須丸
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20↑ 雑多
November 12, 2023 at 11:49 AM
November 12, 2023 at 11:49 AM
大林
「映画がある時代は不幸なんです。
手塚さんが児童漫画を描いた時代も不幸なんです。
世界が平和になったら、映画も漫画も要らないんですよ。
そういう意味で、医学も映画も児童漫画も、昔から言う“仁術”なんですよね。」

ブラック・ジャックこそ、手塚治虫その人だったのかもしれない。
October 18, 2023 at 3:06 PM
「瞬く間に。1巻あたり100万(部)だよ。ひと月で、それいっちゃうんだよね。
それを思うとね、やっぱり……新しい読者がついてるわけですよ。
旧来の読者が、『また見たいな』って、あの、懐かしんでもっかい見たいなっていうんじゃないんだよね。それじゃ行かないんだよその部数は。
その当時の小学生なり中学生が買ってるんだよね。

ああ、こんな漫画ないね、日本の中で。」
October 18, 2023 at 3:04 PM
4代目の担当を務めた編集者・伊藤嘉彦。
伊藤は、BJこそ手塚治虫が最も愛したキャラクターだと信じている。

「成田のホテルに缶詰したときに、編集者がこう、部屋でね、5人くらい待ってて、僕がこう、原稿を運んでいる訳ですよ。先生の部屋からアシスタントの所に。で、先生のところに原稿を取りに行った時に、ドアをこうやって(少しだけそろりと)開けてね、『おたく先にやりますから』って言われたことがありますよ。目がピって光ってね。ああやっぱり、先生はブラックジャック好きなんだなって。」

初代編集者・岡本三司。
連載が終わって10年近く経ち、BJの文庫本を手がけることになった。

そして、驚きを新たにした。
October 18, 2023 at 3:02 PM
大林
「それは手塚さんご自身が、
『僕のヒーローたちはみんな半分大人で半分子どもで、半分大人のときが戦争の尾っぽを引っ張っていて、半分子どものときは未来の平和を手繰り寄せる人間なんです』と。
『その2人が、戦争と平和とが、いつも善悪としてごちゃごちゃになっているのが、僕の漫画なんです』と。」

人間は善悪ごいゃまぜになっている。
それを描くのが、手塚漫画。
『ブラック・ジャック』には、それがあった。
October 18, 2023 at 2:59 PM
『僕の漫画っていうのは、命っていうことが関係しています。でこの命を大事にしようということが、僕の一生のテーマなんです。
なぜかというと僕は、人生の中で、本当にもう……なんていうかな、最高のその、ショックを受けた事件(戦争)がそこにあって。
それがもう頭に、僕はもう戦争終わってから40何年漫画描いてるけど、消えないのね。
そのくらい強烈な思い出になってますから。それであの、そういうテーマをずっと描き続けてるわけです』
October 18, 2023 at 2:55 PM
「正義っていうのは、戦争で勝った国の正義が正しくて、負けた国の正義が間違っていたってことになるのが戦争なんです。
だから僕達戦争世代は、特に敗戦少年は、正義なんて信じやしない。

じゃあ何を信じるかって言ったら、戦争という狂気に対する、人間の正気なんです。

人間が生き物として、一番幸せで、信じるべき道を、人の正気。

自分の都合の正義のために生きていたんじゃ、加害者にしかならない。

だから、正気の人間として生きよう、というのが、一番正気の、伝わりやすい、児童漫画であったと。」

児童漫画を通じて伝えたいこと。
それをかたった手塚の肉声がある。
亡くなる3ヶ月前、子供たちの前で行った公演。
October 18, 2023 at 2:50 PM
ブラックジャックの連載が始まって間もない頃、手塚が描いた作品。
手塚の自伝的漫画『紙の岩』。
そこには自身の戦争体験が赤裸々に描かれている。

空襲で家族を心配する女性をなぐさめていると…、非国民と殴られ、描いていた漫画は破り捨てられ、悲惨な友人の姿を見れば 暴力は嫌だと思っているのに敵兵を殺そうとしてしまう自分……。
October 18, 2023 at 2:48 PM
視点3・映画監督
治虫おにいちゃんの伝言

手塚と大林。2人にあった「時代の中でのつながり」とは?

