箱は可能性の話をする上でこれ以上ないモチーフだと思うし、深い霧は自己と世界の境界の話をする上で適したイメージだと思う。それを使って自由について語ることもできるのかもしれないけれど、それとは真逆に不自由の話になっているのがひねくれていて良い。宅配所の仕分けという現代の労働の現場を舞台に、労働者の鬱屈した内面が多面的に描かれている。精神と肉体が共鳴するような理想的な労働なんてこの世にどれだけ存在するのかとも思うわけで、程度の差こそあれほとんどの労働者なんてこんなものなのかもしれない。
箱は可能性の話をする上でこれ以上ないモチーフだと思うし、深い霧は自己と世界の境界の話をする上で適したイメージだと思う。それを使って自由について語ることもできるのかもしれないけれど、それとは真逆に不自由の話になっているのがひねくれていて良い。宅配所の仕分けという現代の労働の現場を舞台に、労働者の鬱屈した内面が多面的に描かれている。精神と肉体が共鳴するような理想的な労働なんてこの世にどれだけ存在するのかとも思うわけで、程度の差こそあれほとんどの労働者なんてこんなものなのかもしれない。
登場人物一覧と目次だけでカロリーがとんでもない。黄昏の楽園におけるフーダニット、そしてホワイダニット。相応の分量だけれどここまでされたら文句がないよなぁ。気の利いたパズルを積み重ねて、最後にたどり着く真相。非日常の舞台と非現実の事件にあくまでも論理を突きつける解決編が堪らない。こんなもん読み続けてたら舌が肥えてしまう。
登場人物一覧と目次だけでカロリーがとんでもない。黄昏の楽園におけるフーダニット、そしてホワイダニット。相応の分量だけれどここまでされたら文句がないよなぁ。気の利いたパズルを積み重ねて、最後にたどり着く真相。非日常の舞台と非現実の事件にあくまでも論理を突きつける解決編が堪らない。こんなもん読み続けてたら舌が肥えてしまう。
現実とは少し異なった近未来で、変質する身体と精神が描かれる人生と幸福の短編集。表現が正しいかわからないけれど、身体性がえげつない。生き方も内面も結局物質的な身体に規定されるというドライな世界観が、多様な設定で緻密に描かれている。前半のいくつかの短編は特にその傾向があからさまで、個人の(または集団の)狂気を背景として構築される、生々しい人間の物語はグロテスクとまで感じる。一方で、肉体的な制約からの解放が精神の自由に繋がる可能性は一種の救いかもしれなくて、表題作や「ボーダー・ガード」なども印象的だった。あとは「移相夢」もアイデアが面白かったなぁ。
現実とは少し異なった近未来で、変質する身体と精神が描かれる人生と幸福の短編集。表現が正しいかわからないけれど、身体性がえげつない。生き方も内面も結局物質的な身体に規定されるというドライな世界観が、多様な設定で緻密に描かれている。前半のいくつかの短編は特にその傾向があからさまで、個人の(または集団の)狂気を背景として構築される、生々しい人間の物語はグロテスクとまで感じる。一方で、肉体的な制約からの解放が精神の自由に繋がる可能性は一種の救いかもしれなくて、表題作や「ボーダー・ガード」なども印象的だった。あとは「移相夢」もアイデアが面白かったなぁ。
ゆっくり読もうという気持ちはあったのだけれど止まらなかった。ちょっと切れすぎてる。物語と視野という主題は現代を描く上で芯を食ってると思うし、それを人生と価値の文脈まで広げて書き込まれる個人のストーリーは真に迫っている。ある年代・ある属性の人間の内面を生々しく描く人はいるものの、これだけ幅広く描き出せる作家は希少だよなぁと。三者三様の苦しさがあって、幸福がある。需要側だけでなく供給側まで包含する建付けは広がりがあり、アイロニックに各編が交錯する構成はめちゃくちゃ面白い。そして物語というテーマだからこそ、読み終わって考えてしまう。何を読んだんだろう。
ゆっくり読もうという気持ちはあったのだけれど止まらなかった。ちょっと切れすぎてる。物語と視野という主題は現代を描く上で芯を食ってると思うし、それを人生と価値の文脈まで広げて書き込まれる個人のストーリーは真に迫っている。ある年代・ある属性の人間の内面を生々しく描く人はいるものの、これだけ幅広く描き出せる作家は希少だよなぁと。三者三様の苦しさがあって、幸福がある。需要側だけでなく供給側まで包含する建付けは広がりがあり、アイロニックに各編が交錯する構成はめちゃくちゃ面白い。そして物語というテーマだからこそ、読み終わって考えてしまう。何を読んだんだろう。
宇宙開拓とAIという伝統的なセットアップで惨劇が始まる、宇宙を駆け巡る壮大なSFミステリ。なんだかハードSFだ…。プロローグから気合いが入っていて良い。中弛みしない展開、キャラの立った登場人物、スケールの大きな仕掛け、と全く退屈せずに一気に読めた。口の悪いAIなんて全人類好きだからね。構想とギミックは面白いと思いつつ、ミステリとしてはもうちょっとフリが効いてたほうが好みかも。
宇宙開拓とAIという伝統的なセットアップで惨劇が始まる、宇宙を駆け巡る壮大なSFミステリ。なんだかハードSFだ…。プロローグから気合いが入っていて良い。中弛みしない展開、キャラの立った登場人物、スケールの大きな仕掛け、と全く退屈せずに一気に読めた。口の悪いAIなんて全人類好きだからね。構想とギミックは面白いと思いつつ、ミステリとしてはもうちょっとフリが効いてたほうが好みかも。
