高井ゆと里
yutorispiel.bsky.social
高井ゆと里
@yutorispiel.bsky.social
倫理学者。群馬。『トランスジェンダー入門』の著者。(JP)
読書記録とイベントの告知、情報収集。
https://www.threads.net/@yutorispiel によくいます。
連絡は researchmap 記載のアドレスまで。
やはり、先日の札幌家裁による5号要件に対する法令違憲の判断のさいに出された声明を参照せよとのことなので、そちらのリンクも貼っておきます。
こちらは、ふつうに特例法についての勉強になる面もあるので、多くの人にお勧めします。

【声明】性同一性障害特例法5号要件違憲決定を受けて
tnet-japan.com/20250923-2/
【声明】性同一性障害特例法5号要件違憲決定を受けて - Tnet (Tネット)
今月19日、札幌家庭裁判所が、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下、性同一性障害特例法)において定められた性別変更のいくつかの要件のうち、「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似す […]
tnet-japan.com
November 12, 2025 at 3:03 PM
(12)そして、このような司法判断の蓄積によって、いま現在トランスジェンダーの人たちの戸籍変更(性別変更)はどのような環境にあるのか、分からないという方は多いと思います。やはりTネットが、現時点での性別変更申し立ての環境についての勉強会を予定してくださっています。当事者だけでなく、家族や友人、支援者の方も対象となっている勉強会ですので、ぜひご参加ください。(無料で、オンライン配信のみ、アーカイブの配信もあります)
tnet202511.peatix.com/view
Tネット主催勉強会「当事者が知っておきたい法的性別取扱い変更申立てQ&A」
法的な性別取扱い変更の申立てを検討しているトランスジェンダー当事者、およびその家族、パートナー、支援者を対象としたオンラインセミナーを開催します。 近年、法的性別取扱い変更の要件に...
tnet202511.peatix.com
November 9, 2025 at 9:20 AM
(11)最後に、今回の5号違憲決定については、先日の札幌家裁などで明らかになった5号違憲決定を受けて出されたTネットの声明が参考になります。こちら多くの方にとって有益な文章になっていると思いますので、ぜひご一読ください。

