「絶対幸せにするからね。
…よし、もう喋っていいよ」
時計を確認し、オベは間抜け顔を晒すぐ♂に許可を出す。
「え、あの…これは……」
「見てのとおりだよ。あ、ちなみに母さんの許可は取ってるから。今日から花嫁修業頑張ってね」
指輪を嵌めた左手の甲に口つけたオベは美しく微笑み、「いいよって、言うでしょりつか?約束したもんねきみは…」
「……」
顔があつい。言いたいことが多すぎてまとまらないが、1つ言えることはあった。
「いいよ、おべろん。」
可愛い従兄弟と迎えた夜の結果だが――翌日からぐ♂オベを可愛いと形容しなくなった。
「絶対幸せにするからね。
…よし、もう喋っていいよ」
時計を確認し、オベは間抜け顔を晒すぐ♂に許可を出す。
「え、あの…これは……」
「見てのとおりだよ。あ、ちなみに母さんの許可は取ってるから。今日から花嫁修業頑張ってね」
指輪を嵌めた左手の甲に口つけたオベは美しく微笑み、「いいよって、言うでしょりつか?約束したもんねきみは…」
「……」
顔があつい。言いたいことが多すぎてまとまらないが、1つ言えることはあった。
「いいよ、おべろん。」
可愛い従兄弟と迎えた夜の結果だが――翌日からぐ♂オベを可愛いと形容しなくなった。
「あの人はただの用務員さんだから、絶対違うから安心して欲しい」
そっかぁ、悩ましい声を出すぐ♂にオベは咳払いを1つ落とすと、りつか、と呼ぶ。
「うん?どうした…跪いて、具合悪い?おばさんに話して病院に…!」
「りつか、5分だけ口を閉じてて。5分だ、いいね?」
ぐ♂は可愛いオベの頼みを断るはずないだろ、そうジェスチャーで伝えた。
「…じゃあ言うよ。
藤丸りつかさん、僕と結婚を前提に付き合って下さい。」
上着の内ポケットから取り出した小箱を開けたオベは、その中身を
「あの人はただの用務員さんだから、絶対違うから安心して欲しい」
そっかぁ、悩ましい声を出すぐ♂にオベは咳払いを1つ落とすと、りつか、と呼ぶ。
「うん?どうした…跪いて、具合悪い?おばさんに話して病院に…!」
「りつか、5分だけ口を閉じてて。5分だ、いいね?」
ぐ♂は可愛いオベの頼みを断るはずないだろ、そうジェスチャーで伝えた。
「…じゃあ言うよ。
藤丸りつかさん、僕と結婚を前提に付き合って下さい。」
上着の内ポケットから取り出した小箱を開けたオベは、その中身を
「俺らもご飯食べに行こうか、奮発して高いとことか!」
背を伸ばしつつ提案するぐ♂に、オベは何も返さない。
「おべろん?」
「ねぇ、りつか…僕が小学生の時にした約束、覚えてる?」
約束、やくそく…確か、好きな人が出来たら応援し、更にいいよって言うアレか…「うん、覚えてるよ…ってもしかして好きな人できたの?!え、もしかして近くにいる?!」周りを見渡してもそれらしい子は見つからない。だが、「…僕のうんと近くにいるよ。」とヒントをくれたオベにぐ♂は目を凝らす。
「う〜ん…?」「多分、言わないと分かんないかも」
ワイシャツのボタンを1つ外し、オベはネクタイを緩める
「俺らもご飯食べに行こうか、奮発して高いとことか!」
背を伸ばしつつ提案するぐ♂に、オベは何も返さない。
「おべろん?」
「ねぇ、りつか…僕が小学生の時にした約束、覚えてる?」
約束、やくそく…確か、好きな人が出来たら応援し、更にいいよって言うアレか…「うん、覚えてるよ…ってもしかして好きな人できたの?!え、もしかして近くにいる?!」周りを見渡してもそれらしい子は見つからない。だが、「…僕のうんと近くにいるよ。」とヒントをくれたオベにぐ♂は目を凝らす。
「う〜ん…?」「多分、言わないと分かんないかも」
ワイシャツのボタンを1つ外し、オベはネクタイを緩める
銀の髪を柔らかく結い、ハンカチで涙を拭う彼女の隣で、ぐ♂はシャッタータイミングを一切逃さなかった。
「ありがとう、りつかちゃん。これからもウチの子の面倒、しっかりお願いするわね。」
「勿論ですよおばさん、困ったら何でも頼って下さい!」
小声で返せば、彼女は「末永く、すえながーくよ、りつかちゃん。」とまたニコニコ微笑んでいた。
式は順調に終わり、玄関口付近でオベを待つ。そして、現れたオベと写真を撮ると「じゃあ、邪魔者は退散するわね」そう言って
