2018年発行の合同誌に寄稿した小説を発掘したので、べったーに載せました!
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🌱🏛短編5つを再録しました:)
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そう言い残して出勤した書記官殿の期待に沿うべく、棚の中に窮屈そうに詰め込まれた書籍たちを一冊ずつ解放していく。乾いた布で丁寧に埃を拭いながら、何度か本をぱらぱら捲る。床の上に広げて立てる。以下繰り返し。床が本で埋め尽くされてきた頃、一冊の図録から黄ばんだメモが落ちてきた。かつて僕が後輩に宛てて書いた、資料の貸借に関するなんてことない伝言だった。あいつのことだ、栞がわりにでも使っていたんだろう。そうは思いながらも、彼の大切にしている書籍の中で己のかけらが息づいていることを嬉しく思ってしまう。僕はメモをそっと戻すと、立ち上がって背伸びした。白い陽光が瞼の裏をちらちら照らした。
そう言い残して出勤した書記官殿の期待に沿うべく、棚の中に窮屈そうに詰め込まれた書籍たちを一冊ずつ解放していく。乾いた布で丁寧に埃を拭いながら、何度か本をぱらぱら捲る。床の上に広げて立てる。以下繰り返し。床が本で埋め尽くされてきた頃、一冊の図録から黄ばんだメモが落ちてきた。かつて僕が後輩に宛てて書いた、資料の貸借に関するなんてことない伝言だった。あいつのことだ、栞がわりにでも使っていたんだろう。そうは思いながらも、彼の大切にしている書籍の中で己のかけらが息づいていることを嬉しく思ってしまう。僕はメモをそっと戻すと、立ち上がって背伸びした。白い陽光が瞼の裏をちらちら照らした。