アイコンは藍海さん(@m8o8balloonpop)のイラストを使用させていただいてます
「雨やまないね」
せっかくふたり一緒の休日だが、あいにくの雨だ。暗いままの空につられるように、目覚めてからもベッドでだらだらとしている。
「泉と一緒の日は、雨もけっこう好きだけどな」
ぎゅっと抱きしめられて、後ろに回った槙くんの手が寝癖を解くように髪に触れる。
「ずっとこうしてていい口実ができたみたいで」
「べつに晴れの日も、ずっとこうしててもいいんじゃないでしょうか?」
「気持ちよく晴れた日は、出かけたくなってそわそわするだろ、あんた」
「……そうかもしれない」
顔を見合わせて笑って、布団にくるまる。今日はこのまま一日中、思う存分いちゃいちゃしよう。だって雨だから、ね。
「雨やまないね」
せっかくふたり一緒の休日だが、あいにくの雨だ。暗いままの空につられるように、目覚めてからもベッドでだらだらとしている。
「泉と一緒の日は、雨もけっこう好きだけどな」
ぎゅっと抱きしめられて、後ろに回った槙くんの手が寝癖を解くように髪に触れる。
「ずっとこうしてていい口実ができたみたいで」
「べつに晴れの日も、ずっとこうしててもいいんじゃないでしょうか?」
「気持ちよく晴れた日は、出かけたくなってそわそわするだろ、あんた」
「……そうかもしれない」
顔を見合わせて笑って、布団にくるまる。今日はこのまま一日中、思う存分いちゃいちゃしよう。だって雨だから、ね。
これからこのアカウントをどう運用していくかは未定で、またお話を書けたらいいなとは思いますが見る専になる可能性も高いので、お気軽にフォロー解除してください〜!今まで見てくださってありがとうございました!
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「わ! 豪さん見て見て」
テーブルにサラダを並べていると、玲さんが声を弾ませて俺を呼ぶ。キッチンに戻り覗いた先には双子の卵があった。
「珍しいですね」
「私初めて見ました」
目を輝かせて目玉焼きを見つめる玲さんがかわいくて、笑みが溢れる。
「あっ、くっついちゃった」
ぎりぎり離れていた黄身がくっついてしまったことに、玲さんは残念そうな声をあげる。
「甘えん坊卵だったんじゃないですか」
「豪さんみたいに?」
「うん、そう」
「ふふ……そっか。じゃあ、仕方ないですね」
フライパンの上の黄身みたいにくっつく。ぎゅうぎゅう。甘えん坊の卵と俺と玲さんだ。
「わ! 豪さん見て見て」
テーブルにサラダを並べていると、玲さんが声を弾ませて俺を呼ぶ。キッチンに戻り覗いた先には双子の卵があった。
「珍しいですね」
「私初めて見ました」
目を輝かせて目玉焼きを見つめる玲さんがかわいくて、笑みが溢れる。
「あっ、くっついちゃった」
ぎりぎり離れていた黄身がくっついてしまったことに、玲さんは残念そうな声をあげる。
「甘えん坊卵だったんじゃないですか」
「豪さんみたいに?」
「うん、そう」
「ふふ……そっか。じゃあ、仕方ないですね」
フライパンの上の黄身みたいにくっつく。ぎゅうぎゅう。甘えん坊の卵と俺と玲さんだ。
最後にネックレスをつけたところで、先ほどから熱心に注がれていた視線に向き直る。
「どうかしましたか?」
「いつからここは美術館になったのかなーって考えてた」
出かける準備をしていただけの私が、悟さんにかかれば美術品になってしまうから、つくづく贔屓目がすごい。
「絵画だとお手を触れないでくださいになっちゃいますよ?」
一歩。二歩。距離をつめて見上げれば、もう触れることができる近さ。
「それは困るな」
「私も困ります」
いつもみたいに大事に優しく触れられて、悟さんの腕の中。
美術品みたいに立派じゃなくていいから、あなたにとってのたからものでいたいんです。
最後にネックレスをつけたところで、先ほどから熱心に注がれていた視線に向き直る。
「どうかしましたか?」
「いつからここは美術館になったのかなーって考えてた」
出かける準備をしていただけの私が、悟さんにかかれば美術品になってしまうから、つくづく贔屓目がすごい。
「絵画だとお手を触れないでくださいになっちゃいますよ?」
一歩。二歩。距離をつめて見上げれば、もう触れることができる近さ。
「それは困るな」
「私も困ります」
いつもみたいに大事に優しく触れられて、悟さんの腕の中。