銀の髪を柔らかく結い、ハンカチで涙を拭う彼女の隣で、ぐ♂はシャッタータイミングを一切逃さなかった。
「ありがとう、りつかちゃん。これからもウチの子の面倒、しっかりお願いするわね。」
「勿論ですよおばさん、困ったら何でも頼って下さい!」
小声で返せば、彼女は「末永く、すえながーくよ、りつかちゃん。」とまたニコニコ微笑んでいた。
式は順調に終わり、玄関口付近でオベを待つ。そして、現れたオベと写真を撮ると「じゃあ、邪魔者は退散するわね」そう言って
「…そっか。じゃあ、その時が来たらりつか…絶対いいよって言ってね、約束だよ!」
勿論だと頭を上げれば、小さな従兄弟の顔がうっすら赤い。熱中症かと慌てて水筒の麦茶を飲ませる。だが「…10年て、きびしいな……」そう呟いたオベの言葉の意味だけは少し分からなかった。
時がまた経ち、オベの母のぐ♂を見る目に警戒の色は無くなった。変わりにあるのは、変に生ぬるく焦れったい視線。
ニコニコ微笑む顔はオベと同じく美しい。
「…そっか。じゃあ、その時が来たらりつか…絶対いいよって言ってね、約束だよ!」
勿論だと頭を上げれば、小さな従兄弟の顔がうっすら赤い。熱中症かと慌てて水筒の麦茶を飲ませる。だが「…10年て、きびしいな……」そう呟いたオベの言葉の意味だけは少し分からなかった。
時がまた経ち、オベの母のぐ♂を見る目に警戒の色は無くなった。変わりにあるのは、変に生ぬるく焦れったい視線。
ニコニコ微笑む顔はオベと同じく美しい。
声をあげたぐ♂は小さな従兄弟の身体を抱きしめる。
「俺の可愛いおべろん、世界で一番の存在だっていつも思ってるよ。後は昔見たくお兄ちゃんって呼んでくれたいいんだけど…ぃ"っ?!」
つま先を踏みつけられ呻くぐ♂を無視しオベは乱れた髪を直す。
「ふぅん…なら、僕が好きな人出来たって言ったら…りつかは応援してくれる?」落ちた軍手を拾うべくしゃがんだ時に
声をあげたぐ♂は小さな従兄弟の身体を抱きしめる。
「俺の可愛いおべろん、世界で一番の存在だっていつも思ってるよ。後は昔見たくお兄ちゃんって呼んでくれたいいんだけど…ぃ"っ?!」
つま先を踏みつけられ呻くぐ♂を無視しオベは乱れた髪を直す。
「ふぅん…なら、僕が好きな人出来たって言ったら…りつかは応援してくれる?」落ちた軍手を拾うべくしゃがんだ時に
「あのさぁりつか、今就活中っておばさんから聞いてたけど??」
抜いた雑草を片手に持った11歳の従兄弟がしゃがむ21歳の自分に声を掛ける。大学生生活も後半に差し掛かったぐ♂は院には進まず就職すると聞いた周囲は「収入の使い道はオベの大学費用にあてそう」「出世したらオベの親権奪いそうだから遠くに逃げろ」最近オベの母もぐ♂を見る目が大敵へのそれに変わりつつあった。
⤵︎ ︎
「あのさぁりつか、今就活中っておばさんから聞いてたけど??」
抜いた雑草を片手に持った11歳の従兄弟がしゃがむ21歳の自分に声を掛ける。大学生生活も後半に差し掛かったぐ♂は院には進まず就職すると聞いた周囲は「収入の使い道はオベの大学費用にあてそう」「出世したらオベの親権奪いそうだから遠くに逃げろ」最近オベの母もぐ♂を見る目が大敵へのそれに変わりつつあった。
⤵︎ ︎
そして、その表情から読み取れた一つの可能性をオは見つけ、悟り…拳を握りしめた。
――りつかは、僕に恋をしてしまった
叶えられそうになかった恋が実ったのが、こんなにも辛く苦しいなんて…。
ふと、あの日記にあった「りつかのころし方」を思い出し、オはそれを知られぬ様「わかった」と返した。
な感じの話を以前伏せったーで書いてたのを見つけたので此処にも書き記しておくわ。
そして、その表情から読み取れた一つの可能性をオは見つけ、悟り…拳を握りしめた。
――りつかは、僕に恋をしてしまった
叶えられそうになかった恋が実ったのが、こんなにも辛く苦しいなんて…。
ふと、あの日記にあった「りつかのころし方」を思い出し、オはそれを知られぬ様「わかった」と返した。
な感じの話を以前伏せったーで書いてたのを見つけたので此処にも書き記しておくわ。
