北野勇作
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北野勇作
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2015年の秋から【ほぼ百字小説】を書いてます。句読点等の数え方によって違うと思うので「ほぼ」としてますが、百字ぴったりの小説です。ナンバーを振ってます。とりあえず、その(1)から順にここに上げていこうと思います。あとは宣伝とかします。たぶん。
【ほぼ百字小説】(310) こんな冷たい雨の夜は、お粥屋が混雑する。いろんなものが熱いお粥を買いに来る。生きているものも生きていないものも、皆同じように冷え切っているから、お粥屋は区別しない。お粥屋も何年か前に死んでいるのだし。
December 1, 2024 at 10:35 AM
【ほぼ百字小説】(309) 自走式の楽器は、ピアノ、大太鼓、小太鼓、シンバル、鉄琴。どれも見慣れた楽器だが、少し違うのは手足があるところか。そこに子供たちが加わっていっしょに行進する。子供たちは、リコーダーの手足の代わりとなる。
December 1, 2024 at 10:35 AM
【ほぼ百字小説】(308) 長くて急な坂のてっぺんで芝居の稽古。のめり込み過ぎ勢いあまって転げ落ちる者が続出。もちろん次の出番までに転げ落ちてきた坂を駆け上がり息も整えておかねばならない。まあそれがいい稽古になるという説もある。
December 1, 2024 at 10:35 AM
【ほぼ百字小説】(307) 掘って掘ってやっと泥だらけの塊を掘り出したのだが、どうもなんとなく見覚えがある。どこで見たのかなあ。首を傾げつつ泥を落としてみると、見覚えがあるはずで、昔の自分なのだ。洗って磨けばなんとかなるかなあ。
December 1, 2024 at 10:34 AM
【ほぼ百字小説】(306) 薄い歯車のようなぎざぎざの丸いものが道に落ちている。なんだこりゃ。手裏剣でしょ、と娘が当たり前のように言う。最近増えたよね。手裏剣が? まあ手裏剣っていうか、忍者がね。そうなのか。うん、質も落ちたよ。
December 1, 2024 at 10:34 AM
【ほぼ百字小説】(305) 細長い宇宙船が好きなのは、子供の頃の自分にとっては、ボールペンやシャープペンが宇宙船だったからなのだろうなあ。いくつものパーツに分割できる、というのも大切な特徴で、だから鉛筆は宇宙船にはなれなかった。
December 1, 2024 at 10:34 AM
【ほぼ百字小説】(304) テラフォーミングに狸が使用されるのは現実改変能力があるからだが、すぐ化けの皮が剥がれる程度の効果しかないこともはっきりしている。惑星改造に用いるのではなく、惑星に送り込むヒトに対して使用するのである。
December 1, 2024 at 10:33 AM
【ほぼ百字小説】(303) そう言えば、小学校のチャイムが変わったんだよ。娘が玄関を出たところで振り向いて言う。へえ、曲が変わったのか? 曲はおんなじ。音か? 音もおんなじだよ。あっ、遅刻するからもう行くね。ものすごく気になる。
December 1, 2024 at 10:33 AM
【ほぼ百字小説】(302) 今夜も小学校で会議が開かれている。昔から七不思議の七番目はずっと空いたままで、そこに何を入れるのかを決める会議。参加者たちはそれぞれの団体を代表しているから、いつまでもまとまらない。というのは五番目。
December 1, 2024 at 10:33 AM
【ほぼ百字小説】(301) とっくに辞めたはずの会社に今も勤めていて、また怒られている。なんとかならんか、と思うがなにせ夢だからこちらの都合ではどうにもならない。とっくに死んだはずなのにこうして夢だけは見る、ということも含めて。
December 1, 2024 at 10:32 AM
【ほぼ百字小説】(300) 飛んでるみたいやないか。踊っている子供たちを見て思う。もうこんなことができるんか。そう思うと同時に、自分は絶対にその場所へは行けないのだ、と思い知らされる。当たり前だ。しかし、飛んでるみたいやないか。
November 23, 2024 at 11:35 PM
【ほぼ百字小説】(299) プロペラを回転させて飛行する生き物で、離陸にも着陸にも滑走路が必要だという。滑走路だけでなく管制塔も誘導灯も整備員も必要で、他の飛べない生き物を乗客として乗せることもあるらしい。進化の妙と言うべきか。
