見えないものを視てる狂った正気のオタクの基本壁打ち、メモ
最近は意源の話
あゝ、やはり好みの男前である。だめだ、己の弱点だ。
「二日酔いはしてないか?どこか調子が悪いとかあるか?」
「……頭痛を、少し覚えるだけですので………大丈夫でさ」
「まだ寝ておるといい。俺は午前だけ城中へ行かねばならぬが、昼には帰ってくる共に昼餉を食おう。お前さえ良ければ今宵も泊まっていかんか?まだ体調が優れぬようだからそうするといい。ではな、何かあれば三裏に申せ」
そう言って意は源の頭を人無でして微笑むと、部屋から再び出て行った。
あとに残るは夕焼け色した頬の男のみ。
あゝ、やはり好みの男前である。だめだ、己の弱点だ。
「二日酔いはしてないか?どこか調子が悪いとかあるか?」
「……頭痛を、少し覚えるだけですので………大丈夫でさ」
「まだ寝ておるといい。俺は午前だけ城中へ行かねばならぬが、昼には帰ってくる共に昼餉を食おう。お前さえ良ければ今宵も泊まっていかんか?まだ体調が優れぬようだからそうするといい。ではな、何かあれば三裏に申せ」
そう言って意は源の頭を人無でして微笑むと、部屋から再び出て行った。
あとに残るは夕焼け色した頬の男のみ。
「……不快ではなかった。そんなことをされたくらいで、俺とお前の絆が揺らぐものか。お前、あの口吸いをしたら満足したのか否かそのまま俺の腕の中で眠りこけたのだぞ」
「そ……それはまこと不躾なことを……」
意は肩を震わせて笑った。
「埒が明かぬからそのまま抱き抱えて布団に運んだのだ。羽織と袴は寝苦しいだろうから脱がせた。……それ以上のことはしておらぬぞ」
その言葉に源が顔を真赤にさせ、バッと顔を勢いよく上げた。
「そ、そんなこと!!思ってなどおりませんって!!!」
「……ふふふ、ようやく顔を上げてくれたな原内」
「ッ……!」
「……不快ではなかった。そんなことをされたくらいで、俺とお前の絆が揺らぐものか。お前、あの口吸いをしたら満足したのか否かそのまま俺の腕の中で眠りこけたのだぞ」
「そ……それはまこと不躾なことを……」
意は肩を震わせて笑った。
「埒が明かぬからそのまま抱き抱えて布団に運んだのだ。羽織と袴は寝苦しいだろうから脱がせた。……それ以上のことはしておらぬぞ」
その言葉に源が顔を真赤にさせ、バッと顔を勢いよく上げた。
「そ、そんなこと!!思ってなどおりませんって!!!」
「……ふふふ、ようやく顔を上げてくれたな原内」
「ッ……!」
「……原内、さっきも言ったが俺は別に気にしてなどおらん。口吸い、の相手がお前だったしな」
「てめえは男色家だが、あなた様は違う。気なんか遣わなくともいいンです、不快だったでしょう若くもねえ野郎から口吸いを、しかもあんなマブ相手の陰間や遊女のするようなものを」
源の声がどんどん沈んでいく、意はそんな源の目の前に腰を下ろしその背に手をポンと乗せれば、源の身体がビクっと震えた。
「……不快だなど、思っておらぬ。そうだったらすぐにでもお前を引き剥がすことくらいする。そうしなかったのは、驚いたからだ。不快ではない」
「……原内、さっきも言ったが俺は別に気にしてなどおらん。口吸い、の相手がお前だったしな」
「てめえは男色家だが、あなた様は違う。気なんか遣わなくともいいンです、不快だったでしょう若くもねえ野郎から口吸いを、しかもあんなマブ相手の陰間や遊女のするようなものを」
源の声がどんどん沈んでいく、意はそんな源の目の前に腰を下ろしその背に手をポンと乗せれば、源の身体がビクっと震えた。