(わたしがアドバイザーを務めている団体さんです)
tnet-japan.com/20250923-2/
【声明】性同一性障害特例法5号要件違憲決定を受けて - Tnet (Tネット)
今月19日、札幌家庭裁判所が、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下、性同一性障害特例法)において定められた性別変更のいくつかの要件のうち、「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似す […]
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November 9, 2025 at 9:20 AM
(10)繰り返しますが、東京高裁自身も、5号について法令違憲を下すことが可能だと間違いなく考えていたはずです。しかし、札幌家裁ほか家庭裁判所で違憲決定が次々と出されるなか、東京高裁もまた法令違憲とすることは、立法権の侵害になりかねないとの理由から、適用違憲に留めています。
これは、非常につよい立法府へのメッセージだと考えられます。そろそろ、責任のたらい回しを終え、申立人となる当事者たちが、全国で一律かつ安定的に法的な性別変更ができる環境を取り戻すべきだと思います。
November 9, 2025 at 9:20 AM
(9)今回の申立人と理人は「ホルモン療法で陰茎が委縮していない」という主張を提示しています。つまり、広島高裁が作った路線では5号要件を満たさないという主張です。おそらく代理人は、この訴えを通じて、広島高裁がトリッキーな仕方で作った5号要件の解釈を崩そうとしたのではないかと思います。しかし東京高裁は、そうはしませんでした。ホルモン療法によって陰茎が委縮していない(今回の申立人のような)ケースでは、5号要件の充足のために依然として外科手術による性器の切除が求められる。しかし、そうした手術を法律で課すのは人権侵害にあたるから、今回のようなケースでは5号要件が憲法違反になる。そうした理屈を立てました。
November 9, 2025 at 9:20 AM
(8)ともあれ、広島高裁のこの決定によって、5号要件は事実上「ホルモン療法による委縮要件」へと、解釈上標準化されうる環境ができました。実際、この広島高裁の判決のあと、全国の家裁および一部の高裁で、同様の理屈による性別変更の認容が相次ぐことになりました。
そして、今回の申立人さんの訴訟は、この環境において起こされたということにポイントがあり、それをまず理解する必要があります。
November 9, 2025 at 9:20 AM
(7)問題は他にもあります。それは、「5号要件は公衆浴場の混乱防止のために設けられているが、ホルモン療法で陰茎が委縮していれば混乱は起きない」という、現実に則さない、誰も納得しない理屈を立ててしまったことです。
そもそも問題は、「公衆浴場の混乱を防ぐという目的のために、性別変更を求める当事者に一律に陰茎の切除を手段として義務付けるのは、目的と手段のバランスとして明らかにおかしい」という点にあります。その目的の達成には、もっと合理的な手段は他にいくらでもあるからです。しかし広島高裁は、ホルモン療法で陰茎が委縮していれば5号の目的は達成されるという、むしろ世間を混乱させる理屈を立ててしまいました。
November 9, 2025 at 9:20 AM
(6)この広島高裁の決定は、いくつもの問題を含んでいます。まず、戸籍を「女性」に変更する場合、4号要件と5号要件はこれまでずっと、性別変更時点において外科手術を一律に求めるものとされてきたのですから(だから「手術要件」というミスリーディングな概念が生まれた)、この広島高裁の決定は相当に強引な解釈変更でした。
高裁はほんらい、真正面から法令違憲を下すべきでしたが、裁判官がその責任を果たすことから逃げたと言わざるを得ません。法改正ができなかった立法府にももちろん責任は大きいですが、この広島高裁のいびつな判断が、今回の東京高裁の決定につながる複雑な状況を作った、ものもとの原因になっています。
November 9, 2025 at 9:20 AM
(5)しかし、その差し戻しを受けた広島高裁は、「これまでは手術を義務付けるとされており、確かに手術を義務付けるならば違憲の疑いが強い。しかし、ホルモン療法によっても性器の外観は変化する(ざっくり言えば陰茎が委縮する)から、ホルモン療法のみで5号要件を満たしうる」という、これまでの解釈を強引に変更したトリッキーな判断を下して、裁判を終わらせてしまいました。
November 9, 2025 at 9:20 AM
(4)しかし2024年の通常国会では、好き勝手なことをいう政治家が湧いたばかりで、特例法は改正できませんでした。そのため、最高裁まで争っていた申立人さんの性別変更については、差し戻しを受けた広島高裁が、改正前の法律で、判断を下さなければならない状況になりました。
とはいえこの時点では、誰もが、5号要件に違憲決定をくだすことは避けられないと考えていたはずです。なぜなら5号要件は、性器の形状を変更する外科手術を一律に求めるものと解釈されてきたため、最高裁の理屈を踏襲すれば、憲法違反であることが明確だからです。
November 9, 2025 at 9:20 AM
(3)そもそも5号要件については、ここ2年以上「責任のたらい回し」が続いています。2023年の最高裁では、4号(不妊化要件/生殖不能要件)に憲法違反との決定が下ったものの、5号については高裁での審理が不十分として、広島高裁に差し戻しになりました。ただし、この最高裁決定にあたっても、何名もの裁判官が「5号も今すぐ違憲決定をすべき」と個別意見を付けていました。
ともあれ、この最高裁決定を受けて、国会には特例法の改正義務が生じました。全国の裁判所も、当然その法改正を待っていたと思います。
November 9, 2025 at 9:20 AM
(2)とはいえ東京高裁の決定には不満もあります。高裁は5号要件(外観要件)について、法そのものが違憲とはせず、適用違憲に留めました。それも、申立人の事情を細かく汲んだ上でそうしたというよりも、立法府の権限とのバランスを考慮して(法令違憲と判断できたにもかかわらず)立法府への配慮から、適用違憲にしたようです。たしかに、国賠訴訟のようなケースと違い、特例法による性別変更は家事審判であり、家事審判において違憲判断が連発されるという昨今の状況は異様というほかないと思います。ただ、先日の札幌家裁などがそうしたように、法内在的に、裁判所としての責務をまっとうした法令違憲を下すべきだったと思います。
November 9, 2025 at 9:20 AM
(1)まず、申立人さんの性別変更が認められたことは本当によかったです。記事によれば、現在50代。20代からホルモン療法をはじめ、女性として働き始めてから10年が経つそうです。20年以上の治療歴と、10年(以上)の生活歴があるなかで、ずっと戸籍の表記が(性自認に則して築いた)生活実態と合致しない状態で生きてきたたわけですから、とても不便が多く、差別に怯えなければならない時間も長かったのではと思います。本当によかったです。
November 9, 2025 at 9:20 AM
(つづき)
田中雅子「移民の目線で日本のSRHRを見直す」
土屋和代「トランプ2.0とリプロダクティブ・ジャスティス」
田代美江子」SRHRを確かなものとする包括的セクシュアリティ教育(CSE)―人権教育の実践としての意義―」

【インタビュー】
木本昌美・木本奏太「身体で線引きされずに、自分を生きるために」
石地かおる「障害のある身体を、『私のもの』と思えるまで」

【鼎談】
大橋由香子✕高井ゆと里✕福田和子「女の運動の蓄積を、次のSRHR運動につなげていくために」

【読者投稿】
自分の身体(とくに性や生殖にまつわること)が自分のものではない、管理されている、と感じたことはありますか?
November 8, 2025 at 2:19 AM
特集の目次は以下の通りです。

SRHR年表(作成:福田和子・高井ゆと里)
セクシュアル・ジャスティス宣言(性の健康世界学会(WAS))

【寄稿】
草野洋美「SRHR for ALL!――SRHRが私たちみんなの人権になる日まで」
三浦美和子「日本の公的プレコンセプションケア――誰が、何のために?」
黒坂愛衣「隔離政策と優生政策が交差したハンセン病療養所」
嶽本新奈「『からゆきさん』――性と生殖の管理、そして植民地主義」
永野三智「水俣の女性たちの、性と生殖にまつわる話」
谷口歩実「『フェムテック』への怒り」
(つづく)
November 8, 2025 at 2:19 AM