とても良い。シンプルながらも惹きつけられる世界観で描かれる、自由と人生の短編集。各編に印象的な囲いの内側と外側のイメージがありつつ、彼らが外を目指して模索し、それぞれのラストに繋がるストーリーが面白い。自由に対して風のイメージはありきたりではあるのだろうけれど、本作では心地よく印象的なものだった。「死神と旅する女」「カイムルとラートリー」あたりがスケールの大きさもあって特に好き。これからさらに変わっていくのでしょう。
とても良い。シンプルながらも惹きつけられる世界観で描かれる、自由と人生の短編集。各編に印象的な囲いの内側と外側のイメージがありつつ、彼らが外を目指して模索し、それぞれのラストに繋がるストーリーが面白い。自由に対して風のイメージはありきたりではあるのだろうけれど、本作では心地よく印象的なものだった。「死神と旅する女」「カイムルとラートリー」あたりがスケールの大きさもあって特に好き。これからさらに変わっていくのでしょう。
ある意味では間違いなく心を揺さぶるような小説ではあるんだと思う。精神に余裕のある時しか読めない、依存症シリーズ最新刊。外形的にも精神的にもグロテスクな描写が敷き詰められていて、胸糞の悪さとやりきれなさに苛まれ続けるような読書だった。温度のない地獄のイメージが嫌すぎる。偏在する悪と相互理解の限界を描く世界観は絶望的で、ダークヒーローものというには爽快感が全く見合っておらず、ただただ暗澹たる思いに沈まされる。作家は何を考えてこんなものを書いてるんだろうとたまに思う。
ある意味では間違いなく心を揺さぶるような小説ではあるんだと思う。精神に余裕のある時しか読めない、依存症シリーズ最新刊。外形的にも精神的にもグロテスクな描写が敷き詰められていて、胸糞の悪さとやりきれなさに苛まれ続けるような読書だった。温度のない地獄のイメージが嫌すぎる。偏在する悪と相互理解の限界を描く世界観は絶望的で、ダークヒーローものというには爽快感が全く見合っておらず、ただただ暗澹たる思いに沈まされる。作家は何を考えてこんなものを書いてるんだろうとたまに思う。
だいぶ面白かった。これは良いライトミステリ。厳密性も必然性も知るかつって、遊び心と小癪さを振りまきながら、書きたいこと書いてる割り切りっぷりが気持ちいい。現実にそんなこと起こり得ないだろっていうミステリにありがちなツッコミに対して、恋愛って多様な形があるからねって現代的な価値観で返すのあまりに小癪すぎる。わりと新し目のミステリ作品の名前がたくさん出てくるのも楽しかった。ゲートウェイミステリのチョイスについては諸説ありそう。
だいぶ面白かった。これは良いライトミステリ。厳密性も必然性も知るかつって、遊び心と小癪さを振りまきながら、書きたいこと書いてる割り切りっぷりが気持ちいい。現実にそんなこと起こり得ないだろっていうミステリにありがちなツッコミに対して、恋愛って多様な形があるからねって現代的な価値観で返すのあまりに小癪すぎる。わりと新し目のミステリ作品の名前がたくさん出てくるのも楽しかった。ゲートウェイミステリのチョイスについては諸説ありそう。
何万回も同じ感想が述べられてそうだけど、本当にバターみたいな小説だと思った。五感に訴える修飾がリッチに絡み合う文章は鮮やかで生々しいイメージを想起し、あの事件をモチーフとし世界の息苦しさを主題とするストーリーは最後までどこに終着するかわからず、カロリーの高い読書だった。当然のことながら料理の描写、食事の描写に特に力が入っており、読んでいると油分を取りたくなってきて危ない。ざらざらしたものを溶かし込んだ料理の感想は人によって変わるんだろう。
何万回も同じ感想が述べられてそうだけど、本当にバターみたいな小説だと思った。五感に訴える修飾がリッチに絡み合う文章は鮮やかで生々しいイメージを想起し、あの事件をモチーフとし世界の息苦しさを主題とするストーリーは最後までどこに終着するかわからず、カロリーの高い読書だった。当然のことながら料理の描写、食事の描写に特に力が入っており、読んでいると油分を取りたくなってきて危ない。ざらざらしたものを溶かし込んだ料理の感想は人によって変わるんだろう。
直木賞候補にもなった表題作を含む中編2編。とても良かった。静かな異界のイメージは幻想的で、そこに関わることになった彼らの出会いと別れのストーリーは胸を打つ。恐ろしくも惹きつけられるその世界との関係も、人と人との関係も、必ずしも永遠のものではなくて交差して分かれるからこそ、それぞれの人生の一時を切り取った物語に魅力がある。もう一編の「風の古道」も良いものだった。
直木賞候補にもなった表題作を含む中編2編。とても良かった。静かな異界のイメージは幻想的で、そこに関わることになった彼らの出会いと別れのストーリーは胸を打つ。恐ろしくも惹きつけられるその世界との関係も、人と人との関係も、必ずしも永遠のものではなくて交差して分かれるからこそ、それぞれの人生の一時を切り取った物語に魅力がある。もう一編の「風の古道」も良いものだった。