「……不快だなど、思っておらぬ。そうだったらすぐにでもお前を引き剥がすことくらいする。そうしなかったのは、驚いたからだ。不快ではない」
「原内、調子はどう……どうしたというのだ」
真上から困惑した声が降ってきた、知ったこっちゃァない。
「……昨夜のこと、大変申し訳ごさいません。謝罪してもしきれません」
「原内。気にしてなどおらん。顔を上げてくれ。俺の方こそお前が下戸だと知っていたのにも関わらず、お前の前に誤って酒を置いてしまった。これで痛み分けじゃ」
「……いンや、合わせる顔がねえ。あなた様に、く、口吸いを……」
「……覚えておったのか」
「……はい。何もかも全て。なので合わせる顔がねえんですよ」
「原内、調子はどう……どうしたというのだ」
真上から困惑した声が降ってきた、知ったこっちゃァない。
「……昨夜のこと、大変申し訳ごさいません。謝罪してもしきれません」
「原内。気にしてなどおらん。顔を上げてくれ。俺の方こそお前が下戸だと知っていたのにも関わらず、お前の前に誤って酒を置いてしまった。これで痛み分けじゃ」
「……いンや、合わせる顔がねえ。あなた様に、く、口吸いを……」
「……覚えておったのか」
「……はい。何もかも全て。なので合わせる顔がねえんですよ」
さああと血の気が引く。
なんてことを、しかもあの多沼様に。なんということを。
この恋は、墓場まで持っていくつもりなのに。なんと軽率な。だから酒は避けていたのに。東柵や心之助に口吸いをするのとはわけが違う。
源は布団から起き上がって頭を抱えた。
その時。
「……原内。入るぞ」
意が襖を開けて、室内へ。
源は慌てて居住まいを正し畳の上に転がり出ると、乱れた着流しのまま畳に額を擦り付けた。
畳まれた羽織と袴が視界に入る。
さああと血の気が引く。
なんてことを、しかもあの多沼様に。なんということを。
この恋は、墓場まで持っていくつもりなのに。なんと軽率な。だから酒は避けていたのに。東柵や心之助に口吸いをするのとはわけが違う。
源は布団から起き上がって頭を抱えた。
その時。
「……原内。入るぞ」
意が襖を開けて、室内へ。
源は慌てて居住まいを正し畳の上に転がり出ると、乱れた着流しのまま畳に額を擦り付けた。
畳まれた羽織と袴が視界に入る。
源が目を覚ませばこめかみがズキリと痛んだ。視界に広がるは広い部屋の天井。
神田の長屋ではないのは確実だ。
「……ここ、は」
見覚えのある豪華な絵が施された天井と、その龍が描かれた屏風絵。
まごうとこなき見慣れた田沼邸の客間。いつも源が宿泊する際に用意されるあの部屋だ。
「!!!」
蟀谷の痛みが嫌でも昨夜の痴態を思い出させた。
誤って置かれたのだろう酒を、酒だと気付かず一気飲みしてしまった己。そこから意識が曖昧だが、記憶は確かに残っている。己の奇才と謳われし脳を呪った瞬間はあとにも先にもこの時のほか無いだろう。
泥酔しきった己は、前後不覚のまま意に擦り寄り、その唇に吸い付いたのだ。
源が目を覚ませばこめかみがズキリと痛んだ。視界に広がるは広い部屋の天井。
神田の長屋ではないのは確実だ。
「……ここ、は」
見覚えのある豪華な絵が施された天井と、その龍が描かれた屏風絵。
まごうとこなき見慣れた田沼邸の客間。いつも源が宿泊する際に用意されるあの部屋だ。
「!!!」
蟀谷の痛みが嫌でも昨夜の痴態を思い出させた。
