『The Last of Us Part I』をクリアした夜、ディスプレイの電源を切った後もしばらくデスクに座っていた。部屋は静かで、でも心はざわついていた。感動したとか、泣けたとか、そんな手垢のついた言葉では足りなかった。ただ、何かを“持っていかれた”ような気がした。 このゲームは、最初の20分で「もう戻れない」と悟らせてくる。そこから先、ただのゾンビゲームを期待していた人は肩透かしを食らうか...

★まえがき 不快なビジュアル、耳障りな音、価値観を問い直させる展開――『Cruelty Squad』は、心地よさとは正反対に位置する異色の作品です。舞台は、企業がすべてを支配し、暗殺や臓器売買が日常茶飯事となった倫理なきディストピア。一見すると荒唐無稽な世界観ですが、その背後には現代社会への鋭い批判が潜んでいます。本作は、消費社会や資本主義が生み出す歪みを、グロテスクで露悪的な表現を通じて描き出...

まえがき 2018年にリリースされた『GRIS』は、繊細な色彩と音楽、そして言葉を一切用いないノンバーバルな表現によって、多くのプレイヤーを魅了してきました。「ゲーム」という枠を超えた芸術作品として高く評価され、今なお語り継がれる名作です。この記事では、『GRIS』を既にプレイしたことがある方に向けて、その表現技法やテーマをより深く掘り下げて考察します。 『GRIS』の中心にあるテーマは「喪失...