美術品みたいに立派じゃなくていいから、あなたにとってのたからものでいたいんです。
A5/82P/500円
drmt峻玲の核となるストーリーの語録、プチ考察、プチデータとなっております。
あくまで峻玲本を増やしたい、それの補助がしたいいうのが目的になっており、通販なしです。
冬コミ以外で頒布する場合はあなたが作った峻玲本(コピー本やペーパー可)と交換です※双方どちらかに差額が出た場合は支払います
※公式のコンテンツガイドラインに則った創作性の高い内容となっておりますのでご安心ください。
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※公式のコンテンツガイドラインに則った創作性の高い内容となっておりますのでご安心ください。
清潔なシーツに適温に保たれた寝室は、生きるために必要な睡眠をとるだけの場所だった。そこに居心地のよさを覚えて、長くいたい場所に変わったのは、玲の温もりを知ってからだ。
寝息に合わせて上下する肩を見つめていると、自然に瞼が重くなっていく。こうしたまどろみを教えてくれた存在に手を伸ばす。
「……あたたかい」
こんなに穏やかな気持ちで眠りにつけるようになるなんて、思ってもなかった。その必要もないと思っていたのに。
今の俺には、お前を抱きしめての二度寝でしか満たされないものがある。
清潔なシーツに適温に保たれた寝室は、生きるために必要な睡眠をとるだけの場所だった。そこに居心地のよさを覚えて、長くいたい場所に変わったのは、玲の温もりを知ってからだ。
寝息に合わせて上下する肩を見つめていると、自然に瞼が重くなっていく。こうしたまどろみを教えてくれた存在に手を伸ばす。
「……あたたかい」
こんなに穏やかな気持ちで眠りにつけるようになるなんて、思ってもなかった。その必要もないと思っていたのに。
今の俺には、お前を抱きしめての二度寝でしか満たされないものがある。
ハンドクリームをわざと多めに出して、彼にお裾分け。テレビでそんなモテテクが紹介されているのを見た司さんが、ハンドクリームを取り出す。
「出しすぎたのでもらってくれますか?」
大真面目な顔でモテテクを実行する司さんに思わず笑ってしまう。かわいい人だなあ。
「今さら私にモテなくても」
「玲さんにはいつだってモテたいです」
差し出した手を優しく包みこまれて、マッサージをするようにハンドクリームが揉みこまれる。あたたかくてきもちいい。
「ドキッとしましたか?」
「ふふ、はい」
かわいいあなたに。
ハンドクリームをわざと多めに出して、彼にお裾分け。テレビでそんなモテテクが紹介されているのを見た司さんが、ハンドクリームを取り出す。
「出しすぎたのでもらってくれますか?」
大真面目な顔でモテテクを実行する司さんに思わず笑ってしまう。かわいい人だなあ。
「今さら私にモテなくても」
「玲さんにはいつだってモテたいです」
差し出した手を優しく包みこまれて、マッサージをするようにハンドクリームが揉みこまれる。あたたかくてきもちいい。
「ドキッとしましたか?」
「ふふ、はい」
かわいいあなたに。
読んでも読んでも続くかたせさんのRな槙玲最高です❤️🔥
読んでも読んでも続くかたせさんのRな槙玲最高です❤️🔥
bsky.app/profile/kata...
他、当日はきなころさんが主催された槙玲R18ゲスト本(https://x.com/kinakororinrin/status/1861012507730870646)にも寄稿させていただいておりますので、こちらもぜひぜひよろしくお願いいたします!
人様の御本にも関わらず、たくさん書かせていただきました🙇♀️楽しかった…
ムーンダスト・ブーケ(神楽×玲)
文庫サイズ72P/予価400円
本編完結後の二人の小話詰め合わせ。神楽視点、玲視点、羽鳥視点、メグと羽鳥、槙と玲など色んな組み合わせが入っています。脱稿してうれしかったので先にこっちでアナウンス!
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他、当日はきなころさんが主催された槙玲R18ゲスト本(https://x.com/kinakororinrin/status/1861012507730870646)にも寄稿させていただいておりますので、こちらもぜひぜひよろしくお願いいたします!
