赤目
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赤目
@akamenomenoaka.bsky.social
文弱。雑食系本読み乱読派。純文出身SF好きミステリ初級外国文学どこでも。山田風太郎と田中小実昌、ビジョルド、ヴォネガット、E.ストラウト、呉明益が愛しい。
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#名刺がわりの小説10選
百年の孤独/G・ガルシア゠マルケス
坊っちゃん/夏目漱石
本格小説/水村美苗
忍ぶ川/三浦哲郎
スローターハウス5/カート・ヴォネガット
エドの舞踏会/山田風太郎
さようなら、ギャングたち/高橋源一郎
告白/町田康
トリツカレ男/いしいしんじ
本泥棒/マークース・ズーサック
宮島未奈『成瀬は都を駆け抜ける』(新潮社)読む。
最終作。シリーズ初作は2023年春刊行で、世間一般的には村上春樹の最新作の話題で持ち切りだったが、当時、国内の小説界の最大の収穫は成瀬だと直感し、それは間違っていなかった。ありがとう!
#読了
December 4, 2025 at 2:47 AM
ミア・コウト『夢遊の大地』(伊藤秋仁訳、国書刊行会)読む。
内戦で荒れ果てたモザンビークで、老人と記憶をなくした少年の幻想的ロードノベル。焼け焦げたバスのそばで死んでいた男の鞄にあったノート11冊を入り口に、少年らの旅とノートの書き手の旅がシンクロし溶け合っていく。最後の段落に、すべてが疾走し収斂していく。
#読了
December 3, 2025 at 1:40 AM
リチャード・パワーズ『プレイグラウンド』(木原善彦訳、新潮社)読む。
海とAIという人類に残された広大無辺なフロンティア世界を描いた長編。あまりに美しく、はかなく、愛おしい描写に自然と涙がこぼれてしまう。パワーズってこんなに泣かせにきたっけ? 一読して、ここに描かれた半分の世界は虚構に過ぎなかったのかという思いがよぎったが、そもそも全編がパワーズの創作の掌の上のものだということにはっと気づき、単純ながら核心的な構造に呆然とする。文句なしの傑作。
#読了
December 2, 2025 at 2:12 AM
深堀骨『アマチャ・ズルチャ 柴刈天神前風土記』(早川書房)読む。
ヒジョーに紹介しづらい、奇作怪作とその紙一重にある境界線上の短編8編収録。下品とも荒唐無稽ともトンデモともなんとでもいえるが、ときどきものすごく詩的であったりするからかなわない。3作読めば投げ出したくなる一方で、「飛び小母さん」には感動しちゃったよ。
#読了
November 18, 2025 at 1:37 AM
永井路子『波のかたみ 清盛の妻』(中公文庫)読む。
平家の興隆と滅亡を、清盛の妻として、一門の母として、天皇の祖母としての時子の視点から見た平家の物語。時子を主役に据えることで新しい見方を提示している。時子の弟の時平の描き方が抜群によい。判官贔屓というより平家贔屓の自分にとって申し分のない面白さだった。
#読了
November 13, 2025 at 3:16 AM
インタン・パラマディタ『彷徨 あなたが選ぶ赤い靴の冒険』(太田りべか訳、春秋社)読む。
ここではないどこかへ行きたいという願いを叶える赤い靴。悪魔から譲られた靴を履いて、あなたの/わたしの選択が自分の物語を冒険へと導く。昔懐かしいゲームブック形式で、マルチエンディング。きょう終えた物語は、きっとあしたには異なった結末を迎えることになるだろう。だけれどもひとまず本をおこうと思う。自分がいま/ここで読んだ物語もひとつの選択なのだから、それを大事にしたいから。
#読了
November 10, 2025 at 12:13 AM
アグスティナ・バステリカ『肉は美し』(宮﨑真紀訳、河出書房新社)読む。
人肉食が合法化された世界を描く。という粗筋で「肉はうまい」ってんだから、はっちゃけた明るいカニバリズム(?)かと思って読んだら、全編通して陰鬱かつ抑圧のディストピア系ホラーでしたよ。ある意味、ひねりのない描写が、つまり家畜の解体をそのまま人体に当てはめたという点で、ストレートすぎて逆に斬新。そして工業的な扱いが寒々しさをいや増す。結末は、うまいというかこれしかないだろうなという感じだけど、ちょっとオチをキレイにつけすぎたような。
#読了
November 6, 2025 at 11:50 PM
司馬嫌い的に『街道をゆく』は許容できるかどうか、読めるかどうか。
November 3, 2025 at 8:46 AM
島田荘司『占星術殺人事件 改訂完全版』(講談社文庫、電子版)読む。
