山bot周五郎
banner
yamabot.bsky.social
山bot周五郎
@yamabot.bsky.social
1日に4回ほど、山本周五郎(1903〜1967)作品のフレーズをお届けします。text
鋭意増量中。長文多いです。ご容赦願います。
ほぼほぼ青空文庫など、無料で読める作品ばかりです。TLの賑やかしに、おじゃまでなければ、フォローお願いします。💙📚
#日本文学
HP…https://yamabot.jimdofree.com/
──自分だけの幸福は幸福ではない。夏子はそう信じていた。──大多数の人間が不幸であるとき、自分だけが仕合せだということは、悪徳であり寧ろその大多数よりも遥かに不幸である。【火の杯】💙📚
December 10, 2025 at 5:15 AM
彼は自分の中にかたく閉じこもって、外からはなにものも入れまいと思った。世間ぜんたいが敵だ、これを忘れてはいけない。金持は金の力で、役人は権力で、罪のない者を罪人にすることができる。自分のように金もなく権力もない者には、かれらに対抗することはできない。これが事実なんだ、と彼は思った。すると、怒りがまたつきあげてきた。 【さぶ】栄二💙📚
December 9, 2025 at 11:15 PM
彼は自分の中にかたく閉じこもって、外からはなにものも入れまいと思った。世間ぜんたいが敵だ、これを忘れてはいけない。金持は金の力で、役人は権力で、罪のない者を罪人にすることができる。自分のように金もなく権力もない者には、かれらに対抗することはできない。これが事実なんだ、と彼は思った。すると、怒りがまたつきあげてきた。 【さぶ】栄二💙📚
December 9, 2025 at 5:15 PM
二人はそこでたびたび逢った。そこの、向うの、こっちから五本めの木蔭がそれだ。おていが先に来ていることもあり、用があって、おくれて来て、すぐに帰ったこともある。その向うの五本めの木蔭だ。おれが仕事の都合でおくれて、駆けつけて来ると、あいつはその木に凭れていて、いってみると泣いていたことがあった。どうしたんだ、と云ったら、とびついて来て、「ああよかった」と云った。ああよかった、もうあんたは来てくれないのかと思ってたのよ、「うれしい」と云って、おれにしがみついた。しがみついて泣いた。いまでもはっきり思いだせる、「うれしい」と云って、あいつはおれにしがみついて泣いた。 【並木河岸】鐡次💙📚
December 9, 2025 at 11:15 AM
「わたくしはただひとすじに戦うだけでございます、戦がお味方の勝になればよいので、ひとりでも多く敵を討って取るほかには余念はございません、さむらい大将を討ったからとて功名とも思いませぬし、雑兵だからとて詰らぬとも存じません、名乗って出なかった仔細と申せばこの所存ひとつでございます」【青竹】余吾源七郎💙📚
December 8, 2025 at 11:15 PM
いま益村家の庭は秋のさかりで、別棟になった数寄屋のまわりにある杉林の、黒ずんだ緑のあいだから、若木の楓のみごとに紅葉した枝の覗いているのが、朱を点じたようにあざやかに眺められた。池のまわりにある芒はみな穂をそろえているが、風がまったくないので、その穂はみなひっそりと、秋の午前の陽ざしをあびたまま動くけはいもなかった。【滝口】💙📚
December 8, 2025 at 5:15 PM
男が自分の仕事にいのちを賭けるということは、他人の仕事を否定することではなく、どんな障害にあっても屈せず、また、そのときの流行に支配されることなく、自分の信じた道を守りとおしてゆくことなんだ 【虚空遍歴】中藤冲也💙📚
December 8, 2025 at 11:15 AM
「おんなしこったに、たとえおめえらがいって来るにしろ、めんどくせえこたあやっぱりめんどくせえでねえ、おら他人がやるにしろ、めんどくせえこたあでえ嫌えだに」【似而非物語】杢助💙📚
December 8, 2025 at 5:15 AM
「これではまるで大家のお嬢さまのようでございますわ」「越梅といえば京大坂から江戸まで知られた大家ですよ」もよ女は大きな胸を反らせながら云った、「——養女といえば娘なんですから、大家のお嬢さまに違いないでしょう、でもあたしのように肥ることはありません」【山茶花帖】もよ女💙📚
December 7, 2025 at 11:15 PM
けれども、あらゆる「よろこび」は短い。それはすぐに消え去ってしまう。それはつかのま、われわれを満足させるが、驚くほど早く消え去り、そして必ずあとに苦しみと、悔恨をのこす。人は「つかのまの」そして頼みがたいよろこびの代りに、絶えまのない努力や、苦しみや悲しみを背負い、それらに耐えながら、やがて、すべてが「空しい」ということに気がつくのだ。【樅ノ木は残った】💙📚
December 7, 2025 at 5:15 PM
胸毛は熊のように濃かった。また脛の毛とくると信じられないほどであった。夏になると、そのみっしり生えた脛毛の中でいつも二三疋の蚊が悲鳴をあげていた。蚊たちは血を吸いにもぐり込むが、脛毛の藪があんまり密なので、それにひっかかって脱出することができなくなるのであった。六助はきげんのいいときには、毛をかきわけてかれらを逃がしてやるのを楽しみにした。【秋の駕籠】💙📚
December 7, 2025 at 11:15 AM
職人としてもまだいちにんめえにはなっちゃいねえ、――さぶ、おめえの気持はよくわかるが、おれたちにいま大事なのは自分のことだ、ここ二、三年でおれたちの一生がきまるんだ、 【さぶ】栄二💙📚