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南4ホールJ80b「Happy C×2」、スタマイ神玲でスペースを頂いています。
新刊は本編完結後の神玲小話詰め合わせ本、既刊はサンプルをご確認ください。
新刊はいっぱい搬入しますのでゆっくりで大丈夫です!ご縁がありましたらお手に取っていただけると嬉しいです。
南4ホールJ80b「Happy C×2」、スタマイ神玲でスペースを頂いています。
新刊は本編完結後の神玲小話詰め合わせ本、既刊はサンプルをご確認ください。
新刊はいっぱい搬入しますのでゆっくりで大丈夫です!ご縁がありましたらお手に取っていただけると嬉しいです。
右。左。右。狭い通路ですれ違うために避けようとする動きが重なる。よくあることだ。
「気が合うねえ」
けれど服部さんのこれは、確実にわざとだ。遊ばれている。
よし。ここはあえての正面突破だ。大きく一歩を踏み出すと、服部さんは少し驚いたように私が縮めた分だけ後ろに下がった。左右どちらかにずれるだけですれ違えるのに。そうすると思ったのに。予想外の反応にそれより前に進めなくなる。
「マトリちゃん、猪みたい」
服部さんはそんな失礼な言葉を残して去っていく。柔らかい内側から出たような息をのむ音と、わずかなたばこの匂いにとらわれたように、しばらく動けなかった。
右。左。右。狭い通路ですれ違うために避けようとする動きが重なる。よくあることだ。
「気が合うねえ」
けれど服部さんのこれは、確実にわざとだ。遊ばれている。
よし。ここはあえての正面突破だ。大きく一歩を踏み出すと、服部さんは少し驚いたように私が縮めた分だけ後ろに下がった。左右どちらかにずれるだけですれ違えるのに。そうすると思ったのに。予想外の反応にそれより前に進めなくなる。
「マトリちゃん、猪みたい」
服部さんはそんな失礼な言葉を残して去っていく。柔らかい内側から出たような息をのむ音と、わずかなたばこの匂いにとらわれたように、しばらく動けなかった。
「どっちがいいと思いますか?」
気合いを入れたメイクとお気に入りの服。それに合わせるネックレスに悩んで、両手を掲げる。
「どっちでもいいはなしで!」
先手を打たれた峻さんはため息を吐きながら左右を見比べる。選んでくれたのは誕生花をモチーフにしたネックレスだ。
峻さんの手が当然のように私の首の後ろに回る。つけて、なんて言ってないのに。本当に峻さんは私に甘々だ。
「かわいい?」
調子にのった私に応えてくれたのは、ネックレスなんて見えてない、私しか映ってない瞳だった。
「どっちがいいと思いますか?」
気合いを入れたメイクとお気に入りの服。それに合わせるネックレスに悩んで、両手を掲げる。
「どっちでもいいはなしで!」
先手を打たれた峻さんはため息を吐きながら左右を見比べる。選んでくれたのは誕生花をモチーフにしたネックレスだ。
峻さんの手が当然のように私の首の後ろに回る。つけて、なんて言ってないのに。本当に峻さんは私に甘々だ。
「かわいい?」
調子にのった私に応えてくれたのは、ネックレスなんて見えてない、私しか映ってない瞳だった。
「人の髪に変な癖つけんな」
目の前の髪を指に巻きつけては解けるさまを眺めていると、寝起きの郁人さんから文句が飛んできた。
「郁人さんの髪ってきれいな直毛ですよね。寝癖ついてるのほとんど見たことない」
自分にゆるい癖があるので、さらさらのストレートヘアには長年憧れを抱いている。
「お前が原因以外で寝癖がついたことはない」
やっぱり。そう思うと同時に、その数少ない寝癖の原因を辿って、変な声が出そうになる。
きっちりした性格の郁人さんが、ドライヤーもかけずに眠ることになるのは、そういうふうに盛り上がってしまった結果だから。つまり、郁人さんに寝癖をつけられるのは、私だけ。
「人の髪に変な癖つけんな」
目の前の髪を指に巻きつけては解けるさまを眺めていると、寝起きの郁人さんから文句が飛んできた。
「郁人さんの髪ってきれいな直毛ですよね。寝癖ついてるのほとんど見たことない」