あ、しまった、これ、バカミスで有名な○○○○の『○○の○○○○』じゃん、というかこっちが本家で、読む順番が逆だったと20年以上経って気づく。主要トリックが判明してからはそういう意味で楽しく読めたが、それ以前の話の展開が長い……。自分のアタマのにぶさをおいておくとしても、本格系はやや苦手かもしらん。
#読了
November 3, 2025 at 12:43 AM
永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫)読む。
衆人環視の中で起きた仇討ち。後年、現場である芝居小屋近くに当時の状況を聞いて回る武士が現れるが、その目的は.......。藪の中的展開になるのかと、なかなか事件の真相が明らかにならないなかに、人情噺などでホロリとさせながら最後は二転三転。終盤、オチが読めたが、だからといって興ざめするというよりむしろそうであってこそと納得の展開に心が晴れやかになるおもしろさ。直木賞&山本周五郎賞。
#読了
October 28, 2025 at 10:32 PM
楊双子『四維街一号に暮らす五人』(三浦裕子訳、中央公論新社)読む。
古い日本風家屋をシェアする女子学生4人と大家の共同生活とそこで起こるちょっと不思議な出来事と素敵な魔法。ライトでポップ、しかし奥行きがありずしりとくる展開。シスターフッドにあふれ、いつまでも読んでいたい心地よさに、美味しそうな台湾グルメが相乗する佳品。
#読了
October 27, 2025 at 12:31 AM
カテジナ・トゥチコヴァー『ジートコヴァーの最後の女神たち』(阿部賢一・豊島美波訳、新潮社)読む。
チェコの山村で代々不思議な力を受け継いできた〈女神〉たち。唯物論的進歩主義のもと弾圧された共産時代、オカルト思想とアーリア主義が混淆したヒトラーのもとで目をつけられたナチス時代、そして民主化され過去の資料が公開された1990年代を舞台に〈女神〉の末裔が自らのルーツと秘められた謎を追う。事実を下敷きにし実際の資料を援用した手法で興味深いが、中盤がどうにもダレた。そして物語性がぼやけ気味なのか題材が馴染み薄すぎて頭に入ってこないせいなのか、テーマが拡散して全体に薄味の印象。
#読了
October 26, 2025 at 2:07 AM
ロイス・マクマスター・ビジョルド『魔術師ペンリックと暗殺者』(鍛治靖子訳、創元推理文庫)読む。
〈五神教〉世界のペンリック・シリーズ第4弾。毎度毎度読んだ端から忘れていくからいまいち乗り切れないところ、今作はシリーズ初の長編(プラス中編)なのでどっぷり世界観に浸れる。そして浸れば浸るほど、実に豊穣で奥行きのある世界と軽妙なやりとり、魅力ある登場人物にうっとり。ビジョルドはおもしろいぞ。
#読了
October 22, 2025 at 1:02 AM
西村亨『自分以外全員他人』(ちくま文庫)読む。
なかなか言えないことだと思う、「全員他人」だなんて。40代男性独身、コロナ禍、生きていくのがつらく、日々のことに傷付きストレスを抱え、鬱屈と攻撃性をためこんでいく。そんな彼に容赦なく訪れる出来事......。昇華するのか破滅するのかという物語上の帰結はおいて、他人は他人であると認識するには自他への高い解像度が必要なわけで、そこはよく書けているなと。2023年太宰賞。
#読了
October 17, 2025 at 12:48 PM
壺井栄『妻の座』(けいこう舎)読む。
妻を亡くし4人の子を抱える知人作家の後添えに請われて自分の妹を紹介するも、亡妻を忘れられぬばかりか不器量な容姿に耐えられず2カ月で破婚する。この男の身勝手さ(モデルはプロレタリア作家のT)はひどいが、妹を支えようとしながらも結構めちゃくちゃなこと考えている主人公(もちろん壺井栄本人)も笑っちゃうくらいひどいのは時代の限界かもしれんが、それを隠さず書いてしまうところがやはりすごい。本編120ページに対して、解説60ページという非常に愛のあるつくり且つ面白い作家案内もよい。
#読了
October 16, 2025 at 3:18 AM
エミリー・テッシュ『宙の復讐者』(金子浩訳、早川書房)読む。
地球をぶっ壊されて生き残った人類が異星人への逆襲を企図して雌伏し、純然たる復讐心を研ぎ澄ませるべくミニ管理・統制国家と化したコロニーで育った少女たち。相手は時空を自在に操る装置〈叡智〉。はてさてどうなるか、と、前半は割とオーソドックスなミリタリーSF、そして後半は......。長いのに詰め込み過ぎというか欲張り過ぎなところがあって、この長さも必然なんだけれど、ちょっと惜しいかなあと。
#読了
October 15, 2025 at 2:34 AM
アルンダティ・ロイ『至上の幸福をつかさどる家』(パロミタ友美訳、春秋社)読む。
