そこまで言って、歌仙は言葉をとめた。茫洋とした目で庭を見て、それから筆を置く。
「いや…よそうか。和泉守の元気な歌がこの場にはふさわしいよ。少し雅には欠けるけれどね」
そうして静かに笑った。
「その雅も、人間無骨が足してくれた。この一句、うつしてくれるかい?君の手で」
歌仙が気に入った和泉守の歌を、人間無骨が書いた短冊。
庭の紫陽花をいけたそばに、しばし飾ってあったという。
終
そこまで言って、歌仙は言葉をとめた。茫洋とした目で庭を見て、それから筆を置く。
「いや…よそうか。和泉守の元気な歌がこの場にはふさわしいよ。少し雅には欠けるけれどね」
そうして静かに笑った。
「その雅も、人間無骨が足してくれた。この一句、うつしてくれるかい?君の手で」
歌仙が気に入った和泉守の歌を、人間無骨が書いた短冊。
庭の紫陽花をいけたそばに、しばし飾ってあったという。
終
人間無骨はスタスタと寄ってきて、和泉守とは反対側の歌仙の隣に腰掛けた。
「今は俺が一句詠んだところで…」
賑やかに説明する和泉守の説明をきき、人間無骨は「では下の句を」と切り出した。
「香りなくとも 色ぞありける」
雨で濡れたことで本来の美しい色が強調されている、とでも言うかのような歌に、歌仙はほうと感心した。和泉守もおおと唸って頷いている。
「では僕は返歌をしようかな…」
いろ…、いろをとって…。いつもの手順で返歌を考える。
人間無骨はスタスタと寄ってきて、和泉守とは反対側の歌仙の隣に腰掛けた。
「今は俺が一句詠んだところで…」
賑やかに説明する和泉守の説明をきき、人間無骨は「では下の句を」と切り出した。
「香りなくとも 色ぞありける」
雨で濡れたことで本来の美しい色が強調されている、とでも言うかのような歌に、歌仙はほうと感心した。和泉守もおおと唸って頷いている。
「では僕は返歌をしようかな…」
いろ…、いろをとって…。いつもの手順で返歌を考える。