自分にゆるい癖があるので、さらさらのストレートヘアには長年憧れを抱いている。
「お前が原因以外で寝癖がついたことはない」
やっぱり。そう思うと同時に、その数少ない寝癖の原因を辿って、変な声が出そうになる。
きっちりした性格の郁人さんが、ドライヤーもかけずに眠ることになるのは、そういうふうに盛り上がってしまった結果だから。つまり、郁人さんに寝癖をつけられるのは、私だけ。
「わ、懐かしいね」
「久しぶりに一緒に見たいなって」
志音くんが持ってきたのは、付き合ってしばらくした頃にプレゼントしたアルバムだ。中を開くと幼さを残した志音くんがそこにいて「かわいい……」と声がもれる。
「玲もかわいい」
「肌とか若さがあるよね」
十代から二十代になった志音くんは成長だけど、三十代になった私は老いだとしみじみ感じてしまう。
「今も昔も、ずっときれい」
ふるふると首を横に振った志音くんの言葉は予想外のものだった。まっすぐ澄んだ瞳は嘘がなくて、照れよりも素直に受け取りたい気持ちが勝つ。おばあちゃんになってもきれいと言ってくれるだろう彼と一緒に年を重ねていけますように。
「わ、懐かしいね」
「久しぶりに一緒に見たいなって」
志音くんが持ってきたのは、付き合ってしばらくした頃にプレゼントしたアルバムだ。中を開くと幼さを残した志音くんがそこにいて「かわいい……」と声がもれる。
「玲もかわいい」
「肌とか若さがあるよね」
十代から二十代になった志音くんは成長だけど、三十代になった私は老いだとしみじみ感じてしまう。
「今も昔も、ずっときれい」
ふるふると首を横に振った志音くんの言葉は予想外のものだった。まっすぐ澄んだ瞳は嘘がなくて、照れよりも素直に受け取りたい気持ちが勝つ。おばあちゃんになってもきれいと言ってくれるだろう彼と一緒に年を重ねていけますように。
「誕生月か」
エントランスで一緒になった都築さんの短い問いかけに、抱えた郵便物に視線を落とす。DMか。
「はい。来月」
「最寄りのドラッグストア近くにできた洋菓子店のケーキはうまかった」
なんで最近越してきたばかりの都築さんが新しくオープンしたケーキ屋を知っているのだろう。そんな疑問を抱くけれど、おすすめのケーキ屋さんを教えてくれているらしい都築さんにお礼を伝える。誕生日にケーキ屋さんでケーキを買って祝うことを当たり前にしてきた人なんだな。
「良い誕生日を」
「あ、りがとうございます」
少し早い誕生日のお祝いを残して、都築さんの部屋のドアが閉まる。そんな柔らかい表情も、するんだ。
「誕生月か」
エントランスで一緒になった都築さんの短い問いかけに、抱えた郵便物に視線を落とす。DMか。
「はい。来月」
「最寄りのドラッグストア近くにできた洋菓子店のケーキはうまかった」
なんで最近越してきたばかりの都築さんが新しくオープンしたケーキ屋を知っているのだろう。そんな疑問を抱くけれど、おすすめのケーキ屋さんを教えてくれているらしい都築さんにお礼を伝える。誕生日にケーキ屋さんでケーキを買って祝うことを当たり前にしてきた人なんだな。
「良い誕生日を」
「あ、りがとうございます」
少し早い誕生日のお祝いを残して、都築さんの部屋のドアが閉まる。そんな柔らかい表情も、するんだ。
樹さんは気分の波が穏やかで、作る料理もそれを表していると思う。疲れているときや捜査が行き詰まったときほど凝ったものを作りたがるけれど、味にマイナスな感情が混ざることはない。好きなことをしていると落ち着くし、思考の整理にもなるのかもしれない。
そんな樹さんも、新しい料理にチャレンジしているときは少しだけわくわくしているのがわかる。
「どうした?」
それを見るのが好きなあまり、熱視線を送っていたのかもしれない。
「今日のご飯なにかなーって」
聞いたことのない料理の名前を得意げに教えてくれる樹さんは、やっぱりきらきらで。だからずっと見ていたくなる。
樹さんは気分の波が穏やかで、作る料理もそれを表していると思う。疲れているときや捜査が行き詰まったときほど凝ったものを作りたがるけれど、味にマイナスな感情が混ざることはない。好きなことをしていると落ち着くし、思考の整理にもなるのかもしれない。