墓場に住み始めた〈第三の性〉ヒジュラー、そこに集まる人々、動物。カシミール紛争から現在のヒンドゥー至上主義につながるインド現代史。見えているもの、見えている姿が、本当にそのままのものなのか、姿なのか。一筋縄にいかない事情、情勢がある。外からは捉えにくい物事を内から伝えるのも文学の力。いや、しかし、なかなかに手強い読書だった。
#読了
October 7, 2025 at 9:04 AM
木山捷平『角帯兵児帯/わが半生記』(講談社文芸文庫)読む。
雑誌新聞掲載のエッセイ群と未完の自身の半生記。いまはどうだか知らないが、読者とのやりとりが非常に身近なことに驚く。いちばんおもしろかったのが「現代文芸家色紙展」。当時の作家らが一言したためた色紙を集めた展覧会の短い報告だが、それぞれの寸評に愛がこもっていて楽しい。
#読了
October 2, 2025 at 11:48 PM
木山捷平『井伏鱒二/弥次郎兵衛/ななかまど』(講談社文芸文庫)読む。
短編10作と井伏鱒二、太宰治のそれぞれについて書いた小品2作。短編小説はすっとぼけながらあまりに自然に脱線するから、いったい何を読まされているのかと。それでいてまったく破綻していないのがとにかくすごい。晩年の作品が多いせいかちょっと寂しくもあり、それでいて枯れた色気があってなお良い。
#読了
September 23, 2025 at 12:23 AM
なお『神戸/続神戸』が新潮文庫から刊行され、お求めやすくなっております。
September 21, 2025 at 10:34 PM
西東三鬼『神戸/続神戸/俳愚伝』(講談社文芸文庫)読む。
〈おそるべき君等の乳房夏来る〉。新興俳句の旗手による自伝的3作品。なにもかも、妻子からも逃げ出して暮らした神戸。戦時下にありながらコスモポリタン的な様相を呈す街の、これも国際色豊かにさまざまな人が集うホテルを舞台に繰り広げる人間模様。語り口から内容までこれが滅法おもしろい。新興俳句の人だから、というわけでもないんだろうけれど、かなり自由でぜんぜん古くない。「俳愚伝」はいわゆる京大俳句事件の顚末も描かれる。
#読了
September 21, 2025 at 10:31 PM
平中悠一『She’s Rain』(河出文庫)読む。
1980年代の神戸の街を遠景に、夏休みを目前にした高校2年生の男女のすれ違う思いを瑞々しく描いた小品。自分の好きなそのままでいて欲しいという気持ちの行く先に何が待つのか知らない10代の少年による語りは、痛々しくも爽やか。庄司薫的ナイーブさに、村上春樹的めんどくささと村上龍的関係性を混ぜ込んだような、といったら怒られるかな。でも、なかなかにすっきりした読後感でよい(「かわいい」を「かあいい」と表記する時代性はさすがにちょっと。。。)。1984年度の文藝賞。
#読了
September 17, 2025 at 10:43 PM
ジョエル・ドン・ハンフリーズ『オーバー・ザ・トップ』(村田勝彦訳、角川文庫)読む。
40年ほど前のスタローン主演映画のノベライズ。だいたいは記憶通りで、長らく会っていなかった主人公と息子の、空白の時を取り戻すハートフルな物語。意地の悪い義父はほんとに意地悪く描かれ、気持ちのいいトラック野郎たちは気持ちよく描かれてと、まあノベライズだよねととりたてていうところはないけれど、勢いと熱量のあった映画を想起させるにほどよい感じで。
#読了
September 17, 2025 at 12:04 AM
デイヴィッド・マレル『一人だけの軍隊』(沢川進訳、ハヤカワ文庫)読む。
『ランボー』原作。映画とかなり風合いが違ってびっくり。映画は映画で良いが、こちらはランボーと敵役の心理描写がかなり細かいうえ、敵役の闘うべき理由がはっきりしていておもしろい。映画の印象が強いだけにいい意味で裏切られ、読んでよかった。調子に乗って映画も久しぶりに見たけど、こっちもやはりスタローンがよくっておもしろい。
#読了
September 15, 2025 at 1:52 AM
リチャード・フラナガン『第七問』(渡辺佐智江訳、白水社)読む。
これはタスマニアの作家のメモワール。太平洋戦争で捕らわれ日本で強制労働させられた父、誰よりもはやく原子爆弾を予想したH.G.ウェルズ、彼の作品を通して破滅的な核戦争の到来を危惧し奔走する異能の物理学者、そして広島で炸裂する原爆⋯⋯。父と母、一族、自分に迫った死を見つめ、けっして答えの出ない問いを繰り返し繰り返し繰り返し問う。問わなければならなかった、問わなければならない、問い続けなくてならない。断章からなる記憶とエピソードに完全に打ちのめされた。これはすごい。
#読了
September 12, 2025 at 12:33 AM