November 23, 2024 at 11:35 PM
【ほぼ百字小説】(298) 真夜中、カーテン越しに射す緑色の光で目を覚ました。そっと覗いてみると、なんと小型乗用車くらいの卵型の物体がベランダのすぐ外に浮かんでいる。翌朝見ると洗濯物がない。地球侵略の準備は着々と進んでいるのだ。
November 23, 2024 at 11:35 PM
【ほぼ百字小説】(297) やたら騒がしいのは春になったから。水中で寝ていた亀が起きてくる。土中で寝ていた蛙が起きてくる。そして、開かずの間からごとごと音がする。まあいつもそれで、うちには開かずの間があったな、と思い出すのだが。
November 23, 2024 at 11:33 PM
【ほぼ百字小説】(296) 猫の声がやけにうるさいので行ってみると、普段は集会をしているあたりで、地面に立てたマイクに向かって、なおなおなおおと叫んでいる。選挙の季節か。しかし、一匹がマイクを使うと皆使うことになるのだろうなあ。
November 23, 2024 at 11:33 PM
【ほぼ百字小説】(295) 突き出ている白いものは、岩ではなく巨人の歯だ。波打ち際に直立する形で、首から下が埋まっている。下の歯から上が残っていないのは波が壊したのだと思われるが、そんなふうに埋まることになった理由はわからない。
November 23, 2024 at 11:32 PM
【ほぼ百字小説】(294) 埋めても埋めても戻ってきてしまうのは、この墓地の土が原因だ。今後、この墓地には埋めないようにね。しかし、昔のヒトはなぜこんな場所をわざわざ墓地にしたのだろうな。そう思って看板をよく見たら、基地だった。
November 23, 2024 at 8:05 AM
【ほぼ百字小説】(292) 春の雨だ。いろんなものが流れてくる。ここは坂の途中だから、上から流れてきたものはここにとどまることなく通り過ぎていく。自分だけがここにとどまり目の前を通り過ぎるものたちを眺めているのも、いつもの春だ。
November 23, 2024 at 8:05 AM
【ほぼ百字小説】(291) たまにいっしょに風呂に入る。音は出さない。ネジを外され、引き抜ける管は引き抜かれ、長いブラシで管の中をこすられながら湯を通される。そう言えばいつも彼の妻と娘が留守のときだなあ、とこのあいだ気がついた。
November 23, 2024 at 8:04 AM
【ほぼ百字小説】(290) 世界が夜になると暗くなるのは、どういう仕組みなのか。それを解明するために世界の果てまで行って、真相を見届け、納得して帰ってきたことがある。子供の頃だ。歩いて果てまで行けるくらい、まだ世界は小さかった。
November 23, 2024 at 8:04 AM
【ほぼ百字小説】(289) アルマイト洗面器を背負ってどこからか来て、顔の汚れを一掃して皆の目を覚まし、またどこへともなく去っていくその男を、ヒトはマイトガイと呼ぶ。いろんな洗面器で洗顔してきたが、あんなのは他に見たことないぜ。
November 23, 2024 at 8:03 AM
【ほぼ百字小説】(288) たまにラッパといっしょに風呂に入る。吹くためではない。ネジを外し、引き抜ける管は引き抜き、長いブラシで管の中をこすって湯を通してやる。そう言えばいつも妻と娘が留守のときだなあ、とこのあいだ気がついた。
November 23, 2024 at 8:03 AM
【ほぼ百字小説】(287) 何型ロボットだかわからないロボットが訪ねてきた。どうやら、その何型ロボットだかわからないロボット、恩返しに来たらしい。せめて自分が何型ロボットなのかが自分でわかってから恩返しにくるように、と説得する。
November 23, 2024 at 8:03 AM
【ほぼ百字小説】(286) 夕暮れどきにゆっくり走る。空き家だらけの一画を抜けると、いちばん高いビルが見えてくる。夕焼けの終わった空に、そのビルはよく似合う。だいぶ気持ちよくなっているせいか、ビルが折れていることは気にならない。
November 23, 2024 at 8:02 AM
【ほぼ百字小説】(285) 道路脇の木にタスキが掛かっている。風が吹いても飛ばず、皺にも団子にもならない。雨が降っても濡れないのでは。あんなもの掛けたら大変なことになるぞ、とここを通るたびにつぶやくのは、つい掛けそうになるから。
November 21, 2024 at 8:24 AM