そんな樹さんも、新しい料理にチャレンジしているときは少しだけわくわくしているのがわかる。
「どうした?」
それを見るのが好きなあまり、熱視線を送っていたのかもしれない。
「今日のご飯なにかなーって」
聞いたことのない料理の名前を得意げに教えてくれる樹さんは、やっぱりきらきらで。だからずっと見ていたくなる。
「そ、壮馬さん……」
消え入りそうな声で呼ばれた名前に、今までなにを話していたか忘れてしまう。きゅっと結ばれた唇に、皺のよった眉間。恋人を呼ぶときの顔にはとうてい見えないそれに、思わず笑ってしまう。
「ふ……すまない」
「いえ、こちらこそ不自然ですみません……」
「いや、貴方に呼んでもらえてうれしい」
玲の声で響く自分の名前はなによりも甘く特別に聞こえた。忘れられない誕生日プレゼントだ。
「これから慣れてくれればいい」
だからもう一度、とねだれば彼女のかわいらしい唇が震えて。ああ。これでは、呼ばれる私のほうが慣れないかもしれない。
「そ、壮馬さん……」
消え入りそうな声で呼ばれた名前に、今までなにを話していたか忘れてしまう。きゅっと結ばれた唇に、皺のよった眉間。恋人を呼ぶときの顔にはとうてい見えないそれに、思わず笑ってしまう。
「ふ……すまない」
「いえ、こちらこそ不自然ですみません……」
「いや、貴方に呼んでもらえてうれしい」
玲の声で響く自分の名前はなによりも甘く特別に聞こえた。忘れられない誕生日プレゼントだ。
「これから慣れてくれればいい」
だからもう一度、とねだれば彼女のかわいらしい唇が震えて。ああ。これでは、呼ばれる私のほうが慣れないかもしれない。
お風呂から上がると、ソファに天使が寝ていた。か、かわいい。寝顔は出会ったころの幼さがまだ残ってる気がする。
また私の予定に合わせて無理に課題を詰めこませてしまったかなと申し訳なく思っていると、カナメくんが目を覚ました。
「……ごめん。寝てた」
「ううん。今日はもう寝よっか」
少し不満げにしながらも、そうとう眠いようでこくりと頷いた。
「起きたら、いっぱいしよ。おやすみ」
ベッドに入り、おやすみのキスを交わした後の直球なお誘い。おやすみを返すことができないほど驚いた。そんな私をよそに当の本人はまた天使の寝顔だ。
起こさないように小さく呻くしかない私は、しばらく眠れそうにない。
お風呂から上がると、ソファに天使が寝ていた。か、かわいい。寝顔は出会ったころの幼さがまだ残ってる気がする。
また私の予定に合わせて無理に課題を詰めこませてしまったかなと申し訳なく思っていると、カナメくんが目を覚ました。
「……ごめん。寝てた」
「ううん。今日はもう寝よっか」
少し不満げにしながらも、そうとう眠いようでこくりと頷いた。
「起きたら、いっぱいしよ。おやすみ」
ベッドに入り、おやすみのキスを交わした後の直球なお誘い。おやすみを返すことができないほど驚いた。そんな私をよそに当の本人はまた天使の寝顔だ。
起こさないように小さく呻くしかない私は、しばらく眠れそうにない。
かっこいい人だと惚れ直す瞬間は、何度もある。一緒に仕事をしていれば、自然とそうなる。
けれど、たとえば。なかなか布団から出られないで、目覚ましのスヌーズと格闘しているとき。ぼさぼさの髪で寝ぼけ眼での「おはよう」。殻をうまく剥けずに、表面がでこぼこになったゆで卵に困ったように笑う顔。小さなヤキモチを教えてくれるときの合わない視線。
愛しさが溢れるのは、意外にそういうところだ。
「大輔さん。大好きです」
おはようございますより先に口から出た愛の言葉。後ろ髪をくるんと跳ねさせたまま目を細める大輔さんに、また好きが溢れて。
かっこいい人だと惚れ直す瞬間は、何度もある。一緒に仕事をしていれば、自然とそうなる。
けれど、たとえば。なかなか布団から出られないで、目覚ましのスヌーズと格闘しているとき。ぼさぼさの髪で寝ぼけ眼での「おはよう」。殻をうまく剥けずに、表面がでこぼこになったゆで卵に困ったように笑う顔。小さなヤキモチを教えてくれるときの合わない視線。
愛しさが溢れるのは、意外にそういうところだ。
