物心付いた頃から、人間の扱いが得意だ。 コミュニケーション能力、なんて曖昧に定義されるそのスキルは、おそらく、生まれもって身に付いたもの。 努力や訓練なんかで鍛えられる類のものではない。 「あの……ずっと、前から、好きでした……」 瞳を潤ませて、上目遣いにこちらを見あげてくる。

窓を開けると、湿気を帯びた生温い風が吹き込む。 キャモメの鳴く声と、ウパーやドオーの沼に沈む音。 真正面から紫外線をたっぷり含んだ日光を浴びてーー嗚呼、夏の匂いがする。 （これは……、いやはや……これは、なんとも……） 男、クラベル、36歳。 研究職に就いてから、約10年。 アカ

「わしは育て屋婆さんじゃ。お前さんの代わりに育ててあげるよ」 長閑な道路脇の小さな家で、突然の宣言。 青年は、あまりにも聞き慣れないその言葉の響きに、驚愕していた。 （そだて……や？ 育てることを、生業とする職業か……しかし、何を？ 代わりにというのは、どういうことだ？） 青年は

怪異ーー。 現実にはありえないような、不思議な事実。 道理では説明のつかないほど、不思議で異様なこと。 ホウエン地方の西に位置するミナモシティ。 大きな港を構え、人の流れと物流の盛んなこの町は、空路の発達した現代でも経済の玄関口だ。 波の音は故郷の音。 産まれ育った海沿いの町と潮

ORASアオマツでオメガバース。 α性の権利解放を求めて活動するアクア団と、Ω性の差別撤廃を求めて活動するマグマ団。 どちらも人類平等の標語を掲げて活動しているはずだが、立場の違いによって衝突する毎日。 マグマ団リーダーのマツブサは周囲にはβ性だと思われているが、実は隠している秘密がありーー。 発情抑制剤の開発大手であるデボンコーポレーションの企みや、αΩ性のなかった太古の昔の秘密を握る流星の民の...

ペパネモ小説です。 アカデミー卒業から数年後。 大人になったペパーとネモの織りなす物語。 支部に掲載していたものを修正+加筆しました。 文庫サイズ520pほど ・本編　400p ・卒業式編　20p　※書き下ろし ・後日譚編　100p　※書き下ろし 表紙：東風様（ https://twitter.com/tofubets ） 支部リンク https://www.pixiv.net/novel/sho...