハーメルも一緒に。きっとあの頃と同じように、暖かい手で頭を撫でてくれるに違いない。仲直りできて良かったと、そう言って。
　
　一瞬目が合ったハーメルが、気まずそうにまた横を向いた。頬を掻き、ちらりとこち

らを伺うように視線だけ送ってくる。
「あー、あのよ…昔といえば、さ。前から頼みたかったことがあるんだが。」
　きょとんとして、ライエルが首を傾げた。なんだい？　と問えば、返事にさっきまでの勢いがない。
「お前さえ良ければ、その…。今度、おじさんとおばさんの墓参り、ついて行ってもいい…か？」
　小さめの声の正体は緊張だった。ライエルは大きく目を見開き、すぐに眼差しを細めた。嬉しさに唇を一文字に引き締めて、力強く頷く。
「もちろん！　僕もちょうど、君を誘おうと思ってたんだ。」
　目尻に滲む水分をハーメルに気づかれないよう、真上に登った太陽の方を向いた。眩しさに思わず瞼を閉じれば、春の陽の暖かさが強く伝わってくる。
　
　いつまでも降り注ぐ日差しに、そっと頭を撫でられた気がした。

April 11, 2025 at 7:36 AM

あたか

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三つ目は『ライエル』です。投稿も、とうとう折り返しまできました！
今更ですが、捏造だらけのお話ばかりですみません…
でも情熱だけは込めています！ #文庫ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/bunko/index.php

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「ライエル」、「あたか1999」と記載されています。
以下は本文の内容です。

「ハーちゃん！　誕生日おめでと…って、どうしたの？　首。」
　中庭の真ん中で見かけた肩を、叩こうとした右手が、不自然な位置で止まった。
　
　気配に気づき、振り返ろうとしたハーメルの後ろ髪を遠慮なくかき上げて、ライエルは眉根を寄せる。首の後ろから斜め前に向かって、３本の短い筋が走っていた。細く延びたその引っ掻き傷は、すでに瘡蓋になっている。こんなに近づかなければ、おそらく気付かなかっただろう。
　
　ライエルの手が離れたタイミングで、ハーメルがこちらを振り返った。やや頭を傾げ、確かめる指先が首筋を撫でた。
「首？　………あっ…」
　はっと息を飲んで、飛び跳ねるようにハーメルが距離を置いた。顔が真っ赤になっている。何かを思い出したということが丸わかりなのに、誤魔化すような声が響いた。
「こ、これは…その…ね、ねこに…」
「えっ、猫？　そんなとこ引っ掻かれたの？」
「………そ、そーだよ、悪いか！？」

ライエルが繰り返したのを案外はっきり認めて、ハーメルは目線から隠れるようにそっぽを向いた。ライエルは呆気に取られ、目をぱちぱち瞬く。
　そろそろ太陽が真上に差し掛かる頃だった。春の陽気な日光は、中庭のついでのように２人にも降り注ぐ。汗ばむほどの暑さは無いのに、しどろもどろのハーメルの息はやや荒い。
　
　彼と猫の組み合わせは随分ちぐはぐだ。並んだ様子を想像し、唇が思わず綻んだことに、ハーメルは目敏く気がついた。
「…笑うなよ。」
「いや、意外だったから。ハーちゃんが猫と戯れてる場面なんて、なかなか貴重なんじゃないの？」
「うるせーな！　…俺だってなぁ、その…構うことくらいあんだよ！」
　開き直って大声を出す様子は、恥ずかしがっている証拠だった。城の周囲では、野良猫が闊歩していることがある。それに手を出しうっかり引っ掻かれた、といったところだろうか。

しかし、これ以上この話題に触れるのは憚られる。ハーメルの気配は、すでに威嚇する猫のように逆立っていた。このままだと次は暴力に訴えるだろうことが、簡単に想像できた。引き際を見極められるのも、付き合いの長さの現れだ。
「目立つものじゃなくて良かったね。今日のパーティーの主役が怪我してたんじゃ、格好つかないもんね！」
　明るく話を切り替えると、ハーメルはあからさまにほっとした顔を作った。百面相のようにくるくると表情が変わる。今ではそんなこと大して珍しくもない。けれど、昔のハーメルを思い出せば、ついて回るのは周囲を避けるように眉間を寄せた、張り詰めた表情ばかりだった。
　
　出会った頃のハーメルは、笑ったり怒ったり泣いたり、年相応の子供らしい姿をよく見せていた。しかし、年齢が上がるにつれ、そんな様子はライエルと遊ぶ時や楽器の練習中だけに限られるようになっていった。まるで猫が爪を立てて傷を作るように、じくじくと痛みを伴うまっすぐな境界線を、自分の周りに引いているみたいだった。
　
　成長するにつれ、ハーメルも他の子供からの虐めにやり返すようになり、それなりに