誤って置かれたのだろう酒を、酒だと気付かず一気飲みしてしまった己。そこから意識が曖昧だが、記憶は確かに残っている。己の奇才と謳われし脳を呪った瞬間はあとにも先にもこの時のほか無いだろう。
泥酔しきった己は、前後不覚のまま意に擦り寄り、その唇に吸い付いたのだ。
戻った意はあからさまに様子がおかしかった。ふと己の指を唇に当てては、眉間にシワを寄せている。
三はニッコニコと微笑んだ。
「……何だその気持ち悪い笑みは」
「いえいえいえ某のことはお気になさらず」
「……もうよい、俺は寝る。あとは二人で楽しめ」
そう言って乱暴に部屋を去る意と、それを嬉しそうに見送る三と肩を竦める知。
「いやあ、ようやく春が来ましたなあ。原内殿も報われることでしょう」
「原内殿が?」
「ええ、殿も原内殿も互いに慕いあってるのです。ようやくご自覚なされた」
戻った意はあからさまに様子がおかしかった。ふと己の指を唇に当てては、眉間にシワを寄せている。
三はニッコニコと微笑んだ。
「……何だその気持ち悪い笑みは」
「いえいえいえ某のことはお気になさらず」
「……もうよい、俺は寝る。あとは二人で楽しめ」
そう言って乱暴に部屋を去る意と、それを嬉しそうに見送る三と肩を竦める知。
「いやあ、ようやく春が来ましたなあ。原内殿も報われることでしょう」
「原内殿が?」
「ええ、殿も原内殿も互いに慕いあってるのです。ようやくご自覚なされた」
る。
「………軽いな」
思いの外軽いその身体に驚きつつ、廊下へ出る意。熱の籠もった身体に、秋の夜風が心地良かった。
そうして源のために用意した部屋に入ると、もう敷かれていた布団に寝かせてやる。羽織は脱がせて畳んで枕元へ置き、源の肩まで布団をかけてやった。
「……おやすみ、原内」
そう言って部屋を出て襖を閉めた。そしてその前で、己の唇へそっと指を這わせた。
上気した瞳に、色のある微笑みと、蕩けるようなやわい声。
『たぬまさま』
口吸いの合間に、一度だけ唇を離してそう言って華やぐような笑みを浮かべた源の姿が脳裏にこびりつく。
「……ああ、クソ」
る。
「………軽いな」
思いの外軽いその身体に驚きつつ、廊下へ出る意。熱の籠もった身体に、秋の夜風が心地良かった。
そうして源のために用意した部屋に入ると、もう敷かれていた布団に寝かせてやる。羽織は脱がせて畳んで枕元へ置き、源の肩まで布団をかけてやった。
「……おやすみ、原内」
そう言って部屋を出て襖を閉めた。そしてその前で、己の唇へそっと指を這わせた。
上気した瞳に、色のある微笑みと、蕩けるようなやわい声。
『たぬまさま』
口吸いの合間に、一度だけ唇を離してそう言って華やぐような笑みを浮かべた源の姿が脳裏にこびりつく。
「……ああ、クソ」
全てが全て、この場を支配しているように感じられて、間近で見る源の顔は、よく整っていた。ああこいつはこんなにも美しい顔をしているのか、と唇を何度も奪われて口内を好き勝手犯されながら他人事のようにそう思った。
呼吸が苦しくなってきた頃、ようやく源は唇を離した。名残惜しそうに銀が糸を引いてぷつりと切れる。そして源はその直後、意の腕の中に倒れ込む。直に静かな寝息が聞こえてきた。
「………はあ。部屋で寝かせないとな」
「そ、それならば私が人を呼んで来ましょう!」
「よい、俺が運ぶ」
全てが全て、この場を支配しているように感じられて、間近で見る源の顔は、よく整っていた。ああこいつはこんなにも美しい顔をしているのか、と唇を何度も奪われて口内を好き勝手犯されながら他人事のようにそう思った。