December 7, 2025 at 5:15 AM
「女房は一生のものだ」と辰造は続けた、「人間の一生はなみかぜが多い、いつなに何が起こるかわからない、なにか事が起こったとき、惚れて貰った女房だと、――男は苦しいおもいをしなければならない、どんなふうにということは云えないが、男は苦しいおもいをするものだ」辰造はちょっと黙って、それからしんみな口ぶりで云った、「女に惚れたら惚れるだけにしろ、いいか、女房はべつに貰うんだ、わかったか」 【水たたき】辰造💙📚
December 6, 2025 at 11:15 PM
この小冊子を読んで、私の小説のほうも読んでみよう、という読者があれば仕合せだが、これでは小説なんか読むまでもない、とそっぽを向かれるようなことになると、私としては生活の手段を他に求めなければならなくなるので、どうかそんなことになりませんようにと、いまから祈っているわけであります。昭和三十六年十二月【随筆「小説の効用」への序文】💙📚
December 6, 2025 at 5:15 PM
人間には平和や家庭や健康で優秀な妻子や、きちんと貰える月給のほかにも大切なものがあるんだ、そのために身を削るほど苦しんでいる者だっているんだぞ、ばかにするな。【陽気な客】💙📚
December 6, 2025 at 11:15 AM
「おまえは助ける、おれが助けてみせる、おせんちゃん、おまえだけはおれが死なしあしないよ」彼はそう云って、刺子半纏の上から水を掛けると、おせんのそばへ跼んで彼女の眼を覗いた。「……おまえにあ、ずいぶん厭な思いをさせたな、済まなかった。堪忍して呉んなおせんちゃん」 【柳橋物語】幸太郎💙📚
December 6, 2025 at 5:15 AM
「どんなばあいでも、生きることは、死ぬことより楽ではない、まして、いまのおまえは死ぬほうが望ましいだろう、しかし、達弥、おれはおまえに生きていてもらわなければならぬ、単に生きているだけでなく、死ぬよりも困難な、苦しい勤めを受持ってもらいたいのだ」【樅ノ木は残った】原田甲斐💙📚
December 5, 2025 at 5:15 PM
「こう云っちゃあ済みませんが、お父さんの死んだのはやくざ渡世の自業自得、御定法の裏をぬけて、世間の道を踏外した者同志の斬った張ったは、堅気の者に関わりのない事です。人を殺しても──悪かったと一度悔むことのないような者は人間じゃあありません、人間でない者を相手に敵だ仇だと云ったところで始まりませんからねえ」【無頼は討たず】半太郎💙📚
December 5, 2025 at 11:15 AM
「医術などといってもなさけないものだ、長い年月やっていればいるほど、医術がなさけないものだということを感ずるばかりだ、病気が起こると、或る個躰はそれを克服し、べつの個躰は負けて倒れる、医者はその症状と経過を認めることができるし、生命力の強い個躰には多少の助力をすることもできる、だが、それだけのことだ、医術にはそれ以上の能力はありゃあしない」【赤ひげ診療譚 駆込み訴え】 新出去定💙📚
December 5, 2025 at 5:15 AM
人間にはそれぞれの性格があるし、見るところも考えかたもみんな違っている。一人ひとりが、各自の人生を持っているし、当人にとっては自分の価値判断がなにより正しい。善悪の区別は集団生活の約束から生れたもので、「人間」そのものをつきつめて考えれば、そういう区別は存在しない。人間の生きている、ということが「善」であるし、その為すこともすべて「善」なのだ。「なにをするかは問題ではない、人間が本心からすることは、善悪の約束に反しているようにみえることでも、結局は善をあらわすことになる【天地静大】💙📚
December 4, 2025 at 11:15 PM
ゆるすということはむずかしいが、もしゆるすとなったら限度はない、――ここまではゆるすが、ここから先はゆるせないということがあれば、それは初めからゆるしてはいないのだ 【ちくしょう谷】隼人💙📚
December 4, 2025 at 5:15 PM
かなしいな、と彼は思った。男と女との結びつき、良人となり妻となることもかなしいし、二人のあいだに交わされる昂奮や陶酔や、さめたあとの飽満もかなしい。肌と肌を触れあい、同じ強烈な感覚にひたりながら、しんじつ二人がいっしょになることはないのだ。【虚空遍歴】💙📚
December 4, 2025 at 11:15 AM
彼は自分の中にかたく閉じこもって、外からはなにものも入れまいと思った。世間ぜんたいが敵だ、これを忘れてはいけない。金持は金の力で、役人は権力で、罪のない者を罪人にすることができる。自分のように金もなく権力もない者には、かれらに対抗することはできない。これが事実なんだ、と彼は思った。すると、怒りがまたつきあげてきた。 【さぶ】栄二💙📚
December 4, 2025 at 5:15 AM
巳の年と亥の年の騒動が根になって、御新政という暴政を招いた、と云う者がいるけれども、そういう因果関係は観念的な付会であって、新らしく起こる事は、新らしい情勢から生れるものだ。【ながい坂】💙📚
December 3, 2025 at 11:15 PM
「牛をごらんなさい」と若い母は云った、「草しか喰べないのに、牛はあのとおり立派な軀をしているでしょう、卵だの肉だの生魚などを喰べるのは短命のもとです」【彦左衛門外記】💙📚
December 3, 2025 at 5:15 PM