April 11, 2025 at 7:36 AM

あたか

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背後から名を呼ばれ、ライエルはゆっくりと後ろを向いた。３度目ともなれば、なんとか衝撃にも耐性ができた。長い睫毛を何度か瞬くと、サイザーが上目でおずおずと口を開く。
「フルートは、ああ言っていたが…。いいのか？　私なんかに貸すだなんて。それ、大切なものなんだろう？」
　気遣う口振りは、戦いの時に見せる凛とした雰囲気と真反対で、いっそ可愛らしいほどだ。思わず微笑みが浮かぶ。ライエルは手近な椅子に近づいて、サイザーに向かって手招いた。
「サイザーさん、こっち。」
　わずかに首を傾げながら、ロングドレスの裾を揺らし、サイザーがしゃなりしゃなりと歩いてくる。そのまま椅子に腰掛けると、ライエルはその正面に回った。片膝をついてしゃがみ込む。
「フルートちゃんが言ってたのはこれですよ。」
　さっきまであたふたしていたが、覚悟が決まれば躊躇しないのがライエルだった。ポケットから箱を取り出すと、サイザーの目の前で蓋を開けた。金の細い鎖の中央に、一粒の真っ赤なルビーが輝いている。そっと取り出すと、サイザーの右手を取って乗せようとした。しかし、サイザーはその手を勢いよく引っ込めた。
「い、いや、やっぱりダメだ。こんなにきれいな物、壊してしまったら申し訳ないぞ。私なら別に、何も付けなくても…。」
　そう言って、心底申し訳なさそうに目を伏せた。ライエルは唇を無意識に噛んだ。サイザーの遠慮しいな性格は、自信のなさの表れだ。幼少期を『北』で過ごし、人間社会のことがよくわからないという引け目、女性らしい振る舞いへの苦手意識。そういったものが気づけば積もってしまって、落ち込んでいるところを目撃したこともある。

ライエルはもう一度、離れた右手を自身の左手で包み込んだ。
「これは、あなたの物ですよ。僕がプレゼントしたくて買いました。」
　はっとして、サイザーが顔を上げた。ルビーと同じ色をした瞳が、あどけなく丸まる。
「サイザーさんが、ほんとはこういう可愛い物が好きなことも、似合うことも、僕は知ってる。あなたが強くて優しくて素敵な女性だってこともね。」
　繋いだ手に力が込められた。サイザーが潤んだ瞳でこちらを見つめている。かわいい。あどけない。美しい。どんな形容詞を並べてみても、行き着く先はたった一つだ。守ってあげたい、彼女が悲しみで瞳を揺らさずに済むように。
「ライエル…」
「付けてもいいですか？　これ。」
　そう告げてから、立ち上がった。背もたれ側に回ると、くすっとサイザーの笑い声が漏れる。
「今日は背中を見せてばかりだな。」
「どうしたんですか？」
「ううん、なんでもないんだ。」
　サイザーが黙ってしまったので、話はそこまでとなった。
　
　ライエルはネックレスを手にして、顔の前に垂らすと首に回し、うなじのあたりで留め具を引っ掛けて留めた。サイザーは首元に目をやり、涙の形の輝きに指を添える。そのまま立ち上がると、おもむろに振り返った。
「どうだ、似合うか？」
「うん、とっても。」
「そうか。」
　嬉しそうにはにかむ姿に、急に照れ臭くなったライエルは、頬を掻き顔を背ける。その間にサイザーが足

音のしない絨毯の上を進み、気づけばライエルのそばにきていた。油断したライエルの手を、今度はサイザーが両手でふんわりと包む。
「私は、嬉しいんだ。ライエルのくれるものは、プレゼントも、言葉も、温もりも、全部嬉しい。」
　突然の気持ちを込めた言葉に、ライエルは目を見開いた。走り出した心臓が、胸の内側を叩いている。ライエルは、こくんと唾を飲みこんだ。眼差しは強く言葉ははっきりと。サイザーに気持ちが伝わるように。
「ありがとう、サイザーさん。…それから、これが一番大事なんですけど。」
　サイザーの笑顔に誘われるように、引き抜いた右手で彼女の白い頬に触れる。
「誕生日、おめでとう。」
　ゆっくり瞼を下げたサイザーは、甘えるようにその手に頬を擦り寄せた。

April 10, 2025 at 7:49 AM

あたか

@ataka1999.bsky.social

フライングですが、何もしないのもなー、と思い、サイザーとライエルのお話を載せます。
ちょっと最後を無理矢理終わらせた感がありますが…

ちなみにpixivにも同じものを載せました。 #新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/shinsho/index.php