呼吸が苦しくなってきた頃、ようやく源は唇を離した。名残惜しそうに銀が糸を引いてぷつりと切れる。そして源はその直後、意の腕の中に倒れ込む。直に静かな寝息が聞こえてきた。
「………はあ。部屋で寝かせないとな」
「そ、それならば私が人を呼んで来ましょう!」
「よい、俺が運ぶ」
今度こそ目を白黒させて思考停止する意、きゃーーーと色めき立つ三と、その三に手で目を隠される知。
そしてその意の顎に手を添えて上を向かせると、その唇に吸い付く源。
「ななななんと若殿様見てはなりませぬ!!」
「三裡……残念だが指の合間から全て見えておる……」
源がその手練手管全てを使って翻弄してくるのをなすがままにされる意。漏れる源の吐息と唾液の淫らな音。
今度こそ目を白黒させて思考停止する意、きゃーーーと色めき立つ三と、その三に手で目を隠される知。
そしてその意の顎に手を添えて上を向かせると、その唇に吸い付く源。
「ななななんと若殿様見てはなりませぬ!!」
「三裡……残念だが指の合間から全て見えておる……」
源がその手練手管全てを使って翻弄してくるのをなすがままにされる意。漏れる源の吐息と唾液の淫らな音。
「俺のことは構わぬ!!原内に温かいココアとタオルをたくさん持ってきてやってくれ!!」
と言いながら源にかけて巻き付けていく。頭の先から爪の先までタオルで包んでいく意。
「意欠様……あなた様がお風邪を召してしまいますよ……」
「俺は大丈夫だ。原内、体調はどうだ?大丈夫か?寒いだろう」
見かねた東が意にタオルをかけてきてくれる。
「東柵、意欠様にもっとタオル持ってきてやってくんねえか」
「そう思いましてほら、かっぱらってきましたぜ」
「俺のことは構わぬ!!原内に温かいココアとタオルをたくさん持ってきてやってくれ!!」
と言いながら源にかけて巻き付けていく。頭の先から爪の先までタオルで包んでいく意。
「意欠様……あなた様がお風邪を召してしまいますよ……」
「俺は大丈夫だ。原内、体調はどうだ?大丈夫か?寒いだろう」
見かねた東が意にタオルをかけてきてくれる。
「東柵、意欠様にもっとタオル持ってきてやってくんねえか」
「そう思いましてほら、かっぱらってきましたぜ」
「そういうことになるな。……お前、俺が名前を呼ぶと必ず『にゃん』と返事をしてくれていたな」
「そりゃァ……惚れた男がニコニコしながらてめえの名を呼ぶんだから、答えねえわけにゃあいきませんよ」
「喉を鳴らしていたのは」
「……これ以上俺に小っ恥ずかしい思いをさせねえでください」
「……またやってもよいか?」
「もう手前は猫じゃないんですけどねェ」
「そういうことになるな。……お前、俺が名前を呼ぶと必ず『にゃん』と返事をしてくれていたな」
「そりゃァ……惚れた男がニコニコしながらてめえの名を呼ぶんだから、答えねえわけにゃあいきませんよ」
「喉を鳴らしていたのは」
「……これ以上俺に小っ恥ずかしい思いをさせねえでください」
「……またやってもよいか?」
「もう手前は猫じゃないんですけどねェ」
「……いや離さぬ。お前が俺と同じ気持ちだってことが分かったのだ、離すわけがなかろう」
「た、ぬま様」
「原内、俺もお前のことが好きなのだ。だから猫になったからと油断して口吸いまでした。まさかそれで元に戻るとは思わなんだが……」
「……いや離さぬ。お前が俺と同じ気持ちだってことが分かったのだ、離すわけがなかろう」
「た、ぬま様」
