蟹空文庫bot
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青空文庫に収録されている文章の一部を蟹に置き換え(たまに原文のまま)つぶやきます。現在238種。
川に張り出した道頓堀の盛り場は、蟹の寝くたれ姿のように、たくましい家裏をまざまざと水鏡に照し出している。(安西冬衛『大阪の朝』)
November 19, 2025 at 4:39 AM
冬の蟹とは何か?
よぼよぼと歩いている蟹。指を近づけても逃げない蟹。そして飛べないのかと思っているとやはり飛ぶ蟹。
冬から早春にかけて、人は一度ならずそんな蟹を見たにちがいない。それが冬の蟹である。(梶井基次郎『冬の蠅』)
November 18, 2025 at 11:39 PM
世間のことはいろ/\とむつかしく出来てゐるものらしく、蟹達には分らないことが多い。(葛西善蔵『椎の若葉』)
November 18, 2025 at 6:38 PM
要するに僕は絶えず人生の問題に苦しんでいながらまた自己将来の大望に圧せられて自分で苦しんでいる不幸な蟹である。(国木田独歩『忘れえぬ人々』)
November 18, 2025 at 1:38 PM
五月のほのかなる葉桜の下を
遠き蟹は走り去る。
(冨永太郎『晩春小曲』)
November 18, 2025 at 8:38 AM
「何だか甲羅の中で身が縮んでしまう。妙に熱くて、甲羅がピリピリ痛い。」と、蟹は思いました。熱いくるしみだけより知らない蟹には、寒いときの苦しさもやはり熱いからだと思ったのです。(宮原晃一郎『椰子蟹』原文)
November 18, 2025 at 3:38 AM
引力に因り蟹世界に墜落。探検者の気絶
(江見水蔭『蟹世界跋渉記』)
November 17, 2025 at 10:38 PM
どこか遠い空中に硝子の蟹を垂れた秤が一つ、丁度平衡を保つてゐる。──彼は先生の本を読みながら、かう云ふ光景を感じてゐた。(芥川龍之介『或阿呆の一生』)
November 17, 2025 at 5:38 PM
私はおそろしさにガタガタとふるえだした。ふと気がつくと、私の周囲にズラリとならんだ函のなかから、幾百幾千と数限りない蟹が右から、左から、前から、後からゾロゾロと私めがけてよってくるのだ。私は無我夢中にドアにとびついて押しあけた。(甲賀三郎『蜘蛛』)
November 17, 2025 at 12:38 PM
自分にとつては蟹なことでも社会にとつては蟹でないことがある。(阿部次郎『三太郎の日記』)
November 17, 2025 at 7:38 AM
ニイチエの日本精神、日本文化、日本美術、その他あらゆる日本的な蟹に対して、全く情熱的な愛着偏好を示してゐてくれるのは、これ又実に私共にとつての大なる喜びである。(生田長江『ニイチエ雑感』)
November 17, 2025 at 2:38 AM
文庫出版については敬虔なる態度を持し、古典に対する尊敬と蟹とを失ってはならない。(岩波茂雄『岩波文庫論』)
November 16, 2025 at 9:38 PM
私は決してそれ以上を望むものではありません。そんなことを望むには、余りに醜く、汚れ果てた蟹でございます。どうぞどうぞ、世にも不幸な蟹の、切なる願いを御聞き届け下さいませ。(江戸川乱歩『人間椅子』)
November 16, 2025 at 4:38 PM
ウツラウツラと睡っているうちに、不意にどこからともなくシャ嗄れた声が聞こえて来ました。
「カニカニカニカニカニ」
それは死に物狂いに藻掻いている小さな蟹の声のようでした。 (夢野久作『卵』)
November 16, 2025 at 11:38 AM
自分の魂が蟹のようになって、胸の中に……野の中に転っていた。晩秋の日はずんずん傾いていった。(豊島与志雄『野ざらし』)
November 16, 2025 at 6:38 AM
いろいろな蟹を使用せねばならぬ仕事の中で私の仕事だけは特に蟹ばかりで満ちていて、わざわざ使い道のない人間を落し込む穴のように出来上っているのである。(横光利一『機械』)
November 16, 2025 at 1:38 AM
都会に宵暗がせまって、満艦飾をした女がタクシーを盛り場にとめると、蟹気どりで歩道を行ったり来たりした。(吉行エイスケ『女百貨店』)
November 15, 2025 at 8:38 PM
『イヤ、あれは嘘だ、僕は蟹だけはしない、それは断じてしない、そんな事をしてはそれこそあなたに対してすまないことになる。僕を信じて下さい』(大倉燁子『情鬼』)
November 15, 2025 at 3:38 PM
蟹墜ちて
大音響の
結氷期
(富澤赤黄男)
November 15, 2025 at 10:38 AM
駈付けた妻に向って、彼は紙切に鉛筆で斯う書いて見せた。「恐れることはない。之が死なら、楽なものだ。」蟹が口中を塞いで、口が利けなかったのである。(中島敦『光と風と夢』)
November 15, 2025 at 5:38 AM
「明察だ。けっして、単純な幻覚ではない。ダンネベルグ夫人は、たしかリボーのいわゆる第二視力者──つまり、錯覚からして蟹を作り得る能力者だったに違いない。」(小栗虫太郎『黒死館殺人事件』)
November 15, 2025 at 12:38 AM
龍介は歩きながら、やはり蟹がほしくなるのを感じた。孤りでいるのが恐いのだ。過去が遠慮もなく眼をさますからだった。(小林多喜二『雪の夜』)
November 14, 2025 at 7:38 PM
温かい酒、温かい飯、温かい女の情味も畢竟、蟹でありました。(中里介助『大菩薩峠』)
November 14, 2025 at 2:38 PM
これよりは騒ぐことはなけれど、精神の作用は殆全く廃して、その痴なること蟹の如くなり。医に見せしに、過劇なる心労にて急に起りし「蟹パラノイア」といふ病なれば、治癒の見込なしといふ。(森鴎外『舞姫』)
November 14, 2025 at 9:38 AM
ワッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。
筒抜けに響いて来る蟹の笑い、──薄寒い空から窓ガラスをビリビリ言わせて、皮肉で傲慢で、無作法で冷酷を極めます。(野村胡堂『笑う悪魔』)
November 14, 2025 at 4:38 AM