実は手塚と大林には共通点がある。
医学部に進みながらも漫画家の道を選んだ手塚。
一方、大林も代々医者の家に産まれながらも、映画の道を選んだ。

ブラック・ジャックを読んだ時、大林には近年の手塚作品とは異質に思えた。
戦争や人間の狂気といった不条理が描かれていたからだ。(『灰色の館』引用)

「だから、僕たちがBJをみたときに、ああ、手塚さんがもういっぺん戦争少年に帰ってくれた、っていうのはそういうことです。戦争というダークな中で、僕達は生きてきたんだから。」
October 18, 2023 at 2:43 PM
(BJ役・宍戸錠)
角膜移植を受けた女性は幻覚に悩まされる。それは、角膜の提供者を殺した殺人犯の姿だった。

大林・2017年撮影
「僕の失敗作の代表みたいなことに、僕たちの世代じゃなってるんです。」

この映画に対する手塚治虫の反応は…

『二人三脚』より
イジワユ!先生キヤイ!先生の宍戸錠!

だが、手塚が亡くなったあと、息子の眞から意外なことを聞いたという。

「手塚治虫さゆ自体はこの映画みてくれたの?って言ったら、こっそりみてたのは僕は知ってます、何度も繰り返してみてましたよ、と。
人と人との交流という以上に、時代の中でのつながりなんですよね。
だから、手塚治虫氏というおにいちゃん。」
October 18, 2023 at 2:40 PM
漫画という枠を超え、様々な人の人生を動かした『ブラック・ジャック』。

この名作の秘密を解剖する3つ目の視点は……

視点3 映画監督・大林宣彦。
BJ最初の実写映画を手がけ手塚治虫とも親交がありました。
生前私たちの取材に応じた大林は、「この作品の背景には、2人に共通する大きな原体験が横たわっている」と明かしました。

手塚治虫からのメッセージを解き明かす「ブラック・ジャック」その原点のアナザーストーリー。

映画監督・大林宣彦(1938~2020)
がんと戦い続けながら、人生を映画作りに捧げた。その大林がBJの初の実写映画『瞳の中の訪問者』(1977)を撮ったのは37歳の時だった。
October 18, 2023 at 2:35 PM
BJは、現実の医師たちに『医療とは何か?医者は何をするべきか?』と突きつける。

鎌田は、連載の最終回のあるシーンに手塚の思いが凝縮されていると感じた。

『われわれは医者なんだぞ 神様じゃないんだ』
『これだけは きみも キモにめいじておきたまえ 医者は 人を治すんじゃない 人を治す 手伝いをするだけだ 治すのは…本人なんだ 本人の気力なんだぞ!』

つまり僕達はその、優れた技術を、その、無理やり、無理強いしたりするんではなくて、その人がどういう人生を描いてるのかとかね、そういうことの大切さを忘れるなよって、この最終回に語ってるのかなって思いましたね。
October 18, 2023 at 2:30 PM
「やっぱりその時に、自分のところに来てくれた時にね、自分はもっと何か出来たんじゃないかと。うん。あの、移植ではなくて、もっと自分の中で解決してね、できる方法があったんじゃないかということを、随分悩みましてね。非常に悩んで。

改めてその患者さんに、『医者はなんのためにあるんですか』って、『先生のところに来たのに』っていうふうに、ずっと言われている気がしてね。

漫画の中にもいっぱい出てきますよね。やはりその100%ではない、人間が人間を…治療の手助けをする。この治療の難しさっていうのは多分、永遠のテーマなんじゃないかと思いますね」
October 18, 2023 at 2:27 PM
BJの脅威のスピードを描いた、『死への一時間』。

患者の心停止まであと一時間。タイムリミットが迫る中、BJは残り2分でオペを成功させる。

BJのスピードと正確さに憧れた渡邊。海外でオペの技術を磨き、新しい手術方法にも積極的に挑戦してきた。

だが、それでも命を救うことの難しさに直面する。

ある時、ロボット手術を受けたいという患者がいたが、その心臓は手術に耐え得る状態ではなく、渡邊はやむなく執刀を断念。臓器提供による移植手術を勧めた。ところが、患者は搬送先の病院で亡くなってしまった。
渡邊にとって、痛恨の記憶だ。
October 18, 2023 at 2:25 PM
再生医療とともに、未来の医療といわれるロボットの心臓手術。

これを日本で初めて成功させた心臓血管外科医・渡邊剛。

ロボット手術は内視鏡カメラを使って医師がロボットアームを操作して行う。性格でスピーディな手術が可能なのが特徴だ。一般の開胸手術に比べて患者の負担が軽減され手術後の回復も早い。