「大輔さん。大好きです」
おはようございますより先に口から出た愛の言葉。後ろ髪をくるんと跳ねさせたまま目を細める大輔さんに、また好きが溢れて。
「潔くん。これ、もしよかったら」
泉さんがそう言って差し出したのは、鳥のマグネット。ペットボトルのお茶についているおまけだ。俺が集めてること、なんで泉さんが知ってるんだろう。
「あ、でももうとっくに揃ってるかな」
「い、いっぱいいるとかわいいので、大丈夫です!」
思ったより大きい声が出てしまった。昨日コンプリートしたばかりだけど、あって困るものじゃないし、なにより泉さんの気持ちがうれしいから。
俺なんかのためにわざわざすみません。そう口にしようとした言葉を、彼女の顔を見てそうじゃないと押し止める。
「ありがとう、ございます。うれしいです」
「……うん。どういたしまして」
「潔くん。これ、もしよかったら」
泉さんがそう言って差し出したのは、鳥のマグネット。ペットボトルのお茶についているおまけだ。俺が集めてること、なんで泉さんが知ってるんだろう。
「あ、でももうとっくに揃ってるかな」
「い、いっぱいいるとかわいいので、大丈夫です!」
思ったより大きい声が出てしまった。昨日コンプリートしたばかりだけど、あって困るものじゃないし、なにより泉さんの気持ちがうれしいから。
俺なんかのためにわざわざすみません。そう口にしようとした言葉を、彼女の顔を見てそうじゃないと押し止める。
「ありがとう、ございます。うれしいです」
「……うん。どういたしまして」
「あき!」
突然呼ばれた名前にぎょっとする僕をよそに、泉はそのお菓子を得意気に掲げる。
「ありましたよ! 神楽さんのお名前」
僕の名前があるからなんなの。なんで君がうれしそうなの。だいたい僕はこんな庶民のお菓子なんて興味がない。
「れい」
けれど、勝手に目に入ってきたから仕方ない。おでんを食べるコアラは泉にぴったりだ。
「あったよ」
「あっ、ハイ……」
もっと喜ぶかと思ったのに、返ってきたのは歯切れの悪い返事と赤い頬だった。
「僕は、これを読んだだけで……!」
「はいっ! わかってます大丈夫です!」
なにが大丈夫なの。じゃあ今度は君の名前として呼んだらどんな顔をするんだろう。
「あき!」
突然呼ばれた名前にぎょっとする僕をよそに、泉はそのお菓子を得意気に掲げる。
「ありましたよ! 神楽さんのお名前」
僕の名前があるからなんなの。なんで君がうれしそうなの。だいたい僕はこんな庶民のお菓子なんて興味がない。
「れい」
けれど、勝手に目に入ってきたから仕方ない。おでんを食べるコアラは泉にぴったりだ。
「あったよ」
「あっ、ハイ……」
もっと喜ぶかと思ったのに、返ってきたのは歯切れの悪い返事と赤い頬だった。
「僕は、これを読んだだけで……!」
「はいっ! わかってます大丈夫です!」
なにが大丈夫なの。じゃあ今度は君の名前として呼んだらどんな顔をするんだろう。
暑いな。アイス食べたいね。そんな会話から目が合って「じゃんけん、ぽん」が重なった。
敗者の私がサンダルを履いていると、なぜか勝者である夏樹くんもやってきた。
「どうしたの?」
「んーついでだし飲み直したいと思って」
「買ってくるよ?」
「たばこも買いたいし」
別にそれだって私が買ってこられるのに。夏樹くん愛用のたばこは覚えている。
でもきっと、そういうことではなくて。最初からひとりで行かせる気なんてなかったのだ。
「……ありがと」
「惚れ直していいよ」
何回目かな。数えきれないや。なんてね。
暑いな。アイス食べたいね。そんな会話から目が合って「じゃんけん、ぽん」が重なった。
敗者の私がサンダルを履いていると、なぜか勝者である夏樹くんもやってきた。
「どうしたの?」
「んーついでだし飲み直したいと思って」
「買ってくるよ?」
「たばこも買いたいし」
別にそれだって私が買ってこられるのに。夏樹くん愛用のたばこは覚えている。
でもきっと、そういうことではなくて。最初からひとりで行かせる気なんてなかったのだ。
「……ありがと」
「惚れ直していいよ」
何回目かな。数えきれないや。なんてね。