日頃から無欲と思っていたりつかの我儘を聞けるのが楽しみで内心胸が高鳴る。
「僕にできることなら何でもするし、用意してみせるから。りつか、きみは何が欲しい?」
だがりつかは直ぐには答えず、もじもじしながら翅をふるわすだけである。
珍しい態度にオは目を丸くしつつも「なんでもいいんだよりつか、きみにはその権利があるのだから」
「…うん。
あのね、おべろん…俺……、
――おべろんと手を繋ぎたい、んだ……。」
頭が真っ白になるとはこういう感じか、客観的に自身を見る思考に囚われそうになるが、
日頃から無欲と思っていたりつかの我儘を聞けるのが楽しみで内心胸が高鳴る。
「僕にできることなら何でもするし、用意してみせるから。りつか、きみは何が欲しい?」
だがりつかは直ぐには答えず、もじもじしながら翅をふるわすだけである。
珍しい態度にオは目を丸くしつつも「なんでもいいんだよりつか、きみにはその権利があるのだから」
「…うん。
あのね、おべろん…俺……、
――おべろんと手を繋ぎたい、んだ……。」
頭が真っ白になるとはこういう感じか、客観的に自身を見る思考に囚われそうになるが、
きみが恋を知らなくて良かった、なんて。
考えて、更に自分の心を傷つけた。
━━━━━━━━━━━━━━━
それから半年、2年と過ぎオは今日もガラスの奥に存在する美しい森に生きる人工妖精を慈しむ。
「あのね、おべろん…この間のお話なんだけど…」
「…それはきみの誕生日について、かな
?」
整えた室内で1人とひとりがガラス越しに対話をする。
過ごす日々が楽しすぎて、いつの間にかりつかがこの世に生を受けた日がもう終わっていたのを後悔したオはぐ♂に欲しいものを尋ねた。
その時は何も無い、今が楽しいからと返されてしまい、
きみが恋を知らなくて良かった、なんて。
考えて、更に自分の心を傷つけた。
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それから半年、2年と過ぎオは今日もガラスの奥に存在する美しい森に生きる人工妖精を慈しむ。
「あのね、おべろん…この間のお話なんだけど…」
「…それはきみの誕生日について、かな
?」
整えた室内で1人とひとりがガラス越しに対話をする。
過ごす日々が楽しすぎて、いつの間にかりつかがこの世に生を受けた日がもう終わっていたのを後悔したオはぐ♂に欲しいものを尋ねた。
その時は何も無い、今が楽しいからと返されてしまい、
「いっぱいいっぱいゴメンネって言っててね、治そうとしてくれたんだけど駄目だったんだ。でも、これはこれでかっこいい?でしょ?」
ふふん、鼻を鳴らし二本指を立ててりつかは笑う。
それを見つめ、かっこいいとも、そう返事をしたオは無理やり缶詰めの中身を飲み込む。
日記に書かれていた通り、りつかはこの森からは出られない。
――りつかの森にも、僕らは入れないように。
人間には有害な環境の人工森の中で、りつかは生きていて、いつだってその手に触れたい衝動をガラス一枚が阻んだ。
もどかしく、さみしい。
「いっぱいいっぱいゴメンネって言っててね、治そうとしてくれたんだけど駄目だったんだ。でも、これはこれでかっこいい?でしょ?」
ふふん、鼻を鳴らし二本指を立ててりつかは笑う。
それを見つめ、かっこいいとも、そう返事をしたオは無理やり缶詰めの中身を飲み込む。
日記に書かれていた通り、りつかはこの森からは出られない。
――りつかの森にも、僕らは入れないように。
人間には有害な環境の人工森の中で、りつかは生きていて、いつだってその手に触れたい衝動をガラス一枚が阻んだ。
もどかしく、さみしい。
日記にあった掠れ文字の「あいしてる」に込められた感情には、共感しかなかった。
粗探しして見つけた缶詰めを食べながら、人工の樹木に実ったりんごをもぎ取る後ろ姿を見守る。
りつかの翅、手足には僅かなヒビが入っていた。本人に尋ねると、
日記にあった掠れ文字の「あいしてる」に込められた感情には、共感しかなかった。
粗探しして見つけた缶詰めを食べながら、人工の樹木に実ったりんごをもぎ取る後ろ姿を見守る。
りつかの翅、手足には僅かなヒビが入っていた。本人に尋ねると、