「手術時間が3時間を、今日は2時間半ですけれど、3時間以内の手術はね、すごく回復が早いんです。患者さんの生命に1番直結するのは、胸が開いてる時間を短くすることなんです。いかに短くできるかっていうことが、体に気が付かれないうちに手術を終えると。」
October 18, 2023 at 2:19 PM
「でこういったのはあの、今私がやっている再生医療の研究にも非常に影響を与えていまして。ていうのも我々、ミニ肝臓っていうのをiPSからつくっているんですけれども、それはあくまでも臓器の芽をつくっているんですね。で臓器の芽を移植して、患者さんの体の中に患者さんご自身にiPS細胞からつくった臓器を育てていただくと。そして患者さんの中で、臓器の芽が臓器になって、病気を治していくと。」
October 18, 2023 at 2:15 PM
「僕が一番好きなのは、やっぱり人間はミスをする存在だということで、もう外科医の、まあBJの恩師の、まあ大先生が、患者さんの体の中に手術の時にメスを忘れてきてしまうという。そうすると、患者さん自身がそのメスを、こう石灰化って言うんですけども、固めて、その恩師のミスを患者さんがカバーするという話が、僕は大好きなんですね。」

「でもそのミスっていうのは、お医者さんが患者さんを治療しているんだけども、患者さんもお医者さんを助けている部分もあって。やっぱり医療っていうのは、お医者さんだけでやるもんでもないですし、患者さんだけでやるもんでもなくて、その共同作業として成果が出てくると。」
October 18, 2023 at 2:12 PM
そのメッセージは、半世紀近くたった今も、医療に携わる者に響き続けている。

臓器再生医療で注目を集める、谷口英樹。

2013年、世界で初めてiPS細胞からヒトの臓器をつくりだすことに成功した。

「われわれ、ミニ肝臓っていうのをiPSから作ってるんですけど、まあこういうコンセプトは、ま辿っていくと、そういうBJのところにあるかもしれないです」

その発想に影響を与えた作品が『ときには真珠のように』。BJの命を救った恩師、本間丈太郎の物語だ。
October 18, 2023 at 2:09 PM
その若者を助けるための治療から、かなり早い時期から逸脱していたんじゃないかとか。臓器移植が安易に行われていくようになればすごく問題が起きるんじゃないだろうかというのを、あの1作目でみごとにこうその、闇の部分をすでに手塚治虫は危惧していたんじゃないだろうかな〜って。」

その目で読み直すと、第1話に秘められたテーマは臓器移植でもあったことが分かる。

自分の息子を生かすために別の青年の命を犠牲にしてまで臓器移植をしようとする登場人物。それに対峙するBJ。

手塚治虫は、医療の光と影をテーマに、現実と格闘するBJの姿を描いたのだ。
October 18, 2023 at 2:04 PM
「小さな頃、ずっとその、貧乏の中で、母が心臓病で苦しんでいて。だから医者になったみたいなところもあったので、その1968年の心臓移植は、うーん……結構自分では、おお〜凄い時代が来るんだと思ったんですよね。」

だが、83日後、移植を受けた患者が亡くなると、様々な疑問が吹き出した。

心臓提供者の治療をせずに、その死を待ったのではないか。
移植ではなく人工弁に取替えるだけの手術をしていれば、あと10年くらいは生きられたのではないか。

「まだ助けられたのに、臓器移植をしたい心臓外科医が早めに死の判定をしたんじゃないかとか、その移植する心臓を新鮮に使うために大量のステロイドを使ったりしていて、
October 18, 2023 at 2:01 PM
「何から何までいつでもすごいスーパードクターが神の手で助けまくればいいというふうに、彼はどうも思っていなかったんじゃないか。
助けた命がその後結果としては死んだとしても、そのあとを生きた時間ってすごく大事なはずだと思うんですよね。
だからそういう、命の大切さや命に対してどういう視点を持つかって結構、手塚治虫凄いなあって。」

神の手への疑問。
鎌田は、それが第1話から暗示されていたことに気付いた。

BJが始まる5年前、日本初の心臓移植手術が行われた。患者は18歳の男子高校生、心臓提供者は21歳の青年。
日本中が注目する中、手術は成功。
鎌田も、医療の新時代到来を感じた。
October 18, 2023 at 1:58 PM