「原内、俺もお前のことが好きなのだ。だから猫になったからと油断して口吸いまでした。まさかそれで元に戻るとは思わなんだが……」
源が真っ赤に染め上げた頬のまま、ふいっと顔を背けた。耳も赤焼だ。
「……これ、言わねえといけねえですかね。御勘弁願えたり」
「願えぬ。話さぬ限りこの態勢のままだぞ」
「……あーあ、穴があったら一生そこから出てこねェのによ…」
意に抱き上げられた時。まずいと思って暴れたが、意があまりにも愛おしそうな微笑みを浮かべて見つめてくるものだから「もうどうにでもなりやがれ」とヤケを起こしてそのままにさせた。
布団の中に誘われたときも「えーいままよ!」と。
つまるところ、
「……つまるところ、俺はあなた様を、その、」
「お前、もしかして俺のことが」
源が真っ赤に染め上げた頬のまま、ふいっと顔を背けた。耳も赤焼だ。
「……これ、言わねえといけねえですかね。御勘弁願えたり」
「願えぬ。話さぬ限りこの態勢のままだぞ」
「……あーあ、穴があったら一生そこから出てこねェのによ…」
意に抱き上げられた時。まずいと思って暴れたが、意があまりにも愛おしそうな微笑みを浮かべて見つめてくるものだから「もうどうにでもなりやがれ」とヤケを起こしてそのままにさせた。
布団の中に誘われたときも「えーいままよ!」と。
つまるところ、
「……つまるところ、俺はあなた様を、その、」
「お前、もしかして俺のことが」
「………はい」
「…お前、もしかして猫になってからも中身は人間のままであったのか」
意が思わず息を呑む。それに対して源は大きく息を吸って口を開いた。
「………えぇ、最初から最後まで。あなた様が猫のてめえに口吸いしたことも。腕枕で寝かせてくださったのも。何もかも全て覚えておりますし、中身は俺でした」
意は源を未だ膝に乗せたまま頭を抱えた。俺はなんて恥ずかしいことを。猫撫で声で「原内、原内、お前は本当に可愛いな」と何度言ったことか数え切れぬ。
「………嫌であったろう。だから最初抱き上げた時に暴れたのか」
「……実は……その、嫌では無かったのです、嫌では」
「………はい」
「…お前、もしかして猫になってからも中身は人間のままであったのか」
意が思わず息を呑む。それに対して源は大きく息を吸って口を開いた。
「………えぇ、最初から最後まで。あなた様が猫のてめえに口吸いしたことも。腕枕で寝かせてくださったのも。何もかも全て覚えておりますし、中身は俺でした」
意は源を未だ膝に乗せたまま頭を抱えた。俺はなんて恥ずかしいことを。猫撫で声で「原内、原内、お前は本当に可愛いな」と何度言ったことか数え切れぬ。
「………嫌であったろう。だから最初抱き上げた時に暴れたのか」
「……実は……その、嫌では無かったのです、嫌では」
何事かと目を開けば、目の前には肌色。
視線を下に向ければ、かすかに江戸紫色が見える。
江戸紫色?
「!??」
慌てて顔を引けば、視界が開けた。
なんと、そこにいるのは黒い猫ではなく正真正銘の原内で。己は今、源を膝の上に乗せながら抱きしめているような状況で。
意はばっと身を離した。
「げ、原内!!!!もとに戻ったのか!?」
「え、ええ、そのようで……」
源は何故か顔を耳まで真っ赤に染め上げている。夕焼けのように見事なまでに。
待て、今こいつは元の姿に戻ったことを『そのようで』と言ったか。
意もジワジワと耳を染める。
何事かと目を開けば、目の前には肌色。
視線を下に向ければ、かすかに江戸紫色が見える。
江戸紫色?
