ディアは”選ぶ”ことを忌避していたわけじゃないけど、選ぶ以前に置かれた環境がそうあるものだったし、目の前のものと付き合っていく人生だったから選択を求められることもそうなかった。やるやらないの話というより、”経験不足からの苦手意識”はあると思う。選択＝他を選ばない が意味していて、誰かを特別視することは、他者を相対的に軽視することを内包しているから。

その不均衡を避けたいが為にディアが博愛的理念を全員と個として愛すると言い張るのは、努力をすれば全員を愛せると思い込んだ彼の勘違いでしかないし、自分を理解しきれていない故の行動な気がする。ふんわり矛盾しているんだよね、すみません。すみません。

『皆を愛しているだなんて誰も愛していないのと同じだ』これ、これが父親という個に特別自分を愛してほしいと望んでいたイリヤーくんに言われていたのが芸術点高い。単なる喧嘩、反論ではなくディアが守ってきた理念の根幹を揺るがす命題であったし、イリヤーくんにとってディアがこれまで築いてきた関係はすべて欺瞞に過ぎず、ディアの愛情表現は個別性を持たない為に実質的に無価値なんだ！と訴えてるんだよね。自身の思想で相手を貶しているけど、どちらが正しいでもないから面白い。