「!??」
慌てて顔を引けば、視界が開けた。
なんと、そこにいるのは黒い猫ではなく正真正銘の原内で。己は今、源を膝の上に乗せながら抱きしめているような状況で。
意はばっと身を離した。
「げ、原内!!!!もとに戻ったのか!?」
「え、ええ、そのようで……」
源は何故か顔を耳まで真っ赤に染め上げている。夕焼けのように見事なまでに。
待て、今こいつは元の姿に戻ったことを『そのようで』と言ったか。
意もジワジワと耳を染める。
「……どうしたらもとに戻るのだ、お前は」
意が源を見ると、気持ちよさそうに丸まって眠っている。こんな小さな身体なのに、倍以上の大きさもある人間という生き物に、隙を見せるなんて。そう思うと愛おしくてたまらなくなる。
「……まあ、確かに猫のように自由気ままなやつではあったが」
そう嘯けば、源がのそりと起き上がりこちらを不思議そうに眺めている。
「ふふふ、お前のことだ」
そう言って意は源を抱き上げた。そしてその鼻っ面に唇を寄せてちょんとつけた。慈しむ気持ちも止められずそのまま口にも唇で触れてみた。
次の瞬間。
「……どうしたらもとに戻るのだ、お前は」
意が源を見ると、気持ちよさそうに丸まって眠っている。こんな小さな身体なのに、倍以上の大きさもある人間という生き物に、隙を見せるなんて。そう思うと愛おしくてたまらなくなる。
「……まあ、確かに猫のように自由気ままなやつではあったが」
そう嘯けば、源がのそりと起き上がりこちらを不思議そうに眺めている。
「ふふふ、お前のことだ」
そう言って意は源を抱き上げた。そしてその鼻っ面に唇を寄せてちょんとつけた。慈しむ気持ちも止められずそのまま口にも唇で触れてみた。
次の瞬間。
喉を鳴らしながら目を細めて、小さく源がにゃあと鳴く。もとが原内だから普通の猫よりも賢いのかもしれない。意は関心しつつ、その柔らかい首筋に顔を埋めてみる。猫吸いと巷で呼ばれるそれが何となく分かったかもしれない。
源は埋められた刹那、身体をピクリと硬直させたが好きにさせていた喉も相変わらず鳴らしていることから、嫌ではないらしい。
顔を上げて源内を見る。
「……早くもとに戻ればよいな、原内」
源はそれには返事をせず、ぐっぐと鼻っ面を意の額に押し当ててきた。猫の挨拶だと聴いたことがある。
「おやすみ原内」
意は源に腕枕をさせたまま眠りについた。
喉を鳴らしながら目を細めて、小さく源がにゃあと鳴く。もとが原内だから普通の猫よりも賢いのかもしれない。意は関心しつつ、その柔らかい首筋に顔を埋めてみる。猫吸いと巷で呼ばれるそれが何となく分かったかもしれない。
源は埋められた刹那、身体をピクリと硬直させたが好きにさせていた喉も相変わらず鳴らしていることから、嫌ではないらしい。
顔を上げて源内を見る。
「……早くもとに戻ればよいな、原内」
源はそれには返事をせず、ぐっぐと鼻っ面を意の額に押し当ててきた。猫の挨拶だと聴いたことがある。
「おやすみ原内」
意は源に腕枕をさせたまま眠りについた。
意が屋敷にいる時は意の側から片時も離れず、姿を消したと思ったら意の部屋で意の着物の上に丸まって眠る。初日の就寝時は、源が布団の隅の方に申し訳なさそうに丸まって寝ようとしているものだから、
「原内。寒いだろう、こっちにおいで。俺と共に寝よう」
と布団を持ち上げて呼べば、のそりと起き上がり「にゃあ」と嬉しそうに鳴き腕の中へやってきた。
意が屋敷にいる時は意の側から片時も離れず、姿を消したと思ったら意の部屋で意の着物の上に丸まって眠る。初日の就寝時は、源が布団の隅の方に申し訳なさそうに丸まって寝ようとしているものだから、
「原内。寒いだろう、こっちにおいで。俺と共に寝よう」
と布団を持ち上げて呼べば、のそりと起き上がり「にゃあ」と嬉しそうに鳴き腕の中へやってきた。